著者
森 幹彦 池田 心 上原 哲太郎 喜多 一 竹尾 賢一 植木 徹 石橋 由子 石井 良和 小澤 義明
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.1961-1973, 2010-10-15

平成15年度に必履修科目として導入された高等学校普通教科「情報」を履修した学生が平成18年度から大学に入学してきている.これに対して,大学における情報教育も種々の対応が求められているが,そのためには新入生の状況把握が必要となっている.本論文では,平成18年度から京都大学で継続的に実施している情報教育についての新入生アンケートから大学新入生の状況の変化を調査し分析する.その結果,高等学校における教科「情報」の履修状況が多様で,十分に実質化していない可能性も残っていること,アプリケーションソフトの利用に関するスキルの向上などが見られること,情報セキュリティに関するリテラシは改善傾向にあるが不十分であること,大学における学習への希望としてプログラミングをあげる学生が多いことなどが明らかになった."Information Studies" are the new subjects for information/computer literacy which were introduced into high school as compulsory subjects from 2003. Students who took these subjects have entered in universities since 2006, and education in university has to deal with the change of students. For that, it has been necessary to know what and how much these students have knowledge, skills and practice about information/computer literacy. Since 2006, the authors have conducted questionnaire surveys of the literacy to freshmen in Kyoto University. This paper reports the results of the surveys from the view point of information/computer education. The results show the learning experience about Information Studies in high school has wide variety, and suggests Information Studies may not well implemented in some high schools. Skills to use application software are improved gradually. Literacy about information security still remains insufficient while it is also improved. Many freshmen listed computer programming as a matter that they want to learn in university.
著者
中川 靖枝 原島 恵美子 森 貴芳 佐藤 学 辻 啓介
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.704-709, 1999-11-15 (Released:2009-05-26)
参考文献数
18

サイリウムを配合する粉末飲料の便性に与える影響を検討するために,正常便性の青年期女性を対象に,それぞれサイリウムの摂取量を変化させて,排便状況への影響を調べたところ,サイリウムの便性改善作用が確認された.正常便性者に対して,サイリウム4g以上の摂取では,目視による観察により排便量の有意な増加がみられ,また,8gの摂取では排便回数の有意な増加が認められた.日本人で不足している食物繊維の摂取を補うとともに,排便状況の改善に対する有効性および安全性が示された.
著者
畑山 絵理子 和泉 泰衛 酒匂 あやか 道辻 徹 鳥巣 裕一 森 隆浩 森 英毅 大野 直義
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.108, no.11, pp.2333-2340, 2019-11-10 (Released:2020-11-10)
参考文献数
10

症例は51歳,男性.下肢脱力を主訴に当院を受診し,低カリウム血症性周期性四肢麻痺の診断に至った.精査の結果,境界型糖尿病によるインスリン分泌過剰とアルドステロン分泌過剰を背景に,大量の餅等の糖質過剰摂取がその誘因として考えられた.糖質過剰摂取が原因と推察される低カリウム血症性周期性四肢麻痺の原因として,インスリン分泌過剰が背景にあることも念頭に入れる必要がある.

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著者
藤森淳三 著
出版者
越山堂
巻号頁・発行日
1923
著者
森下 知晃
出版者
一般社団法人 日本鉱物科学会
雑誌
岩石鉱物科学 (ISSN:1345630X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.230203, 2023 (Released:2023-07-28)
参考文献数
98

Ultramafic rocks, i.e., peridotites and pyroxenites, occur in a variety of tectonic settings on Earth. Ultramafic rocks can form as accumulation of mafic minerals from basaltic to komatiitic melts and be a major component of the Earth's mantle. The origin and history of ultramafic rocks are expected to provide information on the processes of partial melting and melt migration/extraction in the mantle and on the tectonic evolution of geologic units containing ultramafic rocks. I study ultramafic rocks in metamorphic belts, ocean floor, and mantle sections of ophiolites. My career began with a study of the Horoman Peridotite Complex in the Hidaka metamorphic belt in Japan. The ultramafic rocks and associated mafic rocks in the Horoman body record a very complex evolutionary history from the mantle conditions to crustal conditions. It is difficult to constrain the tectonic setting affecting events in the Horoman Peridotite Complex. On the other hand, ultramafic rocks in the mantle section of ophiolites and abyssal peridotites directly recovered from ocean floor to study melting processes and melt-rock interactions in the mantle can be used to constrain their tectonic setting, or at least as analogs to these tectonic settings. Studies on the Oman ophiolite by Japanese groups and literature studies of other ophiolites suggest that many ophiolites are later modified by subduction-related magmatism. Several ophiolites are being studied to elucidate the maturing process by subduction-related magmatism. Simple partial melting and melt extraction is expected in the adiabatically upwelling mantle beneath the mid-ocean ridge. In fact, abyssal peridotites directly recovered from mid-ocean ridges provided a unique opportunity to elucidate these processes. Comparison of abyssal peridotites recovered from the mid-ocean ridges and arc regions (fore arc and back arc) is key to understand the differences in magmatic processes in the two regions. Ocean science with research vessels has a well-defined working hypothesis that can only be addressed by direct sampling from the seafloor. To understand a crucial issue in Earth science as to why plate tectonics occurs on Earth, it is essential to elucidate the life of the oceanic lithosphere from its birth to its subduction into the mantle. Direct sampling of oceanic lithosphere by drilling is the key to solving this issue. I would like to emphasize that members of the Japan Association of Mineralogical science can play an essential role in leading analyses of rock samples directly recovered from seafloor. Rock samples recovered from seafloor by drilling and any methodology, as well as samples from anywhere on Earth, should be published in as papers, and these data would help integrate knowledge about the history of the Earth and planet and its future.
著者
的場 周一郎 沢田 寿仁 戸田 重夫 森山 仁 横山 剛 橋本 雅司
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.2580-2584, 2008 (Released:2009-04-07)
参考文献数
21
被引用文献数
4 4

患者は62歳,女性.主訴は心窩部不快感.平成某年10月頃より心窩部不快感が出現,翌年1月当院内科受診し,貧血,便潜血反応陽性を認めた.上部,下部消化管内視鏡を行うも異常は認めず,小腸造影検査を行ったところ,回腸に約6cmの憩室と,その内部に約3cm大の隆起性病変を認めた.腹腔鏡補助下に手術を行った.手術所見では回腸に憩室を認め,小切開を置き,憩室のみ切除した.術中迅速診断にて高分化型腺癌と診断され,リンパ節郭清を伴う回腸部分切除を行った.病理検査では,リンパ節転移を認めず,Meckel憩室の異所性胃粘膜から発生した癌であった.
著者
森光 由樹
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.91-96, 2016-04-30 (Released:2018-05-04)
参考文献数
8

野生動物と人との軋轢は,農業被害だけにとどまらず,近年は「人家侵入」,「器物の破壊」および「人への威嚇」など,生活被害や人身被害にまで拡大し始めている。これらの動物を捕獲する場合,まず猟銃による捕獲が考えられるが,「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」並びに「銃刀法」などの規制から市街地で発砲し捕獲することはできない。そこで,猟銃に比べて極めて威力が小さく,器物破損等の恐れがほとんどない麻酔銃による捕獲が法律改正により使用可能となった。麻酔銃捕獲は,安全な捕獲法ではある。しかし,いくつか課題がある。麻酔銃を所持するには,管轄する都道府県公安委員会(警察)から審査を受けて許可を受けねばならない。また,ガンロッカー等頑丈な保管庫で管理する必要もある。年1回,管轄する警察署による銃検査が行われ使用実績や管理状況について報告する義務が生じる。その一方で麻酔銃は産業銃であるため,猟銃の所持には必要な筆記試験と実技試験が課せられず,銃の基本的な扱いを修得していない者であっても警察の審査さえ通れば所持可能である。安易な導入と使用により,思わぬ事故が誘発されるおそれもある。以上のことから,改正法における麻酔銃の位置づけや運用には,その特徴に起因する様々な問題点の整理と留意とが不可欠と考えられる。
著者
森脇 美早
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.211-216, 2016-03-18 (Released:2016-04-13)

筆者が赴任したケアミックス病院には,療法士は多数在籍していたがリハビリテーション(以下,リハ)科医はおらず,リハ科医を知らない職員がほとんどだった.リハどころではないとの声も聞かれる中,質の高いリハ医療を浸透させるべく他科医師への啓蒙を含めた院内教育を行い,急性期から生活期までリハ科専門医が積極的に関与し,さまざまなチームアプローチを軌道に乗せた.たとえば,摂食嚥下医療,リハ栄養,brace clinic,経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct current stimulation:tDCS)やボツリヌス療法およびCI療法などのニューロリハ,回復期リハ科回診,リハ科医・療法士の学会発表推進などである.リハ科専門医のロールモデルとして,病院全体の意識を変えた4年間の活動を振り返り,リハ科専門医の存在意義を論じたい.
著者
森満 保
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.138-144, 2017-07-20 (Released:2018-08-01)
参考文献数
3

約 20 年持続した筆者自身のホワイトノイズ様頭鳴に対し、アカミミズから発見された線溶酵素剤であるルンブロキナーゼを服用したところ、数日で頭鳴の明らかな減弱を認めた。増量効果も確認され、2 年後の現在も自覚的にほぼ消失している。この効果からの治療的診断によって、頭鳴症例の中に、大脳聴覚野での血小板凝集性のフィブリン血栓症(thrombotic microangiopathy)によるものの存在が推測された。その機序について文献的考察を行った。
著者
西川 元也 吉岡 志剛 長岡 誠 草森 浩輔
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.40-50, 2021-01-25 (Released:2021-04-25)
参考文献数
35

核酸医薬品の実用化が急速に進み、ギャップマー型アンチセンス核酸(ASO)、スプライシング制御型ASO、ナノ粒子化あるいはN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)結合siRNA、CpGオリゴが近年上市された。これらの核酸医薬品は、水溶性高分子という共通点のほかは、標的細胞や標的分子、投与経路、体内動態などの点で異なる。標的部位に到達した核酸医薬品のみが薬効を発揮するため、核酸医薬品の体内動態制御は最重要課題の1つである。タンパク結合は、核酸医薬品の体内動態や毒性発現に重要であるが、必ずしも最適化されていない。標的指向化にはリガンド修飾が有用であり、GalNAc修飾が肝細胞へのsiRNAの送達に実用化されている。本稿では、核酸医薬品開発の現状と核酸医薬品の適応拡大に向けたDDSの可能性について論じる。
著者
高木 絢加 谷口 彩子 駒居 南保 村 絵美 永井 元 森谷 敏夫 永井 成美
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.19-25, 2014 (Released:2014-03-03)
参考文献数
30
被引用文献数
2 1

炭酸水の口腔内刺激 (清涼感) に着目し, 炭酸水の飲水が実体温をどの程度変化させるのか, その反応は炭酸の口腔内刺激のみでも起こるのかどうかを明らかにするために, 等温・等量の炭酸水と水を用いた飲用試験と偽飲 (Sham-feeding;SF) による口腔内刺激のみの試験を行った。炭酸水の飲水 (炭酸水) , 水の飲水 (水) , 炭酸水の偽飲 (炭酸水SF) , 水の偽飲 (水SF) の4試行をrandomized crossover designで実施した。前夜10時より絶食した若年女性13名に, 室温を26℃に保持した実験室で異なる日の朝9時にサンプル (15℃, 250 mL) を負荷した。心電図 (心拍数, 心拍変動) をサンプル負荷前20分間および負荷後40分間測定し, 深部体温 (鼓膜温) , 末梢体温 (足先温) を高感度サーモセンサーで連続測定した。鼓膜温は水・炭酸水ともにSFでは変化せず, 飲水で一過性に低下した。足先温は, 飲水 (水, 炭酸水) で約2.5-3℃低下し, 水SFでは約1℃の低下であったのに対し炭酸水SFでは約2.5℃の低下を認めた。心拍数は, 炭酸水, 炭酸水SFで負荷直後に一過性に上昇した。結果より, 炭酸水の口腔内刺激 (味, 炭酸刺激) のみでも足先温や心拍数を変化させることが示された。
著者
小川 潔 山谷 慈子 石倉 航 芝池 博幸 保谷 彰彦 大右 恵 森田 竜義
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.33-44, 2011-05-30 (Released:2018-01-01)
参考文献数
34

東京湾岸地域の造成地に1998年に人工的に播種されて成立したセイヨウタンポポ個体群を対象として、外部形態、生育密度の増減、実生の死亡・生残状況、倍数性構成を観察・測定し、移入されたばかりのセイヨウタンポタンポポ個体群の特徴を明らかにした。本個体群は、人工土壌の上で高密度の個体群を形成したが、2006年現在、個体密度が減少しつつある。現地での自然発生実生および播種実験による実生の生残調査では、実生出現期は主として初夏であるが、実生のほとんどは当年の秋までに死亡した。また秋発生実生は、1年後まで生き残るものがあったが絶対数は少なかった。本州の大都市では純粋のセイヨウタンポポが稀で多くは在来種との雑種であるのに対して、プロイディアナライザーによる痩果および生葉の核DNA量相対値測定の結果、本個体群では2006年現在、純粋のセイヨウタンポポの割合が高く。周辺からの雑種と考えられる個体の侵入は少ない。さらに、日本で初めて2倍体のセイヨウタンポポが個体数割合で約15%検出された。
著者
森川 美羽 石崎 武志 高野 智早 渡辺 享平 田畑 麻里 佐藤 義高 西本 武史 小坂 浩隆 片山 寛次
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.541-544, 2012 (Released:2012-08-21)
参考文献数
18

【目的】がんの診療に伴い, 吃逆はしばしば経験し, 治療に難渋することが多い. 化学療法に伴って出現した持続性の吃逆に対して, プレガバリンが奏効した2症例を経験したので報告する. 【症例】症例は共に進行肺扁平上皮がんであり, 症例1はカルボプラチン+パクリタキセル, 症例2はネダプラチン+イリノテカンの2剤併用化学療法を施行した. 2症例共に抗がん剤の投与に応じて吃逆の出現, 増悪を認めており, 薬剤が誘発したと考えられた. 吃逆はメトクロプラミド, クロルプロマジン, ガバペンチンに抵抗性であり, プレガバリン 150 mg/日の投与によりすみやかに改善した. 【結論】鎮痛補助薬として近年用いられるようになったプレガバリンは, その薬理作用である神経細胞の過剰興奮の抑制により吃逆にも効果がある可能性がある.
著者
森田 茂樹 瀬戸 牧子 原 恵子 井手 芳彦 石丸 忠彦 和泉 元衛 辻畑 光宏 長瀧 重信
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.458-461, 1983-04-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
20
被引用文献数
4 4

民間療法として大量の飲水と水浣腸を行ない,急性水中毒症の発症をみた健康成人例を経験した.症例は25才,男性.昭和54年より健康増進を信じて大量飲水と水浣腸を始あた.昭和55年5月27日大量発汗後約30分で2lの飲水と81の水浣腸を行ない,四肢のこわばり感等出現したのち呼名反応なくなつたため当科入院となつた.入院時血清Na l24mEq/lと低Na血症を呈していた.また入院前24時間以上水分摂取がなかつたにもかかわらず, Na濃度6mEq/lと低浸透圧尿の多量排泄(1日量5300m1)がみられた.この利尿に伴つて血清Na濃度は改善し意識が回復した.以上より急性水中毒症と診断した.急性水中毒症は何らかの基礎疾患を有する例にみられやすく,その成因は細胞外液の急激な低浸透圧化のために水分が細胞内に移動し,脳浮腫をきたすためとされている.本例では発症後水分制限がなされたこと,高張ブドウ糖・Na製剤輸液を使用したことに加えて,急激な利尿により細胞外液の浸透圧改善が得られ救命し得たと思われる.なお第3病日に行なつた腰椎穿刺では, Na濃度97mEq/l, Cl濃度82mEq/l,総蛋白量12mg/dlと低浸透圧であつた.血清Na濃度の改善よりも脳細胞内および脳脊髄液の浸透圧改善は遅れると考えられる.入院時検査成績で総ビリルビン4.0mg/dl, CPK 1815mU/ml, LDH 507mU/ml, GOT 67mU/ml等の異常値を示していたが,水中毒症との関係については現在の所明らかではない.
著者
渡邊 淳子 森 真喜子 井上 洋士
出版者
日本臨床倫理学会
雑誌
臨床倫理 (ISSN:21876134)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.53-62, 2017 (Released:2021-07-12)
参考文献数
20

摂食嚥下訓練において言語聴覚士(以下,ST)はジレンマを感じることがある.そこで,摂食嚥下訓練の場面に注目し,STが経験するジレンマの様相とそのようなジレンマが生じるプロセスを明らかにすることを目的とした.摂食嚥下訓練の経験があるST8名に半構造化インタビューを行い,得られたデータをStrauss & Corbin版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した.10のカテゴリーと1つのコアカテゴリーが抽出され,帰結となったカテゴリーのうち《患者に無益な努力をさせ続ける苦悩》,《直接訓練を止めると患者が衰弱してしまうジレンマ》,《患者の益にならないような直接訓練を続けるジレンマ》,《患者の死に加担したように感じる苦悩》の4つのカテゴリーがジレンマの状況であった.そのうち3つの状況は倫理原則が対立する倫理的ジレンマの状況であった.また,本研究の結果から,STが感情労働による疲弊や共感疲労に陥るリスクが高いことも示唆された.
著者
森本 幸子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第85回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PC-162, 2021 (Released:2022-03-30)

近年,SNS上での誹謗中傷が社会問題となっている。ここ数年,過激化する誹謗中傷に耐えかねて命を落とす事件も発生しており,その対策が待たれるところである。本研究では,SNS上での攻撃行動を促進する要因を明らかにするためにオンラインでの縦断調査を実施した。第1回調査は2020年12月に実施し,第2回調査は2021年1月に実施した。調査内容は,SNS利用歴,過去1週間当たりのSNSの利用状況,過去1か月間の他者からの受容経験と拒絶経験,SNS利用に関する規範意識,SNS上での攻撃行動であった。SNS上での攻撃行動とその他の変数との因果関係を検討するために,交差遅れ効果モデルを用いて男女ごとに分析を行ったところ,男女ともに過去1か月に他者から受け入れられた経験による影響を低く見積もる人ほど,2回目の調査時のSNS上での攻撃行動が多いことが分かった。また,1回目の調査時点における規範意識が低い男性ほど2回目の調査時のSNS上での攻撃行動が多いことが分かった。これらの結果より,現実場面での他者からの排除や規範意識の低さが,SNS上での攻撃行動を促進させる可能性が示唆された。