著者
大辻 永
出版者
茨城大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

自分史がブームになって久しい。「自分史」という言葉は,歴史家の色川大吉氏の造語である。色川は戦争直後の歴史研究にあって,それまでの青史ではなく,歴史に名前を残さない民の歴史,「民衆史」を開拓した。橋本義雄の「ふだん記運動」にも関係して,「自分史」と表現した。このフレームに理科・科学教育を照らし合わせれば,カリキュラムや学習指導要領,教科書を分析するのではなく,学習者に「残ったもの」に焦点を当てた理科・科学教育研究が姿を現す。これが本研究でいう,自分史を方法論とする科学教育研究である。(日本科学教育学会第27回年会において発表)。前年度から収集してきた,本学の自然科学系全女性教官を対象にした自分史を,本年はキャリア選択という観点ら分析した。すなわち,キャリア選択への影響の度合い,あるいは,種類という観点である。その結果,自然系女性研究者のキャリア選択に関わる要因は,素因,遠因,誘因に分けられた。素因には,個人では選択や変更のしようのない生育環境や女性という性別,時代や社会の認識といったもの,あるいは,個人による得意科目などの志向性が分類された。遠因には,現在の専門分野に導いた書籍や出来事などのきっかけが分類できる。誘因には,指導教官が公募情報を寄せてくれたといった,就職に関係する直接的な出来事などが含まれた。その他,被験者の職業選択には,プラスにせよマイナスにせよ,母親の影響が大きいという共通項を見出すことができた。プライバシーにも関わるため具体的なことは記述できないが,全体を通して,真剣に自己に向き合う被験者の姿が浮かび上がってきた(日本科学教育学会平成15年度第1回研究会において発表)。少年・少女時代に受けた教育について語らせることによってその教育のあり方を探る,あるいは,その人物の成長を丹念にたどり描きあげるといった研究は,今後さらに発展させる必要がある。
著者
中辻 享
出版者
甲南大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

ラオス山地部では人や家畜の移動が活発化しており,その中でブタや家禽に壊滅的な被害を与えるような伝染病が多発するようになっている.また,集落内では舎飼いの必要性が高まっているが,従来どおり放し飼いでこれらの家畜を育てたいと考える村人は多い.この中で,伝染病を避けつつ,放し飼いも行なえるような飼育拠点(現地でサナムと呼ばれる)を村落領域内の奥地に設ける例が多数見られることが明らかになった.
著者
辻 立世 久井 志保 岡本 陽子 石田 妙美 永石 喜代子 和田 節子
出版者
兵庫大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

養護教諭の職務は、学校教育法で「児童生徒の養護をつかさどる」と定められている。養護教諭の実態調査では、看護師免許の無い養護教諭は、救急処置に自信を持っていない事が明らかになった。養護教諭の看護能力は、学校保健(養護)のための看護技術が社会から期待されている。養護教諭の看護能力について、救急処置を中心に看護技術の項目を、養護教諭養成教育・初任の年、養護教諭の各段階における達成目標の基準を示すガイドラインを作成した。
著者
花辺 充広 尾辻 泰一 メチアニ ヤーヤ ムバラク 佐野 栄一 浅野 種正
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ED, 電子デバイス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.137, pp.291-295, 2006-06-26

2重入れ子型回折格子ゲートを有するInGaP/InGaAs/GaAs高電子移動度トランジスタを対象に、光励起2次元プラズマ不安定性を発振源とするテラヘルツ(THz)電磁波放射を室温観測した。低電子濃度プラズモン領域で励起された光電子群は、近傍の高電子濃度プラズモン領域に注入されプラズマ不安定性を誘発する。結果、生じたプラズマ共鳴振動を源とするTHz波放射が得られる。プラズモン領域と素子裏面のITOミラー間に形成される縦型共振器構造の効用により、放射THz波には利得が与えられる。レーザ2光波励起を行なった場合、直流光励起電子により励起された4.5THz近傍の共鳴振動成分が、差周波励起された5.0THzの共鳴振動成分により増強される効果が確認された。THz帯における注入同期発振の可能性を示唆する結果である。
著者
矢作 明子 辻 慶太
出版者
日本図書館研究会
雑誌
図書館界 (ISSN:00409669)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.290-301, 2009-01-01

日本の公共図書館におけるフィルタリングソフトの導入状況と性能を調査した。まず公共図書館155館において,都道府県立は85.3%,市区町村立図書館は76.9%がソフトを導入していること,導入ソフトにはi-FILTERやInterSafeが多いことが示された。性能調査では上記2ソフトが稼働する端末で検索を行い,4,640件のWebページを調査した。結果,「学校裏サイト」といった新しい概念に対しブロック漏れが起きやすいこと,有害ページのブロック率はi-FILTERの方が高く,逆に無害ページの誤ブロック率はInter-Safeの方が低いことなどが示された。
著者
高橋 一成 辻 貴孝 中西 泰人 箱崎 勝也
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告モバイルコンピューティングとユビキタス通信(MBL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.108, pp.1-8, 2001-11-15

近年、携帯電話や電子メールなどの様々なメッセージングツールの普及に伴い、いつでもどこでもコミュニケーションを行えるようになり、場所や時間の制約がなくなった。その一方で、通信のコンテクストの複雑度は増加するばかりであり、スムーズなコミュニケーションが行えない場合も多くなりつつある。そこで我々は、ユーザの位置情報とスケジュール情報を用いて、WWWブラウザ機能付きの携帯電話に受信者の通信のコンテクストに応じた通信環境の優先順位を動的に提示し、それをユーザどうしで共有するシステムであるiCAMSを構築した。本稿では、サークル活動を行う10名の学生のグループおよび雑誌編集を行うSOHOワーカ10名のグループを対象とした運用実験について報告する。In recent years, with the spread of various messaging tools, such as a cellular phone and an E-mail, we became able to communicate with others anytime and anywhere and have gotten free from the restriction of time and the place. However, the degree of complexity of a communicative context has increased so that we can not have communicated with others smoothly. So, we constructed the system which presented the most suitable communication environment that users shared corresponding to the context of the communication of the receiving person dynamically by using the position information and the schedule information. In this paper, we describe the experiment for the group of ten SOHO workers who perform magazine edit and the group of ten students who perform club activities.
著者
亀谷 きよし 亀谷 是 武部 隆 小池 恒男 辻井 博 稲本 志良 堀田 忠夫 KAKO Toshiyuki
出版者
京都大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1986

日本の稲作経済・米政策における根本課題は、国民の主食である米を安価に安定的に供給し、日本の食糧安全保障と米の国内生産による国土と水の利用・保全、農業・農村の維持等環境的・社会的役割(外部経済)をいかにして効率的に確保するかである。世界の大米輸出国であるタイや米国等から日本の米市場の開放が強く要求され、国際的米政策・貿易摩擦が激しくなっているが、本研究はタイと米国の稲作農家、米生産・流通・輸出関連機関、大学・試験研究機関、米政策関連政府機関の現地調査に基づき、経営・流通・政策・土地利用と制度・労働・水利用と制度・技術と試験研究・金融の視点から日本との比較を十分に考慮しながら、総合的に国際比較し、上述の根本課題にアプロ-チした。下記の具体的研究成果が示すように、本研究によりまず、日本との比較の視点から、タイと米国の米経済・政策の総合的・国際比較的理解が深められた。そしてそれに基づいて上述根本課題がいかにして達成されるかがかなり明らかになった。また、本研究の研究成果は、この数年続いている上述の激しい国際米政策・貿易摩擦の、各国間の米経済・政策の相互理解の向上を通じた国際的協調による解決にも貢献すると考える。第1の研究成果は、英文と和文の最終報告書である。日本人およびタイと米国の研究分担者が、各人の研究テ-マに関して上述課題に接近し、論文を書いている。第2に、本研究成果を学界だけでなく、社会に還元する目的で下記の一般向けの書物を出版し、広く読まれている。亀谷きよし編著「アメリカ米産業の素顔」富民協会、昭和63年刊。なお同じ目的で、タイに関して「米輸出超大国タイの米産業の光と影」という書物を近く富民協会から出版する予定である。第3の成果しとては、各研究分担者がそれぞれに、本研究に参加して得られた知見を基に、英文や和文の論文を雑誌や書物等に発表し、また、日本、米国およびタイでにおける研究会でも報告している。第4の成果としては、タイと米国の現地調査で得られた、諸々の関連出版物・統計デ-タ等を京都大学農学部農業簿記研究施設で整理・保管し、各協同研究者および一般の研究者の利用に供している。
著者
壇辻 正剛 坪田 康 河崎 靖 道坂 昭廣 平岡 斉士 大木 充 河原 達也 木南 敦
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、日本人学習者の外国語のコミュニケーション能力向上を目指して、ICT(情報通信技術)を利用したCALL(コンピュータ支援型語学教育)やe-ラーニングを含む応用言語学的研究を展開した。国際化時代に有効な会話主体の外国語教育支援システムの開発を推進し、良質で多様な言語文化の理解が可能なコンテンツの開発に基づきICT支援型の教材も作成した。研究成果の一部であるマルチメディア教材は希望する教育機関や研究機関に提供することができた。
著者
早川 巌 今井 基泰 高山 義明 辻 喜之 守沢 正幸 安藤 秀二 米田 豊
出版者
社団法人日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科學會雜誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.19-25, 1984-02-01

上顎全部床義歯の装着間と維持安定とは相反する要素も含まれており, 両方を満足させるような義歯を製作することはなかなか困難である. 当教室でも上顎義歯口蓋部を薄床化する試みはいくつか行ってきた. 今回は, 圧印金属床義歯の製作法を改良することで装着感を向上させようと試みた. その結果, 近年実用化された接着性レジンの導入, それに伴う床材料としてのステンレス鋼の再選択, 圧印形成法の改良などにより, 義歯の維持安定を低下させることなく装着感を向上させ, しかもその製作過程を簡素化させるシステムを開発し, 実用化することができた.
著者
植木 雅昭 深野 淳 西河 俊伸 細見 心一 水内 保宏 辻田 忠弘
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.107, pp.49-56, 2003-10-24
被引用文献数
4

本論文は絵画における色の効果によって,人間の心理がどのように変わるかを心理物理的に実験したものである.絵画として17世紀オランダの画家フェルメールの"真珠の耳飾りの少女"と"牛乳を注ぐ女"を用いた.フェルメールの好きな色と言われている青色と黄色の効果の対立性を考え,真珠の耳飾りの少女のターバンの青色と牛乳を注ぐ女の胴着の黄色について,SD(Semantic Differential)法[1]の多次元分析を用いて,色の対立的な性質として感性の三次元分析を行った.その結果,「活動的」に関して特長的な結果が得られた.In this paper, it is physically evaluated how human being's psychology changes by effect of the color of blue turban in "HEAD OF A GIRL WITH A PEARL EARRING" and yellow clothes in "THE MILK MAID" of Vermeer who is a famous realistic painter in the 17th century. Through the conflict of effect of blue and yellow that were Vermeer's favorite color, I analyzed the difference of sensibility in between blue terban in "HEAD GIRL WITH PEARL EARRING" and yellow clothes in "THE MILK MAID" on the three- dimensions by using the multi-dimensional analysis of the SD method as the conflicting characteristic of color. As a result, a characteristic outcome about "activeness" was emerged by the SD method.
著者
小川 貴代 Kordzo Kpesese Wogbe 中辻 浩喜 諸岡 敏生 秦 寛 近藤 誠司 大久保 正彦 朝日田 康司
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理研究会誌 (ISSN:09166505)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.75-84, 1996-02-15

積雪・寒冷地における乳用雌牛の放牧を取り入れた周年粗飼料主体育成を検討するため、北海道大学農学部附属農場と附属牧場においてホルスタイン種雌牛計92頭を供試して8年間にわたる一連の試験を実施した。供試牛を、4ヵ月齢から初回分娩時まで通年舎飼で濃厚飼料を2kg/d給与した対照群(C群)および放牧時は濃厚飼料無給与で舎飼時の濃厚飼料給与量を1kg/d以下とした粗飼料主体群に配置した。粗飼料主体群はさらに春夏(4〜9月)生まれのGM群と秋冬(10〜3月)生まれのGE群に分類した。育成期間を4〜10ヵ月齢の前期、11〜16ヵ月齢の中期および17ヵ月齢〜初回分娩時までの後期に区分し、育成ステージ別の成長と繁殖成績を調査した一初回分娩以降は全群同一の飼養管理を行ない、乳生産成績を調査した。結果は以下の通りである。1)分娩時の体重および牛体各部位の測定値に3群間で有意な差はなかったか、全育成期を通じた日増体量はGM群とGE群でそれぞれ0.61、0.62kgであり、C群の0.72kgに比べ有意(P<0.05)に低かった。2)粗飼料主体群の日増体量は舎飼時に低く放牧期に高いパターンを示し、育成前期と後期はGM群か有意(P<0.05)に低く、育成中期はGE群が有意(P<0.05)に低くかった。3)舎飼時の日増体量は濃厚飼料給与量か少ないほど低く、その傾向は育成前期で顕著であった。4)放牧を育成前期に取り入れた場合の日増体量は、育成中期および後期の放牧した場合に比べ低い傾向にあった。5)放牧時の日増体量と放牧前の舎飼時における日増体量との間に有意(P<0.01)な負の相関が認められた。6)粗飼料主体群は初回種付け月齢がC群より1ヵ月以上遅延し、GM群は授精回数か多く受胎率が低い傾向にあった。7)初産乳期における乳生産量に3群間で有意な差は認められなかった。8)積雪・寒冷地における乳用雌牛の放牧を取り入れた周年粗飼料主体育成において、秋冬生まれの牛は4ヵ月齢から粗飼料のみでの育成か可能であるか、春夏生まれの牛では育成前期の舎飼時に濃厚飼料の補給か必要であることか示唆された。日本家畜管理研究会誌、31(3) : 75-84.1996.1995年8月28日受付1995年11月2日受理
著者
辻 二郎
出版者
公益社団法人精密工学会
雑誌
精密機械 (ISSN:03743543)
巻号頁・発行日
vol.26, no.304, 1960-05-05
著者
波多野 浩士 佐藤 元孝 辻本 裕一 高田 剛 本多 正人 松宮 清美 水谷 哲 藤岡 秀樹
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.641-644, 2006-08

79歳男.前立腺肥大症と診断され,内服治療を行ったが,排尿悪化に伴い経尿道的前立腺切除術(TURP)を椎麻酔下で施行した.術後の著明な出血により術後7日目に尿道カテーテルを抜去したが39~40℃の発熱が持続し,E.cloacae,MRSAの検出をみた.9日目より腰痛を自覚しMRIでL4~5椎間腔の狭小化を認め,腰痛症又は腰椎ヘルニアを疑うが脊椎炎の所見は認めなかった.imipenem(IPM),teicoplanin(TEIC)を2週間CRPは陰性化しなかったが解熱,WBC低下と血液・尿培養の陰性化を受け,galifloxacin(GFLX)に変更したが再び発熱とWBC,CRPが上昇し,腰痛悪化で歩行困難となった.Gaシンチ施行により術後39日目に化膿性背椎炎と診断し,E.cloacaeが検出された.3週間治療内服後CRPの陰性化,腰痛は軽減し歩行可能となり術後6ヵ月目に退院したWe report a case of pyogenic spondylitis caused by Enterobacter cloacae as a rare complication of transurethral resection of the prostate (TURP). A 79-year-old man underwent TURP. Immediate after removal of urethral catheter on postoperative day (POD) 7, he developed high fever > 40 degrees C with increased acute inflammatory reaction. Urine and blood culture detected E. cloacae and methicillin-resistant Staplylococcus aureus. He complained of lumbago since POD 9. Two-week administration of imipenem and teicoplanin resulted in resolution of fever as well as laboratory data, so intravenous antibiotics were changed to oral gatifloxacin. However, his lumbago worsened and gait disturbance appeared. On POD 39, diagnosis of pyogenic spondylitis was finally obtained by Ga-scintigraphy and magnetic resonance imaging. Aspiration of the intervertebral disk (L4-5) revealed E. cloacae as the causative organism of pyogenic spondylitis. His condition improved after conservative treatment with teicoplanin, meropenem and ciplofloxacin for 9 weeks.
著者
半田 大幸 細野 洋平 津田 祐樹 MEZIANI Yahya Moubarak 末光 哲也 尾辻 泰一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ED, 電子デバイス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.355, pp.45-50, 2007-11-20

2重回折格子ゲートを有する高電子移動度トランジスタ構造からなる2次元プラズモン共鳴型テラヘルツ電磁波放射デバイスを試作し,そのテラヘルツ帯電磁波放射特性を評価した.本素子は,2次元電子走行層内に凝集した電子集団のプラズマ振動量子(プラズモン)を電気的,光学的にコヒーレントに励起し,そのプラズマ振動を種として,2重回折格子型ゲートのアンテナ機構を介して空間放射可能なテラヘルツ電磁波を生成する.プラズモンの励起方法としては,直流バイアスもしくは直流光電流注入によるによる電気的不安定性励起,フォトミキシング励起,フェムト秒レーザ励起などの手法がある.本稿では,直流バイアスおよび直流光電流注入による自励発振モードでのテラヘルツ電磁波放射特性をフーリエ変換赤外分光計で計測した結果を中心に述べる.
著者
高田 久美代 妹尾 正登 東久保 靖 高辻 英之 高山 晴義 小川 博美
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.598-606, 2004 (Released:2005-06-03)
参考文献数
25
被引用文献数
5 5

マガキ, ホタテガイおよびムラサキイガイにおける麻痺性貝毒の蓄積と減毒過程の差異を明らかにするため, 原因プランクトンAlexandrium tamarense の消長とこれら貝類の毒力と毒組成の推移を調べた。毒力の推移は貝種によって大きく異なり, マガキはA. tamarense が消滅すると1~2週間後に毒力が不検出となり, ホタテガイやムラサキイガイに比べて毒の低下が早く, 蓄積する毒力も最も低かった。毒組成の推移も貝種によって異なった。貝種による毒化と減毒の差異には毒組成の違いが関与していると考えられた。