著者
黒田 乃生 小野 良平
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.38.3, pp.679-684, 2003-10-25 (Released:2017-10-01)
参考文献数
25
被引用文献数
1

観光地の成立過程において、潜在的な資源が記号化され、「観光の対象」として意味を付与されるためには、観光経済の発展における内的・外的作用が必要である。この記号化の作用は「観光計画」の重要な一面であるといえる。一般および村が白川村を「観光地」として認識したのは1970年代である。一方、認識される観光資源が史跡から合掌造りの建物へと変化する時期は一般にくらべて村が遅く、白川村が当初一般社会からの認識に呼応する形で資源の認識が進んだことが明らかである。その後、村は内的作用によって資源を新たに作り出していったものの、それが来訪者から消費対象として認識される記号となるには至らなかった。観光とは地域にとってそこに投影される「まなざし」の中でどのような自己認識を行なうのかという相互関係の中にあり続けること、という視点が計画の立場にも必要である。
著者
森永 凌汰 玉城 大生 小野 智司
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第36回 (2022) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.2B5GS602, 2022 (Released:2022-07-11)

近年の深層ニューラルネットワーク(DNN)の急速な発展は,自然言語処理(NLP)分野においても様々な技術革新を起こしている.しかし,DNNがその性能を発揮するためには大量の学習データが必要であり,特に教師信号のラベル付けがボトルネックとなっている.このため,教師なし学習データから教師あり学習データを生成する自己教師あり学習が注目を集めている.一方で,日本語を対象とした文章校正支援の研究が広く行われており,表記ミスや同音異義語誤りなどの表層的な誤りの検出が可能となっている.本研究では,文法的あるいは意味的な整合性に基づいて,文の接続関係の妥当性を判定する自己教師あり学習方式を提案する.提案手法は,ランダムに選択された2つの文を切断し,結合することで文を合成し,結合箇所へのラベル付けにより,教師なし学習データから教師あり学習データを合成する.実験により,NLPタスクにおける提案手法の有効性を確認した.
著者
北崎 太介 小野 健太 渡邉 誠
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第63回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.133, 2016 (Released:2016-06-30)

かつてインターネットの誕生が人々の生活を大きく変えたように、次の時代はバイオテクノロジーが我々の生活を大きく変えるのではないかと言われている。発光生物に分類される夜光虫は、海に浮遊する直径1~2mmの動物プランクトンであり、世界各国の熱帯から温帯の沿岸部にかけて幅広く分布している。波などの物理刺激に反応して一瞬青白く光る性質があり、時折沿岸部では幻想的な光景が確認できる。夜光虫をモチーフにしたデジタルアート作品はいくつか見られるが、夜光虫そのものが応用された事例は少ない。本研究では、夜光虫をアートや工業製品等に実利用するための生物発光制御方法を、培養・刺激実験・制御実験の3段階の過程から考察した。培養からは、夜光虫は水面に浮遊し、特に瓶のような容器中では淵に集中することがわかった。刺激実験からは、夜光虫が生物発光するための物理刺激として、一定以上勢力のある水流、もしくは泡が有効であることがわかった。制御実験では、培養・刺激実験を基に、夜光虫の生物発光を利用し、水中で数字など記号の描画を行った。将来的に遺伝子操作等で発光時間と輝度を高めることで、電球や炎と並ぶ光源になりうると考えられる。
著者
小林 聖幸 野村 貴子 赤岩 譲 扇喜 智寛 扇喜 真紀 石川 賀代 小野 正文 正木 勉
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.194-200, 2023-04-01 (Released:2023-04-13)
参考文献数
22

症例は50歳代男性.全身倦怠感,皮膚掻痒感,褐色尿を主訴に受診し血液検査で総ビリルビンや肝胆道系酵素の上昇を認めた.肝炎ウイルスマーカーや自己抗体は陰性であった.第5病日に入院時はみられていなかった皮疹が四肢体幹に出現し,入院時の梅毒反応定性が陽性であったため,再度詳細に病歴を聴取したところ,入院2カ月前の性風俗産業利用歴が判明した.早期梅毒第2期及び早期梅毒性肝炎と診断したが,患者が近日中に転居予定で長期入院や頻回な外来通院は困難であったことから,2022年1月から本邦で使用可能となった早期梅毒には単回投与での治療が認められているベンジルペニシリンベンザチン水和物(BPB)筋注を用いた.皮疹や肝障害は速やかに改善し,梅毒は治癒した.本邦において早期梅毒性肝炎の治療にBPB筋注が用いられた報告はみられず,有効な治療法と考えられたため,文献学的考察を加えて報告する.
著者
倉藤 祐輝 尾頃 敦郎 藤井 雄一郎 小野 俊朗 久保田 尚浩 森 茂郎
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.425-431, 2008 (Released:2008-07-25)
参考文献数
21
被引用文献数
5 5

ブドウの早期成園化と高品質な果実の多収を目的に,灌水同時施肥による超密植栽培システムを開発した.本システムは,根域を制限せずに,10 a当たり800本以上の挿し木苗を超密植し,樹冠下に不透水性マルチシートを設置し,自動灌水制御装置と液肥混入器および点滴灌水チューブを用いて,生育ステージに応じて灌水と施肥を同時に行う方式である.定植2年目には成園並みの果実生産が可能であった.果実品質と収量に及ぼす新梢密度の影響を調査したところ,着果基準を15果房・m−1と設定した場合,新梢密度を10~20本・m−1とすることで,果粒重,糖度および果皮色の優れた果実の多収生産が可能であることが明らかとなった.以上の結果から,本方式での3か年の果実品質と収量から,年間の灌水同時施肥基準を策定した.
著者
奈良 猛 稲垣 武 小野 亮平 村田 淳
出版者
一般社団法人 日本呼吸理学療法学会
雑誌
呼吸理学療法学 (ISSN:24367966)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.39-46, 2023-03-25 (Released:2023-03-25)
参考文献数
24

はじめに:人工呼吸器離脱に難渋した院外心肺停止蘇生後症例に対し,吸気筋トレーニング(inspiratory muscle training:IMT)と歩行運動を実施し,良好な結果を得たため報告する。症例紹介:急性心筋梗塞による院外心肺停止蘇生後の72歳男性,入院後早期より理学療法を開始したが人工呼吸器離脱に難渋したため,第38病日より人工呼吸器装着下での歩行練習,第44病日より気管切開下IMTを4週間実施した。結果:IMT前後で吸気筋力(38→57cmH2O),動脈血二酸化炭素分圧(68→56 Torr)の改善を認め,第57病日に人工呼吸器離脱,第95病日には在宅酸素療法導入の上ADL自立での自宅退院に至った。まとめ:長期人工呼吸器管理を要した本症例に対する気管切開下IMTと積極的な歩行運動は,呼吸筋力の改善,II型呼吸不全再増悪の予防,人工呼吸器離脱,更には良好なADL再獲得へ寄与した可能性がある。
著者
大田尾 浩 村田 伸 八谷 瑞紀 弓岡 光徳 小野 武也 梅井 凡子 大塚 彰 溝上 昭宏 川上 照彦
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.123-129, 2012 (Released:2013-04-02)
参考文献数
41
被引用文献数
2 2

[目的]脳卒中片麻痺患者の座位での骨盤傾斜角度と基本動作能力との関連について検討した。[対象]脳卒中片麻痺患者28名(男性17名,女性11名)とした。[方法]測定項目は,端座位での自動運動による骨盤前傾角度,骨盤後傾角度,骨盤運動可動域,基本動作能力(立ち上がり,着座,立位保持,片脚立位,歩行),Brunnstrom stage および下肢筋力とし,基本動作の可否に関連する因子を分析した。[結果]片脚立位以外の基本動作能力と骨盤前傾角度に有意な関連を認めた。一方で,各測定項目と骨盤後傾角度および骨盤運動可動域とは有意な関係は認められなかった。[結語]脳卒中片麻痺患者の自動運動による骨盤前傾能力は,基本動作能力に関連している可能性が示された。
著者
小野 ?子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
藝文研究 (ISSN:04351630)
巻号頁・発行日
vol.82, pp.20-41, 2002-06-01

1 銀行家と「理想的な幇間」2 「幇間」から「小説家」へ3 「裏づけ」から「対比」へ4 方法の呪縛5 空転する言葉
著者
市場 大亮 三浦 貴大 坂尻 正次 大西 淳児 小野 束
雑誌
研究報告アクセシビリティ(AAC) (ISSN:24322431)
巻号頁・発行日
vol.2016-AAC-2, no.13, pp.1-4, 2016-11-25

コンピュータゲーム内の視覚 ・ 聴覚 ・ 触覚など多感覚コンテンツの充実に伴い,視覚障害があっても結果的に遊べるゲームが増加している.しかし,視覚的な提示情報を把握可能な弱視者であっても,時にプレイが困難になるケースが多々あり,アクセシビリティの不十分さを感じざるを得ない.また,ゲームにおけるアクセシビリティは再検討される課題となっているが,弱視者に焦点を当ててアクセシビリティ上の問題を詳らかにした例は少ない.このため,本研究の目的を,弱視者が現在のコンピュータゲームをプレイする上での問題点を明らかにすることと設定した.特に本論文では,弱視者に対してコンピュータゲームのプレイ状況等について小規模ながらアンケート調査を行い,彼らの抱えている問題点をまとめた.結果より,弱視者の多くがプレイするジャンルや,プレイしやすい要因,ゲーム改善要望がまとめられた.また,視覚的不便さに対する方策についても明らかにした.
著者
小野 孝
出版者
一般社団法人 日本数学会
雑誌
数学 (ISSN:0039470X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.72-81, 1963-10-30 (Released:2008-12-25)
参考文献数
11
著者
藤中 義史 松永 麻美 高橋 恵 瀬谷 恵 小野山 陽祐 岡田 真衣子 高下 敦子 大橋 祥子 増永 健 岩田 みさ子 瀧川 逸朗
出版者
一般社団法人 日本周産期・新生児医学会
雑誌
日本周産期・新生児医学会雑誌 (ISSN:1348964X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.37-43, 2022 (Released:2022-05-10)
参考文献数
22

在胎37,38週のEarly term児における母体患者背景,新生児期合併症,入院率について後方視的に検討した.2014年から2017年に当院で出生した正期産児(4,013例)のうち,多胎,先天異常等を除外したEary term児894例,Full term児1,695例を対象とした.結果は,Early term群で母体合併症,帝王切開(特に予定帝王切開)症例が多く,新生児期合併症は,単変量解析ではEarly term群に新生児仮死と低血糖(< 50mg/dL)が多かったが,多変量解析では低血糖のみ有意差がみられた.新生児科入院率および再入院率は“Early term”が独立したリスク因子であった.当院では予定帝王切開を主に38週台で行っているが緊急帝王切開増加リスクは許容範囲内であり(約8%),欧米の推奨するFull termよりもやや早めに設定することは妥当と考える.
著者
丹保 信人 三根 幸彌 小野 健太 青山 多佳子
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.CbPI1290, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】シンスプリントは下腿の代表的なスポーツ障害であり、一般的に運動に伴う下腿遠位内側部の疼痛と圧痛が主訴とされる。理学療法においては足部への介入が中心となることが多く、足底板を使用した介入の報告も多くなされている。今回、股関節・体幹機能に着目した理学療法が奏効したシンスプリント症例2例を経験した。シンスプリントに対する理学療法の一つの視点として有用ではないかと考えられたため以下に報告する。【方法】1.対象対象はシンスプリントと診断された17歳女性(症例A)と16歳男性(症例B)の2例。2例ともに患側は右であった。競技種目は症例Aはバスケットボール、症例Bは野球。理学療法開始前、症例Aは約2ヶ月間、症例Bは約1ヵ月間、他院にて外用薬を処方され経過観察されていた。2.理学療法評価項目股関節・体幹機能評価として股関節周囲筋筋長検査、股関節周囲筋筋力評価(Manual Muscle Testing:MMT)、フロントランジ、胸骨下角の4項目を実施した。また、疼痛の状態をNumerical Rating Scale(NRS)を用いて評価し、疼痛の経過を記録した。前述の股関節・体幹機能評価より得られた問題点に対して運動療法プログラムを立案し、伝達した。3.その他服薬、外用薬の使用はしなかった。装具や足底板についても同様に使用しなかった。【説明と同意】本人に対して本研究の趣旨を説明し、書面にて同意を得た.また、本研究を進めるにあたり竹田綜合病院倫理委員会の承認を得た。【結果】1.初期理学療法評価症例A:理学療法開始時は疼痛によりランニングが困難であり(NRS5)、歩行時にも疼痛が自覚されていた(NRS1)。下腿遠位内側部に圧痛と腫脹を認めた。股関節周囲筋筋長検査は患側大腿筋膜張筋が陽性。MMTは患側腸腰筋3、中殿筋後部線維が2+。患側フロントランジでは患側下肢にknee in-toe outが観察され、患側への骨盤回旋も伴った。胸骨下角に非対称性は観察されなかった。症例B:理学療法開始時は疼痛によりダッシュが困難であった(NRS4)。下腿遠位内側部に圧痛を認めた。股関節周囲筋筋長検査は患側大腿筋膜張筋が陽性。MMTは患側腸腰筋、中殿筋後部線維が2+。患側フロントランジでは症例Aと同様に患側下肢のknee in-toe outと患側への骨盤回旋が認められた。胸骨下角は患側に狭小化が認められた。2.理学療法介入伝達した運動療法内容は硬化筋ストレッチ、中殿筋後部線維筋力増強運動、股関節・体幹筋協調運動(コアエクササイズ)であった。各運動療法の方法や負荷は来院時の評価結果や疼痛の状態に合わせて適宜変更した。理学療法介入中は、運動や日常生活上で患部に疼痛が出現する動作を、本人と相談の上可能な限り制限した。症例Aは2週に1回で計3回、症例Bは週1回で計4回の外来理学療法をそれぞれ実施した。 3.最終評価結果 症例A:下腿遠位内側部の疼痛は消失し部活動にも完全復帰した。大腿筋膜張筋筋長検査は陰性化した。患側腸腰筋、中殿筋後部線維のMMTは4となった。患側フロントランジでのknee in-toe outはわずかに残存したが患側への骨盤回旋は消失した。症例B:下腿遠位内側部の疼痛は消失し部活動にも完全復帰した。大腿筋膜張筋筋長検査は陰性化した。患側腸腰筋、中殿筋後部線維のMMTは4となった。患側フロントランジでのknee in-toe out、患側への骨盤回旋はともに消失した。【考察】シンスプリント2例に対し、股関節・体幹筋の硬化、筋長の変化とそれに伴う弱化に着目し理学療法を行った。大腿筋膜張筋の硬さと、拮抗する中殿筋後部線維の弱化により、疼痛出現近似動作であるフロントランジでは股関節内旋が優位となっていた。また患側への骨盤回旋を伴うことから体幹筋による骨盤コントロールが不十分であることも疑われた。これらのことから、股関節・体幹における複合的な機能障害の結果としてknee in-toe outが生じやすくなっていると考えた。理学療法評価から得られた問題点に対しては、股関節・体幹を協調する機能的複合体として捉え、運動療法プログラムを立案、伝達するように考慮した。症状の消失に至った理由としては、運動療法を通して股関節・体幹機能に改善が得られたことにより、knee in-toe outを防止する効率の良い下行性運動連鎖が獲得されたためではないかと考えた。【理学療法学研究としての意義】シンスプリントに対する理学療法においては、足部からの上行性運動連鎖だけではなく、股関節・体幹からの下行性運動連鎖の影響を考慮することの重要性が示唆された。
著者
岡田 哲弘 水上 裕輔 林 明宏 河端 秀賢 佐藤 裕基 河本 徹 後藤 拓磨 谷上 賢瑞 小野 裕介 唐崎 秀則 奥村 利勝
出版者
一般社団法人 日本膵臓学会
雑誌
膵臓 (ISSN:09130071)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.302-312, 2020-08-31 (Released:2020-08-31)
参考文献数
58
被引用文献数
3 2

膵癌のゲノム解析では,4つの遺伝子異常(KRAS,CDKN2A,TP53,SMAD4変異)を高率に認める.最近の研究により,ゲノム,遺伝子発現,タンパク,代謝などの様々なレベルでの異常が明らかとなり,これらのプロファイリングによる個々の患者の発癌や進行パターン,治療効果予測に応用されることが期待される.2019年に適切な薬物治療の提供を目的とした遺伝子パネル検査が保険収載され,本格的なゲノム医療の時代を迎えた.このような新しい診断技術を早期膵癌の発見や遺伝素因など高い発癌リスクを有する人々の発病予防を目指した医療へと拡大するには,多様な分子異常の検出方法の確立が求められる.これら膵癌の分子診断には,膵内の多発病変の存在と腫瘍内の不均一性,癌のクローン進化の理解が重要となる.本稿では,膵癌の発生過程でみられる分子異常を概説し,診療への活用が期待される最新の技術革新について紹介する.
著者
坂下 克之 畑 明仁 小野 祐輔
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.22-00207, 2023 (Released:2023-02-20)
参考文献数
16

模擬地震動作成時の位相の設定方法には,標準的なものとしては波形の包絡形状を規定する方法があるが,サイト固有の位相特性を反映できないこと等から,近年では位相特性の客観的かつ定量的な指標として群遅延時間が注目され,これを用いた模擬地震動作成方法が研究されている.その一般的な方法は,所定の確率分布に従う群遅延時間を振動数軸上でランダムに発生させて位相を決定するというものであるが,作成波は左右対称に近い包絡形状になる・ピークが集中する傾向がある・ノイズ成分が目立つ等の課題・留意点が認められる.そこで本研究では,波形の包絡線関数と群遅延時間のばらつきを関係付けることにより,波の包絡形状の設定とサイトの位相特性の反映とを両立できる新たな模擬地震動の作成方法を提案した.