著者
堀内 一宏 山田 萌美 白井 慎一 高橋 育子 加納 崇裕 金子 幸弘 秋沢 宏次 梅山 隆 宮崎 義継 矢部 一郎 佐々木 秀直
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.166-171, 2012 (Released:2012-03-28)
参考文献数
17
被引用文献数
2 4

症例は37歳女性である.子宮頸癌術後,胸部CTにて腫瘤影をみとめ,クリプトコッカスを検出した.脳MRIで多発腫瘤影をみとめ脳,肺クリプトコッカス症と診断し,抗真菌薬を投与したが効果なく意識障害が出現した.抗真菌薬脳室内投与をおこない意識状態は改善,脳病変の縮小をみとめた.その後脳病変の再増大をみとめ,遅発性増悪と考えステロイドを投与し改善した.難治性経過のため菌株の同定検査をおこないCryptococcus gattii (VGI型)と判明した.C. gattii 感染症では強毒株による健常人症例も報告されている.難治性症例ではC. gattii の検索,ステロイド併用,脳室内投与をふくめた積極的な治療法を検討すべきである.
著者
垣内 優芳 森 明子 松本 恵実 金 明秀
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.318-322, 2018-11-05 (Released:2018-11-30)
参考文献数
25

【目的】頭頸部複合屈曲位の状態で誤嚥の回避や気道内分泌物の喀出(喀痰)のために咳嗽が生じた場合,頸部屈曲位と比較して咳嗽が効果的に行えるのか不明である.本研究の目的は,頭頸部複合屈曲位と頸部屈曲位において随意的咳嗽力を比較検討することである.【対象と方法】対象は健常成人男性21名であった.測定肢位は,リクライニング座位45°とした.測定条件は,頭頸部複合屈曲位と頸部屈曲位の2条件とし,それぞれにおいて咳嗽時最大呼気流量,胸郭拡張差,最大吸気圧,最大呼気圧の測定を行った.【結果】咳嗽時最大呼気流量,胸郭拡張差,最大呼気圧は,頸部屈曲位よりも複合屈曲位において有意に低い値を示した.また,複合屈曲位において咳嗽時最大呼気流量は最大吸気圧,最大呼気圧と関連を認めた.【結論】リクライニング座位時における頭頸部複合屈曲位は,頸部屈曲位と比較して随意的な咳嗽力において不利に働くことが示唆された.
著者
葛西 恭一 石田 恵梨 小林 由佳 曽我 幸一 金光 大石 坂本 京子 竹中 信也 柳田 國雄 伊谷 賢次
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.257-261, 2013 (Released:2013-05-21)
参考文献数
12

症例1は75歳男性.心房細動にてダビガトラン220mg/日服用開始したところ,5日後より食道閉塞感,ゲップを自覚.上部消化管内視鏡検査にて中部食道に白色の膜様付着物を伴った潰瘍性病変を認めた.ダビガトランを継続しながらプロトンポンプ阻害剤(以下PPI)を服用したところ潰瘍は治癒した.症例2は68歳,女性.発作性心房細動に対しダビガトラン300mg/日服用開始77日後より胸焼けを自覚.上部消化管内視鏡検査にて中部食道に白色の膜様付着物を伴った潰瘍性病変を認めた.ダビガトランを中止しPPI投与したところ潰瘍は治癒した.ダビガトランは循環器領域で使用頻度が高まると予想される薬剤であり,薬剤性食道潰瘍の原因となり得ることを念頭に置く必要がある.
著者
金谷 重彦 小野 直亮 森田 晶
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第42回ケモインフォマティクス討論会 東京
巻号頁・発行日
pp.1P02, 2019 (Released:2019-10-22)
参考文献数
3

メタボローム研究を中心に薬用・植物知識ベース(機能性、配合)、さらにヒト生理活性を統合的に扱うデータベースKNApSAcK Family DB(http://kanaya.naist.jp/ KNApSAcK_Family/)の構築を進めている。メインウインドウを図1に示す。KNApSAcK Core Systemには、生物種と二次代謝物の関係データ情報が整理されており、現在までに、114,238レコードの生物種-二次代謝物の関係、二次代謝物の総数は51,086種となっている。さらに、アルカロイドにおける生合成経路データベースCobWebを開発した。本データベースを活用し、グラフコンボリューションニューラルネットワークにより、代謝経路既知のアルカロイド化合物を生合成開始物質へ分類したところ、非常に良好な識別結果を得た。
著者
小泉 政利 安永 大地 木山 幸子 大塚 祐子 遊佐 典昭 酒井 弘 大滝 宏一 杉崎 鉱司 Jeong Hyeonjeong 新国 佳祐 玉岡 賀津雄 伊藤 彰則 金 情浩 那須川 訓也 里 麻奈美 矢野 雅貴 小野 創
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2019-06-26

主語(S)が目的語(O)に先行するSO語順がその逆のOS語順に比べて処理負荷が低く母語話者に好まれる傾向があることが報告されている。しかし,従来の研究はSO語順を基本語順にもつSO言語を対象にしているため,SO語順選好が個別言語の基本語順を反映したものなのか,あるいは人間のより普遍的な認知特性を反映したものなのかが分からない。この2種類の要因の影響を峻別するためには,OS語順を基本語順に持つOS言語で検証を行う必要がある。そこで,本研究では,SO言語とOS言語を比較対照することによって,人間言語における語順選好を決定する要因ならびに,「言語の語順」と「思考の順序」との関係を明らかにする。
著者
木戸 剛生 大川 猛 大津 金光 横田 隆史
雑誌
第81回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, no.1, pp.53-54, 2019-02-28

Publish/Subscribe通信プロトコルであるDDS(Data Distribution Service)の暗号処理のハードウェア化について検討を行った。Publish/Subscribe通信における暗号処理をハードウェアで高速化し、低消費電力かつセキュアで、応答性の高い通信機能のずつ元を提案する。Raspberry PiとノートPCを用いて、DDS実装であるFast RTPSの暗号処理時間について計測を行った。本研究においては通信フレームワークの暗号処理をハードウェア化することで、セキュアな通信機能を容易にシステムに追加することを可能とすることを目的とする
著者
恵沢 敏成 井上 裕 村田 勇 高尾 浩一 杉田 義昭 金本 郁男
出版者
Hindawi Publishing Corporation
雑誌
International Journal of Medicinal Chemistry (ISSN:20902069)
巻号頁・発行日
vol.2019, no.7530480, pp.1-14,

The purpose of this study was to evaluate the physicochemical properties of piperine (PP) in ground mixtures (GMs) of PP with α-, β-, or γ-cyclodextrin (CD) under conditions of humidity, heat, and humidity-heat. In solid-state fluorescence measurements, the fluorescence maxima for GM (PP/αCD = 1/2), GM (PP/βCD = 1/1), and GM (PP/γCD = 1/1) were observed at 463, 472, and 469 nm, respectively. On the other hand, the humidified GMs exhibited maxima at 454, 460, and 465 nm, while the humidified-heated samples displayed fluorescence maxima at 455, 455, and 469 nm, respectively. Therefore, the molecular behavior of PP with α, β, and γCD was concluded to vary upon the coordination of water molecules. NIR and solid-state fluorescence measurements revealed that the molecular behavior of PP inside the α, β, and γCD cavity changed by water and heat factors depends on the mobility of the methylenedioxyphenyl group.This is an open access article distributed under the Creative Commons Attribution License, which permits unrestricted use, distribution, and reproduction in any medium, provided the original work is properly cited.
著者
金田 重郎
雑誌
研究報告情報システムと社会環境(IS)
巻号頁・発行日
vol.2011-IS-117, no.7, pp.1-8, 2011-08-29

Object 指向は,英語圏で開発された概念であり,英語の認知構造が反映されている.しかし,我が国の学生・SE は,日本語に 「翻訳」 されたテキストを用いて,Object 指向を学んでいる.例えば,「オブジェクト指向は,対象世界の 『もの』 に着目して,ビジネスを分析する手法」 とされる.しかし,認知文法では,英語の Object は,日本語の 「もの」 とは一致せず,可算概念 (名詞) と対応する.Person は,Object であるが,Water は Object ではあり得ない.Event は Object である.一方,Object を 「もの」 と認識してしまうと,「発注」 等の 「イベント」 を Obejct として扱うべきか否かを悩むことになる.日本語によるヒアリング結果・仕様記述をクラス図へ変換する作業は,日英翻訳に等しい.そこに,日本語で Object 指向を学ぶひとつの困難性がある.この問題を解決するためには,Object 指向の学習に認知文法の学習を取り入れ,機械翻訳におけるプリエディットと同等の作業を,クラス図の作成時に,を行う必要がある.認知文法は,この変換作業におけるプラクティスとして利用できる.
著者
金子 昇 葭原 明弘 濃野 要 山賀 孝之 財津 崇 川口 陽子 宮﨑 秀夫
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.27-33, 2019

<p> 職域における歯科保健事業として,疾病の早期発見を目的とした歯科健診が主に行われてきた.こうした従来型の歯科健診から,行動・環境リスク発見型・行動変容支援型歯科健診への転換を目的として,日本歯科医師会で「標準的な成人健診プログラム・保健指導マニュアル」(生活歯援プログラム)が策定された.本調査ではこのプログラムに基づいた歯科健診と保健指導が,歯科健診単独に比べてどの程度優れているのか検討を行った.新潟市内の3企業の従業員129名(44.6±11.5歳)を対象としてランダムに2群に分け,介入群には生活歯援プログラムに準じた歯科健診と保健指導を,対照群には歯科健診のみを行った.保健行動を把握するための質問紙調査をベースライン時,3カ月後,6カ月後および1年後に行い,この間の行動変容を調べた.その結果,介入群と対照群のいずれにおいても「職場や外出先での歯磨き」や「フッ素入りの歯磨剤の使用」,「歯間ブラシ・フロスの使用」が有意に改善していた.ただ,介入群では1年後まですべての時点でベースライン時に比べ有意に改善していたのに対し,対照群では一部の時点で有意な改善がみられたのみであった.したがって,従来型の歯科健診でも保健行動の変容がある程度期待できるが,その期間は限定的であること,歯科健診に加え生活歯援プログラムに準じた保健指導を行うことで行動変容はより確実となり,効果が少なくとも1年間持続することが明らかとなった.</p>
著者
木幡 敬史 図子 泰三 森 薫 玉村 雅敏 金子 郁容
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.31, no.Suppl., pp.169-172, 2008-02-10 (Released:2016-08-04)
参考文献数
5

本研究チームは,都道府県レベルで実施する学力テストを対象に,各校にて行ったテスト結果を効率的に集計・収集する手法と,各校や教育委員会(県・市町村)において,役割に応じた分析が可能となる手法について研究し,「学力テスト分析システム」の条件定義と実装をした.その上で,実際の教育現場における改善に活用できるよう,岩手県教育委員会と共同で運用をした.本論文では,システムの条件定義,実装概要,運用状況について述べる.
著者
金子 哲 木口 学
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.328-333, 2017

<p>単一分子の状態を調べ,動かし,利用することはナノテクノロジーの究極の目的である.現在までにSTMをはじめとする様々な単分子計測,操作技術が開発されてきた.しかし,室温で物性・機能が発現している単分子をそのまま観測することは今でも困難である.我々は,室温で単分子を計測できる手法として表面増強ラマン散乱(SERS)に注目している.SERSは金属ナノ構造体に形成される光増強場を利用した高感度の振動分光である.波長より小さなサイズの金属ナノ構造体に光を照射すると,電子の集団励起であるプラズモンが励起される.ここで金属ナノ構造体の間隔を狭めると,プラズモン同士が相互作用するようになり,構造体の間に極めて強い電場が増強されるようになる.ラマン散乱は光の入射と出射が関わる過程で,いずれの過程でも光が強められ,また光の強度は電場強度の2乗に比例するので,SERSの信号強度は電場増強率の4乗に比例する.SERSではこの電場増強効果に加え,金属と分子の相互作用に由来する化学効果により,最終的にラマン信号は10<sup>14</sup>倍も増強されることになる.ここまで増強率が大きくなると単分子のSERSが計測可能である.1997年に実際に単一色素分子のSERS計測が報告された.最近では単分子の光化学反応などの研究にも単分子のSERSが用いられている.またSERSは単分子に限らず高感度センサとして,医療分野などでも応用されるなど幅広く利用されている.このようにSERSによる分子検出は実用段階に達しているが,未だ大きな課題がある.SERSにより分子の存在,そして分子構造は知ることが可能になった.しかし,SERSを計測している分子の電子状態,そして金属表面への吸着状態を知ることはできていない.関連して金属と分子の相互作用の大きさを定量的に評価することが難しく,化学効果については不明な点が多い.</p><p>本研究ではこれら単分子SERSの課題解決にむけ,単分子の構造,電子状態,吸着状態など単分子の情報すべてを同時に与える計測法に関する我々の研究成果について紹介する.これまで観測することができなかった単分子の電子状態,吸着状態を明らかにするため,我々は金属電極に単分子を架橋させた単分子接合について,SERSと電気計測の同時計測を行った.単分子接合の電流–電圧( <i>I</i>–<i>V</i>)特性は,金属と分子の波動関数の重なり,エネルギー差など,界面構造に依存する情報を与える.これらの情報をもとに分子の吸着状態,電子状態を決定した.さらにSERSと電気特性から得られる電子状態,界面状態を組み合わせることで新たな知見も得た.具体的には,特定の分子の吸着状態でのみSERSが観測されること,そして金属と分子の波動関数の重なりのべき乗に比例してSERS強度が増大することである.特定の吸着構造でSERSが検出されたことは,逆に言えばSERSが観測された分子の吸着構造は一意に決まり,特定の吸着構造を選び出すことができることを意味する.そして,電気計測から求めた金属と分子の波動関数の重なりと光学計測から求めたSERS強度に相関が観測されたことは,電気物性と光学物性を実験的に結び付けたことになる.</p>