著者
小川 淳司
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1617, pp.60-63, 2011-11-21

「名選手、必ずしも名監督ならず」という格言がある。ところが、実績や人気がなければプロ野球の監督にはなかなか就任できないという日本球界の現実もある。それを思えば、小川淳司は従来の監督像からは懸け離れた存在と言える。 「選手としての実績がない分、最も一般の人に近い感覚を持っている」。
著者
北條 理恵子 坂本 龍雄 黒河 佳香 藤巻 秀和 小川 康恭
出版者
独立行政法人 労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.51-56, 2011 (Released:2011-09-30)
参考文献数
30
被引用文献数
1

室内空気中の化学汚染物質による健康障害と考えられる,シックハウス症候群(SHS)と化学物質過敏症(CS)の発症や増悪には「におい」が関与することが報告されている.しかしながら,今までに室内空気汚染物質の健康影響を「におい」自体からとらえた実験研究はほとんどない.今後,労働衛生の重要な課題として不快な「におい」発生の予防と対策が必要である.我々は,職場で問題となる揮発性有機化合物(VOCs)および真菌由来揮発性有機化合物(MVOCs)の「におい」に焦点をあて,「におい」そのものが引き起こす健康影響を実験動物により検討する嗅覚試験法の確立を計画している.本稿では,近年問題となっている室内空気汚染物質による健康影響について解説したのち,嗅覚試験系の確立のため,我々が開発した基盤的な試験法を紹介する.
著者
小川 裕子 林 希美 矢代 哲子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.64, 2008

-目的- 近年の少子化の進行や児童虐待の増加傾向の中で、文部科学省では中・高校生の保育体験学習を重視しているが、家庭科の授業時間数の削減や教師の多忙さのために、特に高等学校における保育体験学習の実践は多くない。また、保育体験学習に関する先行研究によって、保育学習の意欲が高まること、乳幼児に対する感情が良くなること、自己省察が出来ること等の成果が明らかになっているが、これらの多くは体験そのものによる成果である。本研究では、静岡県立高等学校の全校で実施されている「高校生保育・介護体験実習」の実態から、学習の成果が最も高まると考えられた家庭科の保育学習の一環として保育体験学習を実践する。この保育体験学習では、乳幼児理解と共感性を育てることを目標として、事前指導・体験・事後指導を体系的に計画した。この体験学習を実践することによる学習者の学びを明らかにすることによって、保育体験実習のあり方について示唆を得ることを目的とする。-方法- 静岡市立S高等学校において、必修家庭科(家庭一般)保育学習(2007年4~7月)の中で、保育体験学習を実践する。事前指導2時間(1時間目:体験先の概要、諸注意、グループ編成など。2時間目:乳幼児との会話や関わり方のアドバイス、ワークシート「こんな時どうする?」、保育体験の個人目標の設定)、保育体験2時間(体験90分と感想書き15分)、事後指導3時間(1時間目:自分達の体験の様子についてDVDを視聴し、感想を一文ずつ付箋に記入。2時間目:グループ毎に付箋を集め分類して、模造紙1枚に貼り込んでまとめる。3時間目:グループ毎にまとめた模造紙をもとに発表する)である。 以上の保育体験学習における、学習者の学びを明らかにするために収集したデータは、学習者(2クラス、計78名)一人ひとりの1.中学校での保育体験の有無、2.乳幼児への気持ち(体験前、体験直後、体験1ヶ月後)、3.乳幼児についての考え(2と同時期)、4.体験の目標、5.体験直後の感想(目標について分かったこと、乳幼児とどのような関わりをしたか、感想など)、6.事後指導後の感想文、である。-結果- 計画・実践した保育体験学習で目標とした、乳幼児理解と共感性を育てるという二点について、以下のことが明らかになった。まず、乳幼児理解については、5.体験直後の感想文と6.事後指導直後の感想文の記述内容の変化(量的に増加)から、今回計画した事後指導(3時間)の効果が明らかになった。 次に、共感性の育ちについては、実践した2クラスの内1クラスで、たまたま事前指導の2時間目の時間が確保出来ず、1時間目の間に各自に体験の目標を立てさせて体験を行ったという変更があったため、このクラスをAとし、計画通り2時間の事前指導を行ったクラスをBとして、A,Bクラス間で、生徒たちの設定した4.体験の目標がどう異なるか、また、3.乳幼児についての考え(体験直後、体験1ヶ月後)、5.体験直後の感想(目標について分かったこと、乳幼児とどのような関わりをしたか、感想など)、6.事後指導後の感想文といった各データにおける乳幼児との関わりに関する記述内容に差異があるのかに注目した。その結果、まず、事前指導の2時間目に予定していた乳幼児との会話や関わり方についてアドバイスや「こんな時どうする?」と考える機会を実施できたBの方が、体験の目標として「関わり」に関するものを立てた生徒が圧倒的に多い結果となった。体験後の関わりについての記述内容については、目標で認められた程の著しい差は認められないものの、共感的な関わりが出来たと認められる生徒の数は、同様にBの方が多い結果であった。
著者
小川 雅之 細田 正洋 福士 政広 小柏 進
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
Radioisotopes (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.313-320, 2008-05-15
参考文献数
17

東京では通勤手段として地下鉄の利用率が高いことから,地下鉄車内の線量率を把握しておくことは保健物理学的に重要である。そこで,都内の地下鉄12路線について空間γ線線量率の測定を行った。その結果,最大値(36.5nGy/h)は最小値(23.3nGy/h)の1.6倍であった。また,車内の線量率は,車外より33%低い値であった。更に,地下鉄線内の線量率は深さに依存せず,地下構造物やホームの構造物中に含まれる天然放射性核種濃度に依存すると考えられた。
著者
吉添 衛 服部 宏充 江間 有沙 大澤 博隆 神崎 宣次 久木田 水生 小川 祐樹
出版者
ヒューマンインタフェース学会
雑誌
ヒューマンインタフェース学会論文誌 (ISSN:13447262)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.501-512, 2021-11-25 (Released:2021-11-25)
参考文献数
25

We are now faced with the wall of the diversity of values. We are often required to consider or respect the values of other people though, it is not easy to sense them since we tend to think within our scope of knowledge, experience, and imagination. We have worked on how to exchange values and achieve a synergetic effect among people. In this paper, we are presenting our prototype system, called AIR-VAS, aiming to support becoming aware of values in group discussion. AIR-VAS has been developed as the system which recognizes characteristic opinions of a group and shares them among all engaging groups on the discussion. The recognized and shared opinion is based on the values of the people of the group. Through the sharing of opinion, people can know the different viewpoints on the issue of the current discussion, so that AIR-VAS can provide stimulation to people for idea generation. We have developed AIR-VAS on the approach that visualizing statements, which are presented during a discussion, as the word co-occurrence network. We implemented opinion sharing as the process of the network re-construction including presented sub-network as an opinion of a certain group. According to the experimental usage of the developed system, we analyzed the relationship between discussion and visualized information, and discuss what information gives awareness.
著者
亀井 直哉 田中 敏克 三木 康暢 祖父江 俊樹 小川 禎治 佐藤 有美 富永 健太 藤田 秀樹 城戸 佐知子 大嶋 義博
雑誌
第51回日本小児循環器学会総会・学術集会
巻号頁・発行日
2015-04-21

【背景】純型肺動脈閉鎖(PA/IVS)において、2心室修復を目指して肺動脈弁に介入する方法として、カテーテル治療と外科治療がある。【目的】PA/IVSに対する初回介入として、経皮的肺動脈弁形成術(PTPV)とopen valvotomyでの治療経過の相違を検討する。【対象・方法】2006年から2014年にPA/IVSでの初回介入としてPTPVをtryした10例中、不成功に終わった4例(1例は右室穿孔でショック)を除く6例(P群)と、open valvotomy6例(S群)の経過を後方視的に検討した。【結果】両群間で介入時体重、右室拡張末期容積(%N)、三尖弁輪径(%N)、肺動脈弁輪径(%N)、術後追跡期間に有意差はなかった。P群の使用バルーン径/肺動脈弁輪径比は100-125%であった。S群の1例で、三尖弁形成と体肺動脈短絡術が同時に行われていた。術後ICU滞在日数、挿管日数、PGE1投与日数に有意差はなかったが、入院日数はP群で有意に短かった(P=0.032)。肺動脈弁に対する再介入は、P群で2例にPTPVを3回、S群で3例にPTPVを4回、1例にMVOPを用いた右室流出路形成と三尖弁形成が行われていた。肺動脈弁への再介入の発生率と回数には有意差はなかった。術後中等度以上の肺動脈弁逆流は両群とも認めなかった。根治術到達ないし右左短絡の消失例は、P群で4例、S群で3例であり、残りの症例でも右室の発育がみられた。【結論】PA/IVSに対する初回介入として、PTPVとopen valvotomyでは、その後の肺動脈弁への再介入や弁逆流の程度に差はなかった。RF wireの導入により今後PTPV try例が増加すると予想されるが、右室穿孔などによる急変リスクは依然としてあり、これに速やかに対応できる体制の整備は重要である。
著者
五島 史行 堤 知子 小川 郁
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.116, no.8, pp.953-959, 2013-08-20 (Released:2013-10-09)
参考文献数
17
被引用文献数
4 4

片頭痛関連めまいは通常型の片頭痛とめまいが共通の病因によって生じると考える疾患単位として提唱されたものである. 原因不明の反復性めまい患者には片頭痛関連めまいが含まれていると考えられる. 本邦における片頭痛関連めまいの臨床像を明らかにするため, 外来めまい患者を対象に検討を行った. 片頭痛関連めまいの診断基準として, めまい発作の反復, 国際頭痛分類の診断基準を満たす片頭痛を有するか, 既往がある, めまい発作に同期して, 片頭痛の症候 (片頭痛性頭痛, 音過敏, 光過敏, 閃輝暗点) があったことがある, 一側性の関連を想定させる難聴がない, 他の疾患が除外できる, を用いた. 553名のめまい外来患者のうち片頭痛関連めまいと診断した症例は46例 (8.3%) であった. 典型的な片頭痛関連めまい患者の臨床像は, 30~40台の女性であり, めまいを発症する以前から片頭痛を発症し, 1~10年前から年に一度程度の, 頭痛を随伴した1~24時間程度続く回転性+浮動性のめまいを認める症例である. 片頭痛関連めまいの診断基準に難聴のある症例を含めるかどうかについてはメニエール病との鑑別の問題もあり, 議論がある. めまいを反復し難聴を認め, 片頭痛を合併した症例の扱いについては今後の検討が必要である.
著者
永田 武 等松 隆夫 小川 利紘
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
東京大学宇宙航空研究所報告 (ISSN:05638100)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.918-927, 1966-07

K9M-9ロケットによる昼間大気光,酸素原子6300Å線およびN_2^+イオンの3914Å帯の測定結果とその理論的解釈.測定は高度78kmないし335kmの間でおこなわれた.6300Å線の全輝度は13KRであったが,そのうと5.5KRは太陽紫外によるO_2シューマンルンゲ解離により,0.55KRはO_2^+およびNO^+イオンと常子の解離再結合によりまた,0.03KRはO原子の電子による熱励起により発輝されたものとおもわれる.このほか280kmより高処に別の6300入線の放射源があるようである.一方O(^1D))のO_2(X^3-Σ_0^-)の非活性化の大きさは200km以下の高度ではいちぢるしく大きく,その反応速変係数は2×10^<-10>cm^3/secと推定された.3914Å帯の全輝度は6.5KRであったが,330kmで3.2KRまで減少した.この発輝機構を太陽放射のN_2^+イオンによる螢光散乱として,N_2^+の密度の高度分布を求めた.またN_2^+イオンの電離層内での消失機構について論じた.
著者
小川 将也
出版者
日本音楽学会
雑誌
音楽学 (ISSN:00302597)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.106-121, 2020 (Released:2021-03-15)

本稿は、グィド・アドラーの著作『音楽史の方法』(1919年、以下『方法』)を主たる対象に、彼の音楽学体系内にその座を与えられる「音楽美学」とは〈心理学的美学〉であることを示すとともに、音楽様式の「内容分析(Inhaltsanalyse)」と〈心理学的美学〉との接点を、特にオーストリア哲学の文脈から読み取る試みである。 従来のアドラー研究は、彼の美学批判に繰り返し注目してきた。たしかに、論文「音楽学の範囲、方法、目的」(1885年、以下「体系論文」)や『方法』内には、美学理論が思弁的であり厳密な根拠に欠ける点を批判する記述がある。しかし、両著作中に掲載された音楽学体系図には、音楽学の体系的部門の一分野として「音楽美学」が記されていることも事実であり、アドラーの美学に対する消極的姿勢を強調するのは一面的であるように思われる。本稿では、これまで個別に論じられてきた、美学、心理学そしてオーストリア哲学に対するアドラーの見解を引用テクストと照合しながら総合的に検討し、「内容分析」をこれらの結節点として捉える。 はじめに、アドラーによる美学批判を確認したのち、彼が体系内に認める「音楽美学」とは〈心理学的美学〉を指していることを明らかにする(第1節)。続いて、「内容分析」に関連して、クレッチュマーの音楽解釈学、ディルタイの解釈学、そしてリップスの感情移入理論に対するアドラーの見解を分析する(第2節)。最後に「内容分析」と〈心理学的美学〉との接点を、ブレンターノ学派に属するクライビヒの論文「芸術創造の心理学への寄与」(1909)を手掛かりに考察する(第3節)。以上の考察を通じて、アドラー思想と心理学説との布置連関の一端が明らかになるとともに、歴史的心理学と記述的心理学との潜在的対立が彼のテクスト内に見出される。
著者
小川 聡 山口 和重 夏山 謙次 西田 育功
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.536-542, 2019-05-15 (Released:2020-05-27)
参考文献数
10

症例は55歳男性.頻発する単源性心室期外収縮(PVC)と心エコー図で左心機能低下と左室拡大を認め,頻発性PVCに対するカテーテルアブレーション目的で入院した.12誘導心電図は左脚ブロックパターン 下方軸 移行帯はV4で,右室流出路(RVOT)起源のPVCと診断された.右室内のmappingでは早期性および良好なpace mapが得られず,右冠尖(RCC)のmappingでPVCのonsetから22 msec先行するprepotentialを認め,同部位の通電によりPVCの完全消失に至った.12誘導心電図はRVOT起源のPVCと予測されたが,本例はRCC起源のPVCであった.12誘導心電図によるPVCの局在診断の文献は散見されるが,RVOT起源PVCとRCC起源PVCの鑑別が困難な場合がある.RVOT起源と考えられるPVCであっても,先行するpotentialが同定できない場合は,すみやかにRCC内のmappingを行いprepotentialを同定する必要性がある症例を経験したため報告する.
著者
小川 豊生
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.47, no.7, pp.10-23, 1998

『渓嵐拾葉集』『山家要略記』に集成される叡山「記家」のテキスト群、伊勢神道における「数百巻」にもわたる「神宮秘記」や、外宮調御倉に収蔵されていたという「神代秘書十二巻」のテキスト群、そうして、『麗気記』に結実する両部神道のテキスト群。鎌倉後期に全面展開する神話制作の動向は、その根底にいずれも<偽書>の存在ぬきにしては語れないものがある。本稿は、これら総体の動向を視野に入れつつ、なかんずく『麗気記』の中枢に導入された偽書をめぐる諸問題について解明する。
著者
小川 豊生
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.1-10, 1987

おそらく、表層的な文芸ジャンルの変動に先だって、ことばの分布秩序の解体や詩的言語の基層の変動があったはずだ。それを何よりも敏感に感受したのは当時の歌学という世界においてであったろう。院政期という説話集が多量に産出されてくる時代の背後で、まず一語一語をささえる本説あるいは物語化が精力的に続行されていた事実に、もっと注目すべきであろう。院政期に見られる<本文>という語の内実を検討することによって、それら本説の展開の様相を把握してみたい。
著者
梶村 政司 森田 哲司 政森 敦宏 小川 健太郎 児玉 直哉 小林 功宜 山本 真士 奈良井 ゆかり 濱崎 聖未 田中 亮
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.GbPI1469-GbPI1469, 2011

【目的】<BR> 管理者の業務には,目標管理や人材育成,時間管理,情勢分析等がある。その中でも,人材(部下)育成は部署内の業務遂行上効率化に影響を与える内容である。<BR> そうした人材育成の最終目標は部下の自律的な創意工夫,創造力の醸成が可能になることであり,現場においてはどんな指導・教育ができるだろうか。一般的には,感性を磨くという,非常に抽象的で曖昧な表現で終わる指導書が多い。<BR> そこで,今回当科で日常的に行っている「気づく力」を身につけるための方法を紹介し,その結果を業務改善の観点から考察したので報告する。<BR><BR>【方法】<BR> 当科ではスタッフ8名が,平日勤務の朝5分程度の時間を利用して業務内容を中心に「気づき」(可視化トレーニング)の発表を行っている。その「気づき」の内容は,職員によって偏りがあるか明らかにするために,まず全スタッフ合意の下で分類した5つのカテゴリー(リスク,連携,運用,サービス,整理)と個人属性(性別,経験年数)から構成される分割表を作成した。そして,カイ2検定を行ってそれらの関連性を分析した。調査期間は,2009年6月から2010年9月までの1年3ヶ月,315日間である。<BR> この取り組みによる業務改善の判定は,科内におけるインシデント,アクシデント発生件数と,患者からの「苦情件数(ご意見箱)」を指標に用いた。<BR><BR>【説明と同意】<BR> スタッフには,今回の研究目的を説明した上で,発言内容をデータとして使用する許可を得た。<BR><BR>【結果】<BR> スタッフの構成は,男性PT5名,女性OT2名,女性の助手1名であり,経験年数10年以上5名,それ以下3名である。管理者と中途採用者は,除外した。<BR>期間中の「気づき」の総件数は313件で,カテゴリー別内訳と発言率は,リスク42件(13%),連携25件(8%),運用127件(41%),サービス86件(28%),整理33件(10%)であった。各カテゴリーの発言数と職員の性別との関連についてカイ2検定を行ったところ,p=0.435で有意な関連はなかった。また,各カテゴリーの発言数と職員の経験年数(10年以上もしくは10年未満)との関連についても有意でなかった(p=0.991)。<BR> 科内インシデント発生数は,全体で14件(院内1,697件,調査前年4件),2009年7件,今年3件であった。内容は転倒11件,人工股関節脱臼2件(年間300症例),熱傷1件。アクシデントは2009年に発生した熱傷の1件(院内40件)であった。また,苦情件数は,6件(院内508件,調査前年4件),2009年2件,今年0件であった。内容は,リハ開始時間やスタッフの接遇面に対する不満内容が多かった。これらの結果から,インシデント発生数と苦情件数は「気づき」の発表を開始した翌年から減少していることが示された。<BR><BR>【考察】<BR> 今回の研究ではスタッフ間の性別,経験年数に「気づき」に関してカテゴリーに有意な差はなかった。<BR>この内容で最も多かったカテゴリーは直接業務の「運用」であり,日常診療の中で身近に感じる問題であることから,顧客(患者)に影響を及ぼしやすい部分ほど敏感になっていることが伺えた。 <BR> 一方,最も少ないカテゴリーは間接業務の「連携」ということであった。これは,他部署を介する機会に遭遇した時の問題であるため,気づき難かったことが推察される。<BR> リスク面においては,発言率13%と予想よりも低い結果であった。これは,インシデントやアクシデントの科内における発生件数の低さが影響したと考える。すなわち,リスクに関しては日常より常に「即改善」を実行し,安全で安心な診療が実行されているためと考える。<BR> また,患者サービスにおいてもリスクと同様に,苦情件数が少数のために発言も少なかったと推測する。<BR> こうした科内のリスク回避の取り組みを航空業界では, Crew Resource Management(CRM)「何か気づいたことや気になったことがあれば口に出す」という教育で行っている。そこで当科が実施した「可視化トレーニング」は,CRM同様に情報を共有化し即断即決を行うことでリスクの芽は小さいうちに排除する,という効果の現れと考える。<BR> この「可視化トレーニング」に対するスタッフの感想は,自ら行った業務改善やリスク回避の指摘などが,すぐに解決されることに喜びを感じる,という声を聞いている。これは「気づき」による人材育成の目的に挙げている,スタッフのモラル向上,信頼感の醸成,関係者とのコミュニケーション,スタッフの満足感など,人間性尊重の側面を向上させる点において非常に効果的であったと思われる。<BR> 今後は,個人発言の特性(偏り)を平準化した「気づき」に対する指導を行い,より一層の効率的で安心・安全な業務運営に役立てる方針である。
著者
若園 吉一 小川 輝繁
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.138, 1968-06-15 (Released:2018-11-08)