著者
窪田 香織 野上 愛 高崎 浩太郎 桂林 秀太郎 三島 健一 藤原 道弘 岩崎 克典
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.143, no.3, pp.110-114, 2014 (Released:2014-03-10)
参考文献数
17
被引用文献数
1

我が国は超高齢社会を迎え,認知症患者数の増加は深刻な問題である.しかし認知症の根治的治療法は確立しておらず,患者の日常生活動作(activity of daily living:ADL)を低下させない新しい認知症治療薬が求められている.その中で,ADLを低下させずに認知症の症状を改善する漢方薬・抑肝散が脚光を浴び,主に幻覚,妄想,抑うつ,攻撃行動,徘徊などの行動・心理症状(behavioral and psychological symptoms of dementia:BPSD)に使われている.しかし,その作用機序はよく分かっていない.そこで漢方薬である抑肝散の認知症治療薬としての科学的背景を明らかにすることが必要となった.我々は,抑肝散がメタンフェタミン投与による興奮モデル動物において自発運動の異常増加を抑制すること,単独隔離ストレスによる攻撃行動,幻覚モデルとしてのDOI投与による首振り運動,不安様行動,ペントバルビタール誘発睡眠の短縮や夜間徘徊モデルの明期の行動量増加のようなBPSD様の異常行動を有意に抑制することを明らかにした.また,8方向放射状迷路課題において,認知症モデル動物の空間記憶障害を改善することを見出した.記憶保持に重要な海馬において神経細胞死の抑制やアセチルコリン遊離作用が認められ,これらの作用によって抑肝散の中核症状に対する改善効果も期待できることが示唆された.さらに,中核症状,BPSDいずれにもNGFやBDNFなどの神経栄養因子の関与が注目されているが,抑肝散には神経栄養因子様作用や神経栄養因子増加作用があることが分かり,この作用も中核症状・BPSDの改善効果に寄与するものと考えられる.以上のことから,抑肝散は,認知症患者のBPSDならびに中核症状にも有効で,さらに他の神経変性疾患や精神神経疾患の治療薬としても応用が期待できることが示唆された.
著者
出川 洋介 勝山 輝男 田中 徳久 山岡 裕一 細矢 剛 佐久間 大輔 廣瀬 大 升屋 勇人 大坪 奏 城川 四郎 小林 享夫 原田 幸雄 松本 淳 勝本 謙 稲葉 重樹 佐藤 豊三 川上 新一 WALTER Gams
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

労力と時間を要すために研究が遅れてきた菌類のインベントリー調査を、博物館を介して専門研究者と市民とを繋ぐ3者連携体制を構築して実施した。多様な世代の70名以上の市民により5千点を超す標本が収蔵された10年に及ぶ事前調査を踏まえ、約50種の菌類を選定し、研究者の指導のもとに市民が正確な記載、図版を作成し菌類誌を刊行、デジタルデータを公表した。本研究事例は今後の生物相調査の推進に有効な指針を示すと期待される。
著者
石村 真一 林原 泰子
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

戦後の映画930本を対象とし、家庭用電化製品である電気炊飯器、電気洗濯機、電気冷蔵庫、テレビ、食卓を事例に生活の変化について考察した。その結果、家電製品の普及する1950年代は、食卓も含め、伝統的な床坐による生活が未だ定着している。 1960年代になると椅子坐の生活様式が増加する傾向を示す。しかしながら、1980年代後半から、洋室床坐という新たな生活様式が出現し、若い世代に普及する。
著者
小林 憲正 DEMARCLLUS Pierre
出版者
横浜国立大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

分子雲中の星間塵アイスマントル中での有機物生成の検証のため,高エネ研で新規開発中のデジタル加速器を用い,模擬アイスマントルへの重粒子線照射実験を計画し,その準備を行った。星間塵アイスマントルでの有機物生成を調べる場合に問題となるのが,極低温環境で組成の既知のアイスを作製した後に,これに照射することと,その反応過程の追跡法である。アイスマントルを構成する分子としてH_20,CO,CH_3OH,NH_3などが主と考えられるため,種々の混合比のアイスを作るためのクライオスタットとガス混合機のデザインを行った。ガス混合機に関しては,この装置に用いる高精度のバルブや圧力計を選定し,購入,組み立てまでを行った。クライオスタットチャンバーに関しても,高エネ研において改造中である。アイスへの照射実験の予備実験として,東京工業大学のタンデム加速器を用い,想定される出発材料(一酸化炭素,アンモニア,水)の混合気体に3MeV陽子線を照射した時のアミノ酸生成について定量的に調べた。照射後,生成物を酸加水分解した後,陽イオン交換HPLC法によりアミノ酸の定量を行った。気相での陽子線照射実験においては,一酸化炭素・アンモニア・水蒸気および一酸化炭素・アンモニアの混合気体のいずれも,照射開始後すぐに霞の生成が見られた。このことは,高エネルギー粒子線の作用により高分子態の有機物が気相中で直接生成することを示唆するものである。各照射生成物の加水分解物中に、多種類のアミノ酸が検出された。アミノ酸の生成量は照射量に比例した。このことからも,混合気体からのアミノ酸の生成は,従来想定されていたようなストレッカー反応のような多次的反応ではなく、照射により直接気相中で固体のアミノ酸前駆体が生成したと考えられる。この結果は,アイスへの照射実験においても照射により直接,高分子態の有機物が生成する可能性があることを示唆する。
著者
太田 一樹 三好 由里子 横須賀 路子 平井 三鈴 橋本 周太郎 小島 拓人 宮本 彰俊 林 康博 小林 修 黒田 博之 渡辺 純夫
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
雑誌
Progress of Digestive Endoscopy (ISSN:13489844)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.66-67, 2014-06-14 (Released:2014-06-21)
参考文献数
3

A 37-year-old male visited a nearby medical clinic with a history of recurrent vomiting after taking a commercial calcium supplement (calcium tablets) and drinking water. Since fiberoptic laryngoscopy revealed no abnormalities, the patient was referred to our hospital for further examination. Emergency endoscopy revealed a supplement-like white substance incarcerated in the upper esophagus. We crushed it with forceps, followed by washing. A proton pump inhibitor (PPI) and alginic acid were prescribed. At the second endoscopy performed on June, 2013, transnasal endoscopy was needed and insertion of the endoscope was found to be difficult due to ulceration and stenosis of the upper esophagus. When we performed the third endoscopy on June, there was no improvement in the stenosis and the ulceration was cicatrized, and minor bleeding was caused by the transnasal endoscope insertion. The patient was prescribed oral PPI therapy for the following month. The subjective symptoms disappeared and food intake became possible. Recently, a large number of subjects have begun to take a variety of supplements available in the market, and various types of complications related to the use of these supplements have been reported. We report this rare case of esophageal ulceration/cicatricial stenosis caused by oral administration of a commercial calcium supplement, with a discussion of the relevant literature.
著者
松野 薫 宮林 茂幸 関岡 東生
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.45-50, 2000-03-10
被引用文献数
1

本研究は,第109回日本林学会で報告した奥地山村と比較するために山村地域の中でも都市近郊に位置する神奈川県津久井町青根地区を事例に考察するものである。特に戦後の山村地域における生活と森林利用との関わりの変化に注目し,現在青根地区が抱える問題を農家の聞き取り調査をもとに分析した。その結果次のことが明らかとなった。一つは,青根地区は首都圏に近いという立地条件にあって農家の就労構造は第2種兼業が大半を占めるとともに恒常的勤務者が主体となっている。二つには,農家の農林業所得はきわめて低く,将来的に経営規模を大きく縮小する傾向にある。三つには,大きな人口減少の変化はみられないが,2〜3世代同居が比較的多く認められ「家」を相続する後継ぎを持ちながらも「農林業」の後継者はいないという現状にある。四つには,このような状況の中で,地域内における森林管理の担い手が不足し,放置される森林が目立っている。五つにはダム開発の影響で地価が高騰するとともに都市地域との交流事業やまた公園整備などが進められていることなどが明らかになった。
著者
原田 和宏 佐藤 ゆかり 齋藤 圭介 小林 正人 香川 幸次郎
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.263-271, 2006
参考文献数
36
被引用文献数
12 13

本研究は,在宅で生活を続ける自立高齢者における機能低下の実態を地域ベースで把握することをねらいに,ADL(歩行,入浴,トイレ動作,食事,着替え)および活動能力(老研式活動能力指標)の自立者を1年半後に追跡し,ADLまたは活動能力障害の新規出現に対する転倒既往と閉じこもりの関与を縦断的に検討することを目的とした。調査は中国地方の某町の在宅高齢者全員を対象に2002年12月と2004年6月に行い,ADL障害の出現では1,085名,活動能力障害の出現では525名のデータを分析した。その結果,在宅で生活を続ける自立高齢者のうち1年半でADL障害は4.7%に生じ,手段的自立の障害は9.0%,知的能動性は13.3%,社会的役割は15.4%,後者3指標いずれかの活動能力障害は25.9%に生じた。また,障害の新規出現は高年齢と併せて転倒既往や閉じこもりによってその割合が高まることが認められた。自立高齢者から機能低下のハイリスク者を選定するにあたり,転倒経験や外出しようとしない閉じこもり状況を考慮することは意義があると推察される。
著者
藁谷 哲也 江口 誠一 竹村 貴人 羽田 麻美 石澤 良明 三輪 悟 宋 苑瑞 梶山 貴弘 比企 祐介 前田 拓志 林 実花 神戸 音々 佐藤 万理映 LOA Mao BORAVY Norng
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では,アンコール遺跡からアンコール・ワット,バンテアイ・クデイ,およびタ・プローム寺院を選定し,寺院を構成する砂岩材のクリープ変形と風化環境を有限要素解析や高密度の熱環境分析をもとに明らかにした。その結果,砂岩柱の基部に見られる凹みの形成には,従来から指摘されていた風化プロセスに加え,構造物の自重による応力集中が関与していることが判明した。また,寺院は日射による蓄熱のため高温化,乾燥化が進み,砂岩材に対する風化インパクトの増大が生じていることが推察された。アンコール遺跡保全のためには,日射を和らげる緑地の緩衝効果を見直すことが必要である。
著者
小林 健彦
出版者
新潟産業大学附属研究所
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
no.39, pp.45-60, 2011-06

日本列島の中では、文献史資料に依って確認を取ることが可能な古代以降の時期に限定してみても、幾多の自然災害―気象災害、津波や地震災害、、火山噴火、伝染病の蔓延等―に見舞われ、その度に住民等を苦しめて来た。現在の新潟県域に該当する地域に於いても、当該地域特有の気象条件より齎される雪害を始めとして、大風、大雨、洪水、旱魃、地震、津波、火山噴火、そして疫病の流行といった災害が発生当時の民衆に襲い懸っていた。しかし、民衆はそれらの災害を乗り越えながら現在に続く地域社会を形成し、維持して来たのである。日本人に依る地域社会の形成は、災害に依る被害とその克服の歴史であると言っても差し支えは無いであろう。筆者は従前より、当時の人々がこうした災害を如何にして乗り越えて来たのかという、「災害対処の文化史」を構築するのに際し、近年自然災害が頻発している現在の新潟県域を具体的な研究対象地域として取り上げながら、その検証作業を行っている処である。本稿では、平安時代より鎌倉時代にかけての時期に発生し、当該地域に甚大な被害を齎したとされる、「謎の巨大地震」に関して、文献史学の分野より接近可能な事象に就いて、その事例検証と、当時の人々に依る対処法とに就いて、検討を加えたものである。
著者
小林 健彦
出版者
新潟産業大学附属研究所
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
no.39, pp.45-60, 2011-06

日本列島の中では、文献史資料に依って確認を取ることが可能な古代以降の時期に限定してみても、幾多の自然災害―気象災害、津波や地震災害、、火山噴火、伝染病の蔓延等―に見舞われ、その度に住民等を苦しめて来た。現在の新潟県域に該当する地域に於いても、当該地域特有の気象条件より齎される雪害を始めとして、大風、大雨、洪水、旱魃、地震、津波、火山噴火、そして疫病の流行といった災害が発生当時の民衆に襲い懸っていた。しかし、民衆はそれらの災害を乗り越えながら現在に続く地域社会を形成し、維持して来たのである。日本人に依る地域社会の形成は、災害に依る被害とその克服の歴史であると言っても差し支えは無いであろう。筆者は従前より、当時の人々がこうした災害を如何にして乗り越えて来たのかという、「災害対処の文化史」を構築するのに際し、近年自然災害が頻発している現在の新潟県域を具体的な研究対象地域として取り上げながら、その検証作業を行っている処である。本稿では、平安時代より鎌倉時代にかけての時期に発生し、当該地域に甚大な被害を齎したとされる、「謎の巨大地震」に関して、文献史学の分野より接近可能な事象に就いて、その事例検証と、当時の人々に依る対処法とに就いて、検討を加えたものである。
著者
平林 義彰
出版者
社団法人日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.41, no.8, pp.p511-514, 1993-08
被引用文献数
1
著者
山内 明 栗林 太 山内 三爵子 金ヶ嵜 史朗 土屋 朋子 小日置 佳代子 板谷 益美
出版者
川崎医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

炎症性疾患の発症機構を解明するために、炎症反応で重要な好中球の走化性惹起因子に対する遊走パターンを解析した。好中球のfMLPおよびIL-8への遊走の軌跡は直線状であること、LTB4およびPAFへの遊走の軌跡は蛇行することを確認した。fMLPおよびIL-8への直線状の遊走では単極性で安定的な形態が、LTB4, およびPAFへの蛇行する遊走では多極性で不安定な形態が関連していた。また、これら4種のリガンドの強さはfMLP > IL-8 >> LTB4 = PAFであることが明らかとなった。これらの知見は今後の炎症コントロールおよび抗炎症剤の開発などに役に立つものと思われる。
著者
ニーフ アンドレアス SINGER Jane 水野 啓 勝見 武 乾 徹 藤井 滋穂 原田 英典 小林 広英 藤枝 絢子 深町 加津枝
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は沿岸コミュニティが大規模災害からの復興するために必要な要件を、タイ、フィジー、ベトナム、日本の事例を学際的に比較することで検証するもので、以下の成果が得られた。(1)タイ南部で2004年に津波被害を受けたPhang Nga省の住民の再定住過程について現地調査を実施し、観光業や漁業を中心とする経済復興に際して外部からの援助の不適切な配分が住民間の格差を導くことを確認した。また少数民族Moklenのコミュニティにおいては、不適切な住宅整備や観光開発により災害の影響が拡大している現状が確認された。(2)フィジー西部Ba川流域において、2009年と2012年の洪水による影響と復興過程について約120件の聞き取り調査を行い、物的・人的支援が高い効果をもたらしているとともに、下流部の村落においては災害時の情報共有や相互扶助によるソーシャル・キャピタル向上の自助努力が被害軽減や迅速な復旧に寄与していることが判明した。(3)ベトナム中部フエ省で1999年、2009年に洪水被害を受けた60世帯で聞き取り調査を実施し、住居や生計を含む多様な災害の影響と、復旧過程における社会的ネットワークや生業多様化戦略の重要性を検証した。(4)宮城県気仙沼市および南三陸町における自然公園周辺地域を対象としてケーススタディを実施し、震災時に自然公園に関する施設などがどのような役割を果たしたかをふまえ、国立公園と地域をつなぐ「資源」や「人材・組織」の観点から今後の国立公園の保全管理や利用のあり方について考察した。(5)これらの事例研究に際し、災害前後と復興過程における生活に対する満足度をスコア化して回答する新しい調査法を提案・実践し、災害の影響や回復状態の個人間・世帯間の差異が明確に把握できることを確認した。
著者
小林 睦
出版者
豊田工業高等専門学校
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では,豪雨時の土構造物の変形・崩壊挙動を調べるために,盛土斜面および多数アンカー式補強土壁を対象にした遠心力場散水シミュレーションを実施した.その結果,飽和領域が表層部から拡大していく盛土斜面では,土の内部摩擦角よりも法面勾配が大きい場合は,見掛けの粘着力が消失して不安定化して崩壊に至ることが分った.また,補強土構造物においては,適切に排水機能を維持することの重要性と,豪雨時の不安定化の進展の様子を捉えることができた.
著者
小林 哲生 笈田 武範 伊藤 陽介
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-10-31

本研究では,神経・精神疾患などの診断支援や治療効果を定量的に評価できる新規医用イメージングシステムの開発を目的として,超高感度な光ポンピング原子磁気センサ(OPAM)の深化とモジュール化,ならびにこのセンサによるMRI撮像を超低磁場で実現し他の様々な計測手法とのマルチモダリティ計測を可能とするシステムに関する研究を行った. OPAMについてはK原子とRb原子のハイブリッド型により高い空間的均一性を実現できることを示し,さらに新たな多点同時計測法を開発した.また,モジュール型OPAMによるMR信号の直接計測手法の提案を行い数値実験によりその妥当性を示すなど多くの成果を挙げる事ができた
著者
木島 隆康 桐野 文良 山梨 絵美子 林 洋子 上野 勝久 佐藤 一郎
出版者
東京藝術大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

迎賓館赤坂離宮(平成21年、国宝に指定される)は明治42年に建設され、わが国最大の面積を誇る天井画を持つ(15部屋)。天井画はカンバスに描かれた油彩画である。過去に大修復が行われているが、その後も劣化が進行し著しく損傷している。本研究プロジェクトは、天井画に生じた損傷と劣化原因を調査し、その損傷原因が過去の粗悪な設置環境と過去の不適切な修復処置、さらにカンバスが貼られた木摺に主な原因があることがわかった。さらに、天井画の由来はフランスで制作され輸入されたものであることを突きとめた。
著者
松林 優一郎 岡崎 直観 辻井 潤一
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.4_59-4_89, 2010 (Released:2011-06-09)
参考文献数
26

FrameNet,PropBank といった意味タグ付きコーパスの出現とともに,機械学習の枠組みを利用した自動意味役割付与システムが数多く研究されてきた.しかし,これらのコーパスは個々のフレームに固有の意味役割を定義するため,コーパス中に低頻度,或いは未出現の意味役割が数多く存在し,効率的な学習を妨げている.本論文は,意味役割付与における意味役割の汎化問題を取り上げ,既存の汎化指標と新たに提案する指標を役割の分類精度を通して比較し,それぞれの特徴を探求する.また,複数の汎化指標を同時に利用する分類モデルが自動意味役割付与の精度を向上させることを示す.実験では,FrameNet において全体の精度で 19.16% のエラー削減,F1 マクロ平均で 7.42% の向上を,PropBank において全体の精度で 24.07% のエラー削減,未知動詞に対するテストで 26.39% のエラー削減を達成した.