著者
大関 信子 水口 雅
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.506-518, 2007

【目的】本研究は,急増している海外在住日本人母子(永住者は除く)のうち日本人人口の最も多いニューヨーク(以下NY)で生活する母親を対象に異文化ストレス要因,育児ストレス要因と精神健康度を明らかにすることを目的とした.本研究の意義は,海外で妊娠・出産・子育てをする日本人母親のメンタルヘルスとその影響要因を明らかにし,ウィメンズヘルスに関わる医療従事者に新しい知見を呈することである.【方法と対象】無記名自己記入式質問紙と精神健康度調査票(GHQ30)を用いた実態調査研究であり,NY在住日本人母親200名,比較対照群として国内A市在住母親200名に質問紙を配布し郵送にて192部を回収し191部を分析対象とした.【結果】NYの母親は「海外での子育てはストレス」(53.6%)で,自分の子どもも「海外生活でストレス」(35%)を感じており,母子とも「孤立」(34.7%)し「日本から充分な支援を得ていない」(36.8%)と感じている.NYとA市とも異なる要因で精神健康度が日本国内の女性より悪く,約3人に1人は受診を要し,NY群では「家族と離れている」ことと「子どもの教育」が主な関連要因であった.2市とも9割の母親が「夫も仕事でストレス下にある」と感じており,夫の育児参加への不満と悪いメンタルヘルスとに有意な関係がみられた.上記の他,医療従事者がメンタルヘルス上注意を要する海外在住日本人母親のストレス要因として以下の項目が挙げられる;「子育て」「子どもの友達」「相談相手がいない」「リラックスする時間がない」「自分の健康」「経済」「今の生活に不満足」.【結論】海外在住中,又は一時帰国中の日本人母親はメンタルヘルス上の配慮が必要であり,異文化適応や子育て支援の他,早期に受診できるような母親への予防的介入がメンタヘルス上有効であると考える.
著者
嶺井 明子 関 啓子 遠藤 忠 岩崎 正吾 川野辺 敏 水谷 邦子 森岡 修一 福田 誠治 松永 裕二 澤野 由紀子 大谷 実 高瀬 淳 木之下 健一 タスタンベコワ クアニシ デメジャン アドレット ミソチコ グリゴリー アスカルベック クサイーノフ セリック オミルバエフ 菅野 怜子 サイダ マフカモワ 伊藤 宏典 アブドゥジャボル ラフモノフ ズバイドゥッロ ウバイドゥロエフ
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

中央アジア4カ国は独立国家樹立後、国連やユネスコ加盟を果たし、脱・社会主義、民主的法治国家の樹立をめざし教育改革に着手した。国外からの協力と援助(ユネスコ、国際援助機関、ロシアなど)、及び国内事情(多民族国家、イスラム的伝統、都市と農村の格差、経済の人材需要など)の葛藤の中で教育政策が推進されている。初等中等教育の高い就学率、教育の世俗制、多民族への配慮などソ連時代からの正の遺産を多く継承しているが、教育へ市場原理が導入され競争的環境が強化されている。高等教育ではボローニャ・プロセスに対応した改革が進んでおり、無償制は後退している。
著者
関口 真良 中島 隆 奥村 康行
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.1209-1218, 2006-04-15

いつでもどこでもネットワークにつながるユビキタス時代の到来により,ユーザはその場にある端末を利用して自分の環境へアクセスできるようになる.この際,ヘテロジーニアスな環境から一様にアプリケーションを操作できるシステムが必要である.本論文では,サーバベースコンピューティングを利用し,単一なユーザ環境を提供するための,ユビキタスな各端末で動作するシンクライアントについて述べる.特に,ユビキタス端末の中でもスペックの厳しい携帯電話上で動作するシンクライアントを実現することを目標とする.携帯電話の狭帯域・高遅延な通信特性を克服するために,UI コンポーネントベースの軽量プロトコルと,ユーザイベントの予測に基づいた投機的実行の2 つの手法を提案し,携帯電話上でも高速なレスポンスを実現できることを述べる.また,プロトタイプシステムと,その上で動く2 つのアプリケーションについても述べる.In the coming ubiquitous age, people can browse their own information space anytime and anywhere. In that age, it is important to provide the unique interface for users whenever and wherever they are. In this paper, thin client system is proposed, which provides unique interface, operates on the several terminals, and is based on Server-Based Computing technology. To achieve comfortable operation even on a cellular phone, two techniques are proposed. One is UI component based lightweight protocol. The other is speculative execution mechanism based on user event prediction. These two proposals can achieve quick response even on a cellular phone. In addition, two applications implemented on the prototyping system are described.
著者
松山 隆生 角 泰廣 山田 卓也 村瀬 勝俊 吉田 直優 尾関 豊
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.329-333, 2004-03-01
被引用文献数
4

Crohn病に合併した回腸癌の1例を経験したので報告する.症例は59歳の男性で,1999年6月20日に腹痛で前医を受診した.イレウスの診断でイレウス管造影を施行しCrohn病と診断された.その後もイレウス症状が再燃し改善しないため12月23日に回盲弁から30cmの狭窄部を切除された.切除標本の病理検査結果は中分化腺癌で断端,剥離面に癌陽性であった.追加切除目的で2000年2月14日当科に転院した.Crohn病に合併した回腸癌と診断士2月18日結腸右半切除術,膀胱壁合併切除術を施行した.初回手術の吻合部の近傍に辺縁が不明瞭な隆起性の病変を認め,病理検査結果は中分化腺癌で,治癒過程にあるCrohn病が背景粘膜に認められた.Crohn病の高度の狭窄病変に対しては腫瘍の可能性も念頭においた精査,治療が必要であると考えられた.
著者
関岡 東生
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.175-184, 2012-12-14

近年,一般市民を対象とした森林教育の充実が望まれる中,林業普及指導事業にも森林教育の実施主体として機能することが期待されつつある。林業普及指導事業では,1990年代より,普及の対象に一般市民を加えるとともに,一般市民を対象とする普及活動においては,林家や林業研究グループが直接的な実施主体として機能することが企図されてきた。本論文に際しては,こうした現状を踏まえ,まず,林業研究グループの現状を把握し,それをもとに,林業研究グループ自身が森林教育の実施主体としての活動を望むものであるのか,さらには,その機能を有するものであるのか否かを検証し,そして,この機能の充分な発揮を妨げる要因を把握することを主な目的としている。調査は,全国の全ての林業研究グループ(1,487グループ)を対象として,郵送による質問紙法によって実施した。その結果,[◯!1]多くのグループで活動が停滞しつつある。[◯!2]休眠あるいは解散を余儀なくされるグループが頻出している。[◯!3]グループの多様化が進み,活発なグループとそうでないグループの格差が増大しつつある。[◯!4]会員規模の減少などの事態を招きつつある。という林業研究グループの現状が明らかとなった。さらに,森林教育の実施については,[◯!1]既に一定のグループが実施実績を有すること,[◯!2]しかしながら,一般市民を対象とした実践のための研修等については極めて不十分な状況にあるということが確認され,林業研究グループは森林教育の実践主体として期待される存在でありながらも,実践の充実を期する上では多くの課題を有することが明らかになった。
著者
関口 榮一
出版者
東北大学
雑誌
法学 (ISSN:03855082)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.467-510, 2001-10-31
著者
関屋 実 鈴木 次郎 柿谷 芳宏
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
Chemical & pharmaceutical bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.1233-1238, 1970-06-25

Reaction for preparation of a new series of 5-acylaminooxazole-4-carboxamides has been found. 5-Acetamidooxazole-4-carboxamides were obtained by heating 2-acylamino-2-cyanoacetamides with acetic anhydride in the presence of perchloric acid. Analogous 5-form-amido derivatives were also obtained by heating the same substrates with a mixture of formic acid and acetic anhydride in the presence of hydrochloric acid. Trials for synthesis of oxazolo [5,4-d] pyrimidine-7-ol from the 5-acylaminooxazole-4-carboxamide obtained were also successful in some cases by means of heating with potassium bicarbonate solution.
著者
安藤 剛寿 関谷 好之 上原 貴夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会ソサイエティ大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1997, 1997-08-13
被引用文献数
1

ブリッジは不完全情報ゲームであり, 他人のハンドが見えないことがプレーを難しくしている. 他人のハンドを見て行うプレー (ダブルダミーとよばれる) は, 完全情報ゲームとなるので, 比較的扱いやすくなる. そこで, 見えない他人のハンドを (既知の制約条件のもとで) ランダムに生成し, それを見てダブルダミーでプレーする方法が提案されている. これは, 他人のハンドを覗いたわけではないのでフェアプレーである. 我々は, ゲームの進行中に観察した事実から, アブダクションと仮説推論により他人のハンドを推論す方法について別に報告した. ここでは, この推論によって得た制約条件のもとで, ハンドをランダムに生成する方法を提案する. このハンド生成プログラムは, 我々が開発中のコンピュータブリッジのプレーで繰返し使われる.
著者
小野塚 知二 市原 博 禹 宗? 榎 一江 木下 順 清水 克洋 関口 定一 松田 紀子 オムネス カトリーヌ オリヴァー ボビー
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、人が他の人の働き方を管理して、より効率的に成果を得るという近現代産業社会に特有の営為(すなわち労務管理)が、いかに誕生し、終焉を迎えつつあるかを、比較史の観点から明らかにした。労務管理は産業社会の初発の段階にはほとんど発生せず、自律的な集団作業に委ねられていたのに対して、そうした集団を可視化し、統御し、解体しようとする発想が19世紀末に登場するとともに、労務管理は生成した。仕事における集団の重要性の低下とともに労務管理の必要性も低下しつつある20世紀末以降の現状の歴史的な位置付けを試みた。
著者
山本 泰智 佐野 元昭 関根 松夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス
巻号頁・発行日
vol.94, no.264, pp.17-22, 1994-09-30
被引用文献数
4

レーダは、現在、航空機や航舶の安全航行上必要不可欠な装置となっている。そして、レーダの信号処理では、いかにしてクラッタを抑圧しターゲットの検出を容易にするかが問題となる。本研究では、フラクタル次元を用いて適当な閾値を得ることにより、クラッタとターゲットの分離を試みた。我々は、X-バンドレーダを用いて、強雨とシークラッタに埋もれた2隻の船を観測した。実際に観測したデータからいくつかのサンプルを取り出して様々な閾値におけるフラクタル次元の変化を観ることに依って、最適な閾値を得ることができ、雨雲とシークラッタが抑圧されターゲットである船舶を検出できた。
著者
関本 安孝
出版者
明治大学政経資料センター
雑誌
資料センターニュース
巻号頁・発行日
vol.1989, pp.16-18, 1989-07-20

中村先生がお亡くなりになって間もなく1年の月日が流れようとしているが、まだ音容日々遠しの感はない。政経事務室から計報の電話がはいったのは昨年8月2日の昼ごろであった。耳を疑い、聞き返さずにはいられなかった。まさに晴天の露震の思いで、昼食が喉を通らなかったことを思いだす。中村先生に初めてお目にかかったのは、昭和33年4月であった。私が大学院に入学し、関未代策先生の経済学史の授業に出始めたときである。中村先生は同年3月修士課程を終了し、関先生の助手になられたので、経済学史の授業にはオブザーバーとして出てこられたからである。演習の授業で使われたテキストは『国富論』(原典と訳書)であったが、中村先生の訳書の余白には注釈と思われるものが小さい字でびっしり書き込まれており、相当な勉強家に違いないというのが私の第一印象であった。