著者
木村 大樹 尾崎 紀夫
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.14-17, 2019 (Released:2019-12-28)
参考文献数
18

統合失調症の発症に強い影響力を持つまれなゲノム変異として,コピー数多型(CNV)が挙げられるが,CNVを起点として如何なるメカニズムによって統合失調症の発症に至るのかは不明である。筆者は日本人統合失調症の全ゲノムCNV解析から発症に強い影響力を持つと判明したCNV領域内の神経発達関連遺伝子を対象としたシークエンス解析を実施し,統合失調症の発症に強い影響力を持つ一塩基変異(SNV)の探索と,同定したSNVに基づく分子病態解明研究を行った。その結果,22q11.2領域内に存在するアミノ酸置換RTN4R‐R292Hや,16p13.11領域内に存在するNDE1‐S214Fが統合失調症と有意な関連を示すことが示唆された。さらに,これらのSNVによって,神経細胞の発達異常が引き起こされることも証明された。今後は,多発家系例などを対象とした全ゲノムシークエンス解析による新たな発症ゲノム変異の同定や,変異を模したモデル動物や変異を有する患者由来のiPS細胞を対象とした解析により,統合失調症の病態解明や,病態に基づく診断法・治療薬開発につなげていきたい。
著者
木村 光雄 国村 昇 MITSUO KIMURA NOBORU KUNIMURA
出版者
西京大学農学部
雑誌
西京大学学術報告 農学 (ISSN:03709329)
巻号頁・発行日
no.8, pp.64-73, 1956-09

1) ミツバカイドウの発根性は弱く, 緑枝・休眼枝共に殆んど実用的価値がないが, 緑枝の方が休眠枝に比較して稍発根性が強い。2) 緑枝の場合挿木の時期は7月上旬∿8月にかけて枝条の硬化直後がよく, その時期に於ける太い枝条の方が発根良好である。3) 休眠枝に対する予措としての低温処理或いは温湯浸漬による高温処理は発根に効果的でなく, 休眠の時期的な影響も殆んど認められない。4) hormone処理は発根率を高める効果は認められないが, 緑枝に対して濃度0.1%までの範囲内で濃度の高い方が発根の位置が上昇するし, 発根した個体の根数が無処理のものに比較して多くなる。hormone処理をした場合緑枝では発根する挿穂の基部が膨大となり次いで縦裂し, その裂開部よ発根する。hormone処理をすると緑枝の基部切口にcallusの形成が起らない。5) 発根に最も有利な操作は緑枝の基部が黄化処理されていることである。6) 緑枝挿に於いて用土は川砂よりも粘質的な赤土の方が発根に効果的である。7) ミツバカイドウの発根性は挿穂を取る母樹によつて差異を生じる可能性があり, 将来挿穂採収用の優良母樹の育成が望ましい。
著者
湯川 夏子 田中 康代 中村 道彦 木村 晶朗
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.63, pp.105, 2011

【目的】私たちが食事をしておいしいと感じる要因には、食べ物そのものの味やにおい、見た目だけでなく、食事をするときの周囲の環境(食事環境)が挙げられる。本研究では、食事環境として音環境を取り上げ、BGMが食欲に与える影響について検討した。<BR>【方法】2010年11月~12月の10時~12時に、大学生20名を対象に、食欲とBGMの関係性を調べる実験を行った。被験者に食堂の食器一式と料理の画像を見て食事をイメージしてもらいながら、5つの音環境(騒がしい洋楽・穏やかな洋楽・クラシック・学生食堂の録音・BGMを使用しない)において、食欲の増減、音環境の印象について質問紙調査を行った。同時に脳波測定(I-rlx, デジタルメディック社)を行った。統計処理にはSPSS15.0を、脳波解析にはData Make とExcel2010を用いた。<BR>【結果・考察】5つの音環境中、「騒がしい洋楽」で有意に食欲の減退がみられた。音環境の印象調査で、25形容詞対を主成分分析したところ、「優和性」「高尚性」「快活性」「評価性」の4つの因子が抽出された。因子得点より、クラシックで「優和性」「高尚性」が高い、「騒がしい洋楽」で「優和性」が低いという特徴がみられた。各因子と食欲の関係をみると、「優和性」と食欲の間に有意に高い相関がみられた。脳波測定の結果より「脳安静度」を算出したところ、学生食堂の録音やクラシックで安静度が高く、「騒がしい洋楽」では安静度が低かった。「脳安静度」と食欲は -0.63と逆相関がみられ、安静度が高い時、食欲も増すということが明らかになった。以上のことより、食事環境におけるBGMが人の食欲に様々な影響を及ぼしていることが明らかになった。
著者
大国 千尋 清水 祥子 木村 紘美 藤澤 義久 堀江 稔 宮平 良満 九嶋 亮治
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.679-684, 2016

<p>アンダーセン・タウィル症候群(Andersen-Tawil syndrome; ATS)は,(1)U波を伴う心室性不整脈,(2)周期性四肢麻痺,(3)外表小奇形を3徴とするまれな遺伝性疾患である。内向き整流性カリウムチャネルであるKir2.1蛋白をコードしている<i>KCNJ2</i>遺伝子の変異が原因で発症する。心電図所見としてQU延長を伴う著明なU波と頻発する心室期外収縮(PVC),2方向性心室頻拍を認め,治療にはIc群抗不整脈薬であるフレカイニドの有用性が報告されている。症例は50代女性,ATSの3徴全てを満たし,QU延長(723 msec)を伴う著明なU波,PVC頻発を認め,遺伝子検索にて<i>KCNJ2</i>遺伝子変異陽性であった。ホルター心電図では総心拍の24%のPVC,2方向性心室頻拍を認め,フレカイニドの導入により9%までPVCが減少,動悸症状も改善した。ATSでは,増高したU波や2方向性心室頻拍が重要な所見となるため,心電図検査,ホルター心電図の解析では,QU時間,U波高,U波幅,PVCの極性などの情報にも着目する必要がある。</p>
著者
山影 進 田中 明彦 鈴木 一敏 阪本 拓人 山本 和也 保城 広至 服部 正太 木村 香代子 森 俊勝 光辻 克馬
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

国際関係論の重要分野である秩序変動の研究を、近年世界的に注目を集めているマルチエージェント技法を用いて行った。理論的観念的なレベルにとどまらず、政府内、住民集団間、国家間等さまざまなレベルの国際関係の事例についての実証研究に用いるためにモデル構築をおこなった。構築したモデルは、具体的な事象について高い再現性を示すことに成功し、それらの成果を書籍や論文のかたちで公表できた。
著者
坂 祐司 木村 哲也 永井 健司 千代田 範人 田畑 光紀
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
石油学会 年会・秋季大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2012, 2012

近年、石油需要構造変化に伴い、FCC装置に おいて石油化学原料であるライトオレフィンの増産が求められている。FCC装置においてライトオレフィンを増産するためにはFCC本体触媒に酸強度の強いゼオライト(例えばZSM-5など)を含有した触媒粒子(アディティブ)を用いることで対応することできる。本報では触媒性能が異なるFCC本体触媒に対しライトオレフィン増産アディティブを添加した際の添加効果を検討したので報告する。
著者
吉田 秀 遠藤 平仁 田中 淳一 飯塚 進子 木村 美保 橋本 篤 田中 住明 石川 章 廣畑 俊成 近藤 啓文
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.302-309, 2008-12-30 (Released:2016-11-30)
参考文献数
26

A woman of 50 years of age who had a 13-year history of hypothyroidism was diagnosed with systemic lupus erythematosus (SLE) with butterfly rash, leukopenia, positivity of antinuclear antibody, anti-DNA antibody and anti-Sm antibody. Two years later, she developed nephritis (WHO type IV) and remitted with corticosteroid pulse and intermittent intravenous cyclophosphamide pulse therapy (IVCY). Four years after the onset of SLE, she relapsed with proteinuria and leukopenia when she was taking 9 mg/day of prednisolone (PSL) but she stopped all the medication of her own accord. Four months passed without any therapy, she was admitted to our hospital with disturbance of consciousness and anasarca. Laboratory findings showed pancytopenia (WBC 1300/μl, RBC 233×10⁴/μl, Hb6.9g/dl, Plt3.6×10⁴/μl), aggravation of lupus nephritis and hypothyroidism. Chest X-ray and ultrasonography demonstrated pleural and pericardial effusion and the absence of hepatosplenomegaly. She was also diagnosed with myelofibrosis upon bone marrow inspection. Three instances of corticosteroid pulse therapy, oral corticosteroid (PSL was tapered from 50 mg/day) and supplement therapy of levothyroxine improved every symptom and pancytopenia. The second bone marrow biopsy showed reduced fibrosis and recovery of bone marrow cells. These findings implied the secondary myelofibrosis caused by SLE because the myelofibrosis came along with aggravation of SLE and corticosteroid therapy was effective. This is a rare case of SLE in which myelofibrosis improved by high-dose corticosteroid therapy, which was confirmed by bone marrow biopsy and suggests the pathogenic mechanisms for myelofibrosis.
著者
辻 美智子 堀 光代 西脇 泰子 木村 孝子 長屋 郁子 坂野 信子 長野 宏子 山澤 和子 山根 沙季 横山 真智子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】岐阜県に伝承されている家庭料理の中で、おやつとして食べられている料理の特徴についてまとめることを目的とした。<br />【方法】日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」のガイドラインに沿い、岐阜県の家庭料理について平成24年~27年に聞き書き調査を行った。調査対象地域を岐阜、西濃、中濃、東濃、飛騨の5圏域に分類した。対象者は調査地で30年以上居住し、家庭の食事作りに携わった43名である。聞き書き調査の結果からおやつに関する料理を抽出し、圏域別に特徴をまとめた。<br />【結果】岐阜圏域の「みょうがぼち」は、空豆餡を小麦粉生地で包み、茗荷の葉を巻き、蒸して作られ、初夏の食材を活かし田植えの合間に食されていた。西濃圏域の今尾地区の「竹寒天」は、竹神輿の材料である竹の中に寒天液を流し込んで作られ、左義長に出されていた。中濃圏域では初午の「まゆだんご」や端午の節句や田植え休みの「ぶんだこ餅」など、米や米粉に砂糖や小豆を加えたおやつを作り、ハレの日に食されていた。中濃・東濃圏域では、新米の収穫時期に「五平餅」が作られ、来客時にも供されていた。東濃圏域の「からすみ」は、米粉に好みの味(黒砂糖、抹茶、胡桃、紫蘇など)を加えて蒸したものであり、桃の節句には欠かせないものであった。また、秋には特産の利平栗を用いた「栗きんとん」や「栗蒸し羊羹」も親しまれていた。飛騨圏域の「甘々棒」はきな粉を主原料とした飴菓子であり、かつて寒冷地の農業普及に大豆の栽培が奨励され、大豆を美味しく食べる工夫がされていた。内陸県である岐阜県のおやつは、田畑や山などで収穫される季節の食材を活かし、小麦粉・米・米粉に砂糖、小豆などを用い、折々の喜びを食にも込めていた。
著者
宮下 達哉 木村 敦 山村 豊 岡 隆
出版者
日本感性工学会
雑誌
日本感性工学会論文誌 (ISSN:18845258)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.265-270, 2021 (Released:2021-08-31)
参考文献数
27

The purpose of the present study was to examine whether art students would evaluate paintings based on the economic dimension of value (EDV). Art students (N = 193) were asked to rate 14 paintings (including seven good arts and seven bad arts selected from the Museum of Bad Art) on four scales of aesthetic evaluation. They were also asked to complete a questionnaire assessing their degree of the EDV. The results demonstrated that the EDV was related to aesthetic evaluations for both good and bad arts. These results suggest that art students with the high EDV appreciate paintings based on the EDV and focus on whether paintings would be sold.
著者
千葉 敦子 石田 賢哉 大西 基喜 メリッサ 小笠原 木村 美穂子 宮川 隆美 水木 希 澤谷 悦子 梅庭 牧子 奥村 智子
出版者
日本ヒューマンケア科学学会
雑誌
日本ヒューマンケア科学会誌 (ISSN:18826962)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.11-17, 2018 (Released:2022-02-02)
参考文献数
11

保健協力員は市町村長の委嘱を受けて地域住民の健康づくり活動を行う住民組織集団であり、青森県では短命県返上に向けてその活動が期待されている。しかし、保健協力員は担い手不足による固定化や高齢化が課題とされており、活動の活性化に向けた方策が求められている。活動を活性化するためには保健協力員の集団特性を把握し、組織特性に応じた支援の方向性を検討する必要がある。そこで、本研究ではA保健所管内の保健協力員と一般地域住民のヘルスリテラシーおよび主観的健康感を比較し、保健協力員の集団特性に応じた組織支援の示唆を得ることを目的に横断調査を実施した。その結果、ヘルスリテラシーでは「情報を理解し人に伝えることができる」の項目が、保健協力員の方が一般地域住民より有意に高いという結果であった。また、健康状態を示す主観的健康感が、保健協力員の方が一般地域住民より有意に高いという結果であった。
著者
木村 裕美 西尾 美登里 古賀 佳代子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.325-333, 2021 (Released:2021-12-25)
参考文献数
30

地域で生活する元気高齢者の抑うつの実態を明らかにし,生きがい感などとの関連要因を検討した。対象はA大学で行なわれた市民公開講座の参加高齢者213名に,基本属性,高齢者うつ尺度(Geriatric Depression Scale:以下GDS),高齢者向け生きがい感スケール(K-1式)(以下,生きがい感スケール),高齢者ソーシャルサポート尺度(以下,ソーシャルサポート尺度),基本チェックリスト(以下,フレイル尺度)について自記式質問紙調査を実施した。統計処理は,GDSで4点/5点をカットオフ値とし,4点以下をA群,5点以上をB群として比較した。結果,対象者は回答に欠損が1つ以上あった者を除く185名が有効回答であった。A群80名(男性35名,女性45名),B群は52名(男性14名,女性38名),平均年齢で有意な差が認められた。トータルサポート,生きがい感スケール下位尺度の自己実現と意欲,生活充実感,生きる意味,存在感でA群が有意に高かった。重回帰分析による抑うつに影響をおよぼす因子として,生活充実感(β=-0.36),健康状態(β=0.24),生きる意欲(β=-0.17),年齢(β=0.24),ネガティブサポート(β=0.18),健康習慣(β=0.12)が認められた。決定係数R2乗は0.52,調整済みR2乗は0.49であった。地域高齢者の抑うつ状態は,自己実現や生活充実感,生きる意欲,存在感が関連することが示唆された。
著者
野田 賢 木村 俊明
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会構造系論文集 (ISSN:13404202)
巻号頁・発行日
vol.87, no.793, pp.285-294, 2022-03-01 (Released:2022-03-01)
参考文献数
22

This paper presents an optimization method of the joint arrangement for shell structures composed of CLT panels. The joining system is modeled as link elements with multidirectional stiffness. Their stiffnesses are calculated by multiplying the weight parameters defined as the design variables to the original stiffnesses. Furthermore, the joint arrangement is controlled by multiplying a power-law function to design variables. An optimization problem is formulated to minimize the strain energy. The effectiveness of the proposed method is shown through numerical examples. It is confirmed that the joint arrangement in each direction is optimized corresponding to the stress state.
著者
久保田 雅也 木村 育美
出版者
一般社団法人 日本臨床神経生理学会
雑誌
臨床神経生理学 (ISSN:13457101)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.124-131, 2018-06-01 (Released:2018-06-01)
参考文献数
23
被引用文献数
1

ヒトの顔, 表情は豊富な意味を内包し, (1) 個体の識別と存在の象徴であり, (2) 感情の表出の場としても機能し, (3) 社会的交通の窓口でもある。アスペルガー症候群 (AS) の顔認知に関しては相対的に顔の同定・記憶・表情判断力において劣ること, 特に「眼」の表情のよみとり障害が顕著であることが知られる。また, 6歳以降の小児で顕著になる倒立顔効果が, 自閉症児では乏しいこと等が知られている。これはASの認知特性としての全体よりも細部にこだわるweak central coherence (弱い中央統合性) 仮説で説明される。今回顔認知課題を脳波–脳磁図測定およびアイトラッキングを用いて解析し, ASでは定型発達の「顔認知に特化されたシステム」とは異なる領域を用いていた。すなわちAS小児は顔という豊富な意味を有する対象を同定・理解するのにholistic & configural processingを経ずに視覚認知における背側経路を主に用いて分析的に見ることで表情認知という論理的分析にはなじまない対象を了解しようとしている可能性がある。