著者
小川 功
出版者
滋賀大学経済学会
雑誌
彦根論叢 (ISSN:03875989)
巻号頁・発行日
no.381, pp.57-77[含 英語文要旨], 2009-11

Examined in this paper are two land companies founded by Jihei Tadaabusinessperson who came back to Japan after making a fortune on theKorean Peninsula-in an attempt to simultaneously turn the beach andmountain areas in Beppu, in the central part of Oita Prefecture on KyushuIsland, into a tourist destination. Beppu Land and Trust Company wasestablished in October 1918 with the aim of reclaiming 82,500 square meters of land from the sea and utilizing the area for residential purposes,for example accommodating tourists. The objective of founding BeppuKankaiji Land Company in February 1920 was to build dream houseswith spas and gardens filled with cherry and Japanese maple trees arounda hot spring resort on a mountainside. Both companies are products of amania for speculation in the midst of the bubble economy of the Taisho Era. Most capitalists who took part in the aforementioned undertakingsas founders or major shareholders including president Yahei Ueda of thelatter company and director Tamezo Takakura were hit hard by an economic depression. Both companies' land management, such as that forbuilding homes for sale and renting homes, faced problems due to the recession.A run on the former Oita Bank, a local financial institutiondeeply involved with the business of Beppu Kankaiji Land Company, also exerted a negative impact. The speculative nature of these two companieswas supposedly reflected in financial difficulties of banks connectedto capitalists who had invested in the companies. Many suchbanks, like the Nihon Sekizen Bank, were forced to face a run, go bankruptor suspend business operations. This report will focus on collective investment behavior of capitalists related to Kashima Bank or Daido LifeInsurance Company, both of which were run by the Hirooka family,which owned land in a cultural village in the mountain area. An analysisof shareholder groups formed in major cities right after the inception of the Beppu Kankaiji Land Company will be introduced.
著者
藤井 正人 神崎 仁 大築 淳一 小川 浩司 磯貝 豊 大塚 護 猪狩 武詔 鈴木 理文 吉田 昭男 坂本 裕 川浦 光弘 加納 滋 井上 貴博 行木 英生
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.225-231, 1994-03-20 (Released:2013-05-10)
参考文献数
8

セフポドキシムプロキセチル (CPDX-PRバナン錠®) は三共株式会社が開発した経口用セフェム系抗生物質で広範囲な抗菌スペクトルムを有するのが特色である. 今回, われわれは耳鼻咽喉科領域の感染症に対する有効性と安全性を検討した. 166症例に対して CPDX-PRを症状に応じて一日200mgないし400mg分2投与を4日以上最大14日間投与した。著効が51例, 30.7%にみられ, 有効例は68例, 41.0%にみられた. 疾患別では急性扁桃炎と急性副鼻腔炎が高い著効率を示した. 慢性中耳炎の急性増悪, 急性咽頭炎では高投与量で良好な効果を示した. 自覚的症状の改善度では, 咽頭痛の改善が良好な結果であつた. 投与前後の細菌検査を行つた20例30株では菌消失率では77%と良好な結果であつた. 副作用は1例に発疹が見られたのみであつた. 以上よりCPDX-PR は耳鼻咽喉科感染症に対して高い有効率と安全性を示すと考えられた.
著者
小川 哲郎 一色 賢司
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.535-540, 1996-05-15
参考文献数
14
被引用文献数
3 18

アリルイソチオシアネート(AIT)を含むハーブの揮発性成分による微生物の増殖抑制の可能性を追求すると共に,これらの揮発性成分の併用による微生物制御を試みた.<BR>AITを除く14種の揮発性成分のうち,真菌に対してはアルデヒド類のみが抑制効果を示し,枯草菌に対してはアルデヒド類および炭化水素類が抑制効果を示した.特にサリチルアルデヒドは,供試した真菌,細菌いずれの増殖も抑制した上,細菌に対してはAITと同じ10.0mgの添加で抑制効果が認められた.また,カルバクロールは,AITでは抑制効果の弱かった黄色ブドウ球菌に対し増殖抑制効果を示した.AIT 3.0mgとカルバクロールあるいはサリチルアルデヒド5.0mgを併用することにより,供試菌すべての増殖を抑制することが可能であり,それぞれの使用量も半分以下に軽減された.AITとこれら2種の揮発性成分の組み合わせによる餅の保存試験では,40日経過後においてもカビの発生は認められなかった.<BR>AIT臭のマスキングについて検討した結果,バニラ及び柑橘系オイルで高いマスキング効果が認められた.
著者
大竹 真紀子 廣井 孝弘 中村 良介 武田 弘 荒井 朋子 横田 康弘 春山 純一 諸田 智克 松永 恒雄 宮本 英昭 本田 親寿 小川 佳子 平田 成
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.23, 2009

マルチバンドイメージャは月周回衛星かぐや観測機器の1つであり、高度100kmの軌道から可視・近赤外波長域、合計9バンドの月面分光画像を取得する。本研究では、MIの高い月面空間分解能とS/Nを生かして月上部地殻の組成を推定した。解析対象として、月全球のクレータ約70個を直径や年代等の条件により選定・解析し、詳細な鉱物含有量比推定を行った。結果、最終選別した約30箇所のうち高地地域の直径30km以上の全クレータ(20箇所)で、極端に斜長石に富んだ(斜長石含有量が98vol.%程度以上の)岩層の分布が観測された。また、これら岩層は深さ4から30kmに分布する。月高地地域の上部地殻は、この極端に斜長石に富んだ層で構成されると考えられ、このような組成の地殻を形成するために非常に効率的なマグマからの斜長石結晶の分離プロセスが必要となることを示唆している。
著者
小川 功
出版者
近畿大学経済学会
雑誌
生駒経済論叢 (ISSN:13488686)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.77-93, 2009-07

我が国の土地会社研究は武知京三氏がまず先鞭をつけ, その後野田正穏氏ら多くの後継者により個別研究が追加された。しかし箱根土地など長期継続企業は稀で, 短命に終った結果史料的制約多く未解明部分も多い。本稿では武知氏の先駆的研究に依拠しつつ, 観光案内書等をも資料として取り込み, 地価が低廉で新線計画の集中した生駒山麓一帯の土地会社群, とりわけ遊園・観光開発を志向しつつも看板倒れに終った"疑似温泉"の日下温泉土地を中心に4社の分析を試みた。同社は設立無効判決を受け, 他2社は他社に吸収, 石切土地建物のみ比較的長く存続した。2社で発起人・役員となった松島肇など, 不動産の証券化に暗躍したプロモーターの背信的搾取が短命傾向を加速したと推測される。 (英文) From the beginning the study of land companies of Japan has mainly been developed by Dr. KYOZO TAKECHI. In general, those companies are so shortlived and historical investigation is strongly limited in material and evidence. In this article, I want to discuss collapse of estate & resort developments. I considered four land companies as case studies. These companies are located on the foot of the IKOMA Mountain, which is religiously known as a miraculous area. The KUSAKA Spa Land Company is especially not only a real estate company but also a self-styled spa resort, as well as a "sham hot spring" where cold spring water is artificially heated.
著者
佐藤 明香 宇賀 麻由 植田 真司 矢野 修也 小川 弘子 三好 智子 難波 志穂子 大塚 文男
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.405-410, 2020-08-25 (Released:2021-03-15)
参考文献数
8

背景 : 本邦の臨床研修病院で研修医メンター制度が導入されてきているが, 制度の詳細や効果については明らかにされていない. 目的 : 当院で運用している研修医メンター制度を紹介し, 2018年度に本制度を利用した研修医 (メンティ) からのメンター制度に対する評価を明らかにする. 方法 : 制度を利用した研修医に無記名のwebアンケート調査を実施した. 結果 : 2018年度採用研修医の78.0% (32名) が本制度を利用した. 調査の回答率は87.5% (28名) で, 制度に対する満足度は高かった. 考察 : 今後はメンターも対象に,より詳細なアンケート調査を実施し, さらなる制度改善へとつなげたい.
著者
原 昭壽 中島 義仁 浅野 博 味岡 正純 酒井 和好 長内 宏之 桑山 輔 石濱 総太 坂本 裕資 大高 直也 小川 隼人 坂口 輝洋 村瀬 洋介
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.468-474, 2014

78歳男性. 2004年10月に洞不全症候群に対して左前胸部にAAIペースメーカを留置された. 2005年11月に植え込み部位の発赤を認めたため当院外来を受診した. ペースメーカ感染がまず考慮されたがバイタルサインや血液検査上は感染兆候認めず, 腕時計装着部の皮膚発赤から金属アレルギーを疑われた. ペースメーカ本体による接触テストを施行したところ接触部位の発赤が出現し, ペースメーカアレルギーと診断された. 対側への再植え込みに際し, 組織との接触防止のためリード・本体をpolytetrafluoroethylene (PTFE) シートで被覆して植え込みを行った. その後7年間発赤・腫脹などのトラブルなく経過した. バッテリー消耗により, 平成24年11月に電池交換を施行した. 術中所見としては, PTFE周囲は繊維性被膜に覆われおり, 滲出液などの感染やアレルギー反応を示す所見は認めなかった. 洗浄後にPTFE内に新規本体を収納し, 不足分を新規PTFEで被覆して閉創した. ペースメーカアレルギーへの対策として有効であったが, 感染リスクが今後の課題と考えられた.
著者
田邉 和孝 杉本 真一 久保田 豊成 久保田 恵子 影山 詔一 高村 通生 小川 晃平 武田 啓志 橋本 幸直 徳家 敦夫
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.92-99, 2014-02-01 (Released:2014-02-11)
参考文献数
49

症例は47歳の男性で,前日からの腹痛の増悪,嘔吐の出現,意識レベル低下にて救急搬送となった.来院時,意識レベルIII-200(JCS),血圧測定不能,血液ガス検査で代謝性アシドーシス認め,ショック状態であった.腹部造影CTにて腹腔内に多量の遊離ガスと腹水を認め,肝臓と腎臓実質の造影効果は不良であった.消化管穿孔に起因するショック状態と診断し,緊急開腹手術を施行した.多量の汚染腹水,遊離ガス,食物残渣を認め,肝臓は虚血性変化を呈していた.胃底部から体部前壁に壊死を伴う破裂部を認めたため,胃全摘術を施行した.成人の特発性胃破裂はまれであり,過食などによる胃拡張状態に,嘔吐などに伴う胃内圧の急激な上昇や,あるいは胃壁の血流障害に伴う壊死が原因とされている.破裂孔が大きいため,胃内容物の腹腔内流出量が多く,腹部コンパートメント症候群を呈し重症化することがあり,一般的に予後不良とされている.
著者
岡本 康秀 神崎 晶 貫野 彩子 中市 健志 森本 隆司 原田 耕太 久保田 江里 小川 郁
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.694-702, 2014-12-28 (Released:2015-04-10)
参考文献数
21
被引用文献数
1 2

要旨: 音声の情報として, 周波数情報に加えて時間情報は極めて重要な因子である。 今回時間分解能の評価として Gap detection threshold (GDT) と temporal modulation transfer functions (TMTF) を用いた。 対象を老人性難聴者とし, 年齢, 語音明瞭度を中心に時間分解能の検討を行った。 その結果, 加齢により GDT と TMTF の低下傾向を認めた。 また, 語音明瞭度に影響する因子として, TMTF における peak sensitivity (PS) が強い相関を認めた。 このことは音声知覚において, PS のパラメータであらわされる時間的な音圧の変化の検知能力が語音聴取能力に強く影響を及ぼしていることが示唆された。 今後は時間分解能の臨床応用に加えて, 時間情報をもとにした強調処理などの補聴処理技術が開発されることが望まれる。
著者
小川 秀興 植木 理恵 西山 茂夫 伊藤 雅章 西岡 清
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.1206-1211, 1995
被引用文献数
3

円形脱毛症に対する抗アレルギー剤(アゼラスチン:アゼプチン<SUP>&reg;</SUP>)の臨床症状におよぼす影響と有用性について広く円形脱毛症の治療薬として用いられているセファランチンと比較検討した。総症例数は53例であった。円形脱毛症患者のアトピー素因の有無に関係なくアゼラスチン投与群ではセファランチン投与群に比較し脱毛巣およびその周辺の病的毛や抜け毛の程度は速やかに改善された。再生毛の推移は両試験群とも同様の改善経過であった。抗アレルギー作用を有するアゼラスチンが円形脱毛症の臨床像改善に効果をおよぼしたことは円形脱毛症の治療上にも, その病態形成を考える上でも興味深い知見であると考えられた。
著者
小川 高 新家 俊樹 三島 浩享
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.469-472, 2009-06-20 (Released:2016-09-03)
参考文献数
10
被引用文献数
1

17歳4カ月齢の猫の扁平上皮癌が疑われた口腔内および下顎骨の腫瘤に対して,活性炭吸着カルボプラチンを局所注射する治療を行った. 治療後,口腔内腫瘤は縮小し,下顎骨の腫瘤の増大傾向もみられていない. 標的化学療法の選択肢の一つとして本治療法の有用性が示唆された.
著者
坂本 篤裕 清水 淳 鈴木 規仁 松村 純也 小川 龍
出版者
The Japanese Society of Intensive Care Medicine
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.15-19, 2001-01-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
29
被引用文献数
2 2

エンドトキシンショック時には,誘導型一酸化窒素合成酵素による一酸お化窒素(NO)の過剰産生とともに,誘導型ヘムオキシゲナーゼによる一酸化炭素(CO)の過剰産生が病態進展に重要な役割を担うことが示唆されている。NOとCOはともにグアニリルシクラーゼのヘム分子に結合し,cGMP増加による血管平滑筋弛緩作用を示すとされるが,その結合の競合作用や,産生酵素活性の抑制作用などの相互調節機構も存在することが示されている。一方,リポポリサッカライド(LPS)などの過剰な刺激における両者の相互影響や病態進展への役割については不明であり,本研究ではラットエンドトキシンショックモデルにおいてnitrosyl hemoglobin (NO-Hb)およびcarboxy-hemoglobin(CO-Hb)を指標に,それぞれの合成酵素阻害薬であるL-canavanine(CAN)およびzinc protoporphyrin (ZPP)による影響を血圧変動とともに検討した。LPSの投与により経時的血圧低下とNO-HbおよびCO-Hbの増加を認めた。CANおよびZPPはともに血圧低下抑制効果を認めたが,CANはNO-Hb増加のみを,ZPPはCO-Hb増加のみを抑制した。致死的エンドトキシンショック時にはNO産生系とCO産生系抑制はともに血圧低下抑制に有用であるが,それぞれの産生酵素阻害薬の効果からみた場合,生体調節機構に有用と考えられる相互作用は認められなかった。
著者
菊地 基雄 脇田 充史 坂野 章吾 小川 久美子 金井 美晴 上田 龍三
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.8, pp.687-693, 2000-08-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
23

症例は男性, 69歳 (1985年) 時にインスリン非依存型糖尿病と診断され, 74歳時からインスリン治療を続けていた. 72歳時にC型慢性肝炎を指摘された. 1993年12月肝機能の悪化を認め入院し, 80mgのグリチルリチン (GR) の連日投与を開始した. 投与後30日目から偽性アルドステロン症と低血糖発作を発症し, インスリンとGRの減量により血圧と血糖値は正常化した. インスリンを減量しGRを再投与したところ, 再び低血糖を来した. GRの減量後には低血糖発作はなかったが, 1994年8月に急性心不全により死亡した. 病理解剖で活動性慢性C型肝炎と糖尿病性腎症を認めた. GRには糖代謝に影響する多くの薬理学的作用があるが多臓器の機能低下を伴つた高齢者の糖尿病患者にGRとインスリンを投与する場合には, 血糖値の変動に注意する必要があると考えられた.
著者
野坂 千秋 星川 恵里 久保田 浩二 小川 宣子 渡邊 乾二
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.2-9, 2001-02-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
10
被引用文献数
2

The texture and taste of Vichyssoise soup cooked by a professional chef (VP) and that produced by a food manufacturer (VM) were compared by examming their physical properties in order to investigate the optimum cooking conditions for making desirable Vichyssoise soup.In comparison with VM, VP was lower in apparent viscosity, larger in potato-cell size, and higher in the ratio of particle volume. Micro-structural observations showed that the starch particles in VP were retained in the potato cells, whereas those in VM had leaked from the cells due to severe cell damage.It was found that soup like the VP sample could be obtained by a straining the potatoes at 90°C through a sieve of 250μmin mesh size-which minimized damage to the potato cells by and made a product lower in viscosity and higher in particle volume than the VM sample.A sensory test was carried out on two products made by different processing techniques. The mixing method was found to damage the cells more and spoil the texture of the potatoes. The straining method with a sieve, however, gave favorable results, producing a soup that was less viscous, and that retained the potato particles, while still being smooth in the mouth.
著者
小川 博司
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.17-30, 1980-12-31 (Released:2009-10-19)
参考文献数
42
被引用文献数
1

匿名性は、社会と個人の問題を、根源的に提示する概念である。何故ならば、社会とは、固有名をもった個人が、匿名的な存在となるところに存立すると考えられるからである。A・シュッツの匿名性の概念は、この問題を考える際に、示唆に富んでいる。シュッツは匿名性の様々な程度を照射する虚の光源としてわれわれ関係を想定する。われわれ関係は、相互的な汝志向を基盤とし、そこでは他者は、時間・空間の直接性のうちに経験される。シュッツによれば、他者を間接的に経験すればするほど、他者の匿名性の程度はより高くなるとされる。尚、時間・空間の直接性は、われわれ関係の成立のための必要条件ではあるが、十分条件ではない。シュッツの匿名性の概念は、次の諸相に分節化される- (1) 機能的類型として匿名性、 (2) 「知られていない」という意味の匿名性、 (3) 社会的世界の構成原理としての匿名性、 (4) 所与の社会構造のもつ匿名性。(1) (2) は、個人としての他者の経験に関連する。 (3) (4) は、社会制度、言語、道具など、匿名性の高い領域に関連する。それらは、一方では匿名化による構成物であり、他方ではわれわれ関係の舞台に配置されている諸要素でもある。シュッツの理論では、 (3) と (4) は、匿名性とわれわれ関係という二つの鍵概念により結合されている。以上の匿名性の分節化は、社会の存立の考察、また現代社会の諸問題の考察に有用であろう。匿名性 (anonymity) という概念は、社会学においては、従来、主に大衆社会論的文脈の中で、都市社会やマス・コミュニケーションにおける人間関係の特徴を表わすものとして用いられてきた (1) 。しかし、匿名性は、社会と個人、もしくは類と個の問題を、より根源的に提示する概念であるように思われる。何故ならば、社会とは、固有名をもった人間個体が匿名的な存在となるところに存立すると考えられるからである。本論文は、主にA・シュッツの匿名性の概念の検討を通して、現代社会において、個人と社会とが絡み合う諸相を解き明かすための視角を提出しようとする試みである (2) 。以下、具体的には、シュッツが匿名性の程度を示すためにあげた例示の検討を通して、順次、匿名性の諸相を抽出し、検討していくことにする。