著者
八木橋 勉 渡久山 尚子 石原 鈴也 宮本 麻子 関 伸一 齋藤 和彦 中谷 友樹 小高 信彦 久高 将洋 久高 奈津子 大城 勝吉 中田 勝士 高嶋 敦史 東 竜一郎 城間 篤
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.131, 2020

<p>ヤンバルクイナは沖縄島北部のやんばる地域のみに分布しており、環境省のレッドリストで絶滅危惧IA類(CR)に分類されている。森林面積や外来種とヤンバルクイナの繁殖分布の関係を明らかにするため、沖縄島北部でプレイバック法による調査を2007年から2016年の繁殖期に3年ごとに4回実施し、確認個体数を応答変数とするGAMMによる統計解析を行った。その結果、ヤンバルクイナは、マングースが少ない場所ほど多い、広葉樹林面積が大きい場所ほど多い、畑地草地面積が大きい場所ほど多い、2007年と比較して近年確認個体数が増加している、という統計的に有意な関係がみられた。また、確認地点数も増加していた。これらの結果から、地上性のヤンバルクイナは、外来種であるマングースの影響を強く受けているが、マングース防除事業の効果により、近年分布が回復していると考えられた。ヤンバルクイナは広葉樹林面積が大きい場所で多いことから、近年大面積伐採が減少していることも分布回復に有利に働いていると考えられた。同時に畑地草地面積が大きい場所で多いことから、林内だけでなく、林冠ギャップ、林縁や草地なども生息環境として重要である可能性が考えられた。</p>
著者
北本 卓也 関 伯実 渡邉 正
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J103-A, no.8, pp.185-195, 2020-08-01

ナンプレは世界中に広まっているペンシルパズルであるが,その1種に「斜め四独」と呼ばれるものがある.これはサイズが 4 × 4 のナンプレパズルであり,通常のナンプレのルールに「対角線上のマスにも1〜4の数字が一つずつある」というルールを追加したものである.本論文ではこの斜め四独に注目し,斜め四独の問題が適切であるための必要十分条件を明らかにする.また,得られた結果を用いて,手動で斜め四独の問題を作成する手順を提案し,斜め四独の問題の数え上げを行う.
著者
原 崇文 古関 隆章 岡田 万基 久富 浩平
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌. D, 産業応用部門誌 = The transactions of the Institute of Electrical Engineers of Japan. D, A publication of Industry Applications Society (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.133, no.9, pp.909-916, 2013-09-01
参考文献数
9
被引用文献数
2

Suppression of slip and reduction of friction between the rail and the wheel are important in railway systems. This paper proposes a novel slip re-adhesion control based on monitoring the excessive torque and the excessive angular momentum for four-axle and two-truck model. The effectiveness of the proposed method has been confirmed by mathematical analysis. In addition, the excessive angular momentum compensation of the proposed method was evaluated using real-world train test data. Furthermore, the proposed method can estimate the disturbance torque from real-world train test data.
著者
関根 正人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.70-85, 2011 (Released:2011-07-20)
参考文献数
13
被引用文献数
2 10

近年,東京都心部では想定を超える規模の集中豪雨に見舞われることが少なくない.本研究では,このような豪雨に見舞われたときに都心部の住宅密集地域ではどのような浸水が生じ,どのようなプロセスを経て内水氾濫が拡大するのかに注目し,これを数値解析により予測する手法を開発・確立することを目的とする.さらに,この手法を2005年に妙正寺川流域で生じた浸水・氾濫と,2008年に雑司ヶ谷地域で発生した下水道水難事故時の豪雨流出事例に適用した.結果として,現時点で得られているデータに限られるとはいえ解析手法の妥当性が検証されたほか,実際に被害にまで発展した浸水・氾濫のプロセスが水理学的にかなり精密に解析できるようになり,その理解も深まったと考える.
著者
一杉 正仁 山内 忍 長谷川 桃子 高相 真鈴 深山 源太 小関 剛
出版者
一般社団法人 日本交通科学学会
雑誌
日本交通科学学会誌 (ISSN:21883874)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.50-57, 2016 (Released:2018-03-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1

職業運転者における健康起因事故予防のために行うべき指導および啓発内容を具体的に明らかにするために、栃木県タクシー協会に所属する全タクシー運転者2,156人を対象に、無記名自記式のアンケート調査を実施した。844人から調査用紙が返送され(回収率は39.1%)、平均年齢は60.7歳であった。所属事業所の保有車両台数は30台未満(中小規模)が60.4%、30台以上が39.6%(大規模)であった。乗務前に体調が悪くても運転したことがある人は有効回答の28.5%であり、この割合は大規模事業所の運転者で有意に高かった。運転した理由として、運転に支障がないと判断したこと(59.0%)、収入が下がること(57.9%)が多かった。運転中に体調が悪くなったことがある人は有効回答の32.6%であり、その時、会社に申告して運転をやめた人が55.3%、しばらく休んでから運転を続けた人が26.5%、そのまま運転を続けた人が14.6%を占めた。体調が悪い時は運転を控えるよう指導された人は有効回答の76.0%、体調が悪い時に言い出しやすい職場環境であると回答した人は83.9%であり、いずれも事業所の規模による差は認められなかった。また、自身の健康と運転について、会社でしっかり管理してほしいと回答した人が34.0%を占め、27.2%の人がより頻回の健康診断受診を希望していた。健康起因事故の背景と予防の重要性が会社の規模によらずタクシー業界に十分浸透していないこと、厳しい労働環境がタクシー事業所全体に共通しているため、健康起因事故の予防を推進する経済的余裕がないことが分かった。健康起因事故を予防できるように、運転者自身が体調不良によるリスクを認識し、健康管理に対する意識の持ち方・知識を高めていくこと、これを事業所がサポートするシステムを構築することが重要である。
著者
関根金次郎 編
出版者
大阪屋号[ほか]
巻号頁・発行日
vol.平手之部 上,下, 1927
著者
尾関 友佳子 原口 雅浩 津田 彰
出版者
一般社団法人 日本健康心理学会
雑誌
健康心理学研究 (ISSN:09173323)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.1-9, 1991 (Released:2015-07-05)
参考文献数
17
被引用文献数
18 4

The present study was to examine the process of psychological stress by using the stress self-rating scale and MPI in university students (N=123). The stress self-rating scale consists of three scales: stress responses, stressors and coping. The main findings were as fonows: (a) stress responses were positively correlated with “negative” life events and “avoidance-escape” coping mode; (b) stress responses were negatively correlated with “emotion-focused” coping mode; (c) the characteristics of extraversion-introversion derived from MPI were positively correlated with active coping modes (such as “problem-focused” and “emotion-focused”); (d) the dimension of neuroticism was positively correlated with “negative” life events and stress responses.
著者
久原 有貴 関口 道彦 小鴨 治鈴 松本 信吾 七木田 敦 杉村 伸一郎 中坪 史典 上田 毅 松尾 千秋
出版者
広島大学学部・附属学校共同研究機構
雑誌
学部・附属学校共同研究紀要 = The Annals of educational research (ISSN:13465104)
巻号頁・発行日
no.43, pp.25-33, 2014

昨今,子どもの健康問題から,幼児期の身体活動の重要性が注目されている。本研究は,森の中で遊びを中心とした保育を行っている森の幼稚園(広島大学附属幼稚園)での身体活動量と体力・運動能力との関係を明らかにした。研究1では5歳児クラスの幼児を対象に歩数という指標を用いて身体活動量を測定した。その結果,森の幼稚園の幼児は一般的な幼稚園の幼児よりも保育時間中に多く歩いたり走ったりしていた。研究2では3~5歳児クラスの幼児を対象にMKS幼児運動能力検査を用いて体力・運動能力を測定し,また,身体活動量と体力・運動能力との関係を調べた。その結果,森の幼稚園の幼児の体力・運動能力は平均的であり,歩数が多い幼児ほど瞬発力とスピードが高かった。研究3では,森の幼稚園の卒園児の体力・運動能力を調べた。その結果,森の幼稚園出身の児童の体力・運動能力は,1年生の時点では平均的で,2年生以降になってから平均よりも高くなっていた。このことから,森の幼稚園という保育環境は幼児期に多くの身体的活動を行うことを促し,それが心情面などへの影響を媒介として,小学校入学以降の体力・運動能力に影響を及ぼす可能性があることが示唆された。
著者
関 なおみ
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR TUBERCULOSIS
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.395-399, 2003-05-15 (Released:2011-05-24)
参考文献数
17

近年わが国において成人集団における集団感染リスクは増加傾向にあるが, これらの事例は感染経路の同定が難しく, 予想外に感染が拡大している可能性があり, 対応に苦慮することが多い。今回当保健所が経験した中小企業での集団感染事例について, 対象年齢を60歳未満まで引き上げたツベルクリン反応検査 (以下, ツ反), 換気測定, 聞き取り調査等をもとに検討した。初発患者は38歳男性で病型班bII3pl, 喀痰検査はGaffky8号, 培養+ (INH耐性) であった。調査対象の事業所は2・7階に分かれ職務内容ごとに配置が異なっていた。30歳未満を対象としたツ反により, 両階合わせて感染者3名, リンパ節結核1名が発見された。このため, 対象年齢を60歳未満まで引き上げツ反を実施したところ, さらに13名が感染の疑いと判断された。当初の情報では, 初発患者の出入りは2階のみで7階職員との接触はほとんどないとのことであったが, 現場視察と聞き取り調査等から感染状況が推測された。都市部中小企業職員はデインジャーグループに属さないが, 定期外検診において積極的な調査の重要性が示唆された。
著者
関野 愉 相羽 玲子 相羽 寿史 塚原 武典 田代 俊男 岡本 浩
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.283-288, 2001-09-28 (Released:2010-08-25)
参考文献数
42

数種類の洗口剤を用いて, 初期のプラーク形成抑制効果に関して臨床的検討を行った。歯周疾患の徴候のない25~35歳の成人8名を被験者とした。実験開始前, 14日間にわたり専門家による歯面清掃と口腔衛生指導を行った。実験開始時から全ての機械的歯面清掃を中止し, 洗口剤10mlで1日2回1分間の洗口を4日間行った。実験開始時と4日後, 全歯面に対してPlaque Index (PII) を用い診査を行った。4日目の診査後, 専門家による歯面清掃と被験者自身によるブラッシングを再開し, 10日後に再び歯面清掃を中止し, 他の洗口剤により4日間洗口を行った。以上の方法で, 1) 蒸留水 (DW), 2) 0.12%グルコン酸クロルヘキシジン水溶液(CHX), 3) 酸化電位水 (AW), 4) 0.1%フッ化第一スズ水溶液 (SnF2), 5) 0.02%塩化セチルピリジニウム含有洗口剤 (CPC) の5種類の洗口剤を用いて検討を行った。全歯面におけるPII値はCHXで0.75, AW 1.21, SnF21.20, CPC1.55, DW1.61であった。これらを比較検討したところ, CHXと他の全ての洗口液, AWとCPCとDW, SnF2とCPCとDWの間に統計学的有意差が認められた。また, 全ての洗口剤において前歯部のPII値は小臼歯部, 大臼歯部のものよりも低く, 頬舌側面のPII値は隣接面よりも低かった。
著者
関 悠介 萩原 将文
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第31回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.661-666, 2015 (Released:2016-02-26)

本稿では,色彩調和と構図に基づく画像の審美的品質評価システムを提案する.人間とシステムの円滑なインタラクションのためには,人間が見たものに対してどのような印象を抱いているかをシステムが共有することが重要である.そこで本稿では,写真の印象に大きく関わる色彩と構図に着目し,人間の感性に沿った審美的品質の評価を目指した.配色技法や写真撮影の知識に基づいて色彩の美しさと構図の良さをそれぞれ数値化し,ファジィ推論によって審美的品質を複合的に評価した.評価実験では,ウェブ上から収集した画像を用い,人間の評価と提案システムによる評価との間に高い相関が見られ,人間に近い写真の評価を行うことが示唆された.
著者
井関 直政 長谷川 淳 羽山 伸一 益永 茂樹
出版者
The Ornithological Society of Japan
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.37-55, 2002 (Released:2007-09-28)
参考文献数
66
被引用文献数
4 4

化学物質による野生鳥類の研究史についてわが国の取り組みを紹介した.ダイオキシン類の汚染が大きな注目を浴びた近年,それらの問題に向けた対策や技術は大きな社会現象にもなった.わが国における化学物質による野生動物への影響に関する研究は,未だ少ないのが現状である.著者らは,魚食性鳥類であるカワウに着目し,ダイオキシン類の体内残留レベルを明らかにすると共に,既報の日本産鳥類のデータと比較した.その結果,カワウは最も高濃度に蓄積する鳥種であった.またPCDD/Fs の残留パターンは, 2,3,7,8-置換体PCDD/Fsが優占し,WHO-TEF (birds) を用いた毒性値への寄与には,1,2,3,7,8-PeCDDや2,3,4,7,8-PeCDF,CB126が大きな寄与を示した.肝臓におけるこれらのコンジェナーは,筋肉や卵よりも特異に蓄積していた.カワウにおけるダイオキシン類の半減期を算出し,環境濃度から卵への濃度を予測した結果,孵化率への影響は1970 年代をピークに減少傾向であることが推察された.現在のダイオキシン類の曝露による未孵化率は27%と見積もられ,個体群の減少には影響しないことが結論づけられた.しかしながら,別のエンドポイントや免疫などの調査の必要性が考えられ,これらを遂行するための非捕殺的モニタリング手法など,カワウ個体群をリスク管理するための新たな取り組みが期待された.
著者
石庭 寛子 十川 和博 安元 研一 星 信彦 関島 恒夫
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.69-79, 2016 (Released:2016-06-01)
参考文献数
66
被引用文献数
1

本稿では、化学物質汚染による野生個体群への影響を明らかにする1 つのアプローチとして、生物で普遍的に起きている「適応」に焦点をあてた評価例を紹介する。ダイオキシン類による汚染によってアカネズミ個体群内に、ダイオキシン抵抗性個体が増加するような集団構造の変化が起きているか否かを明らかにするため、ダイオキシン感受性の違いを識別する遺伝子マーカーを開発し、野外集団への適用を試みた。遺伝子マーカーとしてダイオキシン類の作用機序に深く関わるダイオキシン受容体(AhR)に着目し、野生集団におけるAhR 遺伝子の配列解析を行ったところ、アカネズミのAhR にはタンパク質の機能に差をもたらす変異、グルタミン(Q)、アルギニン(R)が799 番目のアミノ酸に存在していた。さらに生体での機能を調べるため、各遺伝子型を持つアカネズミへダイオキシン投与を行ったところ、Q を持つ個体はダイオキシンに対する反応が高く、R を持つ個体は低かった。このことから、このAhR のアミノ酸変異は、アカネズミ個体群においてダイオキシンに対する抵抗性保持個体を検出する遺伝子マーカーとして有用であると示唆された。ダイオキシン汚染地域のアカネズミ個体群において、確立された遺伝子マーカーのアリル頻度を調べたところ、非汚染地域と比較してアリル頻度に差は見られなかった。ダイオキシン類の暴露下で、Q タイプは有利性が低下し、R タイプは有利性が相対的に増加するが、その選択係数は非常に低く、世代数の経過も少ないためにアリル頻度の変化は見られなかったと考えられる。
著者
清水 嘉子 関水 しのぶ 遠藤 俊子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.261-270, 2010 (Released:2011-04-07)
参考文献数
13
被引用文献数
7 3

目 的 本研究では,臨床での汎用性を高めるため,清水,関水,遠藤他(2007)が開発した多面的な育児幸福感を捉えるCHS(Child-care Happiness Scale)の短縮版を作成し,その信頼性と妥当性の検討を行った。対象と方法 6歳以下の乳幼児を持つ母親を対象に,CHSの育児の中で感じる幸せな気持ちが生じる様々な場面についての41項目を,5段階で評価を求めた。併せてCHS短縮版の妥当性の確認のため,心理的健康を測定する「主観的幸福感」と「ベック絶望感」の回答も求めた。結 果 有効回答672名であった。短縮版の項目を選定するために,CHSの41項目の回答について因子分析を行い,「育児の喜び」,「子どもとの絆」,「夫への感謝」の3因子からなる13項目を選定した。3つの因子のそれぞれの項目の内的整合性を表すα係数は,0.77~0.86と充分な値が得られた。CHS短縮版と主観的幸福感との間には,有意な正の相関があった。一方,ベック絶望感とは,有意な負の相関があった。また,「育児の喜び」と「子どもの絆」は母親年齢が高くなると低下する傾向が,一方「夫への感謝」は末子年齢が4歳以上よりも1歳以下の母親の方が高く,また1人っ子の母親が最も低くかった。結 論 考察では,CHS短縮版とオリジナルCHSとの違いやその実用性,そして今後の問題ついて議論した。CHS短縮版は心理的健康との関連性が示唆された。CHS短縮版はコンパクトとなったので,個々の母親の育児幸福感の様子を表すプロフィールを母親自身にすぐフィードバックすることができ,母親たちが自分の子育てに対する気持ちを振り返る資料として今後役立てられることが期待できる。
著者
竹房 あつ子 小川 宏高 松岡 聡 中田 秀基 高木 浩光 佐藤三久 関口 智嗣 長嶋 雲兵
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.1827-1838, 1998-06-15
参考文献数
14

広域ネットワークの整備につれ,高性能広域分散計算を実現する試みが我々のNinfを含めていくつか行われている.しかしこのような広域計算システムの,特にWANにおいて複数のクライアントが複数のサイトに分散している状況下での性能特性に関する議論は十分になされていない.本稿では,Ninfおよび類似のシステムの実現可能性を調査するため,LAN/WAN環境でLinpack/EPベンチマークを実施し,次のような結果を得た.1)十分なバンド幅があれば,Ninfを用いた方がLocal実行するより高速になる.2)既存の高性能計算機は性能や耐久性の点で広域計算システムの運用に十分なプラットフォームである.3)ベクトル並列計算機(Cray J90)では,高性能並列ライブラリが有効利用できる,すなわち既存の高性能ライブラリの再利用性がある.4)計算主体の計算(EP)では現状の広域計算システムで十分に運用できる.5)通信主体の計算(Linpack)では,LAN環境ではサーバの稼働率が性能を支配し,WAN環境では通信性能と設置条件によって性能に与える影響に一定の傾向がある.Rapid increase in speed and availability of network of supercomputers is making high-performance global computing possible,including our Ninf system.However,critical issues regarding system performance characteristics in global computing have been little investigated,especially under multi-client,multi-site WAN settings.In order to investigate the feasibility of Ninf and similar systems,we conducted benchmarks under various LAN and WAN environments,and observed the following results:1)Given sufficient communication bandwidth,Ninf performance quickly overtakes client local performance,2)current supercomputers are sufficient platforms for supporting Ninf and similar systems in terms of performance and OS fault resiliency,3)for a vector-parallel machine (Cray J90),employing optimized dataparallel library is a better choice compared to conventional task-parallel execution employed for non-numerical data servers,4)computationally intensive tasks such as EP can readily be supported under the current Ninf infrastructure,and 5)for communication-intensive applications such as Linpack,server CPU utilization dominates LAN performance,while communication bandwidth dominates WAN performance,and furthermore,aggregate bandwidth could be sustained for multiple clients located at different Internet sites;as a result,distribution of multiple tasks to computing servers on different networks would be essential for achieving higher client-observed performance.
著者
高木 浩光 松岡 聡 中田 秀基 関口 智嗣 佐藤三久 長嶋 雲兵
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.2203-2214, 1999-05-15
参考文献数
23
被引用文献数
1

地球規模の広域分散計算システムを魅力的なものとするためには 不特定の者に対して システムの利用だけでなく応用プログラムの作成をも解放する必要があると考える. その実現のためには 安全性を保証しながら任意のプログラムを実行できる仕組みが必要である. そこで Javaのセキュリテイ機構を活用してこれを実現した 大域的並列計算環境「Ninflet」を提案する. これを用いることで 任意の計算を他人が所有する計算機上でさせることが可能となる. このシステムは 夜間利用されていない計算機を地球の裏側の昼間の地域に貸し出すといった 地球規模の共同利用メタコンピュータシステムを実現するためや また ワークステーションクラスタ上に並列処理環境を構築するためにも利用することのできるものである. 本論文では Ninfletシステムのアーキテクチャを提案するとともに 並列処理環境として利用する場合の予備的な性能評価を行う.To make global-wide distributed computing system attractive, the system should be open to an arbitrary individual not only for its usage but also for construction of wide variety of application programs. For this purpose, the system must supply a secure environment for safely executing arbitrary programs. Our proposed global computing environment "Ninflet" fulfills such a requirement by exploiting the security mechanism of the Java language, allowing computation to occur on machines not owned or administered by the individual invoking the computation. Ninflet realizes a globally-shared metacomputer which would allow "lending" of computing cycles of machines which would be otherwise unused at nights to the other side of the globe, or to simply build a parallel execution environment on a heterogeneous sets of workstation clusters. We present the system architecture of Ninflet and a preliminary performance evaluation when used as a parallel execution environment.