著者
黒原 玄弥 小川 景子
出版者
日本生理心理学会
雑誌
生理心理学と精神生理学 (ISSN:02892405)
巻号頁・発行日
pp.2012oa, (Released:2020-12-10)
参考文献数
40

画像の色は,感情画像によって喚起される感情の処理を促進させる。感情処理過程に関連する事象関連電位について,初期後頭陰性電位 (early posterior negativity: EPN) はモノクロ画像よりもカラー画像で振幅が増大するのに対し,後期陽性電位 (late positive potential: LPP) に対する色の影響は一貫していない。色は画像の大域的な認識も容易にする。そこで本研究では,画像内容の識別が困難な不鮮明画像(低周波通過処理画像)を用いることで,画像の色が感情に関連する主観および生理指標(EPNとLPP)に影響を及ぼすか検討した。参加者に対して,快/中性/不快画像の感情価を判断する課題を実施し,課題中の脳波を測定した。検討の結果,快/中性画像では,カラー画像の方がモノクロ画像と比べ主観的に快と評定された。画像の鮮明性に関わらず,EPN振幅はモノクロ画像よりもカラー画像で増大したのに対して,LPP振幅に色の影響は観察されなかった。本研究結果から,画像の色は,画像の鮮明性に関係なく,感情画像の初期の知覚を促進し,感情画像の主観評定にも影響を及ぼすことが明らかになった。
著者
新島 有信 小川 剛史
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.93-100, 2016-03-31 (Released:2017-02-01)

In this paper, we investigated to control a phantom sensation by visual stimuli. A phantom sensation is one of tactile illusion caused by vibration stimuli. Some previous works employed vibration motors for a tactile display, and utilized a phantom sensation to present tactile stimuli in a large area with a few vibration motors. Our research is to control tactile perception by visual stimuli. Our previous works showed that visual stimuli influence tactile perception. From the results, we considered that it is also possible to control a phantom sensation by visual stimuli. We made a primitive visual-tactile display, and conducted some experiments. The results showed that visual stimuli influenced a phantom sensation and it seemed to be possible to cause or not to cause a phantom sensation by visual stimuli.
著者
齊藤 有里加 下田 彰子 梶並 純一郎 小川 義和
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.493-496, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
3

理系学芸員課程の授業教材として,モバイル端末アプリケーションiNaturalistを使った体験を実施した.演習は国立科学博物館付属自然教育園で行われ,動植物の管理,保存,活用についてレクチャーと,植生管理のための生物モニタリングの試みとしてiNaturalistのシステムを紹介し,「バイオブリッツ」を体験し,ディスカッションとアンケートを行った.本発表では,大学生がiNaturalistを操作し,博物館資料として野外生物情報を習得し,公開するまでの過程を紹介し,野外博物館の資料特性理解の効果について考察する。
著者
小川 徹 中島 清 日野 竜太郎
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.340-345, 2015 (Released:2020-02-19)
参考文献数
12

福島第一原子力発電所事故では,少なくとも3つの原子炉建屋で水素爆発が発生した。号機ごとの事故の推移や事象の詳細を解明することは今後の課題として残されているが,軽水炉の事故時水素をめぐる様々な事象の連鎖について,異分野の専門家が共通の理解を持ち,共同でその知識を更新していくことが求められる。われわれは多くの専門家の協力により「原子力における水素対策安全高度化ハンドブック」を作成する作業を進めている。本稿ではハンドブック作成活動の方針,内容について簡単に紹介する。
著者
橋本 慎太郎 仁井田 浩二 松田 規宏 岩元 洋介 岩瀬 広 佐藤 達彦 野田 秀作 小川 達彦 中島 宏 深堀 智生 古田 琢哉 千葉 敏
出版者
公益社団法人 日本医学物理学会
雑誌
医学物理 (ISSN:13455354)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.88-95, 2013 (Released:2014-10-21)
参考文献数
32

PHITS is a general purpose Monte Carlo particle transport simulation code to analyze the transport in three-dimensional phase space and collisions of nearly all particles, including heavy ions, over wide energy range up to 100 GeV/u. Various quantities, such as particle fluence and deposition energies in materials, can be deduced using estimator functions “tally”. Recently, a microdosimetric tally function was also developed to apply PHITS to medical physics. Owing to these features, PHITS has been used for medical applications, such as radiation therapy and protection.
著者
李 貞美 小川 俊樹
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.120-143, 2010

社会が望む美の基準に合わせるために,醜いと考えている身体部分に手を加えることは自分の外見を変える方法の一つである.現代社会において外見の魅力はますます強調されている.本研究では女性を対象に,美容のために体に手を加えることに関する認識の特徴を検討するために,"美容のための身体可変性の認識尺度(BMB)"を作成し,"有用性の認知および結果に対する期待"と"罪悪感および人工性の観点にとらわれない傾向"の2つの次元で構成されていることを確認した.この結果は,女性が美容のために体に手を加える際の葛藤を明確に示している.いくつかの例外を除けば,多くの身体加工においてBMBの第1因子の特性が重要であること,またBMBの第2因子はより危険性が高い身体加工と関与していることが示された.韓国と日本の女子大生を対象にBMBと身体可変リストについて比較検討を行った結果,身近に行われる身体加工について受容しやすくなることが推察された.また自分の体に手を加えて外見を変えられるという認識は,主に体重と関連した統制の認識とは異なる概念である可能性も示唆された.
著者
高中 健一郎 安藤 元一 小川 博 土屋 公幸 吉行 瑞子 天野 卓
出版者
The Mammal Society of Japan
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.1-9, 2008-06-30
被引用文献数
1

小型哺乳類の側溝への落下状況を明らかにすることを目的とし,静岡県富士宮市にある水が常時流れている約1.5 kmの側溝(深さ45 cm × 幅45 cm,水深10~25 cm,流速約1.3~1.6 m/s)において,2001年6月から2004年9月の間に落下個体調査を131日行った.その結果,食虫目6種,齧歯目7種,合計2目3科13種152個体の落下・死亡個体が確認でき,側溝への落下は1日あたり平均1.16個体の頻度で起きていることが明らかになった.落下していた種は周辺に生息する小型哺乳類種の種数81%に及び,その中にはミズラモグラ(<i>Euroscaptor mizura</i>)などの準絶滅危惧種も含まれていた.また,ハタネズミ(<i>Microtus montebelli</i>)の落下が植林地より牧草地において顕著に多くみられ,落下する種は側溝周辺の小型哺乳類相を反映していると思われた.側溝への落下には季節性がみられ,それぞれの種の繁殖期と関連している可能性が示唆された.以上のことから,このような側溝を開放状態のまま放置しておくのは小動物にとって危険であり,側溝への落下防止策および脱出対策を講じる必要があると考える.<br>
著者
小川 圭治
出版者
東京女子大学
雑誌
東京女子大學附屬比較文化研究所紀要 (ISSN:05638186)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.32-48, 1977-01

Hong De Yong (洪大容1731〜1783) was an excellent encyclopedist and scientist who played an active part in the scientific history of Korea. According to his concept, the universe is infinite and boundless with countless stars filling it up. This is almost equal to J. Bruno's concept of the universe. This article aims to introduce an outline of his theory of the infinite universe which is developed in his work called "Yi Shan Wen Da" (〓山問答), and to investigate its origin. My conclusions are as follows. 1. His theory is based on The Hsiian Yeh Teaching (宣夜説), which was one of the ancient Chinese cosmologies. 2. His theory destroyed the traditional theories such as the cosmic dual forces (陰陽説) and the five natural elements (五行説) by difining the relation between the sun and the earth.
著者
瀬戸 奏音 小川 景子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第15回大会
巻号頁・発行日
pp.95, 2017 (Released:2017-10-16)

夢とは全ての人において睡眠中毎晩生成されている現象である.しかし,夢内容の生成起序や規定要因について,未だ一定の知見は得られていない.不快な夢内容に関する先行研究では,精神疾患との強い関連が報告されている一方で,健常者を対象とした研究は少ない.さらに,夢内容の生成に関する主観的な要因について,個人特性に着目した研究が多い一方で,日中および就床前の気分の影響を検討した研究は少ない.本研究では,健常大学生を対象に,自宅での夢聴取により個人特性と就床前の気分が夢内容に影響する様子を検討した. マルチレベル相関分析により有意な相関が認められた項目について,マルチレベル構造方程式モデリングを用いた媒介分析を行った.その結果,STAIの特性不安,状態不安と夢のネガティブ情動因子得点に関して,特性不安は夢のネガティブ情動因子に対して,状態不安を媒介することで不快な夢内容へ影響することが示された.
著者
小川 時洋 松田 いづみ 常岡 充子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.91.19016, (Released:2020-09-15)
参考文献数
28
被引用文献数
2

The present study focused on temporal changes of physiological activities within trials during the concealed information test (CIT). Participants were assigned to two groups with an inter-stimulus interval (ISI) of 50 or 25 seconds in the CIT. A relevant item was a piece of jewelry that a participant stole in the preceding mock theft task. Measures were skin conductance level (SCL), skin conductance response (SCR), heart rate (HR), normalized pulse volume (NPV), and self-reported arousal and surprise. The results showed that physiological changes in response to irrelevant items tended to return to pre-stimulus levels within 25 seconds. Physiological recoveries were slower for SCL and HR but faster for NPV for the relevant item than for irrelevant items. Pre-stimulus physiological levels were maintained until the relevant item was presented and then declined, which was similar to the peak of tension effect. Results in the self-reported measures were in line with the physiological measures. Practical and theoretical implications were discussed.