著者
伊藤 太一郎 中村 孝 神澤 公 藤村 紀文
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

次世代の強誘電体不揮発性メモリーとして嘱望されている、MFS型FETの実用化に向けた検討を行った.現在我々が提唱しているMFS型FETのための物質は、YMnO_3であるが、実用化に向けていくつかの問題点が生じていた.大きなリ-ク電流、小さな残留分極である.この原因を探るために、様々な角度から検討を行った.単結晶上やPt基板上に作成されたYMnO_3薄膜はデバイスとして十分に機能する0.2μC/cm^2程度の残留分極値を示すが、Si直上に成長させた試料においては結晶性が悪く残留分極を示さなかった.いくつかの界面修飾を検討した結果、還元のY-Mn-OやY_2O_3が界面層として結晶性の向上に効果があることがわかった.これらの界面層を付加することによって、Si表面のキャリアを制御できることが確認された.そのときのメモリーウインドウ幅は1.1Vであった.これらの試料を用いて詳細なC-V特性、パルス特性等の電気特性の検討を行った結果、MFS型FETの基本的な動作は確認されたもののいくつかの問題点を明らかにすることができた.一番大きな問題点は保持特性が悪いことである.リ-ク電流が原因と考えられる.そこでパルク試料を用いてリ-ク電流の原因を探った.その結果、リ-ク電流はMnの価数揺動に起因しており、またそれはAサイトをYbと置換すること、Zrのド-ピングによって低減することが明らかにされた.また、AサイトのYB置換によってプロセス温度の低下が確認された.YbMnO_3Zrの薄膜化の検討を始めたところであるが、RMnO_3を用いたMFS型FETデバイスは実用化へ大きく前進した.
著者
水谷 仁 早川 雅彦 藤村 彰夫
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

本年度は昨年度に引き続き当初の研究計画どおり月深発地震とくにA1震源、A33震源からの地震波を利用して月の深部構造に関するデータを得ることを試みた。当初の予定通り、これらの震源からの地震波を多数スタッキングすることにより、これまで気づかれていなかった多くの後続波のフェーズを発見することが出来た。これらの中にはPKP、PKKPフェーズと思われるものがあり、これらが本当にそうであれば、月の中心部に約450kmの鉄のコアが存在することが推定される。この結論はきわめて重要な結論であるので、さらにこの後続波の一般性を確認する必要があると考えている。そのためにA1、A33震源以外の震源からの波についても同様な研究を開始したが、そのためにはアポロ地震波データの使いやすいデータベースを構築する事が効果的であると考えられるようになってきた。これはデータ処理を多数、迅速に行うためにどうしても必要になることであると同時に、将来の月探査計画、LUNAR-Aの準備的研究としても緊急を要する課題であると認識されたためである。このために本研究のかなりの時間を、この研究をさらに発展させるために必要なデータベース形態、仕様を決定するために使った。現在ではこのデータベースの仕様に基づきそれをimplementする作業に入っており、ほぼ80%の作業が終了した段階である。このデータベースは広く関連研究者に利用できるようにする予定であり、本研究が完成した暁には月地震学にとって大きな貢献をすることが出来るものと信じている。
著者
藤村 宜史 片山 信久 武田 麗華 永尾 進 中塩 仁士 藤井 和代 山本 陽介
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.1-8, 2009
参考文献数
25
被引用文献数
1

【目的】本調査の目的は,地域連携パス(以下連携パス)のバリアンスや転帰から目標在院日数の妥当性や運用上の対策を検討することである。【方法】呉市の連携パス参加機関のうち連携パスの運用実績のある8施設において連携パスを適応された大腿骨頚部骨折(以下頚部骨折)16例と大腿骨転子部骨折(以下転子部骨折)19例を対象とした。この8施設に所属する理学療法士の協力を得て,手術日から急性期病院を転院するまでの日数(以下在院日数I),手術日から連携病院を退院するまでの日数(以下在院日数II)の目標設定からの逸脱をバリアンスとして,その有無と原因を調査した。【結果】在院日数Iにおける負のバリアンス発生率は頚部骨折50.0%,転子部骨折36.8%であり,その理由は主に転院マネージメント,インフォームドコンセントなど情報に関する要因であった。在院日数IIにおける負のバリアンス発生率は頚部骨折12.5%,転子部骨折47.4%で,理由は主に歩行能力の獲得遷延,術後疼痛など患者の身体的な要因であった。【考察】急性期病院では,短い在院日数において職種・施設間で円滑な情報伝達を図り,適切なインフォームドコンセントにより患者や家族の理解を得ることが求められ,また連携病院ではバリアンス分析により目標在院日数を見直し,介護保険への連携を構築することが今後の課題と考えられる。
著者
品田 裕 大西 裕 曽我 謙悟 藤村 直史 山田 真裕 河村 和徳 高安 健将 今井 亮佑 砂原 庸介 濱本 真輔 増山 幹高 堤 英敬 平野 淳一
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、国会議員を主とする政治家と有権者の関係、あるいは政治家同士の関係がどのように変容しつつあるのかを調査し、その変化の要因を実証的に解明することを目的として開始された。その結果、本研究では、選挙区レベルの詳細な観察・データを基に、実証的に現代日本の選挙政治の変容を明らかにすることができた。取り上げた研究対象は、集票活動・有権者と政治家の関係・政治家同士の関係・議員活動・政治家のキャリアパス・政党下部組織など、多岐にわたった。これらの分析から得られた成果を基礎に、さらに、国会のあり方や選挙制度にまで分析を進めることができ、現代日本の選挙政治理解に一定の貢献を果たすことができた。
著者
藤村 朗
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
建築雑誌 (ISSN:00038555)
巻号頁・発行日
vol.34, no.405, pp.21-42, 1920-09-16
著者
門脇 基二 藤村 忍
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

A.オートファジーに対するアミノ酸のシグナリング機構の解析1)アミノ酸シグナルのターゲットとしてのLC3の解析:肝細胞でオートファジー開始段階のマーカータンパク質であるLC3の不活性型(I型、遊離型)から活性型(II型、膜結合型)への変換がアミノ酸の刺激に応じて抑制的に制御することが示され、アミノ酸作用のターゲットがオートファゴソーム上のこの分子であることが証明された。細胞内分画をしたところ、細胞質画分にもII型の存在が認められた。この予想外の結果を追求したところ、Phase Partition法および特異的な酵素Atg4B法によるLC3のlipidationを検討したところ、いずれも否定的な結果となり、この細胞質に存在するLC3-II(LC3-Ils)は通常のもの(LC3-IIm)とは違う新しい型であると結論した。B.食品成分によるオートファジーの調節1)ビタミンCのオートファジー活性化機構アスコルビン酸(AsA)のオートファジー促進作用はアミノ酸の共存下でのみ証明された。その作用機構として、デヒドロアスコルビン酸(酸化型)も同様に効果を示したことから、その還元性は直接関与しない可能性が示された。また、AsA合成不能のODSラット肝細胞を用いて、細胞内AsAをゼロにした状態でも細胞外AsAはオートファジー促進能を維持し、またAsAの細胞内への特異的輸送を阻害してもその促進能は影響しなかったことから、AsAは細胞外から作用している可能性が示された。2)抗酸化剤とオートファジーの関係AsAとともにビタミンEも促進能を示したが、アミノ酸の共存は影響せず、両者の作用は異なることが示された。上記のAsAの結果から、単純に抗酸化性が有効であるとは考えられなくなった。さらに茶成分であるEpigallocatechin gallateにもこの促進能が認められ、広汎な食品成分にオートファジーの制御物質が存在することが強く示唆された。
著者
橘 春菜 藤村 宣之
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.1-11, 2010-03-30
被引用文献数
1 1

本研究では,高校生のペアでの問題解決に焦点をあて,他者と相互に知識を関連づける協同過程を通じて,概念的理解をともなう知識統合が個人内の変化としてどのように促進されるかを検討した。問題解決方略の質的変化(複数の知識を個別に説明する方略から複数の知識を関連づけて包括的に説明する方略への変化)が想定される数学的問題を事前課題-介入(協同または単独)-事後課題のデザインで実施した。実験1では(1)協同条件では単独条件よりも事前から事後にかけての解決方略の質的変化が生じやすいこと,(2)協同場面での複数の要素を関連づけた説明が事後課題での包括的説明方略の適用と関連が強いことが示された。実験2では,方略の質的変化をより促進するため,介入課題において,実験1の教示(以後,一括教示)と比べて,要素の関連づけ過程やその前段階の要素の抽出過程の活性化を目指した段階的教示を行った。その結果,(1)段階的教示では,事前から事後にかけての方略変化が一括教示よりも生じやすく,協同条件でその促進効果が顕著であること,(2)方略の質的変化が生じる協同過程では,ペアで相互に知識を構築する協同過程がみられることが示された。
著者
三井所 健太郎 藤村 直美
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN)
巻号頁・発行日
vol.2009-GN-73, no.17, pp.1-6, 2009-11-19

就職活動の早期化・長期化による、学生の講義及び研究への参加意欲の低下は深刻な問題である。しかし、この問題について大学・学生・企業間で議論されることは少なく、具体的な解決策は講じられていない。本研究では、このような状況を改善するため,学生に大きな負担となっている 「就職情報管理」 及び 「エントリーシート作成」 を支援するシステムを開発した。学生の就職活動への負担を減らし、学業への意識低下を防ぐことを本研究の目的とする。
著者
藤村 直樹 松本 賢治 小野 滋司 尾原 秀明 北川 雄光
出版者
特定非営利活動法人 日本血管外科学会
雑誌
日本血管外科学会雑誌 (ISSN:09186778)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.523-528, 2009-06-25 (Released:2009-07-15)
参考文献数
20

今回われわれは,椎骨動脈転位術を要した椎骨動脈狭窄症の 2 例を経験した.症例 1 は51歳,女性.主訴は視野障害で,精査にて両側の椎骨動脈起始部および左鎖骨下動脈に狭窄を認めた.症例 2 は66歳,女性.主訴は突発性の回転性めまいで,精査にて左椎骨動脈起始部および左鎖骨下動脈に狭窄を認めた.いずれも椎骨動脈転位術を施行し,良好な結果が得られたが,頸動脈や鎖骨下動脈と異なり,椎骨動脈狭窄症に対する治療の適応や治療法の選択については,いまだに確立されていない.一般的に椎骨動脈狭窄症に対する外科的治療の適応は,有症状の狭窄性病変とされているが,統一的見解は得られていない.また最近では血管内治療の有用性も報告されているが,それぞれを比較した報告は認めず,長期成績も不明である.今後低侵襲な血管内手術が第一選択となるであろうが,さらなる検討が望まれる.
著者
樋渡 涓二 藤村 安志 鈴木 清興 三井 信雄
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン (ISSN:18849644)
巻号頁・発行日
vol.12, no.11, pp.502-508, 1958-11-01 (Released:2011-03-14)
参考文献数
12

NHK技術研究所で試作し, 放送に使用中のウォーキー・ルッキーについて, 研究経過・性能と回路構成, 興味ある回路の解説に分けて記述した.トランジスタ化により真空管方式では得られない高い安定度と信頼度が実現され, こんごTV 送像装置のトランジスタ化に対し有力な確信を得た.
著者
樋渡 涓二 藤村 安志 鈴木 清興 三井 信雄
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン (ISSN:18849644)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.63-68, 1959-02-01 (Released:2011-03-14)
参考文献数
3

移動型野外中継用カメラとして試作したトランジスタ化イメージオルシコン・カメラの設計目標, 性能, 回路動作の概要を述べた.トランジスタ化により小型軽量化するのみでなくカメラ・マンの負担の軽い“無調整カメラ”が実現できた.終りに送像装置トランジスタ化の今後の見とおしを述べて結論とした.
著者
須田 果穂 山勢 博彰 井上 真美 南原 桃子 藤村 夏音
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.687-693, 2023-12-28 (Released:2023-12-28)
参考文献数
11

目的:本研究の目的は,直近のBLS訓練の経験によって,心理的準備のない状況におけるBLSの手技の質が維持されるかを検証することである。方法:同一対象者に2つの方法を行う前後比較試験で実施した。大学生21名を対象に,心理的準備のある状況とない状況でのBLSの手技の質を比較した。結果:BLS開始後5秒間の胸骨圧迫のテンポは,心理的準備のある状況ではmd 120(IQR 108-126)回/分に対し,心理的準備のない状況では96(90-120)回/分と有意に減少しており(p<0.05),推奨されているテンポより遅くなっていた。また,人工呼吸の手技の質も有意に低下していた(p<0.05)。結論:直近のBLS訓練の経験によって,心理的準備のない状況におけるBLSの手技の質は心理的準備のある状況と比較して部分的に維持できるが,BLS開始直後の胸骨圧迫のテンポ,人工呼吸の手技の質は低下することが示唆された。
著者
鍬崎 美和 藤村 望 森 悟子
出版者
一般社団法人 日本救急看護学会
雑誌
日本救急看護学会雑誌 (ISSN:13480928)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.29-36, 2018 (Released:2018-02-20)
参考文献数
12
被引用文献数
1

目的:救命救急センターで働く中堅看護師の困難な状況を乗り越えさせる認知を明らかにすること。 方法:質的記述的研究デザインにより、A病院救命救急センターに新卒採用で入職した看護師経験年数4~7年目の看護師5名に半構成的面接調査を行い、得られたデータから6つの認知的変数に該当するデータを演繹的にコード化し、それらを帰納的に分析して、サブカテゴリー、カテゴリーへと統合した。 結果:〔対処可能性〕は【過去の体験を将来に活かす】【適切な対処を取れる】、〔信念〕は【逃げたくないというプライド】【やっぱり救急看護がしたい】等の4カテゴリー、〔期待〕は【能力を高めたい】【組織全体を見据えた目標】等の4カテゴリー、〔自己効力感〕は【自分自身の成長を実感】【同期の存在で頑張れる】【患者や家族との関わりが原動力】、〔考え方〕は【割り切りながら仕事をする】【腹をくくって仕事をする】【振り返ると悪いことばかりではなかった】等の7カテゴリー、〔構え〕は【リーダーとしての責任】【自分がやりたい所だから頑張れる】等の6カテゴリーで構成された。 結論:救命救急センターで働く中堅看護師は困難な状況に直面した時、誇りを持ち逃げずに立ち向かいたいと思いを持っていた。また、明確な目標を持ち柔軟な考えを持つことで自らの健康管理を行い、救急看護師としての自分を見失わないようにしていた。