著者
森 玲奈
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.445-455, 2008
参考文献数
47
被引用文献数
2

研究の目的は,ワークショップのデザイン過程におけるベテラン実践家の特徴的思考を明らかにすることである.本研究では,ベテラン実践家とその集団に属する初心者2組を選定し,発話思考法を用いた実験を行った.分析は,まずベテラン-初心者間における発話の流れを比較し,その上で2人のベテランに共通する特徴を検討した.その結果,ベテランにおけるデザイン時の発話には,依頼内容の確認・解釈の後,コンセプトの立案を行うという共通の流れがあることが明らかになった.また,ベテランの特徴として,(1)依頼内容に対する幅広い確認を行うこと,(2)デザインの仮枠となるデザインモデルを使用すること,(3)保留や選択の余地を残した「やわらかな決定」を行うこと,(4)スタッフの育成に対する意識とデザイン力を持つこと,(5)過去の実践体験の想起や経験から構築された慣習を用いてデザインを行うこと,が明らかになった.さらに,ベテランには経験に裏づけられた「個人レベルの実践論」があることが示唆された.
著者
森田 克徳
出版者
静岡県立大学
雑誌
経営と情報 : 静岡県立大学・経営情報学部/学報 (ISSN:09188215)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.33-44, 2007-03-20

This paper clarifies details and corporate principles of the establishment of Nissin Food Products by Momofuku Ando. And, the development of "Chicken ramen" is discussed with the construction of the sales route. In addition, the factor that the achievement descends though "Chicken ramen" is possessed is examined, and details of development and the demand creation of the product development and the sales route of "Cupnoodle" are examined.
著者
森 順子
出版者
河原学園 人間環境大学
雑誌
人間と環境 (ISSN:21858365)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.11-19, 2012-07-31 (Released:2018-04-23)

人間は他者との関係を持って生きている。真の人間関係とは何か。『リア王』の主人公が藤の末、手にするのは、コーディーリアとの揺るぎない関係である。シェイクスピアは副筋を編み出し、この理想的な人間関係を際立たせる人物を描いている。それがグロスターの私生児エドマンドである。私生児に対する差別と偏見をもつ社会の中で、父親から人前で息子と認めるのを恥ずかしがられる存在である。彼は感情を封印し、他者を騙す道を選ぶ。エドマンドが死の直前に変われたのは何故か。人間関係の兆しと愛を感じ取ることができたからである。真の人間関係には人を変える力がある。その基盤は相互の愛と尊敬である。人間関係の視点からエドマンドの内的世界を探る。
著者
瀧川 由宇登 森 勇人 関 伸吾 小松 章博 谷口 順彦
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.477-483, 1994-09-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
11

マダイにおける第一卵割阻止型雌性発生二倍体 (mitotic-G2n) 誘導のための最適条件の検討を行った。染色体の倍数化は高水圧処理法を用いた。高水圧処理の媒精後処理開始時間, 処理水圧, 処理時間の組み合わせにより条件検討を行いそれぞれの試験区でビーカー試験により孵化率, 正常二倍体孵化率, および半数体孵化率を求めた。mitotic-G2nの誘導に最適と考えられる条件は高水圧処理の媒精後処理開始時間45分, 処理水圧700kg/cm2, 処理時間5分であり, この場合の孵化率は35.06%, 正常二倍体孵化率は53.41%, 半数体孵化率は46.59%であった。しかし, 異数体と思われる個体の出現が多く変態期は大量へい死もみられたことから, さらに最適条件の検討を重ねる必要性が示唆された。
著者
森 雅雄
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:00215023)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.66-85, 1997-06-30
被引用文献数
1

本稿は, 近代において日本人がどのように「他者」を認識したのか, そして日本の民族学がその歴史の中にどのように位置づけられるのかを検討しようとするものである。幕末と明治期における日本人, 特に武士や士族は東アジアにおける共通語である漢文によって「他者」と意志疎通することができた。1850年代のペリー来航の時も, 日本は鎖国政策を採っていたけれども, 通常考えられている以上に効果的に彼らと交渉することができた。これは彼らの漢文能力によるものと考えられる。日本の武士は漢文を通じて「他者」を知ることができたのである。明治時代初期においても, 日本人はなお漢文による論理の儒学の教えが身についていた。このことは日本人が国際法のような西洋の規範を採用する基盤となったと思われる。日本における人類学の創設者坪井正五郎は武士の子弟であり, 西洋の人類学を取り入れ, 日本人を外来種と見ることに躊躇しなかった。大正時代は「他者」の認識が希薄になる時代である。日本人から武士の精神が失われるとともに「自己」に対峙する「他者」の認識は失われていった。それ故, 台湾や朝鮮のような日本の植民地は, 主権国家によって支配される地域ではなく, 日本の同質の一部として見られる様になるのである。これ以降, 日本はこれに対峙する「他者」のないままに拡大してゆくことになる。人類学者も日本人を古来より存在している単一民族として見るようになる。民俗学者柳田国男も日本民俗学を外国を必要としない一国民俗学として成立させる。日本民族学はこの日本民俗学から生まれた。しかも日本民俗学が持っていた方法や観点の一貫性さえ失ってしまったのである。即ち何かを一貫したものとして見るために要請される「他者」というものを。そしてそれは第2次大戦後の民族学者の変わり身の早さや石田英一郎の色々な方法に対して示した抱擁力に見ることができるのである。
著者
横瀬 久芳 佐藤 創 藤本 悠太 Maria Hannah T. MIRABUENO 小林 哲夫 秋元 和實 吉村 浩 森井 康宏 山脇 信博 石井 輝秋 本座 栄一
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.119, no.1, pp.46-68, 2010-02-15 (Released:2010-05-21)
参考文献数
80
被引用文献数
7 20 1

To understand the submarine volcanism surrounding the Tokara Islands, a submarine topographic analysis and 67 dredge samplings were carried out. Prior to the submarine investigations, we reviewed comprehensively geological and geophysical data on this region and confirmed the complexity of both volcanic activity and tectonic setting of the Tokara Islands. In contrast to the homogeneous subaerial volcanic rocks comprising predominantly two-pyroxene andesite lava flows, the dredged samples vary from basaltic andesite to rhyolite in composition. Furthermore, we reveal that dacitic and rhyolitic pumices are abundant and broadly distributed throughout the submarine area. The recovered volcanic rocks were mainly subangular to angular cobble-boulder fragments of lava, scoria, and variably vesiculated pumice. Volcanic rocks with hornblende phenocrysts occur only north of the Tokara strike-slip fault, which is a major tectonic element of volcanism. The pumices can be classified into three categories based on the size and abundance of the phenocrysts: aphyric pumice, fine-grained porphyritic pumice, and coarse-grained porphyritic pumice. Occurrences, such as amount in a dredge, shape without extensive abrasion, large fragment size, and bulk rock chemical compositions of the major pumice fragments suggest that they are in situ, rather than originating as drifted pumice or air fall, exotic pyroclastic fragments derived from the four super-eruptions of Kyushu Island. Because dredged samples contained fresh volcanic glass in the groundmass, and are not covered by iron-manganese oxide crust, they appear to have originated from the Quaternary eruptions. Indeed volcanic islands have developed above the submarine erosional terraces (indicated as knick points at approximately 110 m in depth), which is assumed to have formed during the last glacial age. K-Ar age dating on the representative pumice samples resulted in ages of 0.60 ± 0.20 Ma and < 0.2 Ma, respectively. These newly obtained submarine data support that acidic volcanisms occurred around the submarine calderas during the Mid-Pleistocene age.
著者
森國 泰平 吉田 光男 岡部 正幸 梅村 恭司
雑誌
情報処理学会論文誌データベース(TOD) (ISSN:18827799)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.16-26, 2015-12-28

ツイートに含まれる特徴と位置情報を対応させることで,実世界を観測するセンサとしてTwitterを活用することができる.しかし位置情報が付加されたツイートは少なく,Twitterをセンサとして活用するときの問題の1つとなる.そこで本研究では,ツイートの投稿位置を推定し,より多くのツイートに正確な位置情報を付与することを目的とする.この目的を達成するために,ツイート中のノイズとなる単語を除去するためのフィルタリング手法を提案する.また,単語の地理的分布を平滑化するためのスムージング手法も提案する.これらの提案手法が従来手法よりも有効に機能することを示し,その考察を行う.
著者
北村真紀 金森由博 三谷純 福井幸男 鶴野玲治
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告グラフィクスとCAD(CG)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.24, pp.1-6, 2013-11-21

リミテッドアニメーションとは,同じ絵を 2 コマあるいは 3 コマ連続して用いることによって,毎秒 24 コマのアニメーションを構成する表現手法である.本研究ではモーションキャプチャのデータを入力とし,このデータからフレームを間引くことで動きのタイミングを制御し,「中無し」 と 「コマ撮り」 の効果を模倣する.具体的には,動きが特に速いフレームを削除することで中無しのように速さを強調し,動きの小さいフレームを更新しないことでコマ撮りのように微小な動きを低減する.適用結果の動画により,リミテッドアニメ風のモーションタイミング調整が実現できたことを示す.Limited animation is a hand-drawn animation style that holds each drawing for two or three successive frames to make up 24 frames per second. In this paper, we propose a simple method for automatically converting motion capture data to imitate the unique expressions of limited animation. Especially, we focus on the following two features related to motion timing; one is that limited animation does not show subtle motion because it omits almost-static inbetween frames. The other is that it exaggerates motion speeds by omitting inbetweens. The accompanying movie with animating cartoon characters demonstrates that our method can imitate the expressions of limited animation.
著者
久保田 一雄 白倉 卓夫 大類 十三雄 村谷 貢 真木 俊次 田村 遵一 森田 豊穂
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.509-514, 1991-07-30 (Released:2009-11-24)
参考文献数
11
被引用文献数
5 20

我々は次の二つの課題を明らかにする目的で, 20歳から99歳までの2,231名 (男性1,295名, 女性936名) の血球測定値と血清総蛋白 (TP), 総コレステロール (TC), 及び中性脂肪 (TG) 測定値を分析した. (1) 白倉らの1978年の報告以来約10年が経過し, その間に日本人の食生活はさらに改善され, 平均寿命も延長した. そのような改善が老年者の血球測定値に何らかの影響を及ぼしているのだろうか? (2) 日常生活の質, 例えば老人ホームではなくて, 在宅であるとか, 就労しているとか, 旅行もするとかなど, が老年者の血球測定値に影響を及ぼすことが指摘されている. 60歳未満の青壮年者と上述したような質の高い生活をしている60歳以上の老年者とで, 血球の測定値に差異があるのだろうか? 結果は, ヘモグロビン濃度, 赤血球数, ヘマトクリット値のいずれも, 男性では50歳代から, 女性では60歳代から低下し始め, その変化は加齢に伴い, かつ男性でより顕著であった. 白血球数, 血小板数も加齢とともに低下傾向を示した. TP, TC, TGも60歳以上の老年者で加齢に伴って低下した. これらの成績から, 老年者では加齢に伴ってヘモグロビン濃度, 赤血球数, ヘマトクリット値のいずれも低下することが確認され, その原因の一つとして摂取蛋白の低下が推定された.
著者
小澤 秀介 小林 愛子 高津 亜希子 神田 博仁 山折 大 塩沢 丹里 大森 栄
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.202-208, 2016-03-10 (Released:2017-03-16)
参考文献数
20

We report the case of a 35-year-old pregnant woman treated with the calcium channel blocker, nifedipine, for maintenance tocolysis. She was hospitalized due to preterm labor at 21 weeks of gestation by her previous physician. A rash appeared following ritodrine hydrochloride administration for maintenance tocolysis. After changing to magnesium sulfate, a rash appeared again. As these rashes were suspected to have been induced by ritodrine hydrochloride and magnesium sulfate independently, consecutive treatment with these drugs was difficult. Therefore, she was transferred to our hospital for follow-up. At 28 weeks 6 days of gestation, treatment with nifedipine for maintenance tocolysis was started after receiving written informed consent, and the medication was approved by the institutional review board of our hospital. The attending pharmacist considered fetal/neonatal adverse effects of nifedipine, such as teratogenicity, fetotoxicity, and neonatal complications, as well as maternal side effects, such as headache, constipation, and excessive blood pressure drop. The pharmacist provided drug information about nifedipine to the attending physicians and nurses, and gave medication counseling to the patient. Following oral administration of 80 mg of nifedipine daily (20 mg every 6 hours), headache and constipation were evident but gradually improved. Neither excessive blood pressure drop nor exacerbated uterine contraction was observed throughout the period of nifedipine treatment. This medication was finished at 34 weeks 5 days of gestation and the patient was discharged at 36 weeks 2 days of gestation. She delivered a baby at 40 weeks 3 days of gestation.
著者
長森 美信
出版者
天理大学
雑誌
天理大学学報 = Tenri University journal (ISSN:03874311)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.1-32, 2020-02

壬辰丁酉(文禄慶長)の戦乱(1592~98年)によって多くの朝鮮人が日本軍に連れ去られた。朝鮮政府は,彼らを被擄人(被虜人)と呼び,その「刷還(送還)」につとめたが,17世紀前半までに帰国したことが確認できる被擄人の総数は6000人余りという。数万人とされる被擄人の大部分は異域・異国で暮らすことを余儀なくされたのである。被擄人のうち,有田・萩・薩摩などで陶磁器生産に従事した陶工や一部知識人等についての研究が蓄積されているものの,一般的な被擄人たちの定住過程については不明な点が多い。被擄人の大部分は自ら記録を残すことがなかったからである。本稿では,日本で洗礼を受けてキリシタンとなった被擄人の記録,すなわち,16世紀末~17世紀に日本で活動した宣教師の記録と17世紀前半の長崎平戸町の人別帳史料を通して,朝鮮被擄人が日本に連行され,定住していく過程を考察した。

7 0 0 0 OA 鉄道実例

著者
森島友治郎 編
出版者
田中伝吾
巻号頁・発行日
vol.第1巻 貨物編, 1898
著者
宮本 康 福本 一彦 畠山 恵介 森 明寛 前田 晃宏 近藤 高貴
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.59-69, 2015-05-30 (Released:2017-11-01)
参考文献数
49
被引用文献数
2

鳥取県ではカラスガイの絶滅が危惧されているが、本種の個体群構造や繁殖の実態が明らかにされていない。そこで本研究では、本種の分布が確認されている3つの水域を対象に、サイズ組成、母貝の妊卵状況、本種の生息域における魚類相、およびグロキディウム幼生の宿主適合性を明らかにするための野外調査と室内実験を行った。多鯰ヶ池ではカラスガイのサイズ組成が大型個体に偏っていたことから、稚貝の加入が近年行われていないことが示唆された。しかし、母貝が幼生を保有していたこと、当池でブルーギルとオオクチバスが優占していたことから、これらの外来魚による幼生の宿主魚類の駆逐が本種の新規加入の阻害要因になっていることが併せて示唆された。一方で、他の2つのため池では大型個体に加えて若齢の小型個体も少数ながら発見された。これらの池ではブルーギルとオオクチバスが確認されない反面、室内実験より幼生の宿主と判定されたフナ属魚類が優占することが明らかになったことから、新規加入が生じる条件が揃っていることが示唆された。以上の結果より、現在の鳥取県ではカラスガイの個体群動態が魚類群集に強く依存していること、そしてブルーギルとオオクチバスが優占する多鯰ヶ池は本種個体群の存続が危ういことが示唆された。以上の結果を踏まえ、最後に当県におけるカラスガイ保全のための提言を行った。