著者
金子 明寛
出版者
日本歯科薬物療法学会
雑誌
歯科薬物療法 (ISSN:02881012)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.85-93, 2015 (Released:2015-12-25)
参考文献数
27
被引用文献数
5

A number of odontogenic infections are often alleviated in a few days if inflammation is localized in the alveolar part, and appropriate surgical treatments such as incision or drainage as well as antibacterial chemotherapy are performed. However, in some cases, it may become desperately ill due to delay of the initial treatment and develop extremely serious infections including cellulitis or necrotic fasciitis. The causative bacteria for these diseases are oral resident microbiota, and are frequently detected in the case of multiple bacterial infection caused by obligate and facultative anaerobic bacteria. From odontogenic infection, Prevotella sp., Peptostreptococcus sp., and Streptococcus sp. are detected at high rate and are regarded as the three major etiologic agents. The change with time in susceptibility of strains separated from closed abscess of odontogenic infection during 7 years from 2005 to 2011 against various antibacterial agents was investigated. The results showed a decreasing tendency of susceptibility to β-lactam, macrolide, and quinolone agents. In particular, there are many β-lactamase producing strains in the Prevotella sp. Thus, it is necessary to select antibacterial agents stable for β-lactamase in patients with suspected involvement of obligate anaerobic bacteria such as cellulitis around the maxilla or deep neck abscess.
著者
浪尾 美智子 守安 由香 小川 円 木村 英輝 金谷 親好 森近 貴幸
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.B0714, 2007 (Released:2007-05-09)

【はじめに】足底は手掌部よりも知覚神経分布が優勢で、姿勢制御に影響を及ぼすと言われている。今回、感覚障害を呈した脳卒中片麻痺患者の足底感覚に着目したアプローチを行った結果、坐位姿勢に変化がみられたので報告する。【対象】左右頭頂葉と左放線冠領域の脳梗塞両片麻痺患者の女性。触覚は右足底重度鈍麻、左足底中等度鈍麻で四肢重度鈍麻、運動覚は全て重度鈍麻であった。ラップボードを用いることで車椅子坐位を保持していた。また、端坐位保持は不可能で全介助であった。食事動作では坐位が安定しておらずリーチ動作が困難であった為、ほぼ全介助であった。【方法】端坐位の安定化を図るため机上に両前腕部を置き、足底は床面に接地させた。より多くの刺激を与える為に、感覚受容器が多数存在する母趾に様々な素材の板を接触させ刺激に変化を加えた。深部感覚受容器を刺激するには圧変化や関節運動が関与してくる為、足底で床面を押す寝返り動作を行った。また背臥位にて足底と壁の間に枕やボールを置き、壁に対して垂直方向に、足底で踏むことを繰り返し行った。【結果】触覚は右足底中等度鈍麻、左足底軽度鈍麻となり、運動覚は足、膝関節は中等度鈍麻となった。坐位姿勢は右足底全面接地が行えず、左下肢で床面を押すため骨盤は後傾し、右殿部後方に荷重していた。アプローチ後は右足底全面接地が可能となり、左下肢で床面を押さなくなった為、左殿部にも荷重が行えるようになった。また机上に両前腕部を置き坐位を保っていたが、アプローチ後は端坐位保持が1分程度可能となった。車椅子坐位は左下肢でフットプレートを押すため骨盤が右に後退し、殿部が前方に滑っていたが、アプローチ後はフットプレートを押す動作が見られなくなり、坐面上に殿部を保持することが可能となった。また坐位が安定してきたため、リーチ動作が行いやすくなり、食事動作は中等度介助になった。【考察】足底に様々な素材の板を接触させ刺激に変化を与えたことで、能動的感覚受容器が活性化され、足底感覚が改善し、右足底全面接地が可能となったと考えられる。寝返り動作や足底で枕やボールに圧をかけることで、足底の圧受容器が刺激され深部感覚が改善したと考えられる。足底からの感覚情報が増加し、自己のボディーイメージが確立され始めたことで、左下肢の過剰努力が軽減し、骨盤帯の後傾や後退も改善した。また体幹を支持基底面内で保持させることが可能となった為、坐位保持も可能となったと考える。【まとめ】足底感覚は脳卒中患者の姿勢制御に影響を与える感覚であることが示唆された。本症例では足底感覚へのアプローチにより坐位姿勢に変化が認められ、食事動作の改善にもつながった。

2 0 0 0 OA 芸術資料

著者
金井紫雲 編
出版者
芸艸堂
巻号頁・発行日
vol.第四期 第二册, 1941
著者
周藤 芳幸 金山 弥平 長田 年弘 師尾 晶子 高橋 亮介 田澤 恵子 佐藤 昇 大林 京子 田中 創 藤井 崇 安川 晴基 芳賀 京子 中野 智章
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2018-04-01

当該年度は、前プロジェクト「古代地中海世界における知の伝達の諸形態」の最終年度に当たっており、そこで既に策定されていた研究計画を着実に進めるとともに、現プロジェクト「古代地中海世界における知の動態と文化的記憶」の本格的な展開に向けて新たな模索を行った。具体的には、図像による知の伝達の諸相を明らかにするために、図像班を中心に研究会「死者を記念する―古代ギリシアの葬礼制度と美術に関する研究」を開催し、陶器画による情報の伝達について多方面からの共同研究を行った。また、9月3日から7日にかけて、国外の大学や研究機関から古代地中海文化研究の最先端で活躍している13名の研究者を招聘し、そこに本共同研究のメンバーのほぼ全員が参加する形で、第4回日欧古代地中海世界コロキアム「古代地中海世界における知の伝達と組織化」を名古屋大学で開催した。このコロキアムでは、古代ギリシアの歴史家の情報源、情報を記録する数字の表記法、文字の使用と記憶との関係、会計記録の宗教上の意義、法知識や公会議記録の伝承のメカニズム、異文化間の知識の伝達を通じた集団アイデンティティの形成、神殿などのモニュメントを通じた植民市と母市との間の伝達など、古代地中海世界で観察される知の動態をめぐる様々な問題が議論されたが、そこからは、新プロジェクトの課題に関して豊富なアイディアと示唆を得ることができた。これについては、その成果の出版計画の中でさらに検討を重ね、今後の研究の展開にあたって参考にする予定である。これに加えて、当該年度には、知の伝承に関する基礎データを獲得するためにエジプトでフィールドワークを行ったほか、9月にはダラム大学名誉教授のピーター・ローズ博士、年度末にはオックスフォード大学のニコラス・パーセル教授の講演会を企画・開催するなど、国際的なネットワークの強化にも努めた。
著者
青木 智史 小島 和人 金原 正明
出版者
奈良教育大学
雑誌
奈良教育大学紀要. 自然科学 (ISSN:05472407)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.1-7, 2013-11-30

In the present paper, the authors report the results of thermoluminescence (TL) dating of the bricks from a modern structure, and discuss the validity of this method. TL method is a typical and well-used tool for estimating the age of heated relics. In this research, TL dating method applied to the bricks of the brickwork foundation of an officer' s mess hall which were excavated at the site of the 53th Infantry Regiment on the campus of Nara University of Education. In 1909, the 53 Infantry Regiment was located in the site, where the campus of Nara University of Education is now located. The Infantry Regiment site was first discovered in 2008. This site was excavated continuously between 2008 and 2011. And, the samples were collected at the Infantry Regiment site in 2011. The samples were measured according to the protocol of multiple aliquot additive dose. The TL age averaged for all samples is 96±10 years before present. Thus the results of the present work indicate that the bricks were burnt in the period around the early 20th century. The results are consistent with the ages shown from the archaeological aspects of view. The TL dating method was successfully applied to the modern burnt bricks. And the above result suggest that TL dating method is a valid technique for the research on the history of modern times.
著者
大久保 雄 金岡 恒治 長谷部 清貴 松永 直人 今井 厚
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0804, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】大腰筋は股関節および脊柱の屈曲に作用する深部筋である。先行研究において,腰痛患者では大腰筋の萎縮が生じていること(Baker et al., 2004)などから,リハビリテーション現場において大腰筋の重要性が示されている。また,中高齢者では大腰筋の筋断面積が有意に低下し,歩行能力低下と関連することが報告されている(金ら,2000)ことから,介護予防教室においても大腰筋エクササイズが注目されている。そこで臨床現場では,股関節屈筋群(大腰筋や大腿直筋など)のエクササイズとして,自動下肢伸展挙上(active straight leg raise,ASLR)が用いられているが,大腰筋は体幹の最も深部に位置するため活動様式を評価することが困難であり,ASLR時の大腰筋活動様式は明らかでない。そこで本研究では,ワイヤ筋電図を用いて大腰筋活動を測定し,ASLR時の大腰筋活動様式を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は健常男性9名とした(年齢:25±4歳,身長:170.1±6.2cm,体重:60.3±4.7kg,mean±SD)。股関節屈曲0゜~最大屈曲角度まで右側ASLRを行わせた際の筋電図および股関節屈曲角度データを同期させて収集した。被検筋は全て右側とし,大腰筋にはワイヤ電極を,腹直筋,外腹斜筋,内腹斜筋,大腿直筋には表面電極を設置した。大腰筋には超音波画像ガイドの下ワイヤ電極を刺入し,電極を留置後,電気刺激装置にて大腰筋の筋収縮を確認した。動作解析として,3台の赤外線カメラ(OQUS,QUALYSIS社製)を用いて,ASLR時の股関節屈曲角度を計測した。ASLR時の股関節屈曲角度から,屈曲初期,屈曲中期,屈曲後期の3phaseに分割し,各phaseの筋活動量(%MVC)を算出した。筋活動量の比較として,phaseと筋を因子とした二元配置分散分析を用い,有意差を認めた場合はTukey-Kramer法により事後検定を行った。また,ASLRの筋活動開始時点(onset)を「安静時の筋活動量±2SD」から求め,ASLR運動開始時点を基準(0秒)とした各筋のonsetを算出し,Kruskal-Wallis検定を用いて比較検討した。有意水準は5%とした。【結果】大腰筋の筋活動量は,屈曲初期:10.3±5.5%MVC,屈曲中期:18.1±9.3%MVC,屈曲後期:33.0±19.6%MVCであり,屈曲中期と後期で有意に大きかった。また,大腿直筋の筋活動量が屈曲中期:16.2±8.8%MVC,屈曲後期:18.3±14.6%MVCであり,他の筋よりも有意に大きい値を示した。ASLR運動開始時点に対する各筋のonsetは,大腰筋:-0.033±0.25 sec,大腿直筋:-0.003±0.12 sec,腹直筋:0.15±0.40 sec,外腹斜筋:0.27±0.36 sec,内腹斜筋:0.25±0.25 secであり,大腰筋および大腿直筋のonsetが内・外腹斜筋よりも有意に早かった。【考察】本結果より,大腰筋は屈曲初期から後期にかけて活動量が大きくなった。Yoshio et al.は屍体を用いた研究により,大腰筋は股関節屈曲0~15゜では大腿骨頭の安定化に作用し,股関節屈曲45゜以上から股関節屈曲作用が大きくなることを報告している(Yoshio et al., 2002)。さらにJuker et al.は,ワイヤ筋電図を用いて様々なエクササイズ時の筋活動量を比較した結果,股関節屈曲90゜位からの等尺性股関節屈曲運動で大腰筋活動が最も大きくなることを報告している(Juker et al., 1998)。以上から,ASLRにおいて大腰筋は股関節深屈曲位になる屈曲後期に活動量が大きくなることが示唆された。Onsetの比較では,下肢の股関節屈筋群が腹筋群よりもonsetが早かった。ASLRでは股関節屈曲運動に伴い骨盤前傾方向の回転モーメントが生じ,その骨盤の運動制御に腹筋群が活動した可能性がある。しかし,挙上側と反対側の内腹斜筋や腹横筋は,主動筋よりも先行して活動を開始するとの報告もあり(Hodges et al., 1997),今後は両側の腹筋群の反応を検討する必要がある。【理学療法学研究としての意義】本結果より,ASLRでは股関節深屈曲位にて大腰筋がより賦活化され,挙上側と同側の筋では股関節屈筋群から腹筋群の順に動員されることが明らかになった。ASLRは臨床現場で頻繁に用いられる運動であり,本研究はASLRを処方する際の有用な情報になると考える。
著者
湯口 聡 丸山 仁司 樋渡 正夫 森沢 知之 福田 真人 指方 梢 増田 幸泰 鈴木 あかね 合田 尚弘 佐々木 秀明 金子 純一朗
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.D0672, 2005

【目的】<BR> 開胸・開腹術後患者に対して呼吸合併症予防・早期離床を目的に、呼吸理学療法・運動療法が行われている。その中で、ベッド上で簡易に実施可能なシルベスター法を当院では用いている。シルベスター法は両手を組み、肩関節屈伸運動と深呼吸を行う方法で、上肢挙上で吸気、下降で呼気をすることで大きな換気量が得られるとされている。しかし、シルベスター法の換気量を定量的に報告したものはない。よって、本研究はシルベスター法の換気量を測定し、安静呼吸、深呼吸と比較・検討することである。<BR>【方法】<BR> 対象は呼吸器疾患の既往のない成人男性21名で、平均身長、体重、年齢はそれぞれ171.0±5.2cm、65.3±5.6kg、24.9±4.0歳である。被験者は、安静呼吸・シルベスター法・安静呼吸・深呼吸・安静呼吸または、安静呼吸・深呼吸・安静呼吸・シルベスター法・安静呼吸のどちらか一方をランダムに選択した(各呼吸時間3分、計15分)。測定姿位は全てベッド上背臥位とし、呼気ガス分析装置(COSMED社製K4b2)を用いて、安静呼吸・シルベスター法・深呼吸中の呼吸数、1回換気量を測定した。測定条件は、シルベスター法では両上肢挙上は被験者が限界を感じるところまでとし、どの呼吸においても呼吸数・呼吸様式(口・鼻呼吸)は被験者に任せた。統計的分析法は一元配置分散分析および多重比較検定(Tukey法)を用い、安静呼吸、シルベスター法、深呼吸の3分間の呼吸数、1回換気量の平均値を比較した。<BR>【結果】<BR> 呼吸数の平均は、安静呼吸13.02±3.08回、シルベスター法5.26±1.37回、深呼吸6.18±1.62回であった。1回換気量の平均は安静呼吸0.66±0.21L、シルベスター法3.07±0.83L、深呼吸2.28±0.8Lであった。呼吸数は、分散分析で主効果を認め(p<0.01)、多重比較検定にて安静呼吸・シルベスター法と安静呼吸・深呼吸との間に有意差(p<0.01)を認めたが、シルベスター法・深呼吸との間に有意差は認めなかった。1回換気量は、分散分析で主効果を認め(p<0.01)、多重比較検定にて安静呼吸・シルベスター法・深呼吸のいずれにも有意差を認めた(p<0.01)。<BR>【考察】<BR> シルベスター法は深呼吸に比べ1回換気量が高値を示した。これは、上肢挙上に伴う体幹伸展・胸郭拡張がシルベスター法の方が深呼吸より大きくなり、1回換気量が増加したものと考えられる。開胸・開腹術後患者は、術創部の疼痛により呼吸に伴う胸郭拡張が制限されやすい。それにより、呼吸補助筋を利用して呼吸数を増加させ、非効率的な呼吸に陥りやすい。今回、健常者を対象に測定した結果、シルベスター法は胸郭拡張性を促し、1回換気量の増加が図れたことから、開胸・開腹術後患者に対して有効である可能性が示唆された。
著者
斉藤 延人 金 太一 中冨 浩文
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.29-36, 2016 (Released:2017-01-25)
参考文献数
26

脳幹へはさまざまな手術法が工夫されており, 本稿はその総説である. 手術適応として, 海綿状血管奇形, グリオーマ, 血管芽腫などが対象疾患となる. 原則として脳幹への進入は, 病変が脳幹表面に最も近い部位で切開を加えるが, そのために 「two-point method」 などの方法が提唱されている. また, 病変の存在下での脳幹内の核や神経路を把握する必要があり, 術前画像のシミュレーションで病変により圧排された解剖構造を把握することも有用である.  手術による障害を最小限に抑えるためには, motor evoked potential (MEP), auditory brainstem response (ABR) やsomatosensory evoked potential (SEP), 心電図 (EEG), 顔面神経の電気刺激などの術中モニタリングが有用である.  代表的な中脳背側からのアプローチとして, occipital transtentorial approach (OTA) がある. 背側と比較して中脳腹側へのアプローチは難しいが, orbitozygomatic approachとtrans-lamina terminalis approachなどが使用される. 橋から延髄の背面へのアプローチには, 第四脳室経由のアプローチがあるが, 第四脳室を広く開放する方法として, trans-cerebellomedullary fissure (CMF) approachが有用で, これにはlateral approachとmedial approachがある. 橋・延髄レベルの前側方からのアプローチとしてsubtemporal approach, anterior petrosal approach, far lateral (transcondylar) approachがあり, 錐体路を避けることが重要である.
著者
金 泰暻
出版者
日本近代文学会
雑誌
日本近代文学 (ISSN:05493749)
巻号頁・発行日
vol.98, pp.59-70, 2018-05-15 (Released:2019-05-15)

漱石がブームである。没後一〇〇年、生誕一五〇年を迎えていた夏目漱石が生まれ死んだ日本でのことを言うのではない。二〇一七年四月八日、ソウルに位置した明知大学校で韓国日語日文学会春季学術大会が開かれた。この日のテーマは、夏目漱石の生誕一五〇年を記念して「夏目漱石、一五〇年の旅、そして韓国」であった。かかる漱石への関心は「日本」関連の仕事に従事している専門家に限ってのことではない。二〇一六年、韓国のある出版社から『夏目漱石小説全集』全十四巻が完訳・刊行した。本稿では、玄岩社版『夏目漱石小説全集』に焦点を合わせ、現在の「文学」をめぐる諸条件のなかで、韓国における漱石現象を考察した。
著者
金子 一郎
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.3-7, 2020 (Released:2020-02-17)
参考文献数
18

これまで謎のベールに包まれていたリン代謝調節系は, その詳細が解明されるにつれ, 寿命や加齢に関して非常に重要な役割を演じていることが明らかにされた。特に老化抑制遺伝子Klothoの研究により, 「リンが老化を加速する」という概念が確立され, 線維芽細胞増殖因子 (FGF23) /Klotho/ビタミンD調節シグナルを介したリン代謝異常と各種疾患との関連が重要視されている。本研究では, 遺伝子改変動物や培養細胞を用いた基礎研究からFGF23/Klotho/ビタミンD調節シグナルが成長期から加齢におけるミネラル代謝の中核として機能していることを明らかにした。これらの研究成果は, 各種慢性疾患におけるビタミンDの栄養状態を維持することが老化を制御している可能性も示唆している。さらに, 現代高齢化社会で問題となる慢性腎臓病重症化予防や脳機能障害改善におけるリン・ビタミンD代謝を介する老化抑制機構の解明は, 栄養学的アプローチを可能とするために, より一層の健康長寿への応用が期待できるものと予想された。
著者
金堀 哲也 岡本 嘉一 小倉 圭 前原 淳 島田 一志
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.68, pp.217_2, 2017

<p> 成長期の野球選手における野球肘の有病率は非常に高く、野球肘の早期発見および予防の重要性が提言されている。野球肘の発症要因には酷使をはじめとして、ポジションや投球動作など、様々な要因が複雑に絡み合っている。Okamoto et al.(2016)は、学童期野球選手を対象にMRI診断を行った結果、41.9%に異常所見がみられたものの、投球数、投球頻度、ポジションとの関係性はなかったと報告している。すなわち、野球肘の発症要因において、投球動作との関連性は少なくないと考えられる。そこで本研究は、肩・肘に痛みのない学童期野球選手60名を対象に、肘関節MRI診断および投球動作の3次元動作解析を併用することで、MRI診断結果と投球動作の関係性について検討し、野球肘の発症要因となる投球動作を明らかにすることを目的とした。その結果、踏出足着地時の投球腕肩関節の外転角度においてMRI陰性群のほうが有意に小さかった。また、踏出足着地時の肩と腰の回転角度の差においてMRI陰性群のほうが有意に大きかった。以上のことから、踏出足着地時の姿勢がその後の投球腕の動作に影響を及ぼし、肘関節への過度な負荷を加えている可能性が示唆された。</p>
著者
田中 健太 金澤 秀知 新井 哲平 栄永 道子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.488, pp.59-64, 2005-12-17
参考文献数
7
被引用文献数
3

学習者それぞれの学習意欲に合ったe-Learning教材で学習することの効果を検討した。学習意欲検査の結果によって2グループに分けられた被験者群を、さらにその意欲のタイプと合う教材で学習する群と合わない教材で学習する群に割り当てて学習させ、成績や学習を放棄(ドロップアウト)する割合を比較した。その結果、テストの得点やドロップアウト数において、自分に合った教材で学習した群が、そうでない群に比べてよい結果を収めた。そのことから、e-Learning学習においても、ひとりひとりの個性を重視した柔軟な教材を用いることの有効性が示唆された。
著者
金井 紀仁 鈴木 義人
出版者
日本アプライド・セラピューティクス(実践薬物治療)学会
雑誌
アプライド・セラピューティクス (ISSN:18844278)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.26-46, 2018 (Released:2018-12-25)
参考文献数
32

【背景】適正で費用対効果に優れた薬剤を継続的に定め、薬剤の選択を管理するために フォーミュラリが用いられる。高尿酸血症の患者を対象に、尿酸生成抑制薬に関する系 統的な論文調査をすることで、フォーミュラリを構築することを目的とした。 【方法】フォーミュラリ構築の手順は以下の通りに行った。1)アロプリノールとフェ ブキソスタットを直接比較した2017 年5 月までの臨床論文を系統的に抽出した。2) 以下の評価項目に関して質的に評価した: 臓器障害の予防、痛風関節炎の予防、尿酸値 低下作用、尿酸値6.0mg/dL 未満への達成率、副作用。3)同等量、薬剤費を評価し、 医薬品の使用の優先順位を付けた。 【結果】7 報の論文が選択された。有効性においては、臓器障害予防と痛風関節炎の予 防効果は同程度であった。アロプリノール1 日200/300 mg とフェブキソスタット1 日 40 mg においては尿酸値低下作用と尿酸値6.0 mg/dL 未満の達成率は同程度であった。 尿酸値6.0 mg/dL 未満の達成率に関しては、フェブキソスタット1 日80 mg 以上の投与 はアロプリノール1 日200/300 mg やフェブキソスタット1 日40 mg の投与よりも有意 な結果を示した。両薬剤間において重大な副作用に違いは見られなかった。アロプリノー ルにより目標尿酸値まで低下できた患者においてはフェブキソスタットから開始するよ りも薬剤費を抑制できることが示唆された。 【結論】高尿酸血症患者への尿酸生成抑制薬のフォーミュラリはアロプリノールを第一 に選択し、尿酸値が目標まで到達しない場合や忍容性がない場合にフェブキソスタット を選択することとした。
著者
森 也寸志 金子 信博 松本 真悟
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

人工マクロポアという疑似間隙構造を土壌内に作るとき,充填物に縦方向に長い繊維を使い,充填率30%であったときに最も効果的に下方浸透を促すことができた.土壌カラム実験では,土壌水分と有機物量に逆相関がみられ,栄養塩をよりも水分が有機物分解に影響すること,また,土壌下方にある有機物は酸素が遮断され,かつ水分が減ると上方移動が不能になるため分解を免れる傾向にあり,根や浸透有機物の分解が逆に促進されることはなかった.亜熱帯土壌では畑圃場で地表流の発生が抑制され,結果的に農地土壌の流亡が抑制されることがわかった.このため,分解が優勢な高温化でも有機物については保全傾向が見られた.