著者
松原 聖人 林 耕平 光本 大記 濱田 康弘 小野 順貴 嵯峨山 茂樹
雑誌
第78回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, no.1, pp.535-536, 2016-03-10

入力音声をケプストラム分析し、それによって取得した情報を基本周波数に関して操作したあと、パワースペクトルを経由して位相復元を用いて音声波形に戻すことによって、ピッチ変更などの変化を入力音声に与える。ケプストラムドメインで音声を加工することと、それを位相復元で音声波形領域に戻して可聴とすることの組み合わせによる音声加工法の提案である。
著者
石川 智佳代 小野 昌孝 荒木 徹也 相良 泰行
出版者
The Society of Agricultural Structures, Japan
雑誌
農業施設 (ISSN:03888517)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.123-130, 2002-09-25 (Released:2011-09-05)
参考文献数
7

ドライフラワの需要拡大のためには, 耐久消費財としてのドライフラワの作成とそれを応用した製品の開発が望まれる。このようなドライフラワを作成するためには, 生花と同様の形態と色彩の長期保持が望まれている。本研究では, ドライフラワ作成時における変形と変色を抑制し, さらに乾燥時間の短縮に最適な乾燥法を選択することを目的とし, リトルマーベル (バラ科バラ属) を供試材料とし, 従来から採用されてきた空気乾燥法に加えて, シリカゲル細粒充填層内に埋没させた材料を電熱ヒータで加熱して乾燥する方法, 凍結乾燥法および減圧マイクロ波乾燥法などを選び, その適用性を比較検討した。試料を固定した乾燥法では萎縮が少なく, その形態が保持された。また, 乾燥前後の花弁の色差は含水率の低下に伴い生じる萎縮により増大するが, 乾燥過程での萎縮の防止に有効な乾燥法を選択することにより抑制可能であることが分かった。色差発現の主要因はハンタ表色系におけるL*, b*値の減少によるものであることが確認された。ドライフラワの作成には形態, 色彩, 乾燥時間の面でヒータを併用したシリカゲル埋没乾燥法が最適であることが分かった。
著者
石田 弘 廣瀬 良平 小野 晃路 江見 健太 小橋 潤子 篠原 沙織 渡邉 進
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.631-633, 2013 (Released:2013-11-09)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

〔目的〕荷重位で中殿筋活動を促す運動の考案と,その運動時の中殿筋活動を定量化することとした.対象:健常成人男性31名とした.〔方法〕右下肢に荷重をかけた片脚立位で左股関節に対する最大等尺性外転収縮を行っている際の右中殿筋の筋活動を記録し,正規化のための基準とする右股関節外転の最大随意収縮時(maximum voluntary contraction:MVC)の筋活動で除した値(%MVC)を筋活動量の指標とした.〔結果〕運動時の筋活動量は108 %MVCを示した.〔結語〕本研究で用いた運動は,荷重をかけた状態での中殿筋の筋力増強運動のバリエーションを増やすことにつながるものと期待される.
著者
井上 菜穂美 西尾 里美 小野田 弓恵 水島 史乃 雲丹亀 美加
雑誌
聖隷クリストファー大学看護学部紀要 = Bulletin School of Nursing Seirei Christopher University
巻号頁・発行日
no.27, pp.21-29, 2019-03-31

専門看護師(CNS:Certified Nurse Specialist、以下CNS とする) 制度は日本看護協会が1994 年から開始した制度である。本学にはがん看護学、老年看護学、慢性看護学、急性看護学、小児看護学領域にCNS 教育課程が設けられ、さらに2019 年度には在宅看護学領域にも開設を予定している。本学では大学院修了生に対する支援体制を整備するために、2010 年からがん看護学領域の修了生を中心として「聖隷がん看護事例検討会」を立ち上げ、現在は他領域の修了生やCNS を含めた「聖隷CNS 事例検討会」として活動している。本稿では、事例検討会の活動概要、参加者による事例検討会の評価について報告する。今後の事例検討会の発展に向けて、看護学研究科教員への参加依頼、修了生や在学生への働きかけ、事例提供者および参加者の負担軽減策の検討、修了生と教員との連携強化が必要であると考えられる。
著者
金谷 重彦 小野 直亮 森田 晶
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第42回ケモインフォマティクス討論会 東京
巻号頁・発行日
pp.1P02, 2019 (Released:2019-10-22)
参考文献数
3

メタボローム研究を中心に薬用・植物知識ベース(機能性、配合)、さらにヒト生理活性を統合的に扱うデータベースKNApSAcK Family DB(http://kanaya.naist.jp/ KNApSAcK_Family/)の構築を進めている。メインウインドウを図1に示す。KNApSAcK Core Systemには、生物種と二次代謝物の関係データ情報が整理されており、現在までに、114,238レコードの生物種-二次代謝物の関係、二次代謝物の総数は51,086種となっている。さらに、アルカロイドにおける生合成経路データベースCobWebを開発した。本データベースを活用し、グラフコンボリューションニューラルネットワークにより、代謝経路既知のアルカロイド化合物を生合成開始物質へ分類したところ、非常に良好な識別結果を得た。
著者
小泉 政利 安永 大地 木山 幸子 大塚 祐子 遊佐 典昭 酒井 弘 大滝 宏一 杉崎 鉱司 Jeong Hyeonjeong 新国 佳祐 玉岡 賀津雄 伊藤 彰則 金 情浩 那須川 訓也 里 麻奈美 矢野 雅貴 小野 創
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2019-06-26

主語(S)が目的語(O)に先行するSO語順がその逆のOS語順に比べて処理負荷が低く母語話者に好まれる傾向があることが報告されている。しかし,従来の研究はSO語順を基本語順にもつSO言語を対象にしているため,SO語順選好が個別言語の基本語順を反映したものなのか,あるいは人間のより普遍的な認知特性を反映したものなのかが分からない。この2種類の要因の影響を峻別するためには,OS語順を基本語順に持つOS言語で検証を行う必要がある。そこで,本研究では,SO言語とOS言語を比較対照することによって,人間言語における語順選好を決定する要因ならびに,「言語の語順」と「思考の順序」との関係を明らかにする。
著者
岡田 秀紀 川添 直樹 山森 昭 小野寺 秀一 塩見 徳夫
出版者
日本応用糖質科学会
雑誌
Journal of Applied Glycoscience (ISSN:13447882)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.143-148, 2008 (Released:2008-07-03)
参考文献数
25
被引用文献数
4 6

植物エキス発酵飲料(以下FPE)は数十種類の野菜,果物を原料とし,sucroseの浸透圧を利用してエキスを抽出し約半年間,酵母および乳酸菌によって自然発酵させた褐色,粘ちょう性の飲料である.この飲料の投与によりラットの寿命延長効果が示唆されており,アルコール性胃粘膜障害抑制効果を有することやβ-(1,3)glucanが存在することをすでに報告している.FPE中に含まれるglucose,fructose以外の糖質の検索は,60%近い糖濃度の飲料であるため困難であったが,高感度に検出する方法を用いることにより微量に含まれるオリゴ糖類の検出が可能となり,その結果,数種の新規糖質および希少糖が見いだされた.FPEから活性炭クロマトグラフィー,amide-80カラムおよびODS-80Tsカラムを用いたHPLCにより十数種の糖類を単離した.これら糖質について酸加水分解による構成糖分析,MALDI-TOF-MS分析,完全メチル化メタノリゼートのGC分析,COSY,HSQC,HSQC-TOCSY,HMBC等の2次元NMR分析等により構造解析を行った.この結果,5種類の新規糖質を見いだし,それぞれO-β-D-fructopyranosyl-(2→6)-D-glucopyranose(Fp2-6G),O-β-D-fructopyranosyl-(2→6)-O-β-D-glucopyranosyl-(1→3)-D-glucopyranose,O-β-D-fructopyranosyl-(2→6)-O-[β-D-glucopyranosyl-(1→3)]-D-glucopyranose,1F-β-D-glucopyranosylsucrose,1F-β-D-galactopyranosylsucroseと決定した.これらの糖質は,発酵熟成中に生成された.新規糖質合成株のスクリーニングを行ったところ植物エキス発酵飲料の発酵熟成中の液から酵母5株(Y-1,-2,-3,-4,-5)を分離した.この株から調製した粗酵素液10 mLをpH 5.0の緩衝液に30%濃度になるよう溶解したglucose,fructose混液100 mLに加え,37°Cで加温した.5株についてFp2-6G合成活性を調べたところ,Y-1株粗酵素反応液中にFp2-6Gと同じ保持時間の糖が検出された.この反応液について各種クロマトグラフィーを行い糖を単離し,構造解析したところFp2-6Gであることが確認された.Y-1株粗酵素によるFp2-6Gの生成量は,上記反応系では非常に少なかったが,反応168時間後においても増加していた.また,基質濃度(glucose:fructose=1:1)の増加にともなって生成量が増加したが,70%濃度が上限であった.
著者
小野 悦郎 大竹 正剛
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

アフリカ豚コレラ(ASF)や豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)は、多様な抗原性を示すウイルスによる感染症であり、有効なワクチンの開発は極めて困難である。本研究課題では、そのような感染症の新たな制圧方法として、遺伝子改変技術によるAFSおよびPRRS抵抗性ブタの開発を目的に、先ず、CRISPR/Cas9システムを利用して、両ウイルスのレセプター分子であるCD163を本来のスカベンジャー機能は保存し、レセプター機能を削除するゲノム編集により両ウイルスに対する感染抵抗性を付与した細胞株を樹立する。次に、ゲノム編集細胞の核移植による体細胞クローン技術により、ASFおよびPRRS抵抗性MMPを作製することを目的とする。平成29年度は、以下のような成果が得られた。1. ゲノム編集マイクロミニピッグ(MMP)胎仔線維芽細胞(PEF)株の樹立にピューロマイシン耐性遺伝子を含むプラスミドを使用するとプラスミド配列のブタゲノムへの導入が起こり、体細胞クローンを作製するに当たり、予期せぬ副作用が生まれる可能性があったので、プラスミドに変えて、sgRNA、Cas9蛋白およびピューロマイシン抵抗性DNA断片を使用する方法を確立した。2. 1の方法により、抗ウイルス作用が期待される可溶型CD163を発現するゲノム編集MMP PEF株を樹立した。3. PRRSウイルスに対するレセプター活性を有するCD163の5番目のScavenger receptor cysteine-rich (SRCR5)ドメイン内のレセプター活性に重要と考えられるアミノ酸に点変異を導入するためのプラスミドおよびゲノム編集用sgRNAを構築した。4. MMPのPEFのiPS細胞への誘導では、ES細胞様の形態を有する細胞を樹立したが、初期化因子としては、Oct-4AおよびSox2の発現を確認するに留まっている。
著者
吾郷 真司 田中 照剛 横手 達夫 東田 賢二 小野寺 龍太
出版者
公益社団法人 日本金属学会
雑誌
日本金属学会誌 (ISSN:00214876)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.34-39, 2003 (Released:2008-04-24)
参考文献数
1

This study aims to give a mechanical explanation to manufacturing of metal (silver) foil in a traditional Japanese way in which the foils are put between Japanese papers and forged. It was clarified by forging tests carried out at various forging pressures that the forging pressure necessary for manufacturing silver foil is about 30 MPa, which is equal to one-tenth of the yield stress in a 90% rolled specimen. The test also showed that the plastic elongation of foil is of the order of 0.1% per forging (pressure is 30 MPa). This result suggests that the foil is not stretched by forging pressure, but by frictional tensile stress applied to the foil by the Japanese paper. Another test to measure the elastic property of paper showed that the Japanese paper was elongated by 0.5∼0.6% in the paper plane when it was compressed in the vertical direction at the pressure of 30 MPa. Considering the elastic strain of foil, the value of 0.5∼0.6% agreed well with the plastic elongation of foil of 0.1%. The forging tests also showed that the lower limit of foil thickness is dominated by the ability of paper not to adhere to the silver foil (removability); for example, it was 1 μm for some papers, but 0.4 μm for others.
著者
小野 映介
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2018年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.000018, 2018 (Released:2018-06-27)

Ⅰ.はじめに近年,自然災害への社会的関心の高まりを背景として,地形に注目した新聞・テレビ報道が多くなされるようになった.とりわけ,沖積平野を構成する氾濫原の微地形は,河川氾濫や地震時の液状化と関連することから,取り上げられる機会が多い.しかし,氾濫原の微地形を対象とした研究は盛んに行われているとは言い難く,地形分類については問題点が残されている.本発表では,問題点を提示するとともに,その解決のための素案として「階層的地形分類」を紹介する.Ⅱ.平成27年9月関東・東北豪雨と平成28年熊本地震に関する研究や報道における微地形の扱い2つの災害を検証する際に,インターネットで閲覧可能な「国土地理院土地条件図」や「国土地理院治水地形分類図」が研究者や報道機関によって用いられた.平成27年9月関東・東北豪雨では,鬼怒川左岸(茨城県常総市三坂町地先)における堤防の決壊が注目された.破堤地点の周辺に発達する微高地は,数値地図25000(土地条件)では自然堤防,治水地形分類図-更新版(2007~2014年)では微高地(自然堤防)および砂州・砂丘に分類されている.しかし,鬼怒川左岸に見られる微高地は,河畔砂丘とクレバススプレーが主体となって形成されたものである.氾濫原の微高地=自然堤防という分類は,他地域でも見られる.こうした分類は,地形学的見地からすると違和感があるが,全国統一基準の項目で分類を行う際には仕方のないことかもしれない.ただし,微地形は当地の地形発達の「癖」を示す場合が多い.例えば,クレバススプレーの発達する鬼怒川左岸では,破堤のポテンシャルが高いことが示唆される.そうした,地形の成因と発達史に関する知見を地図に組み込むことができれば,治水対策に生かされるかもしれない.また,平成28年熊本地震では,白川と緑川の間における液状化が問題となった.液状化の集中域は,数値地図25000(土地条件)の自然堤防,治水地形分類図-更新版(2007~2014年)の微高地(自然堤防)と一致することから,「自然堤防で液状化が発生した」という報道があった.しかし,白川と緑川の間に発達する帯状の微高地は,地形学的には蛇行帯と解されるべきであり,液状化は蛇行帯を構成する1つの要素である旧河道で発生したとみられる.両図を用いる際には,それらが「主題図であること」,「デジタル化を経て分類項目の簡素化が進んでいること」を踏まえる必要がある.Ⅲ. 階層的地形分類地形を分類するという作業は地形研究の根幹であり,古くから研究が進められてきた(小野2016).空間・時間・成因を考慮した統合的な地形分類を行おうとした中野(1952)はLand form Typeの概念のもとで「単位地形から出発して,地形区,さらに地形表面をカバーしようとする」分類方法を示した.ここで注目されるのは,地形に階層性(Area>Group>Series>Type)を持たせた点である.その後,沖積平野を対象とした地形分類は大矢(1971)や高木(1979)などの議論を経て,高橋(1982)による系統樹の概念に至った.系統樹によって地形面>地形帯>微地形を捉える階層区分は,地形発達過程を考慮したものとしては,現時点で最も矛盾の少ない分類手法の1つである.例えば,氾濫原と後背湿地という2つの地形用語は,しばしば混同されるが,地形を階層的に捉えた場合,氾濫原は扇状地やデルタなどと並んで,後背湿地の上位に位置づけられる.したがって,氾濫原と後背湿地が並立する分類図を認めない.また,ポイントバーやクレバススプレーを事例にすると,前者はリッジやスウェイルなど,後者は落堀(押堀)やローブの集合体として捉えられる.
著者
蛯名正司 小野耕一
出版者
日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会第60回総会
巻号頁・発行日
2018-08-31

問題と目的 内包量は性質の強さを表す数量概念であり,その特徴の一つに非加法性がある(遠山,2009)。しかし,内包量同士を加算したり,あるいは,外延量と混同して判断したりする誤りが少なからず見られる。本研究では,このような内包量に関する誤りを修正するための教授要因を検討する足がかりとして,「湿度」を取り上げ,教科書を用いたペア学習が湿度の問題解決にどのような影響を及ぼすのかを探索的に検討する。方 法 調査対象者 私立A短期大学に在籍する47名を分析対象とした。 手続き 調査は教職関連科目の授業時間内に実施した。調査時間は事前調査が約15分,学習セッションが約20分,事後調査が約15分であった。学習セッションでは,無作為にペアを組ませ,中学校理科の教科書(東京書籍)にある湿度単元の一部を配布し,「水蒸気量」「飽和水蒸気量」「露点」「湿度」の用語の意味をペアで確認すること,教科書に掲載されている湿度の公式を使う練習問題を解いて相互に確認することを指示した。 調査課題 事前・事後調査では,トイレ問題,袋問題,グラフ問題,大小問題,仕切問題の5問を出題した。トイレ問題では,気温が等しく湿度が異なる2つの場所を提示し,湿度が異なる理由を選択させた(答:水蒸気量が多いから)。袋問題では,ビニール袋を空気の出入りがないように密閉した状態で,袋内部の空気の温度を上昇させた際,袋内部の湿度がどうなるかを選択させた(答:低くなる)。グラフ問題では,飽和水蒸気量と気温の関係を示したグラフと各気温の湿度75%にあたる水蒸気量を明示し,湿度が75%のとき,2つの気温で水蒸気量が多いのはどちらかを判断させた。トイレ問題・袋問題・グラフ問題は,「湿度=1立方メートルあたりの空気中に含まれる水蒸気量/その気温での飽和水蒸気量」で定式化される3量の関係の中で,1つの量を固定した場合に,他の2量の変数関係を正しく判断できるかを見る課題であった。また,グラフ問題は湿度の公式に数値を代入しても解決できる問題であった。大小問題では,大きさの異なる部屋を図示し,気温と湿度がいずれも等しいときに,どちらの部屋がよりじめじめしているか(あるいは同じか)を選択させた(答:どちらも同じ)。仕切問題では,気温と湿度(e.g.30%)が等しい隣接した2部屋を提示し,その間にある仕切を取り除いた際の湿度を選択させた(答:30%のまま)。大小問題と仕切問題は,湿度が空間の体積とは無関係に決まることを理解できているかを見る課題であった。結果と考察 教示セッション ペア学習後に対象者にどのような話し合いを行ったのかを記述させたところ,「用語の意味をお互いに確認することができた」,「例を用いて説明してもらってわかりやすかった」などのコメントが見られた。水蒸気量や露点といった用語をより分かりやすいものに置き換えて説明する工夫が見られたといえる。 事前・事後の比較(Table 1) トイレ問題と袋問題では,正答率が上昇しなかったが,グラフ問題では正答率が上昇した(p=.01)。グラフ問題の解き方を詳細に見ると,公式への数値の代入による解決が2名から12名に増加していた。以上から,公式の数量を定数として捉えた問題解決は促進されたが,トイレ問題のように変数と捉えて操作する必要のある問題解決(cf.工藤,2010)は十分に促進されなかったといえる。次に,大小問題では正答率が上昇しなかったが,仕切問題では正答率が上昇した(p=.02)。仕切問題では,2つの空間が1つに統合されただけであるため,空間の大きさは変わらなかったが,大小問題では2つの空間の大きさが明確に異なっていた。そのため大小問題の方が体積に基づいた誤判断がより見られやすかったと考えられる。不適切属性に基づいた誤判断は公式を学習したとしても,ただちに修正されないことが示唆された。今後は,変数操作の可否と不適切属性に基づいた判断との関連,及び誤判断の修正方略を検討していく必要がある。
著者
中西 央 小野瀬 裕子 草野 篤子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.49, no.11, pp.1185-1198, 1998-11-15 (Released:2010-03-10)
参考文献数
17

第3章人権条項のうち「男女平等」と「教育の機会の平等」を中心にベアテが第一次案として起草した条項の生成過程を考察してきた結果を以下にまとめる.(1) GHQ内における草案の作成第一次案の作成を担当することになったベアテは, 10年に及ぶ在日経験から憲法で女性の権利を明確にしておく必要性を認知していた.具体的には, 以下の内容を起草している.「法の下の平等」「家庭における男女平等」「家制度の廃止」「母性保護」「既婚・未婚の差別禁止」「嫡出子・非嫡出子の差別禁止」「長子相続権の廃止」「教育の機会の平等」「児童への無償医療制度」「学齢期の児童及び青少年の常勤的雇用禁止」「男女雇用機会均等」「男女同一価値労働同一賃金」「社会保障制度 (生活保護) 」「著作・特許権」等である.その後, 簡潔・原則主義のGHQ内での検討・修正によって, 多くの条項が削除・統括される.ただし, 「法の下の平等」「家庭における男女平等」だけはほぼそのままの形で残り, その他「教育の機会の平等」「社会保障」「勤労の条件に関する基準の設置」が残る.しかし, 削除された中には, 後に法制化の課題として残ったものもあり, ベアテの先進性がわかる.(2) マッカーサー草案から日本国憲法に至るまで次にGHQと日本政府の折衝の結果, 修正が行われた.「家庭における男女平等」について日本側は抵抗を示したが, 通訳としてよく働き好感をもっていたベアテの起草と聞き, 残すことになる.ここにベアテが同席していたことは重要であった.帝国議会では, 「個人の尊厳」に基づく人権意識は希薄で, 議員の多くは戸主権の廃止に危惧感を示した.ベアテが起草していたものと同じ「母性保護」規定を求める提案があったが却下されている.(3) 日本国憲法制定に伴う動きと現在日本国憲法が制定され, その24条が, 個人の尊厳と両性の本質的平等に基づく婚姻を家族の出発点としたことで, 「家」制度を規定していた明治民法, 刑法の規定が改正された.今なお残る課題の中で, 「非嫡出子の差別の禁止」「男女同一価値労働同一賃金の原則」については, ベアテがGHQ第一次案で起草しカットされた条文と重なり, ベアテの先進性がわかる.(4) 第3章人権条項の推移GHQ第一次案として起草された第3章人権条項が, どのように修正され, 統括され, または削除されて日本国憲法となったかを系統的に整理し, 図によって提示した (図1).ベアテ起草条項の文言が日本国憲法になるまでを整理し, 表によって提示した (表 1).以上のように日本国憲法の第一次案の起草にベアテが携わったことで, 第24条, 第26条等が盛り込まれ, 「家族」「両性の本質的平等」「児童」という言葉が使用される等, 民主主義日本の出発にあたって, ベアテの果たした役割の大きい事がわかった.
著者
森本 吉謙 入澤 裕樹 坪井 俊樹 小野寺 和也 川村 卓
出版者
The Japan Journal of Coaching Studies
雑誌
コーチング学研究 (ISSN:21851646)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.203-210, 2019-03-20 (Released:2019-09-02)
参考文献数
23

The purposes of this study were to investigate the relationship between competitive result and environmental factors in high school baseball. A questionnaire survey was conducted on 533 university students who belonged to the baseball club when they were in high school. The survey content was the following 11 items; 1. Highest competitive result, 2. Presence or absence of the sports recommendation entrance examination, 3. Presence or absence of the sports scholarship system, 4. Occupation of the head coach, 5. Presence or absence of the assistant coach, 6. Number of the assistant coach, 7. Occupation of the assistant coach, 8. Presence or absence of the selection system for enter the club, 9. Number of the members, 10. Type of school (public or private), 11. Presence or absence of the private facility. In case of high school duplication, only one answer was adopted, and other inappropriate invalid answers were excluded for totalization. Finally, 435 students were divided into national group (n=89), block group (n=82) and prefecture group (n=264), based on the best result of the team at the time of high school, and examined the relationship between the competitive result and each environmental factor. As a result, regarding the occupation of the head coach, the proportion of teachers in all groups was high, but in the other items, the relationship with the competitive result was indicated, and the possibility that the difference in these environments could affect the competitive result was shown.
著者
谷野 祐子 小野 恵美 朝比奈 七緒 大塚 志乃ぶ 森谷 美智子 藤井 美穂子 松井 典子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 = Japanese Lournal of Maternal Health (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.90-96, 2007-04-01
参考文献数
17
被引用文献数
1

父親対象の産前産後の育児指導受講の有無が,1ヵ月後の育児参加に与える影響を明らかにするために,児の1ヵ月健康診査で来院した父親99名を対象に無記名式質問紙調査を行った。その結果64名から有効回答が得られ,産前・産後の育児指導の受講状況別に比較検討したところ,次の結果が得られた。1.産前に育児指導を受講した父親35名のうち,産後指導を受講した父親21名(60.0%)であった。また,産後指導の受講の有無にかかわらず,父親の育児態度は高かった。しかし,産後指導を受講した父親のほうが育児技術を実施していた。2.産前の育児指導を受講しなかった父親29名のうち,産後指導を受講した父親は8名(27.6%)であった。また,産後指導の受講の有無と,父親の育児態度や育児技術実施状況に関連はみられなかった。以上より,父親の育児参加を高めるためには,産後の育児指導を受講するだけでは効果が不十分であり,産前からの継続的な受講が有効であることが示唆された。
著者
稲吉 直哉 荒木 秀明 松岡 健 須﨑 裕一 小野内 雄
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1804, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】我々は,臨床においてフラットバック,スウェイバック,円背など様々な姿勢不良患者を頻繁に経験する。姿勢不良と病態に関しては頸部障害,腰部障害,肩障害,肘障害など様々な障害を生じさせる要因となることが多数報告されている。特に,円背は運動・呼吸能力など身体能力や精神機能の低下などを起たすとの報告ある。しかし,胸椎部の姿勢に関する客観的評価方法は少ない。姿勢の客観的評価方法としては,三次元的動作解析装置や立位時の全身の矢状面レントゲン撮影,Spinal Mouseを用いた脊柱姿勢評価方法が報告がされているが,いずれも高度な機器が必要であり臨床の場面において簡便に測定することが困難である。最近,簡便な胸椎部の柔軟性評価としてOtt Testが報告され,三次元動作解析器を用いてその再現性が確認されている。今回,Ott Testを用いて胸椎部柔軟性を正常群と過少群に分類して,胸椎部柔軟性と生体力学的変化を指先床間距離(以下FFD)と重心動揺を用いて検証した。【方法】対象は下肢,体幹に障害既往がない20歳代の健常男性12名である。Ott Testは1)直立姿勢で第7頸椎棘突起(以下C7)とC7から30cm下方をマーク,2)体幹最大屈曲位で2点間距離をメジャーで測定する。臨床的意義は2点間距離の延長が3cm未満では胸椎部柔軟性が低下していると定義される。対象全例にOtt Testを行い,体幹最大屈曲位で3cm以上群(以下正常群)が6例,3cm未満群(以下過少群)が6例に分類した。両群に対してFFDと体幹屈曲動作遂行時の重心動揺を測定した。重心動揺は重心動揺計(アイソン株式会社製)を用いた。測定方法は重心動揺計上で開眼,裸足,踵接地の直立姿勢から指先をつま先に向け下ろすように指示し,前後方向の重心動揺を測定した。なお,聴覚や視覚刺激による偏位を生じない様な環境設定に留意した。両群間でのFFDと重心の前後動揺の比較・検討を行った。【結果】1)FFDは正常群が過少群より有意(p<0.01)に小さかった。2)前後方向の重心動揺は正常群が過少群より有意(p<0.01)に小さかった。【考察】胸椎部に対するモビライゼーションは胸椎部の痛みや機能障害に対する報告より,むしろ頚部障害,肩障害,上肢障害,下肢障害など胸椎と解剖学的に関係がない部位の障害に対して良好な結果が確認され,Regional Interdependence理論が提唱されている。今回,胸椎の柔軟性と全身的な生体力学的変化を確認するために,三次元動作解析器で胸椎可動性測定の妥当性が確認されているOtt Testで鑑別後,FFDと重心動揺から生体力学的変化を検討した。FFDは一般に下肢筋の短縮や腰部筋群の緊張を評価する方法である。しかし,体幹前屈動作には胸椎部の動きも関連している。Bruggerらは体幹屈曲の際,最初に脊柱起立筋が強く収縮し,次に臀筋群,そして最後にハムストリングスと下腿三頭筋が収縮する。脊柱は最終屈曲域には脊柱の靭帯のみで支えられ骨盤に固定される。その骨盤は前方回旋しているがハムストリングスによる固定されると報告している。また,前屈動作時の胸椎部は椎間関節の前方滑り,肋横突関節も前方滑りが起こる。胸椎部の柔軟性が低下すると上記の運動が障害されFlexion Relaxation Phenomenon(以下FRP)が起こらず,脊柱起立筋の持続的な収縮が起こる。そのため正常群は過少群と比較し有意(p<0.01)に良好な結果が得られたものと考える。重心の前後動揺方向への変化は,過少群はFRPが起きず,脊柱起立筋とハムストリングスの持続的な収縮が起こる。また正常な体幹屈曲動作よりも胸椎の屈曲機能不全が起きているため,重心の位置は支持基底面に対しより前方に逸脱する。その代償として,重心を支持基底面内に留めるためハムストリングス,下腿三頭筋が通常よりも早く収縮が起こる。よって,骨盤は前傾できず,股関節も屈曲機能不全が起こる。そのため正常群は過少群と比較し有意(p<0.01)に重心の前後動揺が少なかったのではないかと考える。今回の結果から胸椎の柔軟性は胸椎のみではなく,FFDや重心動揺などの全身的生体力学的変化が示唆された。【理学療法学研究としての意義】Ott Testを用いた胸椎部柔軟性の結果とFFDと重心動揺に関連性が示唆され,胸椎可動域制限と全身的生体力学的変化が確証された。今後,胸椎部柔軟性の向上と肩関節や頸椎可動域,下肢筋活動変化に関する検討が必要である。また今回の対象者は20代の健常な男性である。性差や年齢差,疾患の有無で同様な結果が得られるのか検討が必要である。