著者
塚原 貴子 矢野 香代 新山 悦子 太田 茂
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.235-242, 2010

本研究の目的は,大学生が外傷体験を筆記により開示することが,心身の健康に及ぼす影響を検討することであった.実験参加者は,A大学の学生で研究の同意が得られた対象に外傷体験の重症度を測定する出来事インパクト尺度 (Impact of Event Scale Revised:IES-R) の調査を行い得点の高かった12名である.実験は,外傷体験を事実と感情に分けて15分間筆記した後に読み返しをするトラウマ筆記群と,1週間の日常を筆記する統制群とに無作為で分け,3日間行った.開示の影響を評価するため,IES-R調査の他に精神的健康度(General Health Questionnair:GHQ60)調査,唾液アミラーゼ活性によるストレス度調査,近赤外光トポグラフを用いた前頭部の血流測定,継続的な脈拍測定を行った.その結果,IES-R得点,GHQ60の得点がトラウマ筆記群で有意に低減した.身体的な評価指標には個人差があり,明らかな効果は認められなかったが,筆記による開示のストレス軽減効果の可能性は示唆された.
著者
中村 徹 近藤 寛 松井 文彦 木村 亮太 酒井 秀樹 阿部 正彦 太田 俊明 松本 睦良
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. OME, 有機エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.174, pp.67-70, 1999-07-14

新規チオール化合物である2-メルカプトメチルチオフェン類縁体を合成し、Au(111)上に自己組織化膜を作製し、その構造を走査型トンネル顕微鏡(STM)により検討したところ、これらの化合物には筋状の構造体と蜂の巣状の構造体を形成することが判明した。分子長を変化させても形成する構造体の周期は変化しなかったことから、直線状の2-メルカプトメチルチオフェン誘導体は金状でflat-onではなく、表面に対してある角度で立って吸着していることが示唆された。さらにこの構造体の形成因子を探るため、芳香環、置換基を変化させ、そのナノ構造を調べたところ新しい知見を得ることができた。
著者
円谷 悦造 浅井 美都 太田 美智男
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiyo shokuryo gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.101-106, 1998-04-10
被引用文献数
2 1

食酢を用いた調理における, 食中毒原因菌である<i>Escherichia coli</i> O157: H7 NGY-10, <i>Salmonella</i> Enteritidis IID 604, <i>Vibrio parahaemolyticus</i> IFO 12711および <i>Staphylococcus aureus</i> IFO 3060の挙動を調べ, 食酢が細菌性食中毒の予防に有効か否かを検証した。<br>食酢を調味に使用する調理食品では, 食酢使用量の多い, 酢漬け類, 紅白なます, サワードリンク等では, <i>E. coli</i> O157: H7 NGY-10に対する殺菌効果が, 食酢使用量の比較的少ない, 酢の物類, すし飯等では静菌効果が確認された。食酢を調味には使用しないが, 刺身類や茹で蛸を食酢に短時間浸漬すると, 供試菌株に対する静菌効果ないしは殺菌効果が発現し, 保存性が高まった。炊飯前に, 食味に影響しない量の食酢を添加すると, 冷却後の米飯に供試菌株を接種しても静菌された。冷凍魚介類を食酢希釈液中で解凍すると, その後の穏和な加熱でも, 供試菌株が殺菌され, 保存性が高まった。また, ハンバーグステーキに食酢を適量添加して焼くと, 中心温度が65℃という不十分な加熱でも, 供試菌株が殺菌され, 保存性が高まった。<br>以上の結果より, 調理の場面での食酢の細菌性食中毒防止効果が確認された。
著者
太田 陽子 松田 時彦 長沼 和雄
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.55-70, 1976-03-10 (Released:2010-03-11)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

Seven steps of marine terraces are well developed on the Ogi Peninsula, Sado Island. The seventh (lowest) one is a raised abrasion bench less than 2m high, emerged at the time of the destructive earthquake of 1802, hence it is named the 1802 terrace. The sixth terrace is about 2-4m high, and probably was formed at the time of Holocene transgression. Higher five terraces (Pleistocene terraces V-I) are well preserved over the most part of the peninsula and have the height of 32-40m, 70-55m, 94-118m, 123-137m and more than 165m, respectively.The height of former shorelines represented by shoreline angle of each terrace shows that all the terraces tilt northward. Generally, the higher the terrace, the larger the amount of tilting. However, the tilt of the lowest two terraces (the 1802 and Holocene terraces) is almost the same, ca. 1.5′. This indicates that the 1802 tilting caused by the earthquake was a first event after the formation of the Holocene terrace of ca, 6, 000 years old and the recurrence interval of the events was more than 6, 000 years. A uniform regional difference of 2m in height between these two terraces is probably interpreted as a superposed result of the eustatic lowering of sea level and a regional uplift during last 6, 000 years.It is possible to estimate the average intervals of earthquakes after the terrace formation by comparing the tilting rate of all Pleistocene terraces with that of the 1802's. Thus, the average recurrence intervals are estimated at about 8, 600 years since Terrace III was formed and about 5, 000 years since Terrace IV was formed. These values are consistent with the interval of more than 6, 000 years which is estimated from tilt of the 1802 and the Holocene terraces. It is concluded, therefore, that the earthquake has taken place repeatedly in a similar manner with a recurrence interval of about 5, 000-9, 000 years during at least last 105 years.Uplift and northward tilting of the Ogi Peninsula at the time of the 1802 earthquake (Magnitude 6.6) is significantly larger than those of Awa-shims at the Niigata earthquake of 1964 (M 7.4), though its magnitude was smaller.This fact and the limited areal deformation by the 1802 earthquake imply that the epicenter of this earthquake was located very close to the coast of the Ogi Peninsula, probably within a few kilometers off Shukunegi. A reverse faulting is inferred to have occurred along a northward-dipping fault plane at the 1802 earthquake.
著者
太田 直哉 大中 慎一 亀井 俊男 土屋 徹雄 溝口 正典
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRU, パターン認識・理解
巻号頁・発行日
vol.94, no.241, pp.57-64, 1994-09-21
被引用文献数
3

高速道路を走行する車両の前方視野画像を用いて、道路環境を理解する視覚システムについて報告する。現在構築中のこのシステムは、自律的に走行するのに必要な情報として、道路帯(レーン)、他車両、障害物を認識する予定であり、現在までに道路帯および追い抜き車両の認識部分の実装を完了した。本論文では、研究の中間報告として、システムの構成に関する計画と実装を完了した部分について述べる。道路帯はレーンを表す白線によるエッジを検出することで認識する。追い抜き車両は、画面両側のオプティカルフローを解析して検出し、Snakesによって追跡する。これらの情報は3次元環境モデルに集約・保持される。このシステムを実際の高速道路画像を用いて動作させた結果を示す。
著者
渡邉 尚子 岩田 滉一郎 中尾 國明 松本 正廣 松本 裕子 籏原 照昌 太田 裕彦 平林 寧子 高橋 和明 三代 俊治
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.80-84, 2003-02-25
被引用文献数
5 5

従来本邦ではE型肝炎は輸入感染症として軽視されがちであったが, 最近本邦を含む非流行地からの国内発症例の報告が相次いでおり, 我々も1例経験したので報告する. 症例は62歳男性. アルコール歴・ビタミン剤と生薬の服用歴あるも, 海外渡航歴・輸血歴・動物の飼育歴はなく, 特記すべき性交渉歴もなかった. 2000年11月初旬より全身倦怠感・褐色尿・微熱・食思不振を訴え, 職場の健康管理室を受診. 急性肝炎の疑いで同年11月21日に当科外来を紹介され, 同日入院となった. 入院時には全身倦怠感・皮膚及び眼球結膜黄染・軽度肝腫大・肝逸脱酵素上昇を認め, 急性肝炎と診断した. 安静のみで経過観察したが, 劇症化あるいは遷延・慢性化することもなく, 約20日間で軽快退院となった. 入院時より第29病日まで血清HEV-RNAが持続陽性で, 且つ第57病日の回復期血清中にHEV抗体を認めたことより, E型急性肝炎と診断した. 本患者より分離されたHEV株(JRA 1)のゲノム塩基配列の特徴に鑑みて, 本症例は「日本に土着化したHEV株」に感染して発症した急性肝炎であると考えられた.
著者
太田 慎司 大関 武雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SAT, 衛星通信 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.666, pp.71-76, 2003-02-21

IEEE Communication Society主催の国際会議「IEEE Global Communications Conference 2002」が、11月17日から21日の日程で、台湾・台北市のTaipei International Convention Centerにおいて開催された。初日と最終日にチュートリアル21件、残り3日間でシンポジウム80件とワークショップや特別セッション6件がパラレルに実施された。本橋では、会議の概要を含め、衛星通信関連技術、無線伝送技術、コンテンツ配信技術の動向について紹介する。
著者
太田 成男 石橋 佳朋
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.122-128, 1999-03-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
14

アポトーシスは細胞が縮小していく細胞死として発見され, それが遺伝子のプログラムによって能動的に進行する.アポトーシスは生体制御や生体防御機構として働き, 個体の維持には必須なプロセスである.アポトーシスのシグナルの伝達, 制御, 実行について関与する因子が同定され, その分子機構も詳細に論じられるようになった.アポトーシスのシグナル伝達には蛋白問の相互作用によって伝えられる機構とミトコンドリアシグナルが発せられる機構がある.Bc1-2ファミリー蛋白はアポトーシスを制御する.最終的にアポトーシスを実行するのはカスパーゼファミリーという蛋白切断酵素群であり, カスパーゼ自身も前駆体が切断され活性化される.
著者
太田 順 武衛 康彦 新井 民夫 大隅 久 陶山 毅一
出版者
The Robotics Society of Japan
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.263-270, 1996-03-15
被引用文献数
24 24

A coordinated control method for two mobile robots without explicit communication is presented in this paper. Concretely, transferring control by cooperation of two robots is realized from the viewpoints of mechanical design and of control system design. In the mechanical design, compliance mechanism with 3 degrees of freedom is added on one of the robots in order to avoid extreme inner forces between the robots. In the control system design, leader-follower method is adopted. "Virtual Impedance Method" is used for controlling the follower robot. A deadlock problem, where a robot stops at some other positions from a target position of the robot, is solved by transforming lateral virtual forces to virtual moments. Effectiveness of the proposed method is verified by experimental results. The proposed method is applicable to multiple mobile robot system by increasing the number of followers.
著者
長澤 泰子 太田 真紀
出版者
日本橋学館大学
雑誌
紀要 (ISSN:13480154)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.3-13, 2004-03-30

ことばの教室における教師と子どもの相互交渉を分析した先行研究において,われわれは,つらい経験を原因とする吃音への感情を理解するために,顔の向きや表情あるいは沈黙のような子どもの非言語的表現を受けとめることの重要性を報告した。本研究は臨床における教師のより好ましい行動を明らかにするために,引き続き,別の2人のコミュニケーション分析を行なう。教師と子どもが話し合う相互交渉2セッションをVTRに録画し,子どもと教師の発話,体・顔の向き,表情,視線,その他の行動を指標として分析を行った。教師は40代女性,子どもは吃音のある3年男児だった。2人は子どもの吃音にかかわる経験について話し合った。そのとき,教師はタイトル「どもってもいいんだよね」という吃音に関する教材を用いた。1週目の話し合いにおいて,絵本に関する子どものコメントの後,教師は吃音をからかわれたことがあるかを質問した。このとき,教師は子どもを見ていたが,子どもに体を向けてはいなかった。教師は子どもの返事を確認することなく,いじめに関する新たな質問をした。子どもは教師の質問に答えようとしたが,体や顔を教師に向けずに,今はいじめられていないと繰り返し述べた。2週目の話し合いにおいて,教師と子どもの相互交渉は改善されていた。教師は体と顔を子どもに向けながら話をしていた。子どもは,今はいじめられていないと繰り返すことはなかった。このとき,子どもは体と顔を教師に向けていた。教師は子どものつらさを思いやるような声で,いじめ経験の詳細について確認し,質問していった。知見は以下の通りである。(1)教師が子どもの気持ちを受け止めるとき,子どもは自分の経験や気持ちを語る。(2)教師の気持ちは,体や声の調子などの非言語的行動に表れる。(3)教師の行動は子どもの行動によって影響され,子どもの行動は教師の行動によって影響されている。
著者
太田 勝巳 細木 高志 松本 献 大宅 政英 伊藤 憲弘 稲葉 久仁雄
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.753-759, 1997-03-01
被引用文献数
8 15

定植後から収穫終了まで園試処方標準濃度液で水耕栽培したミニトマトについて,完熟果実の裂果発生時刻と果実横径の日変化および植物体内の水分移動との関係を調査した.<BR>1.夏季に'サンチェリー'の完熟果実250果を対象として,1時間ごとに裂果発生の有無を調査した.その結果,裂果は早朝に多く発生し,とくに午前4時~6時には裂果したすべての果実の43%が裂果した.<BR>2.夏季には'サンチェリーエキストラ',秋季には'サンチェリーを供試して,完熟果実横径の日変化をレーザー式変位センサーを用いて測定した.その結果,両品種,両季節とも早朝(午前6時~8時)に果実横径が増加し,午前中には減少し,午後からふたたび増加した.果実横径の増加は裂果発生の直前か裂果発生直後に大きかった.<BR>3.'サンチェリーエキストラ'の植物体内の水分移動量を茎流センサーを用いて測定した結果,茎と葉柄においては昼間水分の流入が多く,夜間水分の流入は少なかった.果柄においては昼間に水分が果実から流出し,夜間から早朝にかけて果実へ流入していた.<BR>以上の結果から,夜間から早朝にかけて果実内に水分が移動することによって果実の膨張が引き起こされ,果皮が内圧に耐えられなくなり,その結果として裂果が発生していると推察される.
著者
田中 秀数 上田 寛 金道 浩一 太田 仁 宮下 精二 利根川 孝 内野倉 國光 本河 光博
出版者
東京工業大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2001

本研究において,我々は種々の空間構造をもち,スピンの大きさがS=1/2と小さく,量子効果が顕著な量子磁性体を精力的に開拓し,それらが強磁場中で示す新奇な磁気現象を多角的に研究した。以下に代表的な結果をあげる。スピンの対(ダイマー)が構成単位である,S=1/2のスピンダイマー系は磁場中で新奇な量子相転移を起こす。これらの磁性体の基底状態は,有限の励起ギャップをもった非磁性の1重項状態となる。強磁場中では,磁化をもつダイマーの3重項状態が重要になる。ダイマーの3重項はダイマー間の交換相互作用の横成分のために隣の位置に次々と移ってゆき,あたかも粒子のように振る舞う。この準粒子はボース粒子の性格をもちマグノン或いはトリプロンとよばれる。このとき磁場はマグノンの化学ポテンシャルとして,新しい役割を担う。我々はSrCu_2(BO_3)_2を初めとして種々の量子磁性体で,磁化曲線に磁場方向に依らない平坦領域(磁化プラトー)を発見した。磁化プラトーはマグノンの並進運動が抑制されるためにマグノンが周期的に配列するために起こる,量子多体効果である。磁化プラトーではマグノンのウィグナー結晶が形成されていると考えられる。我々はSrCu_2(BO_3)_2のNMR実験によって,実際にマグノンのウィグナー結晶を実証した。これに対して,磁場誘起反強磁性相転移はマグノンの並進運動が優先されるために起こるマグノンのボース・アインシュタイン凝縮(略してボース凝縮)と捉えることができる。これはマグノンの運動量空間での凝縮である。我々はTlCuCl_3の磁場誘起反強磁性相転移を種々の実験で詳細に調べ,理論解析と合わせて,これがマグノンのボース凝縮であることを実証した。本特定領域研究によって,磁性体は強磁場中で「量子力学的粒子の集団」としての性質を強く示す場合があることが明らかになった。これは磁性体の新概念をつくるものである。我々はまた,平成13年度から15年度にかけて国外研究者を交えた公開シンポジウムを3回開催し,平成16年に国際会議「International Symposium on Quantum Spin Systems」を開催した。更に3回の国際会議を協賛した。