著者
堀込 和代 河内 美江 清水 愛 永井 里枝 乗川 みどり 茂木 恵 森 葵生 山越 恵 岩室 紳也
出版者
医学書院
雑誌
助産雑誌 (ISSN:13478168)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.151-159, 2003-02-01

はじめに 男児の性器の清潔方法については,包皮内の清潔を積極的に行なう方向性と消極的な方向性とに分かれており,コンセンサスが得られていないのが現状である。また,科学的な根拠に基づいたケアや指導に積極的に携わっているという報告も少ない。 岩室らは「包皮内の清潔を保ち,真性包茎の手術を回避するためにも新生児期からの包皮翻転指導は重要である」1)と述べている。また,伊藤らは「小児期の包皮炎や尿路感染症予防のためにも,乳幼児の包茎に対して積極的に包皮翻転術を行なうことは有益である」2)と述べている。反面,包皮翻転指導を奨めない考えとして,「日常生活において,乳幼児で恥垢が問題となることは少ない。母親が入浴のたびに包皮をむいて亀頭を洗うことは,行き過ぎた行為となるおそれがある」3)や「幼少児,特にまだおむつがとれていない年齢では多くの場合,包皮口は狭く包皮と亀頭は癒着していることが多いが,これはむしろ尿による亀頭への刺激を回避し,亀頭を保護しているともいわれており,また無理にはがすことによって包皮先端に裂傷を与え,ひいてはそれがのちに瘢痕性の真性包茎を誘発することになるのではないかと危惧しているので,あえてこの時期に包皮を無理やり反転させるのは良くないと考えている」4)といった意見などがある。 このように,包皮翻転指導に関しては現在,小児科医や泌尿器科医の間でも意見の一致はみられていない。しかし,実際に亀頭包皮炎をおこす子どもは存在し,包皮内を清潔に保つことは,感染予防の観点からも必要である。特に新生児期から行なうことで無理なく取り入れられると考えられる。 一方で,日本家族計画協会クリニックが思春期の男女を対象としている電話相談で,男子からの相談内容は「包茎」が毎年上位を占めているという報告がある5)。しかし,岩室が「大人になればほとんどの人がいわゆる仮性包茎の状態になるので,結局,ほとんどの人は手術をしなくても問題がない」6)と言うように,日本人男性のほとんどは包皮を翻転すれば亀頭部が露出できる状態であり,治療的処置を必要とする場合は稀である。それにもかかわらず思春期男子はさまざまな間違った情報を自分に当てはめ,自分は包茎ではないかと悩んでいる。しかし,親しい人に気軽に相談できず,悩んだ末に電話相談に頼ってくるのではないだろうか。また,男児をもつ母親を対象にした橋詰らの調査によると,25.9%の母親が自分の息子は包茎ではないかと疑ったことがあるという結果が出ている7)。このように,思春期・成人期に達しても正確な情報が得られていない実態がある。 男子が思春期になってから,誤った情報に左右されず,身近な人間関係の中で日常的に,自分の性器に関する正しい知識や対処の仕方を獲得するには,出生時から排泄や清潔のケアを引き受ける母親のかかわり方が重要であると考えられる。
著者
岡本 葵 藤田 英典
出版者
国際基督教大学
雑誌
国際基督教大学学報. I-A 教育研究 = Educational Studies (ISSN:04523318)
巻号頁・発行日
no.51, pp.93-102, 2009-03-31

アファーマティブ・アクションの目的は,過去の社会的・構造的差別によって何らかの不利益を被ってきた人々に対して積極的な配慮を行うことによって,実質的な機会均等を社会全体として達成することにある.しかし,今日,この概念の起源国アメリカにおいて,アファーマティブ・アクションを「逆差別」「反能力主義」とする批判が増加している.本稿は,アメリカにおけるアファーマティブ・アクションの展開を概観する中で,真の意味での「能力主義」を達成するためには,実質的な「機会均等」をめざすアファーマティブ・アクションの実施が有効な手段になり得ることを検討する.
著者
松村 葵 建内 宏重 中村 雅俊 市橋 則明
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11224, (Released:2016-11-26)
参考文献数
38

【目的】運動前後の棘下筋の即時的な筋断面積の変化を比較し,低負荷・低速度での肩関節外旋運動によって棘下筋に対してトレーニングによる刺激を与えることができるかどうかを明らかにすること。【方法】健常男性10 名を対象とし,負荷と運動速度をそれぞれ0.5 kg・5 秒条件,0.5 kg・1 秒条件,2.5 kg・1 秒条件の3 条件で肩関節外旋運動を行い,運動前後に棘下筋の筋断面積を超音波画像診断装置によって撮影した。また表面筋電図を用いて運動中の棘下筋と三角筋後部の筋活動を測定した。【結果】運動後の棘下筋の筋断面積は0.5 kg・5 秒条件で他の2 条件よりも有意に大きく増加した。棘下筋の運動中の平均筋活動量には条件間に有意な差はみられなかったが,運動1 セット中の棘下筋の筋活動量積分値は0.5 kg・5 秒条件で有意に大きかった。【結論】低負荷であっても運動速度を遅くすることで,棘下筋にトレーニング刺激を与えられることが明らかとなった。
著者
長谷川 雛 酒井 麻衣 若林 郁夫 宮西 葵
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.197-203, 2021 (Released:2021-08-26)
参考文献数
16

三重県の鳥羽水族館で飼育されているイロワケイルカ(Cephalorhynchus commersonii)の成熟オス1頭と成熟メス2頭を対象に社会行動を分析した.メスは2頭とも次年に出産したため,本種の妊娠期間から逆算しおおよその受胎日を推定した.オスによるメスへのつきまとい行動を119日間毎日観察し,つきまといが多い時期をメスが発情している時期と推定した.その結果,発情周期は約28日と推定された.並泳,追尾,並列静止,接触,ラビング,オスによるメスの生殖孔への接触,オスがペニスを出してメスに接近する社会行動を記録した.オスと発情時のメス間の社会行動の頻度は,そのメスの非発情時および妊娠中や,オスと発情していない他のメス間での社会行動の頻度よりも高かった.また,追尾と並泳の持続時間は,メス発情時に他の状態の時よりも有意に長かった.これらの行動学的特徴は,非侵襲的にメスの発情を知るための指標となりうる.
著者
坂井 堅太郎 松岡 葵 牛山 優 下田 妙子 上田 伸男
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.1176-1181, 1998-11-30 (Released:2017-02-10)
参考文献数
12
被引用文献数
4

鶏卵の卵白中のオボムコイド(OM)は, 他の卵白タンパク質に比較してアレルゲン活性が最も高く, 加熱により凝固しない特徴を持っている.鶏卵を15分間沸騰水浴中で作成したゆで卵の卵黄をOMに対する特異抗体を用いたイムノブロットとELISAにより分析したところ, OMは加熱凝固卵白の水溶性成分として卵黄側へ拡散・浸透していることを認めた.卵黄中のOMは, ゆで卵作成直後で卵黄1g当たり4.8±0.8μgと定量された.ゆで卵を室温に120分間放置したゆで卵から取り出した卵黄中のOMは卵黄1g当たり78.8±31.3μgと定量され, ゆで卵作成直後の16.4倍であった.加熱凝固卵白水溶性画分のOMとタンパク質量は, それぞれ14.2±11.9mg/mlと37.7±3.2mg/mlと定量され, OMは全タンパク質量の約40%を占めていた.ゆで卵の作成により卵白中のOMが卵黄側へ拡散・浸透することは避けられないと思われるが, アレルゲン性の強いOMの感作をできるだけ回避するには, 長時間放置したゆで卵の卵黄を使用するのは望ましくないであろう.
著者
深澤 百合子 細谷 葵 中村 大 クレイグ オリバー
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の成果は、擦文人が擦文土器を使用してサケやヒラメをはじめキュウリウオなどの小型魚類やとオオムギ、キビなどの栽培された雑穀類を主食素材として調理を、調理においては吹きこぼれが多く生じていたことが証明できた。このような雑炊、汁物メニューは食材、調理方法において後続するアイヌ文化に継承されたと言える。このことから物質文化の変化がみられる土器から鍋への調理用具の変化やカマドから炉への調理施設の変化が起因する要因を研究する必要がある。調理実験の有効性が確認できたことも成果と言えるため土器に付着した吹きこぼれ痕は鍋に痕跡が観察されるのか、具材と穀類の調理割合が異なるのかなど今後の研究課題となる。
著者
舩木葵
雑誌
サイエンスキャッスル2018
巻号頁・発行日
2018-11-21

<考察・展望>結果から眠気のするときは覚醒時に比べ血中酸素濃度が1.1%程度低下していたため、やはり眠気のするときは血中酸素濃度が下がるのではないかと考えた。仮説は、眠気のするときの酸素の量は2~3%減るのではないか、とたてたが実験を通してそれほど血中酸素濃度は低下していないことが分かった。また、心拍数も同時にはかれるため血中酸素濃度を測るときに見てみると覚醒時、眠気のするときに関わらずいつもばらつきがあったため、心拍数は眠気に左右されないと考えた。数値が3~4%以上下がることなく、正常値の範囲内で覚醒時と眠気のするときの血中酸素濃度の変化をみることができた。またこの実験結果を応用すると、自動車運転の居眠り防止に役立てられるのではないかと思った。ハンドルに血中酸素濃度を測ることができる装置をつけ、酸素濃度が下がり気味になっていたら脳を刺激する警告音がなる仕組みにすることで、運転中の居眠り、また居眠りによる事故を減らすことができると思う。
著者
中島 彩 村田 伸 飯田 康平 井内 敏揮 鈴木 景太 中嶋 大喜 中村 葵 白岩 加代子 安彦 鉄平 阿波 邦彦 窓場 勝之 堀江 淳
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.133-137, 2016-09-30 (Released:2016-10-22)
参考文献数
18
被引用文献数
1

本研究は健常成人女性14名を対象に,ヒールの高さの違いが歩行パラメータと下肢筋活動に及ぼす影響について検討した。ヒールなしおよびヒール高3cm と7cm 靴を着用した歩行中の歩行パラメータと下肢筋活動を計測した結果,歩行速度および歩幅とストライド長はヒールなし歩行に比べて,ヒール高7cm 歩行で有意に低下した。ヒールなし歩行とヒール高3cm 歩行のそれらの歩行パラメータには,有意差は認められなかった。両脚支持時間は,ヒールなし歩行に比べてヒール高3cm と7cm 歩行で有意に短縮したが,遊脚時間は後者が有意に増大した。下肢筋活動においては,測定した4筋すべてにおいて有意差が認められなかった。以上のことから,ヒール高3cm 以上で歩行中の立脚時間や遊脚時間に影響を与えるが,ヒール高3cm までであれば,歩行速度および歩幅やストライド長には影響が少ないことが示唆された。
著者
川原崎 淑子 長谷川 禎子 天川 葵
出版者
園田学園女子大学
雑誌
園田学園女子大学論文集 (ISSN:02862816)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.99-110, 1986-03-20

1.本調査の調査対象(本人)の出身地は兵庫県並びに大阪府を合わせて81.7%と最も多く, 両親の出身地は98.3%が西曰本であった。両親の東曰本と西曰本の組合わせは2.8%でこの事がらも関西風の調理法が多いことが推定される。2.すき焼きの嗜好尺度をみると86.1%の者が嫌いでないと笞えてお‰嫌いな者は13.9%であった。3.各家庭でのすき焼きの頻度は月2〜3回が56.9%で一番多く, 曰常食として食べている家庭が多いようである。この事からすき焼きは簡単に用意が出来, 調理操作にも時間がかからないので, ある意味での手抜き料理として行われているようである。4.すき焼きの材料については大体12〜13種類が平均値を示していた。殆んどの家庭で脂身を用いており, 95%以上の家庭ですぎ焼きに必らず入れる材料はねぎ類, 白菜, 茸類, 豆腐,糸こんにゃくであった。調味料に関しては関西人が多い本調査でも, すき焼かには濃口醤油を使用しているのが80%にも達していた。5.材料をどんな順に入れていくかは, 脂身→肉→調味料→野菜→豆腐のパターンが多く,肉を主体に味わう方法が43%の家庭でみられた。数値は少ないが割り下の代用か水→調味料→野菜等を加えていく関東風の変型もみられ た。6.対象は食物栄養専攻の学生であるにもかかわらず, ずき焼きを作る人は75%が母親であ り, 家庭での食事作りがほとんど母親に依存している実態を示唆していた。
著者
片倉 葵 菊竹 雪 楠見 清
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.1_19-1_28, 2020-07-31 (Released:2020-08-10)
参考文献数
13

近年,商品のパッケージデザインは包装技術の発展や新素材の登場,宣伝媒体の変化により多様化している.しかし,ロングセラー商品には発売当初からパッケージのデザインをほとんど変えずにマイナーチェンジだけを行なっている商品と,時代の変遷に合わせてデザインを変更し売れ続けている商品とが存在する.本研究では前者のロングセラー商品に焦点を当てた.長期間メーカーで継承されている一定のデザイン上の法則性を「レギュレーション」と定義し,パッケージ正面部のグラフィックにどのようなレギュレーションが存在するのかを検証した.商品を購入する際,パッケージと共に重要視されている色に注目し,産業革命後の大正期に発売された食品パッケージ正面部の背景色とモチーフに使用される色との二色の色面積比率を算出し,数値を可視化した.現在販売されている商品のグラフィックと発売当初のグラフィックの色面積比率を比較すると色面積比率はほぼ一定に保たれており,パッケージ正面部におけるグラフィックのレギュレーションの存在を見いだすことができた.
著者
髙山 耕二 中村 南美子 園田 正 冨永 輝 石井 大介 柳田 大輝 飯盛 葵 松元 里志 片平 清美 大島 一郎 中西 良孝 稲留 陽尉 塩谷 克典 赤井 克己
出版者
Japanese Soceity for Animal Behaviour and Management
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.134-141, 2018-09-25 (Released:2018-11-28)
参考文献数
22
被引用文献数
1

本研究では,明暗条件下でニホンジカ(Cervus nippon nippon;以下,シカ) 2頭(雄雌各1頭)の有彩色(赤,緑および青色)と無彩色(灰色)の識別能力を明らかにした.試験にはT字型迷路を用い,各有彩色と無彩色を対比させ,シカが有彩色を選ぶと報酬(飼料)を与えた.実験室内の色パネル中央部の照度は,LED電球を点灯した試験1で200lux,点灯しなかった試験2で0.1luxであった.1セッションを20試行とし,80%以上の正答率(χ2検定,P < 0.01)が3セッション連続で得られた場合,提示した有彩色をシカが識別したと判定した.試験1:点灯下で,2頭のシカは有彩色(緑,赤および青色)と無彩色(灰色)をいずれも4セッション目までに識別した.試験2:非点灯下で,シカ2頭は緑および青色を3セッション目まで,赤色を6セッション目までに識別した.以上より,シカは明暗に関係なく,各有彩色と無彩色を識別出来ることが示された.
著者
松本 和也 河内 茉帆 森繁 優衣 品川 葵 沼田 美里 杉原 迅紀 吉村 耕一
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.137-143, 2019 (Released:2020-01-14)
参考文献数
27

本研究では、バーチャルリアリティ(VR)映像を用いて、周りに人が居る状況や屋外を散歩する状況を擬似的に体験することにより、ストレス緩和や気分状態改善が得られるか否かについて実験的に検証した。具体的には、被験者に暗算計算作業によるストレス負荷を課した後で、VR映像の視聴による介入を行い、緊張やリラックスの評価のための脳波測定と質問紙による気分状態評価を行った。その結果、周りに人が居る状況と独りの状況の比較実験では、VR視聴の介入中に脳波の緊張値の低下がみられた。気分状態評価による気分障害の程度には差を認めなかった。屋外の散歩と室内の比較実験では、VRによる散歩映像の介入終了後に、脳波の緊張値の低下とリラックス値の増加が認められた。また、室内のVRでみられた気分障害が散歩のVRではみられなかった。これらの結果から、VR映像の視聴(例えば、VR散歩)は、入院患者や自宅療養者の手軽なストレス緩和法として期待できる。
著者
中村 葵 村田 伸 飯田 康平 井内 敏揮 鈴木 景太 中島 彩 中嶋 大喜 白岩 加代子 安彦 鉄平 阿波 邦彦 窓場 勝之 堀江 淳
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.35-39, 2016-04-30 (Released:2016-07-29)
参考文献数
20
被引用文献数
1 3

本研究の目的は,歩行中のスマートフォンの操作が歩行に及ぼす影響を明らかにすることである。対象は,健常成人28名(男性16名,女性12名)とした。方法は,通常歩行と歩きスマホの2条件下にて,屋内で約20m の歩行路を歩いてもらい,そのうちの2.4mを測定区間とした。なお,測定機器には,歩行分析装置ウォークWay を用い,歩行パラメータ(歩行速度,歩幅,重複歩長,立脚時間,両脚支持時間,歩隔,足角)を比較した。その結果,歩きスマホは通常歩行に比べて,歩行速度,歩幅,重複歩長が有意に減少,立脚時間と両脚支持時間は有意に増加,歩隔は増加傾向を示した。以上のことから,歩きスマホでは,歩幅や重複歩長が短縮し,立脚時間や両脚支持時間は延長することで,歩行速度が低下することが明らかとなった。