著者
松田 直之
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.613-619, 2019-09-15 (Released:2019-10-29)
参考文献数
11

小児に静脈麻酔薬プロポフォールを使用することが適切かどうかについて,日本臨床麻酔学会第38回大会Pros & Consにおいて討議した.2014年2月,頸部リンパ管腫の摘出手術を受けた2歳男児が,集中治療室における術後管理の3日後にpropofol infusion syndrome(PRIS)として死亡した事例がある.小児に対するプロポフォール使用の注意喚起は,極めて強い.人工呼吸中の小児の集中治療において,プロポフォールの使用は禁忌である.その一方で,成人においてもPRISの報告は認められ,PRISの予防策を,麻酔科学,薬理学および病態学の視点より十分に理解する必要がある.成人の集中治療における人工呼吸管理では,プロポフォール1%注射剤の持続投与中の急速静脈内投与に注意が必要である.プロポフォールや溶剤である脂質は,塞栓症やミトコンドリア障害の危険性があり,これらの血中濃度と投与期間に注意が必要である.しかし,プロポフォール事例は私たちの静脈薬を用いた診療における氷山の一角にすぎない.プロポフォールに限らず,麻酔・集中治療領域で使用する多くの静脈薬について,私たちの科学的理解に加えて,使用説明書等の十分な再検討と,適切な改定が必要とされる.
著者
市村 高男 松田 直則
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

土佐国幡多荘は、16世紀末から約1世紀の間、京都下りの公家一条氏が支配していた。本研究では、一条氏が幡多へ下向した理由、そこでの役割を考えるため、文献史学と考古学の両面から基礎資料の収集と検討を進めた。今回、幡多地域出土の遺物については、あまり報告書に収録できなかったが、中世城郭跡を中心とした一条氏・幡多地域の考古学的考察の中で活用している。文書・記録などの文献史料については可能な限り報告書に収録し、研究者が共有できるようにした。これらの史料や遺跡・遺物の調査・検討を通じて、次のようなことが明らかになった。(1)一条氏は土佐に在住したまま公卿に列した希有な存在であり、恒常的に京都の公家社会と交流する一方、16世紀前半から地域の領主や地侍を家臣団に編成し、支配領域の拡大を試みるなど戦国大名化への動きを見せた。(2)一条氏は本願寺や堺の商人と結んで大船を建造し、遠隔地交易への強い関心を示していた。この事実は、一条氏の贈答品に南方の産物が多く見られること、幡多地域から多量の貿易陶磁器が出土すること、一条氏が加久見氏(海賊)と婚姻関係を結んでいたことなどと合わせて、同氏が対外交易に関与していたことを暗示する。一条氏が京都から幡多に下向し、そのままこの土地に住み着いた理由もこの辺にあると考えられる。(3)一条氏は戦国前半期から幡多地域に多くの城郭を築いているが、その技術がやがて長宗我部氏に継承・発展されるなど、想像以上に土佐の社会や文化に大きな影響を与えていた。以上のように、一条氏や幡多地域の役割は正しく評価されるべきであり、土佐国を越えた視点で見直していく必要がある。
著者
江木 盛時 小倉 裕司 矢田部 智昭 安宅 一晃 井上 茂亮 射場 敏明 垣花 泰之 川崎 達也 久志本 成樹 黒田 泰弘 小谷 穣治 志馬 伸朗 谷口 巧 鶴田 良介 土井 研人 土井 松幸 中田 孝明 中根 正樹 藤島 清太郎 細川 直登 升田 好樹 松嶋 麻子 松田 直之 山川 一馬 原 嘉孝 大下 慎一郎 青木 善孝 稲田 麻衣 梅村 穣 河合 佑亮 近藤 豊 斎藤 浩輝 櫻谷 正明 對東 俊介 武田 親宗 寺山 毅郎 東平 日出夫 橋本 英樹 林田 敬 一二三 亨 廣瀬 智也 福田 龍将 藤井 智子 三浦 慎也 安田 英人 阿部 智一 安藤 幸吉 飯田 有輝 石原 唯史 井手 健太郎 伊藤 健太 伊藤 雄介 稲田 雄 宇都宮 明美 卯野木 健 遠藤 功二 大内 玲 尾崎 将之 小野 聡 桂 守弘 川口 敦 川村 雄介 工藤 大介 久保 健児 倉橋 清泰 櫻本 秀明 下山 哲 鈴木 武志 関根 秀介 関野 元裕 高橋 希 高橋 世 高橋 弘 田上 隆 田島 吾郎 巽 博臣 谷 昌憲 土谷 飛鳥 堤 悠介 内藤 貴基 長江 正晴 長澤 俊郎 中村 謙介 西村 哲郎 布宮 伸 則末 泰博 橋本 悟 長谷川 大祐 畠山 淳司 原 直己 東別府 直紀 古島 夏奈 古薗 弘隆 松石 雄二朗 松山 匡 峰松 佑輔 宮下 亮一 宮武 祐士 森安 恵実 山田 亨 山田 博之 山元 良 吉田 健史 吉田 悠平 吉村 旬平 四本 竜一 米倉 寛 和田 剛志 渡邉 栄三 青木 誠 浅井 英樹 安部 隆国 五十嵐 豊 井口 直也 石川 雅巳 石丸 剛 磯川 修太郎 板倉 隆太 今長谷 尚史 井村 春樹 入野田 崇 上原 健司 生塩 典敬 梅垣 岳志 江川 裕子 榎本 有希 太田 浩平 大地 嘉史 大野 孝則 大邉 寛幸 岡 和幸 岡田 信長 岡田 遥平 岡野 弘 岡本 潤 奥田 拓史 小倉 崇以 小野寺 悠 小山 雄太 貝沼 関志 加古 英介 柏浦 正広 加藤 弘美 金谷 明浩 金子 唯 金畑 圭太 狩野 謙一 河野 浩幸 菊谷 知也 菊地 斉 城戸 崇裕 木村 翔 小網 博之 小橋 大輔 齊木 巌 堺 正仁 坂本 彩香 佐藤 哲哉 志賀 康浩 下戸 学 下山 伸哉 庄古 知久 菅原 陽 杉田 篤紀 鈴木 聡 鈴木 祐二 壽原 朋宏 其田 健司 高氏 修平 高島 光平 高橋 生 高橋 洋子 竹下 淳 田中 裕記 丹保 亜希仁 角山 泰一朗 鉄原 健一 徳永 健太郎 富岡 義裕 冨田 健太朗 富永 直樹 豊﨑 光信 豊田 幸樹年 内藤 宏道 永田 功 長門 直 中村 嘉 中森 裕毅 名原 功 奈良場 啓 成田 知大 西岡 典宏 西村 朋也 西山 慶 野村 智久 芳賀 大樹 萩原 祥弘 橋本 克彦 旗智 武志 浜崎 俊明 林 拓也 林 実 速水 宏樹 原口 剛 平野 洋平 藤井 遼 藤田 基 藤村 直幸 舩越 拓 堀口 真仁 牧 盾 増永 直久 松村 洋輔 真弓 卓也 南 啓介 宮崎 裕也 宮本 和幸 村田 哲平 柳井 真知 矢野 隆郎 山田 浩平 山田 直樹 山本 朋納 吉廣 尚大 田中 裕 西田 修 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.28, no.Supplement, pp.27S0001, 2020 (Released:2021-02-25)
被引用文献数
2

日本集中治療医学会と日本救急医学会は,合同の特別委員会を組織し,2016 年に発表した日本版敗血症診療ガイドライン(J-SSCG) 2016 の改訂を行った。本ガイドライン(J-SSCG 2020)の目的は,J-SSCG 2016 と同様に,敗血症・敗血症性ショックの診療において,医療従事者が患者の予後改善のために適切な判断を下す支援を行うことである。改訂に際し,一般臨床家だけでなく多職種医療者にも理解しやすく,かつ質の高いガイドラインとすることによって,広い普及を目指した。J-SSCG 2016 ではSSCG 2016 にない新しい領域[ICU-acquired weakness( ICU-AW)と post-intensive care syndrome(PICS),体温管理など]を取り上げたが,J-SSCG 2020 では新たに注目すべき4 領域(Patient-and Family-Centered Care,sepsis treatment system,神経集中治療,ストレス潰瘍)を追加し,計22 領域とした。重要な118 の臨床課題(clinical question:CQ)をエビデンスの有無にかかわらず抽出した。これらのCQ には,本邦で特に注目されているCQ も含まれる。多領域にわたる大規模ガイドラインであることから,委員25 名を中心に,多職種(看護師,理学療法士,臨床工学技士,薬剤師)および患者経験者も含めたワーキンググループメンバー,両学会の公募によるシステマティックレビューメンバーによる総勢226 名の参加・協力を得た。また,中立的な立場で横断的に活躍するアカデミックガイドライン推進班をJ-SSCG 2016 に引き続き組織した。将来への橋渡しとなることを企図して,多くの若手医師をシステマティックレビューチーム・ワーキンググループに登用し,学会や施設の垣根を越えたネットワーク構築も進めた。作成工程においては,質の担保と作業過程の透明化を図るために様々な工夫を行い,パブリックコメント募集は計2 回行った。推奨作成にはGRADE方式を取り入れ,修正Delphi 法を用いて全委員の投票により推奨を決定した。結果,118CQ に対する回答として,79 個のGRADE による推奨,5 個のGPS(good practice statement),18 個のエキスパートコンセンサス,27 個のBQ(background question)の解説,および敗血症の定義と診断を示した。新たな試みとして,CQ ごとに診療フローなど時間軸に沿った視覚的情報を取り入れた。J-SSCG 2020 は,多職種が関わる国内外の敗血症診療の現場において,ベッドサイドで役立つガイドラインとして広く活用されることが期待される。なお,本ガイドラインは,日本集中治療医学会と日本救急医学会の両機関誌のガイドライン増刊号として同時掲載するものである。
著者
松田 直樹
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.24, no.Suppl2, pp.19-32, 2004-03-25 (Released:2010-12-10)
参考文献数
21

非持続性心室頻拍 (VT) 例に対する電気生理検査 (EPS) は, 心臓突然死の危険度を評価する方法として重要である.非持続性VTのなかでも, 基礎心疾患を有する, 心機能低下がある, Adams-Stokes発作が疑われる, VTの連発数が多い, 頻拍レートが速い, 加算平均心電図で遅延電位が陽性などの条件を複数満たす症例が, EPSの積極的な適応となる.プログラム刺激と呼ばれる誘発試験により, 容易に持続性VTや心室細動 (VF) が誘発されれば, 将来, 同様の致死性不整脈が発生する可能性があると判断するが, その突然死予測としての意義は, 誘発条件, 誘発された不整脈の種類, 基礎心疾患, 左室機能, 失神の既往の有無などにより大きく異なる.一般に, 単発~3連発早期刺激で誘発される持続性単形性VT, 単発または2連発早期刺激で誘発される持続性多形性VT/VFが有意な所見である, 当施設での基礎心疾患を有する非持続性VT症例155例における平均5.7年の追跡では, これらの不整脈が誘発された例の突然死, 不整脈事故発生率は, 非誘発例に比し有意に高く, これに左室駆出率の低下あるいは失神発作の既往が加わると, その発生率はさらに増加した.欧米での多くのエビデンスにより, 心筋梗塞慢性期におけるEPSの意義は確立している.欧米では, 拡張型心筋症におけるEPSの有用性は否定的な意見が多いが, 我々のデータは, 突然死の長期予測にEPSが有用であることを示している.一方, 無症候性肥大型心筋症におけるEPSの位置づけは明らかではない.
著者
江木 盛時 黒田 泰弘 山田 亨 山田 博之 山元 良 吉田 健史 吉田 悠平 吉村 旬平 四本 竜一 米倉 寛 和田 剛志 渡邉 栄三 小谷 穣治 青木 誠 浅井 英樹 安部 隆国 五十嵐 豊 井口 直也 石川 雅巳 石丸 剛 磯川 修太郎 板倉 隆太 今長谷 尚史 志馬 伸朗 井村 春樹 入野田 崇 上原 健司 生塩 典敬 梅垣 岳志 江川 裕子 榎本 有希 太田 浩平 大地 嘉史 大野 孝則 谷口 巧 大邉 寛幸 岡 和幸 岡田 信長 岡田 遥平 岡野 弘 岡本 潤 奥田 拓史 小倉 崇以 小野寺 悠 小山 雄太 鶴田 良介 貝沼 関志 加古 英介 柏浦 正広 加藤 弘美 金谷 明浩 金子 唯 金畑 圭太 狩野 謙一 河野 浩幸 菊谷 知也 土井 研人 菊地 斉 城戸 崇裕 木村 翔 小網 博之 小橋 大輔 齊木 巌 堺 正仁 坂本 彩香 佐藤 哲哉 志賀 康浩 土井 松幸 下戸 学 下山 伸哉 庄古 知久 菅原 陽 杉田 篤紀 鈴木 聡 鈴木 祐二 壽原 朋宏 其田 健司 高氏 修平 中田 孝明 高島 光平 高橋 生 高橋 洋子 竹下 淳 田中 裕記 丹保 亜希仁 角山 泰一朗 鉄原 健一 徳永 健太郎 富岡 義裕 中根 正樹 冨田 健太朗 富永 直樹 豊﨑 光信 豊田 幸樹年 内藤 宏道 永田 功 長門 直 中村 嘉 中森 裕毅 名原 功 藤島 清太郎 奈良場 啓 成田 知大 西岡 典宏 西村 朋也 西山 慶 野村 智久 芳賀 大樹 萩原 祥弘 橋本 克彦 旗智 武志 小倉 裕司 細川 直登 浜崎 俊明 林 拓也 林 実 速水 宏樹 原口 剛 平野 洋平 藤井 遼 藤田 基 藤村 直幸 舩越 拓 升田 好樹 堀口 真仁 牧 盾 増永 直久 松村 洋輔 真弓 卓也 南 啓介 宮崎 裕也 宮本 和幸 村田 哲平 柳井 真知 松嶋 麻子 矢野 隆郎 山田 浩平 山田 直樹 山本 朋納 吉廣 尚大 田中 裕 西田 修 日本版敗血症診療ガイドライン2020特別委員会 松田 直之 山川 一馬 原 嘉孝 大下 慎一郎 青木 善孝 稲田 麻衣 梅村 穣 矢田部 智昭 河合 佑亮 近藤 豊 斎藤 浩輝 櫻谷 正明 對東 俊介 武田 親宗 寺山 毅郎 東平 日出夫 橋本 英樹 林田 敬 安宅 一晃 一二三 亨 廣瀬 智也 福田 龍将 藤井 智子 三浦 慎也 安田 英人 阿部 智一 安藤 幸吉 飯田 有輝 石原 唯史 井上 茂亮 井手 健太郎 伊藤 健太 伊藤 雄介 稲田 雄 宇都宮 明美 卯野木 健 遠藤 功二 大内 玲 尾崎 将之 小野 聡 射場 敏明 桂 守弘 川口 敦 川村 雄介 工藤 大介 久保 健児 倉橋 清泰 櫻本 秀明 下山 哲 鈴木 武志 関根 秀介 垣花 泰之 関野 元裕 高橋 希 高橋 世 高橋 弘 田上 隆 田島 吾郎 巽 博臣 谷 昌憲 土谷 飛鳥 堤 悠介 川崎 達也 内藤 貴基 長江 正晴 長澤 俊郎 中村 謙介 西村 哲郎 布宮 伸 則末 泰博 橋本 悟 長谷川 大祐 畠山 淳司 久志本 成樹 原 直己 東別府 直紀 古島 夏奈 古薗 弘隆 松石 雄二朗 松山 匡 峰松 佑輔 宮下 亮一 宮武 祐士 森安 恵実
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.28, 2020
被引用文献数
2

<p>日本集中治療医学会と日本救急医学会は,合同の特別委員会を組織し,2016 年に発表した日本版敗血症診療ガイドライン(J-SSCG) 2016 の改訂を行った。本ガイドライン(J-SSCG 2020)の目的は,J-SSCG 2016 と同様に,敗血症・敗血症性ショックの診療において,医療従事者が患者の予後改善のために適切な判断を下す支援を行うことである。改訂に際し,一般臨床家だけでなく多職種医療者にも理解しやすく,かつ質の高いガイドラインとすることによって,広い普及を目指した。J-SSCG 2016 ではSSCG 2016 にない新しい領域[ICU-acquired weakness( ICU-AW)と post-intensive care syndrome(PICS),体温管理など]を取り上げたが,J-SSCG 2020 では新たに注目すべき4 領域(Patient-and Family-Centered Care,sepsis treatment system,神経集中治療,ストレス潰瘍)を追加し,計22 領域とした。重要な118 の臨床課題(clinical question:CQ)をエビデンスの有無にかかわらず抽出した。これらのCQ には,本邦で特に注目されているCQ も含まれる。多領域にわたる大規模ガイドラインであることから,委員25 名を中心に,多職種(看護師,理学療法士,臨床工学技士,薬剤師)および患者経験者も含めたワーキンググループメンバー,両学会の公募によるシステマティックレビューメンバーによる総勢226 名の参加・協力を得た。また,中立的な立場で横断的に活躍するアカデミックガイドライン推進班をJ-SSCG 2016 に引き続き組織した。将来への橋渡しとなることを企図して,多くの若手医師をシステマティックレビューチーム・ワーキンググループに登用し,学会や施設の垣根を越えたネットワーク構築も進めた。作成工程においては,質の担保と作業過程の透明化を図るために様々な工夫を行い,パブリックコメント募集は計2 回行った。推奨作成にはGRADE方式を取り入れ,修正Delphi 法を用いて全委員の投票により推奨を決定した。結果,118CQ に対する回答として,79 個のGRADE による推奨,5 個のGPS(good practice statement),18 個のエキスパートコンセンサス,27 個のBQ(background question)の解説,および敗血症の定義と診断を示した。新たな試みとして,CQ ごとに診療フローなど時間軸に沿った視覚的情報を取り入れた。J-SSCG 2020 は,多職種が関わる国内外の敗血症診療の現場において,ベッドサイドで役立つガイドラインとして広く活用されることが期待される。なお,本ガイドラインは,日本集中治療医学会と日本救急医学会の両機関誌のガイドライン増刊号として同時掲載するものである。</p>
著者
粟飯原 里美 鹿島 恵理 松田 直樹 稲田 亨
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【目的】現在,通院されている脳卒中者の内,約23%は65歳未満が占める(平成25年度国民生活基礎調査)。この比較的若い世代の脳卒中者が後遺症を抱えつつも,活力ある地域生活を継続するためには,高齢者以上に行動範囲,すなわち生活空間の狭小化の予防が重要である。生活空間の代表的な評価であるLife Space Assessment(LSA)は,活動量の頻度・自立度・活動範囲の定量化が可能な質問紙である。在宅脳卒中者におけるLSAに関連する要因は,これまでいくつか検討されている(田代ら,2014.福尾ら,2014)が,対象者は65歳以上の者となっており65歳未満の者を対象とした報告はない。よって,本研究では,65歳未満の在宅脳卒中片麻痺者と65歳以上の在宅脳卒中片麻痺者において,それぞれの生活空間に関連する要因を抽出し,65歳未満特有の要因を検討する事を目的とした。【方法】対象は当院外来リハビリテーションに通院し,屋内歩行が自立している脳卒中片麻痺者69名とした。その内,65歳未満の者を若年群,65歳以上の者を高齢群に割り付けた。評価は1)LSA,2)快適歩行速度,3)Functional Reach Test(FRT),4)6分間歩行距離(6MD),5)modified-Gait Efficacy Scale(mGES),6)リハ・福祉サービス利用目的の外出頻度(リハ等外出頻度),7)運動習慣の有無,8)趣味活動の有無,9)車の運転の有無,10)就労の有無とした。統計学的解析は,若年群・高齢群それぞれ1)LSAと2~6)の項目でSpearmanの順位相関係数を算出した。また,7~10)は実施の有無でさらに2群に割付け,2群間のLSAスコアに対し,対応のないt検定を行った。LSAスコアを従属変数,独立変数をLSAスコアと相関を認めた項目および実施の有無による群間比較で有意な差を認めた項目とし,ステップワイズ法による重回帰分析を若年群・高齢群それぞれ実施した。有意水準は5%とした。【結果】若年群は38名(年齢52.1歳±10.8歳),高齢群は31名(年齢70.8±4.4歳)であった。若年群ではLSAスコアと快適歩行速度,FRT,6MD,mGESとの間に有意な正の相関を示し,リハ等外出頻度との間には有意な負の相関を示した。車の運転の有無では運転実施群のLSAスコアが有意に高かった。また,若年群のLSAスコアに関連する要因としてmGES,車の運転の有無が抽出された。高齢群ではLSAスコアと快適歩行速度,FRT,6MD,mGESとの間に正の相関を示し,LSAスコアに関連する要因として快適歩行速度が抽出された。【結論】若年群は高齢群と比較して,身体機能よりも歩行の自己効力感や車の運転の有無といった要因が生活空間に強く関与することが示された。また,若年群において車の運転の有無が生活空間に強く関与したことは,本研究実施地域の特徴であると考えられる。
著者
高松 泰行 松田 直美 饗場 郁子
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.33-37, 2018 (Released:2018-06-12)
参考文献数
17

姿勢保持障害は進行性核上性麻痺(progressive supranuclear palsy:PSP)の主要症候であるが,その特徴について詳細に検討した報告は少ない.本研究では,PSP患者における静止立位時の重心動揺と姿勢保持障害の特徴について,健常高齢者と比較,検討した.対象はPSP患者21名,健常高齢者25名とした.年齢,性別,body mass index(BMI),静止立位時の重心動揺を評価した.PSPは,発症からの罹患期間,modified Rankin scale(mRS),進行性核上性麻痺評価尺度(PSP rating scale:PSPRS)項目V及びVI,pull testを評価した.重心動揺検査の結果,PSPと健常高齢者との間に有意差を認めた項目は,外周面積,単位面積軌跡長,前後方向動揺平均中心変位であった.PSPにおいて,pull testと相関を認めた項目は,罹患期間,mRS,PSPRS VI,外周面積であった.以上より,PSPは健常者に比べて,後方重心傾向が強く,静止立位バランスが不安定であり,単位面積軌跡長が低値であるという特徴が示された.また,pull testは疾患の進行度,機能自立度を反映しており,静止立位時のバランス能力が関係していることが示された.
著者
松田 直之
出版者
メディカル・サイエンス・インターナショナル
巻号頁・発行日
pp.71-75, 2020-04-10

麻酔,集中治療,救急医療のプロフェッショナルにおいて,患者の利益が高くなるように最善の医療を提供するための工夫は多様である。医の最善を工夫する際に,その立ち位置が変わると視野も変わる。正の方向,あるいは未来方向からとらえる視点と視野,一方で,負の方向,あるいは過去から現在をとらえる視点と視野がある。また,良いものを与えようとする工夫の一方で,悪いものを与えないように工夫しようとする姿勢もある。こうした姿勢が,私たちの潜在意識の中で癖となってしまっているとき,私たちは自由な拡大性や包容性をなくし,討議する機会を失い,恐れや憎しみが蔓延する。 自身が絶えず成長するためには,常に自身の癖を理性的に自省し,自身をその癖から開放しようとする心が大切である。プロフェッショナルとしては,未来方向から現在をみて,最高の利益を現在に与えられるようにプログラムする「成功予測のプロ」,過去方向から現在をみて,不利益を未然に防ぐようにプログラムする「失敗予測のプロ」,このどちらの考えも取り込めるとよいのかもしれない。そんな中,時にプロフェッショナルは,提供した最善の工夫により社会の中で弾圧されることがある。 今夜は,皆さんが仕事の過程で傷つけられたり,悩んだりしたときの自省について考える。私たちがプロフェッショナルとして必要と感じるものは,社会にも必要なことである。抵抗にあってもあきらめずに伝え続けることは,プロフェッショナルに必要なことである。発信する私たちは,一方で反応する私たちでもあり,生じた事象に対する洞察や思索を繰り返し,アサーティブ・コミュニケーションを通して自身や社会を成長させることが大切である。
著者
重本 千尋 奥村 真帆 松田 直佳 小野 玲 海老名 葵 近藤 有希 斎藤 貴 村田 峻輔 伊佐 常紀 坪井 大和 鳥澤 幸太郎 福田 章真
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】妊娠中はホルモンの変化や体型変化により,多くの女性が腰痛骨盤痛(low back pain and pelvic pain;LBPP)に悩まされる。妊娠中に発症したLBPPは産後持続する事が多く,睡眠障害やうつ病,不安感などを引き起こし,本人の日常生活のみならず子供の発育に悪影響を与えることから解決すべき重要な課題である。妊娠中から産後にLBPPが持続する要因に関する調査は行われているが,一定した見解は得られていない。近年,腰痛の関連因子の一つとして女性ホルモンが着目されており,エストロゲンの低下は痛みの感受性を増加させることがわかってきており,閉経後女性における腰痛有病率の増加の一因になっていると考えられる。一方,産後女性は産後無月経の期間が存在し,この期間は閉経後女性と同様にエストロゲンなどの女性ホルモンの分泌が不十分と考えられる。しかし,産後女性において,女性ホルモンとLBPPの関連を明らかにした研究はない。本研究の目的は,妊娠中にLBPPを有していた女性において産後の無月経の期間と産後4ヶ月時のLBPPとの関連を調査することである。</p><p></p><p></p><p>【方法】対象者は,4ヶ月児健診において,同意が得られた産後女性のうち,妊娠中にLBPPを有していた女性99名で,産後4ヶ月に自記式質問紙に回答してもらった。一般情報に加え,妊娠中と産後4ヶ月時のLBPPの有無・強度,月経再開の有無・再開時期を聴取した。痛みの強度はNumerical Rating Scale(以下,NRS)を用いた。統計解析は産後4ヶ月時のLBPPの有無と,月経が再開してからの期間との関連を検討するためロジスティック回帰分析を用いた。他因子を考慮するために従属変数を産後4ヶ月時のLBPPの有無,独立変数を月経が再開してからの期間,交絡変数を先行研究より年齢,BMI,出産歴,妊娠前のLBPPの既往,妊娠中のNRSとして,強制投入法による多重ロジスティック回帰分析を行った。統計学的有意水準は5%未満とした。</p><p></p><p></p><p>【結果】妊娠中にLBPPのあった女性において産後にLBPPを有していたものは58名(58.6%)であった。月経再開時期が早いほど,産後4ヶ月時のLBPPの有病率が有意に低かった(オッズ比=0.57,95%信頼区間0.34-0.96)。多重ロジスティック回帰分析においても,産後4ヶ月時の月経が再開してからの期間は産後のLBPPと,他因子に独立して有意に関連していた(オッズ比=0.54,95%信頼区間0.30-0.97)。</p><p></p><p></p><p>【結論】本研究により,産後月経が再開してからの期間が短い,もしくは再開していない女性は月経が再開してからの期間が長い女性と比較して,LBPPの有病率が高いという結果が得られ,産後の無月経期間の長さは,産後のLBPPのリスクファクターとなる可能性が示唆された。</p>
著者
松田 直樹 金子 文成 稲田 亨 柴田 恵理子 小山 聡
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0499, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】運動錯覚とは,実際に運動を行っていないにも関わらず,あたかも運動が生じているような自覚的運動知覚が脳内で生じることである。近年,我々はKanekoらが報告した視覚刺激による運動錯覚を用いて,脳卒中片麻痺患者に治療的介入を実施し,急性効果を検証してきた。本研究では,発症後10年を経過した脳卒中片麻痺患者に対して,視覚刺激を用いた運動錯覚と運動イメージを組み合わせた治療的介入を実施し,上肢の自動運動可動域に急性的な変化が生じたので報告する。【方法】対象は,平成14年に被殻出血を発症した右片麻痺症例(50代男性)であった。Br. stage上肢・手指II,下肢IIIであり,表在・深部感覚は共に重度鈍麻であった。認知機能に障害はなかった。治療的介入方法は,視覚入力による運動錯覚と運動イメージの組み合わせ(IL+MI),動画観察と運動イメージの組み合わせ(OB+MI),運動イメージ単独(MI)の計3種類とし,別日に行った。IL+MIでは,視覚刺激による運動錯覚を誘起するため,事前に撮影した健側手指屈伸運動の映像を左右反転させ,麻痺側上肢の上に配置したモニタで再生し,対象者に観察させた。さらに,動画上の手指屈伸運動とタイミングが合致するように,麻痺側手指の屈伸運動を筋感覚的にイメージするよう教示した。OB+MIでは,IL+MIと同じ映像を流したモニタを,対象者の正面に設置し,観察させた。そして,IL+MIと同様に動画に合わせて運動イメージを行わせた。MIでは,麻痺側手指屈伸運動の運動イメージのみ実施させた。各治療は20分間とし,2週間以上の期間をあけて実施した。日常生活上で本人が希望することとして肘関節屈曲運動があったことから,運動機能評価として,各治療の前後に麻痺側肘関節の自動屈曲運動を実施した。肩峰,上腕骨外側上顆,尺骨茎状突起にマーカーを貼付し,対象者の前方に設置したデジタルビデオカメラによって撮影した映像から,最大肘関節屈曲角度を算出した。また,IL+MIにおいて,上腕二頭筋及び上腕三頭筋に表面筋電図を貼付し,肘関節屈曲運動中の筋活動を治療前後で記録した。さらに,ILを実施した際に,どの程度運動の意図(自分の手を動かしたくなる感覚)が生じたかを,Visual Analog Scale(0:何も感じない~100:とても強く感じる)で評価した。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,研究者らが所属する大学および当院倫理委員会の承認を得て実施した。また,対象者に対しては書面にて研究の内容を説明し,同意を得た上で実施した。【結果】IL+MIでは,治療前と比較して,治療後に最大肘関節屈曲角度が増大した(治療前3.1°,治療後56.1°)。これに対し,OB+MIとMIでは治療前後で大きな変化を示さなかった(OB+MI:治療前3.6°,治療後1.2°,MI:治療前2.3°,治療後3.4°)。また,IL+MI後においては,治療前後で上腕二頭筋の筋活動の増加が確認された。さらに,IL中にはVisual Analog Scaleで98と強い運動の意図が生じた。IL+MI後には,対象者から「力の入れ方を思い出した」という内観が得られた。【考察】本症例においては,OB+MI及びMIでは自動運動可動域に変化が生じなかったのに対し,IL+MIでは自動運動可動域が拡大した。このことから,視覚刺激により運動錯覚が生じたことが,自動運動可動域の改善に寄与した可能性があると考える。本研究では,手指の運動錯覚により上腕の筋に急性効果が生じた。Kanekoらは,視覚刺激による運動錯覚中に補足運動野・運動前野の賦活が生じることを報告している。高次運動野は一次運動野と比較して体部位局在の影響が少ないことから,本研究においては,手指の運動錯覚に伴う高次運動野の賦活が上腕の運動機能に影響を与えた可能性があるものと推察する。以上より,本研究では視覚刺激による運動錯覚と運動イメージを組み合わせた治療的介入が,脳卒中片麻痺患者における上肢の自動運動可動域に対して,急性的な変化を生じさせる可能性が示された。【理学療法学研究としての意義】本研究は,視覚刺激による運動錯覚と運動イメージの組み合わせが,慢性期脳卒中患者の運動機能に対して,急性的な変化を生じさせることを示した最初の報告である。本研究で用いた治療方法は,非侵襲的かつ簡便であり,本研究は理学療法における新たな治療方法の開発という点で意義深いといえる。
著者
河原 康太 松田 直樹 北條 正樹 西川 雅章
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.83, no.849, pp.16-00582-16-00582, 2017 (Released:2017-05-25)
参考文献数
15

Formulation based on the eigenfunction expansion is shown for second-harmonic generation simulations at a cylindrical interface. The displacement potentials of fundamental wave fields and second-harmonic fields are expressed as sums of eigenfunctions. The cylinder-matrix interface is assumed to be imperfect and modeled as a nonlinear spring interface for the purpose of considering roughness of the interface. Nonlinear equations in this model are dealt with the perturbation theory. The relational expression on the expansion coefficients of the fundamental waves and the second harmonics is shown. The results for the P wave incidence are demonstrated; although arbitrary incident wave field is available in the present method. As a result, both P and SV second harmonics are generated at the cylindrical interface. The numerical results for the directivity patterns of second harmonics are also given. The results show that the directivity patterns depend on the interfacial stiffness. Moreover the relationships between the interfacial stiffness and the ratio of stress in forward direction to backward direction are investigated in order to discuss the interfacial stiffness dependence in detail. The ratio significantly varies with the interfacial stiffness and the relationships are different by the frequency of the incident wave. Due to these characteristics, the ratio of stress in forward direction to backward direction can be useful for the evaluation of the interfacial stiffness. The influence of the ratio of the transverse stiffness to normal stiffness on the ratio of stress is also demonstrated. It is shown that the ratio of the interfacial stiffness has little effect on the ratio of stress.