著者
鈴木 美加 比金 真菜 佐藤 千尋 松野 希望 齋藤 章子 森 隆史 橋本 禎子 八子 恵子 石龍 鉄樹
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.147-153, 2017 (Released:2018-03-17)
参考文献数
17
被引用文献数
2

【目的】3歳児健康診査における視覚検査(以下、3歳児健診)において、Retinomax®とSpot™ Vision Screenerの2機種を用いて、自然瞳孔での屈折検査を施行したので、その結果を報告する。【対象及び方法】対象は、福島市の3歳児健診を受診した71名の142眼である。Retinomax®とSpot™ Vision Screenerを用いて自然瞳孔での屈折検査を施行し、2機種の等価球面屈折値および円柱屈折値を比較した。【結果】Retinomax®とSpot™ Vision Screenerともに71名の全受診児で、両眼の屈折値の測定が可能であった。等価球面屈折値は、Retinomax®では-1.19±1.14D(平均値±標準偏差,範囲:-5.00~+4.00D)、Spot™ Vision Screenerでは+0.28±0.56D(-1.125~+3.75D)で有意差を認めた(Wilcoxon符号付順位検定,p<0.001)。等価球面屈折値が近視と測定されたものは、Retinomax®では121眼(85%)、Spot™ Vision Screenerでは30眼(21%)であった。円柱屈折値は、Retinomax®では0.54±0.50D(0.00~2.50D)、Spot™ Vision Screenerでは0.73±0.56D(0.00~3.00D)で有意差を認めた(Wilcoxon符号付順位検定,p<0.001)。【結論】Spot™ Vision ScreenerはRetinomax®に比較し、等価球面屈折値が遠視に測定される傾向にある。この結果は、Spot™ Vision Screenerでは器械近視が誘発されにくいためであると考えられる。したがって、Spot™ Vision Screenerは、健診において自然瞳孔で弱視の要因となる屈折異常をスクリーニングする精度をあげる機器として期待される。
著者
高柳 清美 金村 尚彦 国分 貴徳 西川 裕一 井原 秀俊
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ca0252, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 ヒトを対象とした臨床研究および動物実験の結果より,膝前十字靭帯(以下ACL)は自己治癒能が低いとされてきた.ACLの治癒能力が低い根拠として,炎症細胞とその関連物質量(Akesonら1990),血行(Brayら19901991),一酸化窒素量(Caoら2000),コラーゲン線維の含有率(Amielら1990Brayら1991),αプロコラーゲンのRNA量(Wiigら1991),生体力学的負荷の相違(Viidikら1990Wooら1990),治療過程でのファイブロネクチン量(Almarzaら2006),マトリクスプロテアーゼの発現量(Zhangら2010),α平滑筋アクチン・トランスフォーミング成長因子の発現量(Menetreyら2010),幹細胞の治癒能力(Zhangら2011)などの報告がある.ラット,ウサギ,イヌのACLを切断し自由飼育すると,ACLの自然治癒は起こらず,切断後数日(5~7日)で靭帯の退縮と変形性膝関節症が発生する. しかし,完全断裂であっても関節運動を制動する特殊装具と早期からの運動療法によって,破断したACLは治癒する(井原ら1991,2006).我々はこれまでに,ACL損傷後に生じる膝関節の異常運動を制動する動物モデルを作製し,関節の制動と自然飼育により,完全切断したACLが自然治癒することを明らかにした. 本研究の目的は関節包外関節制動モデルを用いて,治癒したACLを組織学的に観察し,経時的に治癒靱帯の強度を検討することである.【方法】 Wistar系雄性ラット24匹の両後肢の膝関節を使用した.ラットの右膝関節に対してACL切断術を行い,8週間飼育後に12匹(8週群),40週間飼育後に12匹(40週群)屠殺した.手術側(右膝関節)を実験肢とし,非手術側(左膝関節)を対照肢とした.外科的手順は,ACLを切断後,人工靱帯を膝関節外側より大腿骨遠位部後方の,大腿骨頚部後面の弯曲に沿った中枢側の軟部組織に貫通させ,脛骨近位前方に作製した骨トンネルに通し,大腿骨遠位部後方に通して結んで固定した. ACL切断8週,40週経過後のラット3匹ずつを検体に供し,組織標本を作成し,HE染色で染色して組織学的観察を行った.力学的強度はラット9匹ずつの両下肢を採取,ACL以外の筋軟部組織を切除し,INSTRON社製の材料試験システム5567A型(ツインコラム卓上モデル)で,試験速度5mm/min,試験機容量100N,初期張力1.5Nで計測した.力学強度の統計処理には繰り返しのある二元配置分散分析,多重比較としてScheffe法を用いた.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は埼玉県立大学動物実験委員会の承認に基づいて行った.【結果】 (1) 肉眼的観察 力学的評価を行った8週群,40週群全例でACLの連続性を確認した.治癒靱帯の走行は正常に近似していたが,付着部にバラツキがあり,正常のACLに比べ太い線維束であった.関節表面の観察では軟骨面の粗雑化や嚢胞瘢痕組織骨棘などの膝OA的所見は確認されなかった.(2) 組織学的観察 8週群,40週群ともにコラーゲンによる連続性が認められた.治癒ACLは正常ACLに比べ,靱帯が太く関節顆間窩に瘢痕組織が増殖していた.(3) 治癒靱帯の強度 8週群と40週群の治癒した靱帯の強度はそれぞれ,10.2±4.2N,11.2±4.2N(平均±標準偏差)で,対照肢はそれぞれ,22.8±2.9N,24.2±4.0Nであった.切断肢と対照肢間に靱帯強度の差異が認められ(p<0.01),切断肢は対照肢に比べ,約40%から50%の強度で治癒していた.8週群と40週群の治癒靱帯強度に違いは認められなかった.【考察】 実験肢において全例にACLの連続性が認められ,正常靱帯と同等かより太い靱帯を認めた.関節の制動と運動を行わせる動物実験モデルによって,明らかに靱帯治癒が促進されることが証明された. 術後8週および40週後に膝OAの所見が確認されなかったことは,断裂後の継続した異常運動(過度なストレス)に対する関節制動がなされ,正常に近似した運動が維持された結果と考えられる. 8週後と40週後の治癒靱帯の強度に差異が認められなかったことより,靱帯強度に関わる修復は8週前後にほぼ終了していることが示唆された.靱帯強度が半減した要因を解明するには,(1)早期の靱帯治癒過程(炎症期増殖期,リモデリング期)における運動制限と積極的運動の力学的影響と,(2)炎症細胞,幹細胞,線維芽細胞などの靱帯修復に関わる細胞および炎症因子,増殖因子などのサイトカインや細胞外マトリクス,コラーゲンなどのタンパク質を分解する酵素の発現の生化学的解明,が今後の課題となった.【理学療法学研究としての意義】 関節制動と運動療法により,損傷ACLが充分な力学的強度と粘弾性を有するまで治癒すると,レクレーションレベルのスポーツ愛好家,骨成長が認められる青少年,高齢者あるいは外科的治療を望まないスポーツ選手に対する主たる治療法となることが期待でき,社会的・経済的・身体保護的に多大に益すると考えられる.
著者
松村 千恵子 倉山 英昭 安齋 未知子 金本 勝義 伊藤 秀和 久野 正貴 長 雄一 本間 澄恵 石川 信泰 金澤 正樹 重田 みどり 窪田 和子 山口 淳一 池上 宏
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.194-203, 2014 (Released:2014-06-14)
参考文献数
30
被引用文献数
1

千葉市3 歳児検尿システムでは,蛋白・潜血±以上,糖・白血球・亜硝酸塩+以上の1 次検尿陽性者に,2 次検尿と腎エコーを施行。1991~2011 年度154,456 名の精査陽性率は1.5%で,膀胱尿管逆流(VUR)16 名(血尿5,細菌尿11,尿単独3),アルポート症候群,ネフローゼ症候群,巣状分節状糸球体硬化症(FSGS),糸球体腎炎等が診断された。11,346 名の腎エコーで,先天性腎尿路奇形(CAKUT)92(0.8%),うちVUR 24 名(エコー単独11),両側低形成腎2,手術施行17 であった。VUR 全27 名中,VUR III 度以上の頻度は細菌尿例において非細菌尿例より有意に高かった(各々10/11,7/16,p<0.05)。10 名(7 名両側IV 度以上)は多発腎瘢痕を有し,うち7 名はエコー上腎サイズ異常を認めた。FSGS 1 名が末期腎不全に至った。千葉市3 歳児検尿システムはCAKUT 発見に有用と考えられた。
著者
青木 歳幸 大島 明秀 ミヒェル ヴォルフガング 相川 忠臣 今城 正広 海原 亮 小川 亜弥子 金子 信二 田村 省三 保利 亞夏里 山内 勇輝 吉田 洋一 鷲﨑 有紀
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

3年間の種痘伝来科研において、1849年8月11日(嘉永2年6月23日)に到来した牛痘接種が九州各地へ伝播した様子が明らかになった。たとえば、佐賀藩では全額藩費による組織的な種痘を実施した。大村藩では、牛痘種子継料を全村から徴収し種痘を維持していた。中津藩では長崎から痘苗を得た民間医辛島正庵らが文久元年(1861)医学館を創設した。福岡藩領では、武谷祐之が、嘉永2年の末から種痘を始めた。小倉藩では、安政5年(1858)に再帰牛痘法を試みていた。九州諸藩における種痘普及により、洋式医学校の設立など地域医療の近代化をめぐる在村蘭方医の人的ネットワークが主要な役割を果たしていた実態が判明した。
著者
後藤 育知 山崎 諒介 大谷 智輝 岩井 孝樹 籾山 日出樹 松本 仁美 金子 純一郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101962, 2013

【はじめに、目的】肩回旋筋腱板の断裂は棘上筋に最も多く生じるとされている.通常保存及び手術療法ともに4 〜6 週間の肩関節自動運動が禁止されることで,その期間の廃用症候群が問題となる.棘上筋は僧帽筋上部線維より深層を走行するため視診や筋電図学的に機能や構造を検討するには困難な解剖学的特徴をもつ筋といえる.そこで本研究では超音波画像診断装置を用いて深層に存在する棘上筋の筋厚を複数箇所測定し自動運動による棘上筋への負荷の程度や構造的特性を解明する事と,棘上筋の構造的特性を踏まえた廃用症候群を予防する方法について検討する事を目的に研究を行った.【方法】1)対象:肩関節障害の既往のない健常成人男性12名(平均年齢21.6±1.61歳,平均身長173.4±5.5cm,平均体重63.4±5.9kg)を対象とし,利き腕において計測を行った.2)方法:(1)測定機器は計測機器超音波画像診断装置(L38/10-5ソノサイト社製)を用いた.(2)棘上筋筋厚の計測方法:棘上筋の測定肢位は椅子座位にて上肢下垂位,耳孔‐肩峰‐大転子が一直線上となる肢位で行った.測定部位は肩峰と棘三角を結ぶ線に上角から下した垂線(以下,上角ポイント),肩峰と棘三角を結ぶ線の中点(以下,中点ポイント)の2 点を棘上筋の走行に対して直角に超音波画像診断装置のプローブ面を全面接触させて測定した.測定する肩関節外転角度は安静下垂位(外転0°),外転10°,30°,90°の角度において無負荷で測定を行った.(3)統計処理:各ポイントにおける角度ごとの比較は一元配置分散分析にて多重比較検定を行い,異なるポイントの角度ごとの比較には,正規性の確認後,対応のあるt検定を用いた.いずれも有意水準は5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】超音波による棘上筋厚の測定の実施に際し,本研究に関する説明を担当者から行い,研究で得られた結果は目的以外に使用しないことなどを十分に説明し文書にて同意を得た.【結果】上角ポイントでは棘上筋の筋厚は0°で0.9 ± 0.34cm,10°で1.02 ± 0.37cm,30°で1.15 ± 0.33,90°で1.65 ± 0.28cmで,90°において最も筋厚が厚くなり,0°,10°,30°と比較して統計学的に有意に厚くなったことが明らかとなった.また,0°,10°,30°において各々を比較した場合では統計学的に有意差を認められなかった.中点ポイントでの筋厚は0°,10°,30°,90°それぞれの角度間において棘上筋の筋厚に統計学的有意差は認めなかった.【考察】今回の研究において上角ポイントにおける筋厚は,肩関節外転0°〜30°において各々を比較した場合,棘上筋の筋厚に統計学的有意差は認められなかったが,0°,10°,30°での筋厚を90°と比較した場合では統計学的有意差が認められた.坂井らによると,肩関節外転における棘上筋は通常最初の10°までに働いているとされており,肩関節10°付近で筋厚が最大膨隆するという仮説が考えられた.また,棘上筋は30°まで作用するとされる説もあるため30°付近においても筋の膨隆はプラトーに達すると考えられた.しかし,得られた結果より肩関節外転0°〜30°における棘上筋の筋厚に統計学的有意差が見られなかったことから,0°〜30°までは負荷が増大しても筋厚が変化しないことが明らかとなった. 中点ポイントでは角度間において,統計学的に有意な差を認めなかったことから,測定部位が異なれば負荷の影響は同じであっても筋厚の変化は異なることを示している.これら2 ポイントの異なる筋厚の変化は羽状筋である棘上筋とその収縮様式,筋の起始部が関係しており,自動外転90°の最大負荷時に筋腹部が上角ポイントに滑走し,中点ポイントでは同じく90°で平均値が最も低値である事から筋腹部から筋腱移行部になったことで90°での筋厚が薄くなったと考えられる.つまり30°〜90°での筋の滑走が最も大きかったと推察される.【理学療法学研究としての意義】臨床における腱板断裂例では手術療法後の肩関節自動運動禁止による廃用症候群が早期ADL獲得に影響を与える.この問題に対し今回の結果から,0°〜30°の範囲内の肩関節外転自動運動は棘上筋に筋厚に変化がみられないことから,この角度範囲であれば筋厚を高めることなく収縮を促すことができ,肩関節自動運動禁止による棘上筋の廃用性筋萎縮を予防できる可能性があることが示唆された.
著者
鈴木 潤 菅野 直人 西山 修平 金子 仁彦 三須 建郎 竪山 真規 遠藤 俊毅 青木 正志
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.571-575, 2012 (Released:2012-08-27)
参考文献数
22
被引用文献数
2 2

症例は30歳男性である.受診半年前より頭部MRIで異常信号を指摘されていた.1カ月前より歩きにくさ,尿の出にくさが出現し当科受診.神経学的には両下肢の中等度の筋力低下,胸部以下の温痛覚低下,排尿困難,便秘,陰萎をみとめた.腰髄MRIでは円錐部に辺縁の造影効果をともなう浮腫性病変があり,頭部MRIでは無症候性の散在性白質病変をみとめた.末梢血ではみられなかったが脳脊髄液中には好酸球の増加が明らかであり,これはステロイドパルス後に変性像が観察された.寄生虫感染や骨髄増殖性疾患が否定的であり,特発性に好酸球が病態に関与する再発性脳脊髄炎と考えられた.急性期および寛解維持にステロイドが著効する点が特徴的であった.
著者
金澤 優太 西本 一志
出版者
情報処理学会
雑誌
インタラクション2017論文集
巻号頁・発行日
pp.597-600, 2017-02-23

動画投稿サイトに見られる「弾いてみた」動画を楽器演奏の練習に活用している事例は多い.しかし,ほとんどの動画投稿サイトでは,演奏技術が巧みな卓越した演奏の動画が優先的に表示されるようになっている.お手本動画の技術レベルが,自分のレベルとあまりにかけ離れている場合,練習モチベーションを低下させることが危惧される.そこで本研究では,動画投稿サイトに投稿された「弾いてみた動画」の技術レベルを集合的に順位付けし,各楽器演奏練習者がそれぞれのレベルに応じた動画を探しやすくする手法を提案する.これにより,楽器練習の継続意欲を維持することができるようにすることを目指す.本稿では,提案手法の基本的動作を確かめるために,シミュレーション実験を行った.理想順位との一致率はあまり高くなかったが,ある程度レベルの近いものを塊として提示することができることが示唆された.
著者
金 相賢 盛川 浩志 三家 礼子 渡邊 克巳 河合 隆史
出版者
ヒューマンインタフェース学会
雑誌
ヒューマンインタフェース学会論文誌 (ISSN:13447262)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.329-338, 2016-11-25 (Released:2019-07-01)
参考文献数
34

We evaluated the effects of disparity conditions such as degree of crossed/uncrossed disparity on the preference occurring during the cognitive process of preference judgment by using psychological and physiological indices. First, we performed paired comparisons of 20 novel shapes without disparity in order to select eight stimuli with minimum bias during preference judgment. Second, we investigated the effects of parallax characteristics on the feeling of preference by using 24 stimuli created by adding three disparity conditions (0.3°, -0.3° and -1.1°) to the eight previously determined stimuli. Moreover, psychological indices were determined by paired comparisons of preference judgment and physiological indices were determined by measurements of eye movement, eye fixation time, and view count during the process of preference judgment. The paired comparisons showed that the participants preferred higher crossed disparity and higher parallax angles. The eye movement measurements showed that eye fixation time and view count increased during conditions of crossed disparity rather than uncrossed disparity, and this increase was directly proportional to the degree of parallax angle. We argue that the reasons for this may be related to the attraction of the crossed disparity and the familiarity and novelty that complements the addition of parallax.
著者
道前 翔矢 金井 輝人 石井 順久 板谷 治郎 辛 埴 岡崎 浩三 小川 優 岡田 大 鈴木 剛 渡邉 真莉 染谷 隆史 山本 貴士 笹川 崇男 藤澤 正美
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.72, pp.1583, 2017

<p>従来のARPESでは平衡状態の電子構造について盛んに研究されてきた。近年はさらに発展した実験手法として、非平衡状態に励起された電子系が平衡状態へと緩和していく様子をフェムト秒の時間分解能で観測できる時間分解ARPESが試みられている。本研究発表では高次高調波を用いた時間分解光電子分光を用いてアンチノード方向を含めたBi2212の時間分解光電子分光の結果より擬ギャップの起源について議論する。</p>
著者
金子 智紀 武田 響一 野口 正二 大原 偉樹 藤枝 基久
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.92, no.4, pp.208-216, 2010 (Released:2010-10-05)
参考文献数
39
被引用文献数
2 4

スギ人工林の林況および立地環境の違いが流出特性に与える影響を明らかにすることを目的に, 第三紀凝灰岩を地質とする3小流域 (秋田県長坂試験地: 上の沢・中の沢・下の沢) において, 3水年の流量観測と林況および土壌調査を実施した。各小流域は, スギの植栽後およそ40年を経過した林分で, それらの成長や立木密度, 他樹種との混交度合いなどが異なっており, 流域全体の被覆度に差が生じていた。各小流域の年間損失量は724 mm (上の沢), 861 mm (中の沢), 548 mm (下の沢) であり, 流域間で大きく異なっていた。この違いの一部分は, 各流域における蒸発散量の違いによって生じていると考えられた。また, 中の沢流域で観測された年間損失量は, ハモン式から想定される可能蒸発散量 (640 mm) を大きく上回り, 同流域では深部浸透が生じている可能性が示唆された。土壌調査から求めた各流域の保水容量は104 mm (上の沢), 132 mm (中の沢), 121 mm (下の沢) であり, これらの保水容量の大きさは流出解析から求めた各流域の貯留量の大小関係と一致した。また各流域の流況曲線の形状は, 主に蒸発散量や保水容量の違いを反映していると考えられた。
著者
千田 金吾
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

特発性間質性肺炎(IIP)とEpstein-Barr virus(EBV)との関連を検討し,以下の知見を得た。病理組織学的に確診されたIIP29例と,肺線維症を有する全身性進行性強皮症(SSc-IP)の5例を対象とし,生検時に得られた肺組織を検討材料として以下の項目を検索した.対照としては,15例の正常部分肺を用いた。1)PCR法による肺組織中のEBV genome DNAの検出:肺組織より抽出したDNAを用い,two-step PCR法を用い,標的遺伝子の存在の有無を検討した。2)肺組織におけるEBV latent membrane protein 1(LMPl)に対する免疫染色:抗LMP1モノクローナル抗体を一次抗体とし,SAB法にて免疫染色を施行した。さらに,IPF症例のLMP1染色陽性例と陰性例について,その臨床像を比較検討した。その結果,1)two-step PCRでのEBV genome DNAの検出頻度はIIP24/25例(96%),SSc-IP5/5例(100%),対照10/14例(71%)であり,IIPにおける検出頻度は対照に比し,有意に高率であった(p<0.05)。2)IIP29例中9例の肺胞II型上皮に,LMPlに対する免疫染色が陽性であった。一方,SSc-IP症例と対照例は全例陰性であった。経過観察が可能であったIIP20例において,PaO_2値が15torr以上低下した症例を"進行例"として予後調査を行った結果,LMPl陽性7例中5例(71%)が"進行例"であったのに対し,LMPl陰性例の"進行例"は13例中1例(8%)のみであり,有意差が認められた(p<0.01)。これらの結果は,IPFにおけるEBVの病態的関与を示すものと思われた。
著者
金坂 清則
出版者
一般社団法人 人文地理学会
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.252-295, 1975
被引用文献数
1 1

Many studies have been published to deal with Japan's urban growth which began at the Meiji era, but there seems to be very few works which focus its examination on the urban functions and city and region relationship on a meso-scale, and have a scope to develop into macro-scale study of the whole region. Since a regon exists as a part of the whole, attention to such a direction will be urgently needed.<br>The writer intends to explain a historical change in the city and region structure in the Niigata Plain-the country's second largest plain-and its surroundings for the period of about seventy years since the early Meiji era. To this end the processes of forming the Ura Nippon Region must be unraveled dynamically and regionally, and location and the sphere of influence of urban functions, which may be classified into four categories-administrative, cultural, economic and transportational, are examined in relation to city size and distribution of cities. Parts of the results obtained are summarised as follows.<br>1. In 1879 there were thirty-three cities and towns in the objective region, and thirty-four in 1935. Cities in 1879 are classified into three, ie. a city in Class I, four in Class II, and twenty-eight in Class III (See Figure 1).<br>2. The four cities in Classes I and II were separated each other by 30 to 40 kilometres, and the distances between Class III cities were around 6 to 9 kilometres, the intervals being quite uniform. The outline of this structure had already been formed by the middle of the eighteenth century. Since that time most of those cities have had periodical fairs, and half of them were nuclei of textile and hardware industries which had been located at the rural settlements around them (See Figures 1 and 2).<br>3. On this foundation the administrative and cultural institutions such as government offices and schools began to be located corresponding to city size at the early years of Meiji. At the same time economic activities, especially of modern manufacturing industies which tend to be unevenly distributed, began to be accumulated around those cities. The framework of established orders among cities was therefore not broken down but was solidified more as the time passed.<br>4. Consequently larger cities genarally developed more in proportion to their scale. If the Zipf's rule is applied, the three largest cities had smaller scale than the rule's ideal value, and Class III cities larger than the same in 1887, and the case was reversed in 1935. As a result the difference in the scale of the largest and the smallest cities increased by 2.7 times during the period. This was also the process when the order among cities became rank-sized (Table 11).<br>5. After the middle of the Meiji era the objective region was gradually subordinate to Tokyo, and formed into a part of the Ura Nippon Region. The trend was definitely fixed at the mid-Taisho years. The cities developed only slowly in this region, and their influence over the countryside remained weak. Therefore the countryside began to be controlled by the cities outside this region and by the outer realm. The large-scale landlordship was the most important internal factor to keep the rural country into stagnation.<br>6. Another factor to bring about such change to the region was a drastic change in transportation: a shift from maritime and river-borne traffic to the modern railway. This should not be overlooked.
著者
植木 有理子 押方 智也子 浅井 芳人 金子 猛 服部 直樹 釣木澤 尚実
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.857-868, 2019 (Released:2019-08-09)
参考文献数
18

【背景・目的】好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)における末梢神経障害の神経症状の変化を的確に評価するのは難しい.そこで運動・感覚障害に関する質問票を作成し,末梢神経障害の管理に対する有効性を検証した.【方法】平塚市民病院通院中のEGPA40症例を,ガンマグロブリン大量療法(IVIG;intravenous immunoglobulin)を行った30症例(IVIG投与群)と従来療法で臨床的寛解を得た10症例(IVIG非投与群)に分類し,感覚・運動障害の評価票(ANCA関連血管炎.com)を用いて評価した.IVIG投与群は4時期,非投与群は2時期で評価し,患者背景因子と比較した.【結果】IVIG投与群は非投与群と比較して発症時の運動障害点数が有意に低く(p<0.01),感覚障害点数は有意差を認めなかった.罹病期間とIVIG後の運動障害点数改善度には相関はないが,感覚障害点数改善度とは負の相関を認めた(p<0.05,r=-0.47).運動障害点数改善度とMMTの改善度は正の相関を認めた(p<0.01,r=0.70).IVIG投与群ではIVIG後の1カ月後に運動障害点数は有意に増加(p<0.01),感覚障害点数は有意に低下した(p<0.01).【結語】この質問票の使用によりIVIG後の運動・感覚障害の効果が評価でき,質問票はEGPAの末梢神経障害の管理に有用であることが示唆された.
著者
小高 真紀子 福原 絵里子 金子 国雄 浅田 研一 荻野 和正
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.187-192, 2014-05-25 (Released:2014-06-21)
参考文献数
30

ワクモの習性を利用したトラップを試作し,海外で既に報告されているトラップとワクモの定着数を比較した.まず,2枚の板を重ねて,2枚の板の1辺が接合するトラップ(非平行板トラップ)と2枚の板が平行となるトラップ(平行板トラップ)を作製し,ワクモの定着率を比較した.その結果,平行板トラップと比較して非平行板トラップの定着率が高くなる傾向を示した.次に杉,桧,竹およびポリ塩化ビニールのうち非平行板トラップに最も適した材質が何かを検討した.その結果,杉や桧は他の材質よりも有意にワクモが定着した.また,既報の段ボールや厚紙を用いたトラップよりも著者らが作製した杉材の非平行板トラップに有意にワクモが定着した.以上の結果から,今回開発したトラップはワクモを効率よく捕獲でき,農場におけるモニタリングや駆除あるいはワクモの生態解明の有効な道具となりうることが示唆された.