著者
中島 映至 太田 幸雄 竹内 延夫 高村 民雄 沼口 敦 遠藤 辰雄
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1998

本研究は、ほぼ当初予定した計画以上の成果をあげて終了した。主な成果としては、(1)船舶用のスカイラジオメーターが全自動で稼動し、観測船白鳳丸やみらいによる観測のみならず日本-オーストラリア間の2つの商船航路において定期観測を実現できた。それによって幅広い緯度範囲においてエアロゾルの気性積算の光学特性が明らかになりはじめた、(2)エアロゾル気候モデルがほぼ完成し、自然起源と人為起源のエアロゾルの放射強制力がシミュレーションできるようになったことが挙げられる。その結果、エアロゾルの一次散乱アルベドがアジアの広域において0.8から0.9と言う低い値であり大きな太陽放射吸収を引き起こしていること、そのために、産業革命以降の人為起源エアロゾルの直接効果による全球平均放射強制力は今まで言われていたものよりもかなり小さく-0.20W/m2程度であることが明らかになった。人為起源の硫酸塩エアロゾルと有機炭素エアロゾルによる冷却効果(日傘効果)の約半分が黒色炭素エアロゾルによる加熱硬化によって相殺されている。また、人工衛星によるエアロゾルと雲の光学的特性のリモートセンシング手法が確立され、1990年の1,4,7,10月の4ヶ月に適用された。その結果、低層の水雲の光学特性がエアロゾル粒子の気柱総数に依存する「エアロゾルによる間接効果」をはじめて全球規模で確認できた。産業革命以降の人為起源エアロゾルが海上で引き起こした間接効果の大きさは-1W/m2程度であると推定される。
著者
太田 博孝 福島 峰子 真木 正博
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.525-529, 1989-05-01
被引用文献数
4

排卵障害に有効な漢方薬における卵巣直接作用のうち, とくにアロマターゼへの影響をラット卵胞を用いて検討した。卵胞はPMSG処理未熟雌ラットから分離した。また卵胞のアロマターゼ活性を阻害する目的で4-hydroxy-4-androstene-3, 17-dione (4-OHA ; 10^<-5>M) を用いた。各卵胞は培養液中で種への濃度 (10〜500μg) の当帰芍薬散, 桂枝茯苓丸, 温経湯, あるいはその生薬成分を加え, 24時間器官培養した。培養液中に4-OHA (10^<-5>M) を添加すると培養液中estradiol (E_2) 分泌量は対照群の38% (p<0.05) まで低下した。同時に上記漢方薬を添加すると, 100, 500μgの量でいずれもE_2分泌を有意に増加させた。このE_2分泌刺激作用がこれら漢方薬の構成生薬のいずれの作用によるかを知るため, シャクヤク, センキュウ, トウキ, ボタンビ, ケイヒにつき検討した。その結果シャクヤクのみがE_2分泌刺激作用を示した。シャクヤクはこれら3種の薬剤に共通に含まれる唯一の生薬であることを考えるときわめて典味深い。
著者
太田 陽子
出版者
聖学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本年度は、昨年度に実施した調査結果を分析し、整理してデータ化することと成果をまとめることに主眼をおいた。研究実施計画に挙げた、以下の1〜3の作業を通して、現在、4として総括を試みているところである。1.構文機能の実態調査昨年度に引き続き、シナリオ集や新聞コーパスを中心に、ハズダ・ニチガイナイ・カモシレナイの実例を収集・分析し、各表現の使用文脈と機能を具体的に記述、リスト化した上で、相互比較を試みた。2.教材分析これも昨年度に引き続き、主要教材(初級教科書15種・中〜上級教科書20種・文法書27種)の例文、練習、解説、場面設定を観察し、その傾向をまとめるとともに、文脈的観点(発話者や聞き手の資格、発話意図、場面設定など)の欠如による問題点などを指摘した。3.調査結果の分析昨年度に日本・中国・韓国・ベトナム・マレーシアにおいて実施した「文型使用意識調査」の結果について、それぞれの回答を、学習者の会話作成例、および意見文における運用例としてリスト化した上で、(1)会話場面での運用における問題点、および(2)文章構成上の位置づけの問題点という観点から分析し、現行の日本語教育における指導に欠けている視点を模索した。4.非断定表現の文脈化と教材化を通した文法記述方法の提案上記の1〜3の作業を通して得た結論を基に、現行教材や教育現場の問題点を補い、学習者の運用に不可欠な文脈情報を踏まえた文法の記述方法の提案を、現在試みている。
著者
太田 重久 鈴木 博孝 鈴木 茂 福島 靖彦 喜多村 陽一 勝呂 衛 山下 由起子
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.1103-1104, 1987-09-25

東京女子医科大学学会第271回例会 昭和62年6月11日 弥生記念講堂
著者
田中 広樹 太田 岳史 檜山 哲哉 Maximov Trofim C.
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.259-267, 2000-08-16
被引用文献数
1

北方落葉樹林における光合成・蒸散特性を明らかにするために, シベリアタイガのカラマツ林樹冠上でのCO_2・H_2Oフラックス観測を行った。開葉前にはフラックスは検出されず, 夏期には正午または正午直前にピークを持つ日周変化が見られた。高温乾燥による光合成抑制は見られたが, 蒸散抑制は明らかではなかった。また, 光合成・蒸散活動は開葉の時期に急激に活性化し, 夏期の終りに向かって緩やかに減衰した。更に, 観測されたフラックスから気象環境の季節変化の効果を取り除き, その時点での光合成・蒸散特性を評価するために, 樹冠単層モデルを用いて光合成・蒸散特性を表現する最小群落抵抗, クロロフィル密度, 光量子捕捉率などのパラメータを抽出した。パラメータの変化から, 開葉期の特性の変化が明瞭に表現された。蒸散活性と光合成活性には開葉後も2週間程度の成熟期があることが示唆され, クロロフィル密度のような量的特性は比較的早く定常に達することが示唆された。
著者
田中 延亮 蔵治 光一郎 白木 克繁 鈴木 祐紀 鈴木 雅一 太田 猛彦 鈴木 誠
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
東京大学農学部演習林報告 (ISSN:03716007)
巻号頁・発行日
vol.113, pp.197-240, 2005

東京大学大学院附属千葉演習林の袋山沢試験流域のスギ・ヒノキ壮齢林において,樹冠通過雨量と樹幹流下量の研究をおこなった。その結果,スギ林の一雨降水量(P )と樹冠通過雨量(Tf )の関係はTf = 0.877P –2.443で,またヒノキ林ではTf = 0.825P –2.178で表すことができた。全観測期間の総降水量に対するTf の割合はスギ林で79%,ヒノキ林で74%であった。また,同じ試験地で行われた単木の樹幹流下量の研究成果を考慮して,一雨降水量と上層木の樹幹流下量(Sf )の平均的な関係を推定した結果,スギ林でSf =0.064P –0.447,ヒノキ林ではSf =0.114P –0.798という関係式が得られた。また,Sf の全期間の総降水量に対する割合は,スギ林で5%,ヒノキ林で10%であった。これらのTf とSf の集計の結果,6ヶ月ないしは1年間の降水量に対する樹冠遮断量の割合は,通常,スギ林において17%前後,ヒノキ林において16-18%前後であった。本報で得られたTf やSf の値や回帰式の係数は,スギ・ヒノキ林や他の針葉樹で得られている既往の報告値と比較され,スギ・ヒノキ壮齢林におけるTf やSf の特徴を整理することができた。また,スギ・ヒノキ両林分の下層木の樹幹流下量や調べたが,それらは降水量の1%未満であることがわかった。これらは従来の研究結果と比較され,滋賀県のヒノキ・アカマツ混交林やボルネオの低地熱帯林の下層木の樹幹流下量の特性と比較された。さらに,下層木による樹冠遮断量の算定を試みたが,これらの降水量に対する割合は多く見積もっても,スギ林で0.3%程度,ヒノキ林で1.2%程度の微小な量であり,本報の観測システムで正確に検知できていたかどうかについて再検討する必要性が示された。いずれにせよ,本報の観測対象としたスギ・ヒノキ壮齢林の樹冠における降水の配分過程に対する下層木の影響は,非常に小さいことが確認された。
著者
佐渡島 紗織 太田 裕子 冨永 敦子 ドイル 綾子 内田 夕津
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

早稲田大学における「学術的文章作成」授業(主に初年次生対象、領域横断内容、e ラーニング、大学院生が個別フィードバックする、全8 回1 単位)の成果調査を行った。三観点五段階の学術的文章評価ルーブリックを開発し、授業を全回視聴し課題をすべて提出した履修者707 人の、初回提出文章と最終回提出文章を評価し差を調査したところ、文章作成力が有意に伸びていることがわかった。また、付与されたコメントを分類するためのコードも開発し、コメントを分類した。文章作成力を伸ばした履修者とあまり伸びなかった履修者との間で、付与されたコメントの種類に有意差を認めることはできなかった。
著者
岩村 正彦 太田 匡彦 笠木 映里
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

1.本研究は、地方公共団体(および地方レベルの公法人等)に焦点を当てて、医療制度、公的医療保険、公的扶助、社会福祉等の社会保障各領域に関する地方公共団体等の役割とその変容を分析し、地方公共団体等の社会保障に関する役割の構築について、法的に見て合理的といいうる方向性を模索するものである。2.本研究の柱のドイツ、フランス両国の公的医療保険法制、公的扶助法制および社会福祉法制(高齢者の介護サービス・障害者福祉を含む)について、その沿革・動向や近年を中心とした制度改革に関するわが国の既存の業績(図書、雑誌論文、各種資料)および前記両国の文献・資料を収集した。また、近年のわが国の公的医療保険法制、生活保護法制および社会福祉法制の政策・法制度の動きを跡づけるために、これらに関する図書・論文・資料等の収集作業を行った。3.ドイツ・フランス両国について現地での調査・資料収集を実施した。ドイツについては太田(研究分担者)が、フランスについては笠木(研究分担者)・永野仁美(研究協力者)が、資料収集および行政担当者、研究者等との面談を行った。4.収集した国内外の文献・資料などの整理、その一部のデジタル・データ化を行った。5地方公共団体(福岡県及び福岡県・北海道の市)を訪問し、医療制度・医療保険制度の改革への取り組み、生活保護、とりわけ自立支援プログラムに関する市の対応状況について、聞き取り調査をし、あわせて資料を収集した。6以上の研究の成果をもとに、研究代表者、研究分担者および研究協力者(永野)がそれぞれ論文・著書を執筆した。
著者
太田 至 内海 成治 佐藤 俊 北村 光二 作道 信介 河合 香吏 内海 成治 佐藤 俊 北村 光二 作道 信介 河合 香吏 曽我 亨 湖中 真哉 内藤 直樹 孫 暁剛 中村 香子 波佐間 逸博 佐川 徹 白石 壮一郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は、第一に、アフリカの乾燥地域に分布する牧畜社会の人々が歴史的に培ってきた知識や技術、社会関係や文化など(「ローカル・プラクティス(LP)」)を再評価すること、第二には、この社会の開発=発展のためにLP を活用する道を探究することである。東アフリカの4カ国、12民族について現地調査を実施し、人々がLPに基づきながら激動する生態・社会環境に対処している様態を解明し、LPが開発=発展に対してもつ潜在力を総合的に再評価し、それを援用する道に関する考察を深めた。
著者
吉野 博子 北村 英子 星野 守利 小松崎 聡 竹内 憲 太田 宏平 大澤 美貴雄 相川 隆司 村上 博彦 山根 清美 岡山 健次 小林 逸郎 武宮 敏子 丸山 勝一
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.1022-1022, 1983-09-25

東京女子医科大学学会第253回例会 昭和58年5月19日 東京女子医科大学本部講堂
著者
横田 雅弘 坪井 健 白土 悟 太田 浩
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

平成16年度は、アジア太平洋諸国7ヶ国で留学生政策に関する調査を行い、75人にインタビューした。その記録は、中間報告書「アジア太平洋諸国の留学交流戦略の実態分析と中国の動向」として平成17年3月にまとめた。この成果については、独自に立ち上げたホームページにおいても全文を掲載している。アドレスは以下の通りである。http://www.george24.com/~yoko39/publications.htm研究成果の発表としては、平成17年5月の異文化間教育学会年次大会でポスターセッションを行ったほか、平成17年7月のJAFSA(国際教育交流協議会)サマーセミナー基調講演、平成17年12月の早稲田大学21世紀COEプログラム第4回国際公開シンポジウム、平成18年3月のCIES比較国際教育学会50周年記念大会(ホノルル)、平成18年6月の中央教育審議会での参考意見提供、平成18年8月JAFSAサマーセミナーの分科会等で発表した。平成17年から18年にかけて、全国四年制大学に対して国際化と留学生政策に関する質問紙調査を行なった。50.5%という高い回収率を得て、その結果を最終報告書「岐路に立つ日本の大学〜全国四年制大学の国際化と留学交流に関する調査報告〜」としてまとめた。データからは、国際化のビジョンやミッションを持っている大学が極めて少ないこと、国際部門の専門職育成に熱心ではないこと、国立大学が国際化に熱心であり公立大学はあまり関心をもっていないこと、オフショア・プログラムがアジア諸国に比べて全く低調であること、留学生を日本社会の高度人材として捉えていないこと、受入れと送出し国の関係が大きく変化していることなどが判明した。激動するアジアの留学交流の渦の中で、日本はどのような視座でこれを見極め、どのような政策をとっていくべきなのかに関して、何がしかの参考資料を提供できたと考える。
著者
太田 安彦 清水 淳三 小田 誠 林 義信 OSARI Ayumi 梶田 剛司 渡辺 洋宇
出版者
The Journal of the Japanese Association for Chest Surgery = 日本呼吸器外科学会雑誌
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 = The journal of the Japanese Association for Chest Surgery (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.539-544, 1996-05-15
参考文献数
16
被引用文献数
5

最近われわれは, 稀な胸腺腫瘍の2例を経験した.症例1は72歳, 女性の胸腺に発生した悪性黒色腫であった.悪性黒色腫の胸腺発生例は本邦報告史上2例を認めるのみであり, 本例は第3例目に相当した.腫瘍は6.5×5.5×3.5cm大の被包化された充実性腫瘍であった.周囲組織への浸潤はなく, 周囲のリンパ節に転移はなかった.原発巣不明黒色腫の転移の可能性は否定しきれないが, 胸腺原発を最も疑った.正常胸腺を含めて腫瘍を摘出した。術後5ヵ月を経て再発なく生存中である.症例2は21歳男性に発生した胸腺脂肪腫であり, 周囲の脂肪組織を含めて腫瘍を摘出した.摘出腫瘍の重量は390gであり, 重症筋無力症の合併はなかった.
著者
丸 浩一 藤井 雄作 太田 直哉 上田 浩 吉浦 紀晃 田北 啓洋
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では, PCとカメラを活用して市民が身の回りを確実に見守る社会の実現を目指すコンセプトと,暗号化保存によりプライバシーの侵害を回避するためのコンセプトを合わせた新たな防犯カメラシステムのコンセプトの普及を目的とした技術開発および実験を行った.その成果として,プライバシー保護機能を付与した様々な防犯カメラシステムを開発し,本コンセプトの適用形態を大幅に拡大した.また,社会実験を通じた検証を行った.これらの活動により,本コンセプトの大規模な普及への足掛かりを得た.
著者
太田 光雄 宮田 繁春
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会技術報告 (ISSN:03864227)
巻号頁・発行日
vol.15, no.30, pp.1-8, 1991-05-24

超音波B-モード画像上には、複雑な斑紋状のパターン(スペックル・パターン)が現われる。このスペックル・パターンを統計信号処理の手法により解析しておくことは超音波画像診断の意味からしても重要なことである。本報告では、生体内の秩序・無秩序部分から発生したスペックル画像のメカニズムを、ShannonのN次元信号空間内に於ける酔歩モデルとして捉え、新たにHankel変換型特性関数を導入することにより、各要素酔歩ベクトルの合成に対する揺らぎ分布を理論的に導く。更に、これが公知のRay1eigh分布、Rician分布をスペシャル・ケースとして内包することを証明した後、実験的な確認をも行なった。
著者
粟生田 友子 川里 庸子 菅原 峰子 櫻井 信人 長谷川 真澄 瀧 断子 鳥谷 めぐみ 太田 喜久子 小日向 真依 白取 絹恵
出版者
新潟県立看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

環境因子に対して高齢者が示す反応からせん妄発症リスクを予測し、環境による発症リスクを軽減する方法を検討することを目的に、入院中の高齢者のせん妄発症に関わる物理的・人的環境因子に対する高齢者の認知の様態を明らかにし、せん妄発症群と非発症群の比較関連検証を行った。結果、物理的・人的環境に関して2群間に差が認められた項目は<部屋の位置><看護師の訪問頻度><緊張感を助長する検査の有無><他の患者との交流><不安を助長するものがある>であった。
著者
小澤 朗人 西東 力 太田 光昭
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.161-168, 1999-11-25
被引用文献数
5 16

施設トマトのマメハモグリバエに対するイサエアヒメコバチ<i>Diglyphus isaea</i>の単独放飼による密度抑制効果を小規模な温室を用いて検討した.試験は,2月から5月の春期(試験1)と5月から7月の初夏期(試験2),6月から8月の夏期(試験3)の3回行い,試験3では細かな目合いの防虫網を張って隔離条件とした.<br>1. 試験1では,寄生蜂の雌成虫0.13頭/株を1週間間隔で5回放飼した.同様に試験2では0.19頭/株を8回,試験3では0.15頭/株を3回放飼した.<br>2. その結果,寄生蜂放飼区におけるマメハモグリバエ幼虫密度は,無放飼区と比較して,試験1では約1/4,試験2では1/36,試験3では約1/10に抑制された.<br>3. 放飼区におけるマメハモグリバエ幼虫の死亡率は,試験1では90.9%,試験2では98.4%に,試験3では100%に達した.<br>4. 放飼区における空の潜孔密度は,試験1では無放飼区の約1/6以下の1.3個/葉,試験2では約1/16の2.2個/葉,試験3では約1/6の3.4個/葉であった.<br>5. 放飼区における蛹トレイへの落下蛹の総数は,試験1では無放飼区の約1/10,試験2では約1/200であった.また,試験3における黄色粘着トラップへのマメハモグリバエ成虫の誘殺数は,放飼区は無放飼区の約1/20であった.<br>6. 寄生蜂の種類とその寄生率は,試験1ではイサエアヒメコバチのみが確認され,その寄生率は放飼区では86.5∼92.3%,無放飼区では0∼2.1%であった.試験2では,イサエアヒメコバチ以外の土着種が優占種となり,イサエアヒメコバチを含めたこれらの寄生率は38.9∼86.7%であった.一方,無放飼区は0%であった.試験3では,イサエアヒメコバチのみが確認され,7月下旬の放飼区の寄生率は95.1%,無放飼区は88.2%であった.<br>7. 以上から,春から夏にかけての高温期における施設トマトのマメハモグリバエに対するイサエアヒメコバチの実用性は高いことが示唆された.
著者
太田 清久 AMIN Nurul Md AMIN Nurul Md.
出版者
三重大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

現在、バングラディッシュなどの一部の地域で問題となっている砒素中毒症は、主に地下水の砒素汚染に原因がある。したがって、バングラディッシュで主に燃料として利用されており、廃棄物である稲、籾殻、使用済みの茶葉、ココナッツの殻などを細かく粉砕してカラムに充填し、3価と5価のヒ素の吸着除去を試みた。ヒ素汚染水の浄化は、これまで様々な手法が試みられてきたが、簡便で実際にバングラディッシュの実用にあった手法はほとんどなく、現在も汚染した地下水を飲料用として飲み続けている状況である。本手法は、バングラディッシュで手に入れることができる廃棄物を利用して吸着除去を試みた。その結果、稲がヒ素除去を行うために有効なろ過材であることを見出した。現在、3価のヒ素の除去は比較的難しいため、5価に酸化してから除去処理を行っているが、本吸着除去では、3価のヒ素も5価と同様に吸着除去できることが分かった。さらに、それらに熱的処理を施すことにより、活性炭のような炭化処理を行い、除去効率の向上を図った。最終的には、吸着力の非常に高い浄化材として熱処理した籾殻が、バングラディッシュなどで問題となっているヒ素汚染された地下水の浄化に有効であることが分かった。酸化剤などを用いた処理を行うことなく、直接浄化処理を行って、ヒ素を取り除く手法を開発することができたため、砒素中毒症の改善が期待される。
著者
太田 賢 渡辺 尚 水野 忠則
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.618-619, 1997-09-24

携帯電話, PHSなどのワイヤレス通信には, 帯域幅が小さい, フェージングなどによるバースト誤りから転送の途切れが起こりやすい, 品質の変動が頻繁に起こるといった問題があり, 音声, 映像, 画像などのマルチメディア通信を実現するにはこれらを解決する必要がある。これに対し我々はこれまで, マルチメディア情報の各シーンの意味的重要度に基づく選択的マルチメディアアクセス方式SMAP (Selective Multimedia Access Protocol)を提案してきた。本稿では開発したSMAPのプロトタイプソフトウェアとその利用法について述べる。