著者
渋谷 節子 斉藤 巌 菊池 浩光 高岡 和夫
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.55-65, 2006-01-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
19

われわれは1991年以降, 末期癌告知や余命告知後に失意や無力感に陥った癌患者に対して, 心理的介入として受容的なカウンセリングとサイモントンのイメージ療法にバイオフィードバック法を併用した.これまでイメージ療法を行った36名のアンケート調査では, イメージ療法の効果について, 「心身とも楽になった」23名(63.9%), 「症状が軽減した」17名(47.2%), 「生きる希望をもった」16名(44.4%), また治療意欲では, 「期待ができるので続けたい」18名(50%), 「積極的に治療したい」18名(50%)などの結果が得られた.心理テストでは17名のうち13名(76.5%)に抑うつが認められたが, イメージ療法後ではこのうち11名(84.6%)に抑うつの改善が得られた.これらの結果から, イメージ療法は末期癌患者に対する心理的介入として有効であることが示唆された.また, これらの療法が著効し, 癌性骨髄症から回復した末期癌患者についても併せて報告する.
著者
平野 昌繁 島津 俊之 野尻 亘 奥田 節夫
出版者
The Human Geographical Society of Japan
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.493-503, 1991-10-28 (Released:2009-04-28)
参考文献数
21

A large number of gigantic landslides were triggered by typhoon rain in 1889 over the Totsukawa area, Nara prefecture, resulting a serious hazard. Their localities are identified exactly based on the Koaza name in the historical record, the Yoshinogun-Suisaishi. The identification of landslide localities over South- and East-Totsukawa areas was tried this time, and the results were summarized.Landslide larger than 4×104m2 in area have been shown by cliff marks on the topographic map in 1911 (Meiji-44) as same as in the case of West-Totsukawa area reported before. Topograhic features of gigantic landslides are still recongnized clearly on the aerial photos in 1953 taken even 65 years after the hazard.Description of the localities by Koaza name is frequent at the portions near the settlements or along the trafic routes at that day. In addition, some exaggeration in total number of large landslides is detected, if compared with the number of criff marks in the topographic maps in, 1911, even taking into account of the difference in threshold magnitude for description. Despite these biassed nature, it is clearly true that the Yoshinogun-Suisaishi surves the extraordinarily detailed record of the landslide localities, and this has come from the timing that the hazard occurred just after the detailed survey and registration of land-owner relationship there.
著者
清水 浩 林 節男
出版者
The Japanese Society of Agricultural Machinery and Food Engineers
雑誌
農業機械学会誌 (ISSN:02852543)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.551-557, 1977 (Released:2010-04-30)
参考文献数
4
被引用文献数
1

この報文は, もみがらを熱利用した残滓のもみがらくん炭が, ろ材として利用されるときに示す特性についての研究結果である。研究には, もみがらおよび各種燃焼度で各種破砕度のもみがらくん炭の計7種の材料を対象とした。これをろ材として利用するときに関係する基礎的な物性値を, まず把握した。その同一材料を供試して, 各種加圧力条件下での流水抵抗と圧縮歪とを求め, これを Kozeny-Corman の式に適用して, 圧縮層の仮想毛細管の直径を供試材料別に算定した。また, 実用装置の場合について, 流速と層厚との関係で最終加圧力を計算し, 供試材料別にろ過層の機能を明かにして, 適正条件を探究したものである。
著者
清水 節
出版者
金沢工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、日米の史料を用いて「宗教法人法」の起草過程を分析したものである。GHQの民間情報教育局宗教課、文部省宗務課、宗教界指導者の各見解と議論された論点を明らかにした結果、日米の文化的・歴史的背景に起因する法観念の相違や、各々の理想とする宗教法人像の相克が顕在化し、対立と妥協の末に本法が生み出されたことが解った。また、本研究の一環で「国有境内地処分法」の起草過程も明らかにした。
著者
前田 昌隆 東郷 泰久 松山 金寛 本木下 亮 俵積田 裕紀 眞田 雅人 小倉 雅 藤井 康成 瀬戸口 啓夫 小宮 節郎
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.565-567, 2017-09-25 (Released:2017-12-14)
参考文献数
4

大腿骨頸部疲労骨折を発症した女性長距離走選手2例の治療経過と発生機序の推察を報告する.【症例1】20歳女性,18歳から稀発月経で体脂肪率8%台,腰椎骨密度Young Adult Mean(以下,YAM値)110%.受傷前から左鼠径部に違和感あり,左股関節痛が増悪.MRIでtransverse typeの疲労骨折と診断.左腸腰筋と外旋筋部にもT2で高輝度変化を認めた.【症例2】19歳女性,15歳から続発性無月経で体脂肪率13%台,エストラジオール値(以下,E2)17%・骨代謝は高回転型・腰椎骨密度YAM値90%.受傷前から右鼠径部痛があり,痛みが続き,MRIでcompression typeの疲労骨折と診断.【考察】症例1は,左腸腰筋・外旋筋の筋損傷に伴う機能不全が荷重時の支持性低下を来し骨折に至り,症例2は,Female Athlete Triad(以下,FAT)が主要因と考えた.
著者
元田 節士
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.11-15, 1982-01-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
11
被引用文献数
1 4

ココア,コーヒーおよび緑茶の抽出液の酵素的褐変をAlternaria tenuis A-2株の生産するポリフェノールオキシダーゼを使用して検討した結果,本酵素により十分に褐変することを見出し本酵素の応用を検討した。醗酵ココア豆の抽出液は未醗酵ココア豆やローストしたココア豆の抽出液よりもより容易に本酵素により酸化された。いずれのココア抽出液も酵素酸化により,一層褐変化した。未醗酵ココア豆を本酵素で処理することによって,醗酵ココア豆に相当する原料ココア豆を調製した。コーヒー抽出液も本酵素で酸化された。酵素酸化によりコーヒー生豆の抽出液は褐色に変化し,ローストしたコーヒー豆の抽出液はさらに褐変化した。市販のインスタントコーヒーを本酵素で酵素処理することによって,より褐変化した着色濃厚なコーヒー飲料を調製した。緑茶抽出液もココアやコーヒーと同様に本酵素によって容易に酸化され,褐変化し,紅茶液に変化した。本酵素を使用して緑茶抽出液を紅茶液に転換しインスタントティーを調製した。
著者
外間 ゆき 新垣 博子 尚 弘子 宮城 節子 桂 正子 金城 須美子 東盛 キヨ子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.145-153, 1980-04-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
14

In an attempt to assess the actual condition of everyday food taken by the people in Okinawa during the period covering from the late Meiji through the early Taisho eras, the following two approaches were taken; (1) A survey of existing old literatures, (2) Fact-finding interviews with 72 persons of old ages. The main findings of our studies are as follows : 1) From the survey of literatures, it was judged that the food intakes of the ordinary people during the late Meiji era were very poor and meager.2) The physical measurement of school children were below the national norms and the difference became larger as the age progressed, and the children as a group showed a body type with a relatively bigger chest measurement compared with the height.3) The production of the sweet-potatoes being predominant, the typical meal regardless of the time of meals during the day consisted of a simple combination of boild sweet-potatoes and soup. Sweet potatoes, which were suited as supplementary diet, were also taken as between-meal snack. Production of soy-bean was relatively high and the home-made Tofu was an important source of protein. Among the main vegetables were sweet-potato leaves, towel gourd, balsam pear, etc. and such wild vegetables as Yomogi, Nigana, Nobiru etc. They were used in soup, cooked, fried or dressed food.4) The main preserved foods included black sugar-pickles, dried bean leaves, salted pork, salted fishes, etc. Tofuyo was cited as an unusual food characteristic to this part of Japan.
著者
龍口 巌 松岡 龍雄 泉 玲子 伊地智 節 柴田 浩志
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.362-366, 2012-09-25 (Released:2016-04-01)
参考文献数
11

本研究では,ウーロン茶エキス,甜茶エキス,緑茶エキス,柿渋エキスの4種のポリフェノールを組み合わせたポリフェノール混合エキス(抗ノネナールPolyphenol Complex,以下抗ノネナールPCと記載)に,加齢臭の主な原因である2-ノネナールへの高い消臭効果があることを見出した.更に,加齢臭が気になるあるいは加齢臭を指摘された事がある43歳〜75歳の日本人男性を対象に,抗ノネナールPCを配合した石鹸を4週間継続使用させる“加齢臭低減効果確認試験”を実施した.結果,使用前に比べて,使用2週間後,使用4週間後に,2-ノネナール量,臭気判定士による臭気強度および被験者の体感(主観評価)を表すVisual analogue scale (VAS)値が有意に改善され,抗ノネナールPCを配合した石鹸の加齢臭低減効果が確認された.
著者
栗山 進一 菅原 詩緒理 相場 節也
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究においては、主として以下の3つの事業を遂行する。①三世代コホートのアドオンコホートの実施、②オミックス解析と疾患クラスタリング、③クラスタリング結果に基づき、アドオンコホートデータとオミックス解析データのシェアリング及び統合解析によるアトピー性皮膚炎と自閉スペクトラム症のリスク予測式構築及び病態解明。①のアドオンコホートについては、これを実施できる期間が限られている。三世代コホートの児が4歳~5歳となり、センター型調査を受けるのは2021年3月31日ですべての児について完了する。本研究課題の遂行は喫緊の課題であり、この時期に実施しなければ二度とこのような調査は実施できない。
著者
渡辺 陽菜 井上 節子
出版者
文教大学湘南総合研究所
雑誌
湘南フォーラム = Shonan Forum : Journal of the Shonan Research Institute Bunkyo University (ISSN:18834752)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.111-118, 2014-02-01

玄米には抗酸化作用を示すフィチン酸(IP6)が多く含まれているため、健康志向の一つとして、“玄米食”が注目されている。一方で、フィチン酸のリン酸基とミネラル元素が結合し、体外に排出されるため、玄米摂取によるミネラル阻害という問題が報告されている。そこで、玄米のミネラル阻害を抑制するために、フィチン酸に含まれるリン酸基の一部を脱リン酸し、摂取する方法の検討を行った。玄米を調味料として用いられる食塩水(塩化ナトリウム)で洗浄し、結合しているリン酸基の変化を調べた。さらに、フィチン酸含量が少ない精白米と、玄米の抗酸化力の違いを調べた。 米粉、玄米粉、発芽玄米粉のフィチン酸(IP6)とイノシトール5リン酸(IP5)量を、液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定した。IP6は玄米粉、発芽玄米粉に多く、IP5は玄米粉に多く含まれていたが、米粉では両成分が低値を示した。 ?また、玄米粉を塩化ナトリウム溶液(0.5 、1.0 、3.0 、5.0%濃度) で洗浄し、HPLC によって、水溶性抽出分と脂溶性抽出分に分け、各抽出分のIP6、IP5、イノシトール4リン酸(IP4)の定量を行った。IP6は脂溶性抽出に多く含まれ、IP5とIP4は水溶性抽出分に多く含まれていた。また、洗浄に使用した塩化ナトリウム濃度が大きくなると、IP6、IP5、IP4濃度が高くなった。米粉と玄米粉を同様に塩化ナトリウム溶液で洗浄し、その後、抗酸化力の指標である過酸化脂質生成量の変化をTBARS(八木)法で調べた。塩化ナトリウム濃度が高くなると、米粉では過酸化脂質量の増加がみられたが、玄米ではその増加が見られなかった。この事から、玄米粉は白米粉と比べ、過酸化脂質生成が抑制される事が明らかになった。
著者
内藤 佳奈子 坂本 節子
出版者
県立広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

人工合成培地を用いた無菌培養実験により、赤潮原因藻類の増殖における鉄利用能の検討を行った。その結果、ノリ色落ち原因珪藻Eucampia zodiacusと有害渦鞭毛藻Cochlodinium polykrikoidesの利用鉄種と有機配位子の産生能を明らかにした。また、主要な赤潮藻8種の最小細胞内鉄含量を求め、現場海域における増殖可能な細胞密度と他種との競合における優位性を評価した。瀬戸内海沿岸域の調査研究では、有害赤潮藻類の細胞密度と溶存鉄濃度との間の相関性を示すことができた。
著者
熊田 ふみ子 倉橋 節也
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.1331-1344, 2022-07-15

SDGs(持続可能な開発目標)に代表されるように,相互に関連しあい複雑な問題に直面している現在,個人では正解を導き出すことは難しい.そのために,1人1人の知識だけでは創造できない高次元の集合知が求められている.そして,集合知を生み出すためには,ファシリテーションが重要といわれている.そこで本研究は,ダイバーシティ・マネジメントの研究分野のフォールトライン(以下,FL)理論を応用して,議論のプロセスを可視化する.そのうえで,議論の進行と集合知の生成関係と,そのプロセスへのファシリテータの関与を明らかにすることを目的とする.FLとは,グループを1つ以上の属性によりサブグループ(以下,SG)に分ける仮想の分割線である.実際に議論された内容をテキストデータに起こし,議論の特徴語を分散表現でベクトル化する.そのベクトルを特徴語の属性と見なし,10発言を1つのグループにして特徴語の関係性をFLとSGで測る.そして,移動平均法を用いて,議論の発散・収束プロセスをFLの強さ,多様性をSG数の変化で可視化する.その結果,特徴語を引継ぎながら発言が続いた後に,ある特徴語を中心に収束し,新たに拡大に転じることによりFLが収束・発散を描き,その過程で補完による集合知に発展する可能性がある話題展開が発生することが分かった.また,そのプロセスにおいて,ファシリテータがテーマを絞り込むことが重要であることも分かった.
著者
吉野 節己
出版者
一般社団法人 品質工学会
雑誌
品質工学 (ISSN:2189633X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.17-22, 1995-04-01 (Released:2016-03-24)

Not only sprouting culture but plant growth condition has been decided in most cases by judging the desirable characteristics such as big growth and abundant harvest. However, the sprout is cultured under inhibitory condition which is shading culture. So it tends to breakdown and decay before long. The sprouting condition has been also accompanied with evaluations including the principle contradiction, that is, "The one which grows up early decays rapidly and the one which is late growth does not grow to be big. " Here, the optimization was conducted by parameter design considering weight change versus the culture time to be dynamic SN ratio on the growth curve as an evaluation to decide the sprouting condition.
著者
稲村 雄 本郷節之
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.8, pp.1823-1832, 2004-08-15

SSL,SSH,IPSec等のいわゆるセキュアプロトコルを利用することにより,インターネット等の公衆ネットワークを介してプライバシ保護の必要な情報を安全にやりとりすることは,現在では十分現実的なオプションとなっている.しかし,そのようなネットワークの末端となる個々の計算機の内部実行環境を見ると,プライバシを要するデータの機密性/完全性を保護する機構はほとんど用意されていない.そのため,今後はこの内部実行環境に存在する脆弱性を突いた形でプライバシ情報を含む機密データを奪取するという形の攻撃に対する防御が重要性を増すと考えられる.本稿ではそのような計算機内部の実行環境を改善するための一方式として,暗号コプロセッサ等を持たない一般的な計算機ハードウェア(H/W)およびソフトウェア(S/W)で実装可能な“暗号化メモリシステム”なる手法を提案する.
著者
大迫 正一 林 行雄 安江 雄一 松山 恭悠 田村 岳士 真下 節
出版者
日本循環制御医学会
雑誌
循環制御 (ISSN:03891844)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.22-25, 2011 (Released:2013-05-31)
参考文献数
3

We reported anesthetic management of a parturient of Jehova’s Witness with severe anemia(Hb: 5.8g/dl), undergoing emergent hysterectomy. Her massive bleeding continued following dilatation and curettage for missed abortion. Anesthesia was induced with propofol, fentanyl and rocuronium and maintained with sevoflurane and remifentanil. Hypotension after induction of anesthesia was treated with volume loading with 5% albumin and repeated bolus injection of phenylephrine. Although continuous infusion of dopamine was given to maintain blood pressure after start of the operation, ST segment depression was noted in II, III and aVF. Then, dopamine was replaced by noradrenaline and thereafter, ST depression was alleviated. Considering the episode of ST depression and the value of Hb of 2.8g/dl at end of the operation, the patient was transported to ICU without extubation and under sedation with propofol to suppress the oxygen consumption. The patient was extubated on 10th postoperative day without any respiratory or neurological complications. The present case suggests that perioperative management to suppress the oxygen consumption may be a useful for a patient of Jehova’s Witness with severe anemia.