著者
後藤 拓也
出版者
地理科学学会
雑誌
地理科学 (ISSN:02864886)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.114-126, 2018-10-28 (Released:2019-09-28)
参考文献数
16
被引用文献数
1

本稿では,1990年代以降のインドにおける農業空間構造の変化を示す事例として,「ピンクの革命」と称されるほど急速な発展を遂げているブロイラー養鶏産業に着目し,その産地形成プロセスを考察した。インドのブロイラー養鶏産業は,多くの大手養鶏企業が立地する南インドで先行的に産地形成が進むなど,伝統的に「南高北低」の地域性を特徴としてきた。しかし1990年代後半以降,それまで養鶏産業の立地が進まなかった北インドにおいて急速な産地形成が認められる。そこで,北インドのなかでも新興産地の代表例であるハリヤーナー州において現地調査を行った。その結果,調査対象地域では1990年代以降,多くの農家がブロイラー養鶏に新規参入し,大規模な「2階建て鶏舎」を相次いで建設するなど,従来の穀倉地帯が大きく変容していることが確認された。しかし調査対象地域におけるほとんどの農家は,ブロイラー養鶏を始めるに当たって,ハード面(鶏舎の建設資金)およびソフト面(飼養技術の習得)において十分な政策的サポートを受けていないことが判明した。そのため,調査対象地域におけるブロイラー養鶏農家の技術的水準は総じて低く,鶏病などの疫病リスクに対して脆弱な産地構造をもっているという課題が明らかとなった。
著者
相原 貴之 後藤 一寿 恩田 聡 安田 宗伸 山城 梢
出版者
The Association for Regional Agricultural and Forestry Economics
雑誌
農林業問題研究 (ISSN:03888525)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.63-68, 2010 (Released:2012-02-24)
参考文献数
2
被引用文献数
1

The Siquasa is a small and acid citrus fruit having a distinctive aroma, which is produced in the northern part of Okinawa. The main commercial by-product obtained from this fruit is 100% juice. Recent years have witnessed an increased leveling-off of the sale of Siquasa by-products and lowering of the price of the raw material, i.e., the fruit. It can be said that the production and product development of the Siquasa fruit have entered into a new phase aiming at securing a steady market position. We presented a model design of Siquasa production and product development in the wake of the boom with the aim of facilitating the abovementioned objective. In Okinawa, a form of Siquasa called “Aogiri” is used as vinegar in August and September. Expanding the sale of Aogiri in mainland Japan would create a new demand and market for the product. However, in order to keep obtaining a higher price for Aogiri, it is necessary to ensure a continuous supply of the quality and quantity of the product that the market demands and to build a committed relationship between the areas of production and the market.
著者
伊豆 英恵 山田 康枝 後藤 邦康 須藤 茂俊
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.10, pp.664-671, 2010 (Released:2016-02-04)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

マウスを用いた高架式十字迷路試験によって,清酒の飲用摂取による抗不安作用を検討した。1)エタノールまたは普通酒を飲用させた場合(エタノール換算1.2g/kg体重を2回投与),対照と比較してオープンアームへの進入回数がそれぞれ2.7倍と3.4倍,滞在時間が3.2倍と3.9倍に増加しており,普通酒もエタノール同様に抗不安作用があり,さらにその作用がエタノールよりも高い傾向にあった。2)普通酒または吟醸酒を飲用させた場合(エタノール換算1.2g/kg体重を2回投与),普通酒と比較して,吟醸酒でオープンアームへの進入回数が1.7倍,滞在時間が1.6倍に増加しており,普通酒よりも吟醸酒の抗不安作用が有意に高いことがわかった。3)吟醸酒に含まれるのとほぼ同程度となるように吟醸酒香気成分であるカプロン酸エチル(10mg/l)または酢酸イソアミル(2mg/l)を普通酒に添加してマウスに飲用させた場合(エタノール換算1.2g/kg体重を2回投与),普通酒と比較してオープンアームへの進入回数がそれぞれ1.5倍と1.4倍,滞在時間がいずれも1.5倍に増加しており,カプロン酸エチルと酢酸イソアミルが抗不安作用を有意に促進することが明らかになった。4)通常,清酒に含まれる濃度範囲では,カプロン酸エチル,酢酸イソアミル,イソアミルアルコールはADHによるエタノール代謝を阻害しないことがわかった。
著者
山田 徹 後藤 晋吾
出版者
日本ファイナンス学会 MPTフォーラム
雑誌
現代ファイナンス (ISSN:24334464)
巻号頁・発行日
pp.420002, (Released:2020-04-28)
参考文献数
60

財務データベースにある全ての項目を用いて財務シグナルを生成するデータマイニング法を用いて,現行の日本株ファクターモデルの説明力を検証し,今後のモデル改良への示唆を得た.検証対象は主にFama–Frenchファクターモデル群とした.収益性ファクターと低投資ファクターを含む新しいファクターモデルは,これらを含まない3ファクターモデルに比べて財務シグナルのポートフォリオ・リターンをより良く説明する.しかし,ブートストラップ法による検定により,偶然(偽発見)の可能性を勘案した後でも現行のファクターモデルでは十分に説明できないアノマリーがあることがわかった.これら頑健なアノマリーの中には,企業の無形資産投資や経営者の内生的な意思決定を強く反映すると解釈できる財務シグナルが複数見つかった.これらは今後のファクターモデルが織り込んで発展していくべき方向を示唆していると考えられる.
著者
後藤 讓治 細矢 由美子
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.447-454, 1985-06-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
13

頂窩は,1937年,所によって報告された歯牙咬頭部附近のエナメル質に認められる小窩であり,これまで頂窩に関する報告は少ない。本研究においては,10例の咬耗,磨耗の少ない人間永久歯の頂窩49例が観察された。観察は先ず実体顕微鏡によってなされ,次いで超音波洗浄器による洗浄,乾燥後,金蒸着が施され,走査型電子顕微鏡によって観察並びに計測が行われた。また,標本の一部は,頂窩中央部で矢状断され,その側壁部が走査型電子顕微鏡によって観察された。観察の結果,1歯あたり最大9個,最小2個,平均4.9個の頂窩が見られた。頂窩の開口部の形態は,円形(46.9%),楕円形(36.7%)三角形(10.2%),その他(6.1%)に分類された。頂窩の直径は最大0.68mm,最小0.014mmで,平均0.17mmであった。頂窩は,歯牙の咬頭部付近のエナメル質に喇叭状に開口し,エナメル象牙境付近で試験管状に終了する盲管である。また,頂窩の側壁には,側枝状の小孔が開口しているのが観察された。
著者
小野寺 誠 後藤 沙由里 関根 萌 鈴木 光子 菅谷 一樹 大山 亜紗美 全田 吏栄 鈴木 剛 塚田 泰彦 伊関 憲
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.633-640, 2023-10-31 (Released:2023-10-31)
参考文献数
23

目的:福島市における救急搬送困難事案の推移および原因をコロナ禍発生前後で調査した。方法:2019年度〜2021年度の間に福島市内で発生した照会回数5回以上の救急搬送困難事案を対象に,年度別に発生数,事故種別,照会時間帯(平日日勤帯,平日夜間帯,土日祝日),医療機関の断り理由を検討した。結果:発生数は71件/82件/193件と2021年度で有意(p<0.001)に増加していた。事故種別検討では一般負傷が19 年度と比較して2021年度で有意(p<0.001)に多く,照会時間帯別にみると平日日勤帯の割合が2019年度と比較して2021年度で有意(p<0.001)に多かった。断り理由別では「ベッド満床」が2021年度で,2019年度, 2020年度と比較して有意(それぞれp<0.001,p<0.001)に多かった。結論:コロナ禍では需要と供給の両輪に対応可能な救急搬送システムを立案し,回復期・慢性期施設を含めた地域連携を構築することが重要と思われた。
著者
二村 悟 後藤 治
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.68, no.570, pp.147-152, 2003-08-30 (Released:2017-02-09)
参考文献数
30
被引用文献数
1

In Shizuoka prefecture, the tea industry prospered particularly in Kitaban-cho, Shizuoka city, and a distinctive townscape where tea merchants gathered was created. No historic building survive in Kitaban-cho today, but before World Warn There were many Westernstyle offices and large warehouses in that area. The distinctive feature of this townscape was that it differed from the traditional Japanese arrangement characterized by machiya-style houses. Our investigation has revealed that the townscape of Kitaban-cho was created in the late Meiji era and that most of the buildings were offices used by foreign trading companies. Factors behind the formation of this townscape included the development of new machinery, increases in the volume of exports and industrial modernization.
著者
池尾 恵里 後藤 春彦 佐藤 宏亮
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.825-830, 2014-10-25 (Released:2014-10-25)
参考文献数
4
被引用文献数
1

生活の質の向上と心身の健康の維持のため、高齢者の外出促進の重要性が高まっている。外出行動は高齢者と都市空間との関係を考える上で、都市計画的課題になりつつある。本研究では、要介護者の外出行動の実態とデイサービスが提供する外出支援の課題を明らかにしている。また、調査では大田区の外出支援を行っているデイサービスセンター(以下、DS)において、ボランティアとして勤務しながら、65歳以上の要介護者を対象として、ヒアリングおよび参与観察を行った。本研究では以下の3点を明らかにした。1)利用者の日常生活における外出行動を自立積極型、依存積極型、自立消極型、依存消極型の4類型に分類し、類型別に外出行動の実態を把握した。2)利用者の外出行動に差異を生む要因として、身体状況、家族環境、居住環境、生活習慣の4点が挙げられ、外出行動の促進・抑制に影響することが明らかになった。3)DSによる外出支援サービスの実態を空間的に把握し、利用者が外出支援を利用する理由を明らかにした。以上から利用者の外出行動を類型ごとに考察することによって、DSに求める外出支援の全体像と課題を明らかにした。
著者
後藤 正夫
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, 1961-02-25
著者
後藤 奈美
出版者
日本酒学研究会
雑誌
日本酒学ジャーナル (ISSN:2758142X)
巻号頁・発行日
vol.2023, pp.32-37, 2023-11-07 (Released:2023-11-07)

コロナ禍が清酒の消費に与えた影響を分かりやすく示し、記録することを目的に、日本酒造組合中央会が記者発表する毎月の課税移出量を、コロナ禍前の2018年及び2019年の平均値に対する割合として示した。その結果、清酒の消費量を反映すると考えられる課税移出量は、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置、飲食店への休業や時短営業の要請などが出されると大きく減少し、新規感染者数が減少し、それらが解除されるとある程度回復するという増減を繰り返したこと、また一般酒よりも外食での消費が多いとされる特定名称酒の方が大きく影響を受けたことが示された。2022年下半期の第7波、第8波では、それまでとは比較にならないほど多くの新規感染者数となったが、緊急事態宣言等は発出されず、課税移出量の減少も以前よりは小さくなった。ただし、2018-2019年と比較して80~90%程度と厳しい値であることに変わりはなく、今後の動向が注視される。
著者
後藤 紀子 飯田 和成 萩澤 良美
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.42, no.11, pp.590-599, 2001-11-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

Child B及び一部 Child Cを含む29例の肝硬変患者に分岐鎖アルブミン製剤 (BCAA顆粒) を投与し, BCAA顆粒のこむら返り症状に対する投与効果を検討し, 投与前及び3カ月後においてアミノ酸分析を行った. 投与前においてこむら返り症状は66%に認められ, その発生回数 (0~20回/週) は血中タウリン濃度とのみ有意 (p<0.05) な逆相関関係が認められた.BCAA顆粒投与にて対象例全例の検討で体重, 総タンパク濃度, アルブミン濃度, 赤血球数に有意な上昇を認めた. こむら返り症状のある群 (19例) はBCAA顆粒投与後に有意(p<0.001) に発生頻度が低下しており, タウリン濃度の有意な上昇 (p<0.01) が認められた. また、メチオニン濃度の低下傾向 (p<0.1) を認め, タウリン合成活性化の関与が示唆された. BCAA顆粒は栄養状態の改善だけでなく, こむら返り症状の改善も望める治療法であると考えられた.
著者
金児 正史 早藤 幸隆 後藤 顕一
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 45 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.169-172, 2021 (Released:2021-12-20)
参考文献数
13

2021年度から高等学校で始まる教科「理数」では,科学的に探究する過程を踏まえて自ら見出した課題を解決し,考えを伝達する活動を求めている。こうした学習にたけていない高校生の状況も踏まえ,筆者らは,理科と数学科の融合に焦点化した課題を教師が提供し,その課題を解決する過程を通して,理科や数学科に関連する既習事項の科学的背景をより深く学ぶとともに,科学的・数学的な課題解決の過程も学べる授業の開発を行った。本稿では,理科と数学科を総合する課題として,化学反応速度に着目した。化学の教科書のデータを活用して,時間の変化とともにモル濃度の減少速度が,変化しないで残っている溶質のモル濃度に
著者
後藤 元
出版者
公益財団法人 損害保険事業総合研究所
雑誌
損害保険研究 (ISSN:02876337)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.1-30, 2020-05-25 (Released:2022-03-30)
参考文献数
31
被引用文献数
2

本論文では,自動車をめぐる技術革新として近年注目が集まっている自動運転車とライドシェアによる人身事故についての民事責任のあり方を検討する。まず,完全自動運転車による事故については,現行法の下では自動運転システムにエラーがあった場合であっても所有者に運行供用者責任が成立するため,自動運転車メーカーに安全な自動運転システムを開発するインセンティブをどのように与えるかが問題となる。次に,通常の自動車を用いたライドシェアサービスにおける事故については,契約上の建付けと現行法を前提とした場合には,ライドシェアサービス事業者は旅行業者としての責任を負うにとどまる可能性が高く,賠償資力や安全性をどのように確保するかが課題となる。以上を前提に,完全自動運転車を用いたライドシェアサービスにおける事故についての民事責任について,完全自動運転車が実現した際の自動車の保有形態がどのようになるかを考えつつ,検討する。
著者
波多野 元貴 鈴木 重行 松尾 真吾 後藤 慎 岩田 全広 坂野 裕洋 浅井 友詞
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48100755, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】 スタティック・ストレッチング(static stretching:SST)は、柔軟性の改善をもたらすとされ、臨床場面やスポーツ現場などで広く用いられる。他方、SST後は最大発揮筋力や単位時間あたりの筋力発揮率であるrate of force development(RFD)などに代表される筋パフォーマンスの低下が生じるため、最大限の筋力発揮を要するパフォーマンスの前にはSST実施を避けるべきであるとする報告が多い。また、SST後の筋パフォーマンス低下の要因のひとつとして、筋電図振幅の減少など神経生理学的な変化が報告されている。SST後の発揮筋力や瞬発的なパフォーマンスの変化を検討した先行研究を渉猟すると、少数ながらSST後に動的な運動や低強度・短時間の等尺性収縮を負荷することで、筋パフォーマンスの低下を抑制できる可能性が示唆されている。しかし、SST後の運動負荷による筋パフォーマンス低下抑制と神経生理学的変化の関連性について比較検討した報告はない。よって、本研究はSSTおよびその後に行う低強度・短時間の等尺性収縮が最大等尺性筋力、RFDおよび筋電図振幅に与える影響を明らかにすることを目的とした。【方法】 被験者は健常学生7名(男性4名、女性3名、平均年齢21.4±1.0歳)とし、対象筋は右ハムストリングスとした。被験者は股関節および膝関節をそれぞれ約110°屈曲した座位をとり、等速性運動機器(BTE社製PRIMUS RS)と表面筋電計(Mega Electronics社製ME6000)を用いて測定を行った。評価指標は6秒間の膝関節屈曲最大等尺性収縮時の最大等尺性筋力、筋収縮開始時から200 msec間の時間-トルク関係の回帰直線の傾きであるRFD、等尺性収縮中の内・外側ハムストリングスの筋電図平均振幅(root mean square:RMS)とした。実験は、まず6秒間の膝関節屈曲最大等尺性収縮を行い、15分間の休憩の後、膝関節を痛みの出る直前の角度まで伸展し、300秒間保持することでハムストリングスに対するSSTを行った。その後は、直ぐに6秒間の膝関節屈曲最大等尺性収縮を行う場合(SST群)、または30%maximum voluntary contraction(MVC)の強度で6秒間の等尺性収縮を行った後に6秒間の膝関節屈曲最大等尺性収縮を行う場合(SST-30%MVC群)のいずれかを行い、被験者はこの2種類の実験をランダムな順番に行った。統計処理は反復測定2元配置分散分析および対応のあるt検定を行い、有意水準は5% とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本実験は本学医学部生命倫理審査委員会および共同研究施設倫理審査委員会の承認を得て行った。被験者には実験の前に実験内容について文書及び口頭で説明し、同意が得られた場合のみ研究を行った。【結果】 最大等尺性筋力は、SST群では介入後に有意に低下し(介入前:64.5±19.7 Nm、介入後:57.0±18.7 Nm)、SST-30%MVC群では介入前後に有意な差を認めなかった(介入前:63.9±20.3 Nm、介入後:65.70±19.8 Nm)。また、介入方法と介入前後との間に交互作用を認め、両群の介入後の値に有意な差を認めた。RFDはSST群で介入後に有意に低下し(介入前:238.5±61.6 Nm/msec、介入後:160.0±63.8 Nm/msec)、SST-30%MVC群では介入前後に有意な差を認めなかった(介入前:215.0±88.5 Nm/msec、介入後:194.7±67.3 Nm/msec)。また、外側ハムストリングスのRMSは、SST群で介入後に有意に低下し(介入前:280.0±92.3 μV、介入後:253.9±97.0 μV)、SST-30%MVC群では介入前後に有意な差を認めなかった(介入前:270.6±62.3 μV、介入後:258.9±67.1 μV)。内側ハムストリングスのRMSは、両群とも介入前後の値に有意な差を認めなかった。【考察】 本研究結果より、SST後には最大等尺性筋力、RFD、外側ハムストリングスのRMSの低下が生じるが、SST後に低強度・短時間の等尺性収縮を負荷することで、これらの低下を抑制できることがわかった。先行研究にて、筋活動が低下した状態で30%MVCの等尺性収縮を負荷すると、筋紡錘の自発放電頻度が増加することが示されている。本研究では外側ハムストリングスのRMSの変化が最大等尺性筋力およびRFDの変化に同期していることから、SST後に低下した神経生理学的な興奮性が等尺性収縮の負荷によって高まり、筋パフォーマンス低下が抑制されたものと推察する。【理学療法学研究としての意義】 本研究から、理学療法士がスポーツ現場でウォームアップとしてSSTを行う際に危惧してきた筋パフォーマンス低下が、低強度・短時間の等尺性収縮により抑制できる可能性が示唆された。理学療法士が頻繁に行うSST効果に関する基礎的データの集積は、理学療法介入の科学的根拠に基づく理学療法介入の確立・進展につながるとともに、有効なSST実践に向けた方法論構築に寄与するものと考える。
著者
後藤 多可志 宇野 彰 春原 則子 横井 美緒 三盃 亜美 大六 一志
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.105-115, 2023 (Released:2023-04-29)
参考文献数
21

本研究では,小学4年生から中学3年生までの発達性読み書き障害児24名と典型発達児24名を対象に,ユニバーサルデザインデジタル教科書体(以下,UD書体)が音読や読解に与える影響を検討した.刺激は,音読課題(仮名非語,文章およびアルファベット)と文章読解課題で,書体はUD書体と教科書体の2種類を使用した.対象児に,2種類の書体で作成された音読課題と読解課題を実施した後,文字の読みやすさについて内観を聴取した.その結果,両群ともに音読課題における所要時間,誤読数,自己修正数と,読解課題の正答数に2書体間で有意差は認められなかった.主観的に,両群とも文字の可読性と読みの正確性についてUD書体を有意に選好したが,読みの流暢性についてUD書体は有意に選好されなかった.本研究の結果から,客観的評価と主観的評価は異なり,UD書体による正確性,流暢性および読解力に関する「読みやすさ」の指標は見出せなかった.
著者
浅木 茂 西村 敏明 岩井 修一 北村 英武 増田 幸久 迫 研一 佐藤 玄徳 渋木 諭 榛沢 清昭 佐藤 彰 大方 俊樹 後藤 由夫
出版者
Japan Gastroenterological Endoscopy Society
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.792-798_1, 1981-06-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
25
被引用文献数
6

著者らは,高周波電流による内視鏡的胃ポリペクトミー時の大出血例7症例と,緊急内視鏡検査で,大出血のため止血が必要と判断した出血性胃・十二指腸潰瘍9例の出血部に,直視下に99.5%エタノールまたは純エタノールを局注し,全例止血に成功した.局注止血後の再出血例はなく全身状態の急速な改善がみられ,全例外科的処置を必要とせず内科的に管理できた.本法は操作が簡単で,出血血管の周囲に適確に局注できる内視鏡のエキスパートであれば誰れでも,どこででもできる方法で,静脈瘤以外の出血に対して効果的な止血法と考える.
著者
柴田 裕一 鬼頭 壮宜 石田 裕之 後藤 優吾 上條 正義
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.1068-1074, 2020 (Released:2020-11-30)
参考文献数
11
被引用文献数
2

近年、更なる日没前後から夜間に発生する交通事故低減を目的に、路面にシンボルを投影し歩行者等に車両の挙動を伝える路面描画ランプが検討されている。本論文では交差点左折時に作動するターンシグナルランプ用路面描画を想定し、必要な明るさ及び幻惑光(グレア)の有無を確認した。