著者
中原 晋 足立 加那 鈴木 修 山本 佳史 竹中 幸則 安井 俊道 花本 敦 福角 隆仁 道場 隆博 瀬尾 雄二 礒橋 文明 吉岡 靖生 小川 和彦 猪原 秀典
出版者
日本頭頸部癌学会
雑誌
頭頸部癌 (ISSN:13495747)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.452-457, 2015-12-25 (Released:2016-01-16)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

ルビエールリンパ節 (RLN) とは外側咽頭後リンパ節のことであり,頭頸部癌からしばしば転移をきたす。今回,RLN転移を認めた頭頸部扁平上皮癌のうち2003年から2012年の間に治療した19例について検討を行った。後発転移病変の治療として当科ではサイバーナイフ (CK) を利用することが多いため,特にその効果に着目した。CKを施行していたのは7例であり施行後の短期奏効率は100%であったが,長期においては再発や出血をきたす症例もありRLN制御率や生存率に関してはCKの効果が高いとはいえなかった。一方,RLN制御に影響を与える因子の検討では「年齢」が有意差を認め,高齢になるほど制御良好であるという結果であった。RLN転移病変に対しては全例放射線中心の治療を施行していたが,全体の2年全生存率が55%と過去の報告と同程度であり,放射線治療でも手術と同等の治療効果が期待できると思われた。
著者
小川 功
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学観光コミュニティ学部紀要 = Atomi Tourism and Community Studies (ISSN:21899673)
巻号頁・発行日
no.4, pp.31-42, 2019-03

企業等が自己の貨物運搬等のために敷設する自家用の専用軌道は正規の鉄道たる“真正鉄道”とはほど遠く、低規格の粗末なトロッコ同然の“虚偽鉄道”にすぎない。しかし山梨県・早川軌道では早川電力のダム建設のための電力資本のビジネスデザインが、従前の河川舟運の代替交通手段を要求する沿岸各村のコミュニティデザインと激突、幾度にも及ぶ交渉の結果、両者の構想の融和点を見出して止揚・融合して自家用発電所軌道が住民の生活物資や住民移動手段としての“擬制鉄道”に変身した。当沿線に天下の秘湯・西山温泉があり、背後に秀麗な赤石山脈の高山を控える景勝地の故に、松永安左エ門をはじめ、数多くの登山家・湯治客に利用された観光鉄道ですらあった。
著者
小川 基 高木 秀明
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.1-12, 2018 (Released:2020-03-20)
参考文献数
30

母子関係におけるゆるしについては,これまで古澤平作による阿闍世コンプレックス理論などを中心に精神分析的な考察が深められてきた一方で,実証的には十分に検討されてこなかった。本研究では,母親から子どもへのゆるしのプロセスを明らかにすることを目的とし,調査,分析を行った。具体的には,母親10名に対して「母親が子どもをゆるすプロセス」について,またその子どもである青年12名に対して「子どもが母親からゆるされるプロセス」についてのインタビュー調査を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した。その結果,双方において4段階のゆるす/ゆるされるプロセスモデルが生成された。これらの結果より,母親は子どもからの傷つき・困らされ体験後も,自らの親としての機能を維持しようと努めること,また,それが結果的に子ども側のゆるされた実感につながっていることが明らかとなった。同時に,ゆるす側としての母親とゆるされる側としての子どもとの間に生じうる認識のずれや,それに伴う母子関係における臨床的問題について考察を行った。
著者
小川 進
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.27-39, 2006-03-20 (Released:2022-08-05)
参考文献数
32

本稿は,近年台頭してきているユーザー起動法(User driven method:UD法)が持つ潜在力を引き出す条件につい て考察した.本研究は株式会社良品計画の事例を分析し,UD法を使って開発した製品が高い新規性と販売実績を実現できること,そのためにはいくつかの補完的資源と仕組み上の工夫が必要であることを明らかにした.最後に,UD法の実践においてブランド・コミュニティが重要な役割を演じる可能性があることを指摘した.
著者
乾 敏郎 小川 健二
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第6回大会
巻号頁・発行日
pp.35, 2008 (Released:2008-11-10)

なぞりと模写のfMRI実験の結果から、これらのメカニズムに関するモデルを提案し、動作模倣との関連性についても考察する。乾(2007)では、左頭頂葉と右頭頂葉において、対象が自己中心座標と対象中心(または環境中心)座標でそれぞれ表現されていると仮定している。言い換えると、左頭頂葉は、主に外界の時空間的な変化を身体運動に変換するという意味で、情報の流れが「他者→自己」であり、右頭頂葉は自己の運動を他者(物体)に投影して、外界にある他者(物体)のイメージを作り、操作するという意味で、情報の流れは「自己→他者」であると言える。なぞりは、対象中心座標の表現のみでカーソルの軌道を制御できるのに対し、模写は、曲線を一旦自己中心表現に変換して再生しなければならない。しかも、自己中心座標と対象中心座標の変換を行い、部分の確認がなされる必要がある。このモデルによって、closing-in現象も説明可能である。
著者
小川 拓
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.108, no.11, pp.2297-2303, 2019-11-10 (Released:2020-11-10)
参考文献数
12

免疫不全者のワクチンで共通する問題点は,生ワクチンの接種が難しい点である.免疫抑制薬は,開始してしまえばほぼ生ワクチンは接種できないため,開始前に麻疹・風疹・ムンプス・水痘ワクチンを通算2回ずつになるよう追加接種しておくことが必要である.また,造血細胞移植後には,基礎免疫から獲得させる必要があり,予防接種計画の綿密な立案が必要となる.また,脾臓摘出術後等の脾機能低下患者では,液性免疫不全の状態が遷延するため,肺炎球菌やインフルエンザ菌といった細菌による侵襲性感染症のリスクが高く,予防接種を行うことを忘れてはならない.
著者
黒田 広生 小川 紀雄 貫名 至 太田 善介
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.500-505, 1983-11-30 (Released:2009-11-24)
参考文献数
25

Alzheimer 病に代表される痴呆を主徴とする疾患や Huntington 病, Parkinson 病などの不随意運動を伴う疾患において, 脳内γ-アミノ酪酸 (GABA) 代謝の異常が指摘されている. 近年の人口の高齢化に伴い, 軽度の不随意運動や知的レベルの低下を呈する老齢者の増加が認められ, これらの老年者においても脳内GABA代謝に何らかの異常の存在することが予想される. そこで今回, 脳内GABA代謝に与える加齢の影響について研究する目的で, 脳内のGABA代謝異常を鋭敏に反映すると考えられている脳脊髄液中GABA (CSF-GABA) 濃度を各年代について測定し, 比較検討を行った.対象は健常人ボランティアおよび神経・精神疾患を有さね患者, 総計34名 (内訳: 男19名, 女15名). 年齢は21歳から81歳におよび, 平均年齢は49歳であった. CSF-GABA濃度測定にはGABA radioreceptor assay (GABA-RRA) 法を用いた.その結果, コントロール群 (20代および30代) のCSF-GABA濃度131±7.5pmoles/ml (mean±SEM) に比し, 50代, 60代, 70代, 80代の対象群のCSF-GABA濃度は有意な低下を認め, 特に70代ではコントロール群の50%, 80代では30%と著しい低値を示した. しかし, 40代では有意差は認めなかった. CSF-GABA濃度と年齢との間にも有意な負の相関関係が認められた (p<0.01). しかもこの関係は男性群, 女性群ともに成立し, 女性群においてより著明であった.これらの結果は, 年齢が進むにつれて脳内GABA代謝に著しい変化が起こることを示しており, 高齢者ほど脳内GABA代謝異常に伴う種々の症状が発現しやすい状態にあることを予測させるものであった.
著者
田中 厚子 高井 史比古 西川 幸江 本田 孝行 川本 敦子 中島 勇 堀越 節子 小川 隆司
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.7, pp.269-275, 2022-07-01 (Released:2022-07-01)

日本EPI協議会のワーキング活動において,IPランドスケープをテーマに,知財関連の解析手法について研究を行った。テーマとしては炊飯器を題材に,3チームに分かれ,それぞれが異なる炊飯器メーカーを担当した。国内市場をターゲットに分析を行い,市場におけるポジションの確認や,事業戦略,経営層への提言を検討した。各チームでまずは市場における外部要因を確認し,ベンチマークを行った上で,SWOT分析,ファイブフォース分析,ポジショニング分析,特許分析,テキストマイニング,ワードクラウド等の手法を駆使し,それぞれの結論へと導いた。本稿では,研究活動を通して得られた分析手法の知見を紹介する。
著者
小川 由英 諸角 誠人 内田 厚 外間 実裕
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

シュウ酸は尿毒症物質であり、透析患者で高シュウ酸血症が長期持続すると臓器や組織にシュウ酸カルシウムが沈着する。透析患者は、動脈硬化も早く、高血圧、心疾患、脳血管障害などの危険も高い。高シュウ酸血症は血管の内皮傷害を惹起し、動脈硬化の原因となる。透析患者は尿毒症のため過酸化状態であり、ビタミンC投与は過酸化状態を改善し、発癌などの悪循環を断ち切るなど多大の恩恵をもたらす。しかし、ビタミンCを大量投与すると透析患者の血中シュウ酸値は高くなり、オキサローシスとなる。1 腎不全患者の血中シュウ酸をキャピラリー電気泳動で初めて測定し、約6年が経過する。約452名の腎不全患者を対象に血清中のシュウ酸前駆物質を測定し、血清シュウ酸とアスコルビン酸とは関連性が強く、ビタミンC投与が高シュウ酸血症の原因となることを示した。エリスロポエチン抵抗性の腎性貧血の際にビタミンCにより、鉄の利用度を増し、貧血を改善する。その際にビタミンC投与により、エリスロポエチン投与量を減少することを発見し、その最適の投与量は100mg/日と考えている。組織の石灰化に関しては、リン酸カルシウムの沈着がほとんどであるが、シュウ酸濃度が100μM以上であると不安定過飽和状態となり、シュウ酸カルシウム沈着の危険が高まる。常にこの値を超えるのは原発性過シュウ酸尿症の場合である。副甲状腺機能亢進症症例における腎性骨症に関して、経時的な組織の変化を報告したが、副甲状腺全摘前後の骨代謝パラメータとシュウ酸とは有意な相関は見られなかった。2 グリオキシル酸の解毒機構として、AGT(アラニングリオキシル酸アミノ転移酵素)が肝細胞のペルオキシゾームに局在し、グリコール酸より代謝されるグリオキシル酸をペルオキシゾームにおいて解毒する。また、肝細胞の細胞質と他の臓器にもグリオキシル酸還元酵素が存在し、シュウ酸産生を最小限に抑える。AGTの補酵素であるビタミンB6欠乏もオキサローシスの原因であり、透析患者では水溶性ビタミンが欠乏しがちである。ビタミンB6欠乏ラットで、グリオキシル酸、グリコール酸、ハイドロキシプロリン、ハイドロキシピルビン酸、キシリトールなどがシュウ酸産生を増加することを示した。これらの前駆物質の摂取を透析患者では制限する必要がある。この食事制限はオキサローシスの治療上非常に重要な示唆である。3 キャピラリー電気泳動に質量分析器を装着して、シュウ酸関連物質を測定し、測定感度を数倍上げることが可能となり、血清シュウ酸とグリコール酸の測定法を改良することが出来、また、従来の測定がそれぞれ正しいピークを測定していたことを確認できた。これは大きな収穫であり、シュウ酸に関しては更に数十倍の感度で測定できる方法に辿り着きそうである。
著者
小川 俊夫
出版者
一般社団法人 色材協会
雑誌
色材協会誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.71-76, 1990-02-20 (Released:2012-11-20)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

中国産の生漆から透ろいろ漆, 透つや漆, 黒ろいろ漆及び黒つや漆の4種の漆を製漆し, 漆膜を作成した。これらについて熱機械分析, 熱重量分析及び示差走査熱量分析を行った。その結果, 120℃以下においては数パーセントの重量減少とともに吸熱現象が認められたが, これは漆中の残存水分によるものであった。また100~200℃では, 逆に発熱現象が認められると同時に線膨張係数の低下を示すことから, 網目構造の形成が行われていると考えられる。なお, 上記4種の漆の間には熱的に本質的な差異は認められなかったが, 透漆の方が黒漆よりも若干低温側から収縮現象が始まることが認められた。
著者
谷村 健 濱田 明美 鬼束 楠里 野崎 直樹 甲斐 孝憲 小川 喜八郎
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.100, no.1, pp.56-64, 2005-01-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

宮崎県日向灘沿岸および沖縄県石垣島周辺海域からの焼酎用酵母の分離を試みた結果,酵母様微生物を547株分離できた。産膜が見られず,糖醗酵性試験により,良好な結果の得られた16株を選抜した。選抜菌株について醗酵試験,芋焼酎小仕込み試験を行い,醗酵経過が安定し,酒質も良好であったBlD-12株を最優良菌株とした。同菌株はS. cerevisiaeであると同定され,従来の焼酎用酵母よりも耐塩性およびアルコール耐性が高いことが示唆された。高耐塩性は海水域由来株の指標の1つになりうると考えられる。また, 2次膠の最高晶温35℃前後の条件下おいても醸酵は順調に推移し,BlD-12株は高温耐性株であることが確認された。さらに,実地規模での芋焼酎仕込み試験で従来の酵母よりも良好な醸酵経過を示したことから,ソバ等に代表される他の穀類原料においても実用化が期待できる。
著者
中澤 弥子 吉岡 由美 高崎 禎子 小木曽 加奈 小川 晶子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成29年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.224, 2017 (Released:2017-08-31)

【目的】長野県の家庭料理の特徴を探ることを目的として、おやつについて分析した。本発表では、長野県各地で大切に作り継がれている多様なおやつについて報告する。【方法】平成25~28年にかけて全県的な現地調査を実施した。調査方法は、主に聞き取り法で行い、可能な場合は、食材や料理、加工品の実物を撮影し、試食を行った。【結果】長野県では、農作業など共同で行う仕事の合間や日常、お茶の時間を設けて(「お茶にする」という。「まあ、お茶でも一杯・・・」から始まる)、主に日本茶におやつ(お茶請けと呼ぶことが多い)を多種類準備して、みんなで楽しく共食・休息する習慣が現在も残っている。「からっ茶を出す」(お茶請けを出さない)と恥ずかしいという文化があり、季節の漬物や煮物、煮豆、粉もの、果物のお茶請けがつきものである。お茶は注ぎ足し、注ぎ足し、何杯もお客に召し上がっていただく。 お茶請けとして地域の産物が生かされていた。漬物では、お葉漬には全県に分布する野沢菜漬をはじめ、地域の漬け菜も用いられており、その他、こしょう漬(信濃町)、すんき(木曽地方)など、他ではみられない加工法の漬物がある。以前に比べ作る量は減ったと話す人が多かったが、各種漬物が発達していた。粉ものでは、おやき(焼き餅)をはじめ、うすやき、にらせんべい、はりこしなど、煮豆では、ひたし豆、くらかけ豆、黒豆、紫花豆の煮豆、おなっとうなど、煮物ではかぼちゃのいとこ煮、大根引き、いなごの佃煮など、果物では、あんずのシロップ漬、かりんの砂糖漬、柚餅子、雲龍巻(柿巻)など、様々に工夫された季節を感じるお茶請けが、家族や近隣の人々、人寄せ(集まり)利用され、人々の交流を担っていた。