著者
田中 智夫 関野 通江 谷田 創 吉本 正
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.880-884, 1989-09-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
8

緬羊における色の識別能力のうち,特に類似色をどの程度まで識別できるかを明らかにすることを目的とした.供試羊は双子のコリデール種去勢羊を用い,正刺激側のスイッチを押すと飼料が与えられるスキナー箱を自作して2色の同時弁別実験を行なった.草の色を想定して緑を正刺激とし,黄および青から徐々に緑に近付けた計7色を負刺激としてそれぞれ識別させた.各課題とも1セッション30試行とし,20セッションまで行なった.各試行ごとにおける左右のカードの交換は乱数表に基づいて行なった.x2検定により1セッション21試行以上の正解(P<0.05)を基準とし,その基準に3回連続到達した時点でその色を識別したとみなした.結果は,黄から近付けた緑に最も近い色との対比において1頭が,また,青から近付けた緑に最も近い色との対比において2頭ともが,それぞれ識別不能と判断された他は,全ての組合せにおいて識別できるものと判断できた.以上から緬羊の色覚はかなり発達しているものと思われ,色による条件付け学習を利用した管理技術の開発の可能性が示唆された.
著者
関 由起子
出版者
日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.148-152, 2018 (Released:2018-07-31)
参考文献数
12

小児がん患者の生存率は医学の進歩により飛躍的に向上し,成人し自立した人生を歩むことが出来るようになった.しかし,入院中の子どもたちへの学校教育への支援は不十分であり,将来の自立に負の影響を及ぼしている.本論では入院中の子どもたちの学校教育の課題を踏まえた上で,病弱の特別支援学校(小・中学校のみ)がセンター的機能を用いて行った,入院中の高校生への学習支援の取り組みと課題について論じる.A特別支援学校ではこの学習支援の目的を 1.学習空白をなくす,2.心理的安定および学習意欲を高める,3.在籍高校との所属感の維持継続を図ると定め,併設するB病院および高校生の在籍校と連携し,大学生ボランティアと共同で学習支援を行った.2016年度に支援を受けた生徒9名へのアンケートや関係者への発言等を質的に分析した結果,目的に対する効果が得られたことが明らかになった.特に大学生による支援は,高校生の心の安定に対して教員からの支援では得られない大きな成果が見られた.しかし,高等学校の制度に基づいた教育支援でないため,自己学習が困難な生徒や留年が懸念される生徒には十分な支援が出来ず,また病弱特有の“自立活動”を行うことが出来なかった.大学生ボランディアの導入にも様々な課題があるため,入院中の高校生への特別支援教育の制度体制の見直しが必須である.
著者
関 弥三郎
出版者
關西大学經済學會
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4-5, pp.461-479, 1977-01-25
著者
佐藤 洋美 島田 万里江 佐藤 友美 シディグ サーナ 関根 祐子 山浦 克典 上野 光一
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第40回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.150526, 2013 (Released:2013-08-14)

【目的】医薬品の中には、対象疾病の受療率に男女差があり、男女のどちらかに偏って使用されるものが少なからず存在する。また、薬物動態や薬効・副作用の発現に性差の存在する薬物も多々存在することが報告されている。そこで、安全な医薬品の開発及び個々人に対する医薬品の適正使用に還元されることを目的として、本検討においては、申請資料概要が提出済みの既承認医薬品の中で、女性が組み込まれている臨床試験を実施したものがどの程度存在するかを調査し、解析を行った。【方法】独立行政法人医薬品医療機器総合機構(Pharmaceuticals and Medical Devices Agency: PMDA)のホームページから検索を行った。2001年4月から2011年12月に承認審査された医薬品のうち、申請資料概要が入手可能な医薬品を対象に調査し、臨床試験における各相の女性の組み込み等について解析を行った。【結果】承認審査された医薬品のうち、国内または海外における第Ⅰ相~Ⅲ相試験及び臨床薬理試験のいずれかには女性は非常に高い割合で組み込まれていた。しかし、第Ⅰ相試験や臨床薬理試験に関しては、女性の組み込み率が低かった。女性を組み込んでいても男女別のデータを区別している医薬品はさらに少なかった。一方、女性が組み込まれ、データを区別している医薬品の添付文書において、性差に関する記述が記載されている医薬品は極めて少なかった。【考察】第Ⅰ相試験や臨床薬理試験の女性の組み込み率が低いことより、薬物動態や薬力学的作用における性差の概念が浸透していないことが考えられた。また、男女のデータを区別している医薬品において、性差に臨床的意義がない場合は添付文書にその旨を記載していないことが多いが、臨床効果に性差がなかったことを記載することは医療現場における安全な医薬品適正使用に貢献すると思われる。
著者
関 周一
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.210, pp.237-259, 2018-03

本稿は、中世日本における外来技術の伝来に関して、それを可能にするための条件ないし背景や、伝来技術の移転についての試論である。第一に、国家や地域権力といった公権力が、技術の伝来に果たした役割を考察した。古代においては、律令国家が遣唐使を派遣して、選択的に技術を導入した。中世においては、国家が技術導入を主導することは少なかった。中国人海商が博多に結桶をもたらした事例のように、民間交流によって技術が伝来し、博多という都市の住民の需要に応じて、技術が受容された。一六世紀前半、戦国大名による職人の編成が進んだ。小田原北条氏が奈良や京都の職人を招き、豊後府内の大友館の周辺には職人が居住した。種子島時尭は、配下の刀鍛冶に鉄砲の製造を命じた。第二に、伝来した技術の移転について、鉄砲の事例から考察した。文之玄昌『鉄炮記』では、種子島から畿内への鉄砲伝来の経緯について、(1)鉄砲と火薬の製法・発射方法が、根来寺に伝わった段階、(2)鉄砲の生産技術が、堺に伝わった段階という二段階が描かれていた。「南蛮鉄砲」を将軍に献上した豊後府内の大友義鎮は、将軍足利義輝の所持品である鉄砲を模倣製造することを命じられ、鉄砲の生産を開始した。第三に、種子島に鉄砲生産の技術が伝来した背景となる海上交通や貿易について考察した。一六世紀前半、日向国〜種子島〜琉球との間には、活発な交流があった。種子島と琉球との貿易は、一五一〇年代ころから始まっていた。種子島忠時は、琉球国王尚真から、船一艘の荷物への課税を免除された。日向国では、島津忠朝(島津豊州家)が遣明船の警固や造船を行い、琉球と頻繁に交渉していた。油津にある臨江寺の玄永侍者は、琉球出身であった。遣明使鸞岡省佐は、琉球国の人が明で自分のことを聞いたという話を、日向国で聞いている。This article examines the conditions, or background factors, for the introduction of foreign cultures as well as the transfer of imported technology in medieval Japan.Firstly, this article analyzes the role of public authorities such as state and regional authorities in the introduction of foreign cultures. In ancient times, the ritsuryō state dispatched diplomatic missions to the Tang Dynasty and selectively brought back technology. In medieval times, however, the state did not play a leading part in the import of technology. As illustrated by an example of yuioke (hooped wooden buckets) brought to Hakata by Chinese marine traders, technology was introduced through commercial interaction and selectively accepted depending on the demand of residents in Hakata.In the early 16th century, artisans were organized by daimyō warlords. For example, the Odawara Hōjō family invited artisans from Nara and Kyōto. The Ōtomo family also had craftsmen live around their residence in Funai, Bungo. Tanegashima Tokitaka ordered his swordsmiths to produce muskets.Secondly, the transfer of imported technology is examined by using the spread of musket-making technology as an example.Teppōki (Record of the Musket), written by Bunshi Genshō, describes the transfer of musket-making technology from Tanegashima Island to the Kinai region in two stages: (1)introduction of musket-making technology and firing procedures and gunpowder formula to Negoro-ji Temple and (2) introduction of musket-making technology to Sakai.Ōtomo Yoshishige from Funai, Bungo, paid a tribute of Western muskets to Shōgun Ashikaga Yoshiteru. Ordered to produce muskets modeled after one possessed by the shōgun, Yoshishige started the production of muskets.Thirdly, marine transport and trade are examined as a background factor for the introduction of musket-making technology to Tanegashima Island. The first half of the 16th century saw active interaction among Hyūga, Ryūkyū, and Tanegashima.Trade between Tanegashima and Ryūkyū started around the 1510s. Shōshin, the King of Ryūkyū, exempted Tanegashima Tadatoki from customs duties for a ship of cargo.In Hyūga, Shimazu Tadatomo (the Hōshū branch of the Shimazu clan) had his people escort vessels sent to the Ming Dynasty as well as build ships. He also established close relationships with Ryūkyū. An attendant of Genei of Rinkō-ji Temple in Aburatsu came from Ryūkyū. Moreover, Rankō Zuisa, a Japanese envoy dispatched to the Ming Dynasty, heard in Hyūga that someone from Ryūkyū heard about him in Ming China.
著者
窪田 諭 井上 明日香 関 和彦 安室 喜弘
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
インフラメンテナンス実践研究論文集 (ISSN:2436777X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.224-232, 2023 (Released:2023-02-20)
参考文献数
17

国土交通省は,橋梁の維持管理の効率化と高度化を図るために,3次元モデルの活用を推進している.既設橋梁においては,紙図面から精確な3次元モデルを生成することは容易ではない.また,図面が残されていない橋梁も多く,点検時に図面を参照することや点検結果を図面に記録できない課題がある.本研究では,3次元モデルを維持管理に関する情報を記録するための基盤とすることを目的として,地上型レーザスキャナ,UAV搭載型カメラとMobile Mapping Systemにより実橋を計測したデータから生成した点群データにパラメトリックモデリングを適用し,3次元モデルを構築する手法を提案した.各計測機器により取得した実橋の点群データを用いて提案手法を検証し,データが一部欠損していても3次元モデルを構築できることを示した.
著者
関 雅文 朝野 和典
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.12, pp.3522-3526, 2011 (Released:2013-04-11)
参考文献数
14
被引用文献数
3

わが国では肺炎診療においてさまざまな血液検査所見が利用されているが,その中でもCRPが特に重要なマーカーとして汎用されている.CRPは肺炎の重症度とは必ずしも一致しないとされていたが,最近の院内肺炎や市中肺炎ガイドライン検証のための全国調査では,再び予後予測因子としての有用性も実証されつつある.プロカルシトニンなど他のバイオマーカーも含め,その長所短所を理解しながら,これらを実地診療に応用していくことが肝要である.
著者
関口 兼司
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.51-57, 2023-02-01 (Released:2023-02-01)

大学医学部は,大学病院として診療面で,大学院医学研究科として研究面で,医学部医学科として教育面でそれぞれコロナ禍の影響を著しく受け,少なからずデジタル化が後押しされた。診療に関してはオンライン診療体制の導入の遅れが露呈されたが,ようやく素地が整った。研究面での遅れは少なかったものの,オンライン会議を除き研究環境のDXは進んでいない。医学部教育では公的な支援(Plus DX)をきっかけに,ハイブリッド講義室の整備や,VRやメタバースの活用など新しい教育手法の開発が進められた。今後医学教育はDXを進めて,増え続ける医学関連知識の習得を効率化し,直接対話による臨床教育の価値を再認識し実践していく必要がある。
著者
小関 玲奈 山本 正太郎 羽藤 英二
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.47-58, 2022 (Released:2022-07-20)
参考文献数
34

災害常襲国である日本において,土地利用マネジメントを含めた事前復興計画の推進は急務であるが,土木史的な視座を踏まえて,危険地帯への市街地進出要因を考慮した制度設計がなされているとは言い難い.そこで本研究では,東日本大震災,西日本豪雨で被災した5都市の都市形成史と災害後の都市計画的対応を比較分析し,各都市で甚大な被害を生むに至った空間的要因とその経緯を解明することを目的とする.近代以降の交通基盤整備や土地区画整理事業等の都市基盤整備が実施された位置や規模を,分析の視点とする.次の災害への備えとしての災害防御インフラの整備と,土地の利便を逓増させる交通基盤・都市基盤整備とが連動して行われたかどうかが,災害後に減災型都市構造へ転換する分岐点となったことを明らかにした.
著者
関 行道
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.314-322, 1987-12-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
9

針治療は, 東洋医学的には生体のバランス調整をもたらすように用いなければならない。私は指向性を与えると考えられている間中式イオン誘導コード (I. P) を用いて生体三陰三陽の各交会穴 (無名穴〔間中〕, 三陰交, 三陽絡, 陽交の四穴) に応用して臨床的効果より全体調整の確証を得てここに太極療法となることを確信するにいたった。私の確立したパターンは従来の如何なる太極療法よりも優れており, 確実にその効果を各個々の80~100%にもたらし得ることもわかった。この方法を基盤として応用すると従来の阿是穴的治療もその効果を倍加してくれることも実証済である。生体の虚実に拘らず応用出来るので, 諸氏の針治力を倍加してくれるものと思う。追試をお願いする次第である。
著者
山下 耕治 赤井 伸郎 福田 健一郎 関 隆宏
出版者
財務省財務総合政策研究所
雑誌
フィナンシャル・レビュー (ISSN:09125892)
巻号頁・発行日
vol.149, pp.202-223, 2022 (Released:2023-02-10)
参考文献数
11

本稿の目的は,水道管路の老朽化や人口減少の進行は,家事用の水道料金にどのように反映されるのか,さらには,口径別か用途別かという料金体系の違いは,水道料金の格差を生む要因であるのかについて実証的に明らかにすることである。パネルデータを用いた検証から,次のようなファクト・ファインディングを得た。 第一に,老朽化した水道管路の割合が高い事業体ほど,家事用の水道料金は有意に高くはなるが,そのパラメータはゼロに近く極めて小さいことを確認した。すなわち,管路の老朽化を見据えた水道料金の設定・改定は機能していないことを示唆するものである。第二に,口径別料金体系を採用している事業体では,用途別の事業体と比較して,家事用の水道料金は高い水準にある。さらに,口径別の事業体では,老朽化した管路の割合が高いほど水道料金が高いことが確認された。すなわち,用途別の事業体では,「家事用」という区分が明示的に存在することで,家事用の水道料金を高い水準に設定・改定することへの反発を招くなど意思決定上の困難性が存在するのかも知れない。第三に,口径別料金体系を採用している事業体は収益性が高く,用途別の事業体は収益性が低いことを確認した。 地方公営企業である水道事業は,独立採算制が原則で,原価に見合った料金設定・改定が求められている。用途別の料金体系を採用することで,水の使用目的により水道料金が異なる状況は,原価に見合った料金設定が機能していないことを意味する。用途別の料金体系は,施設の老朽化や事業の収支を見据えた適正な水道料金の設定・改定を阻む制度的要因になっていると思われ,持続可能性の観点からは,口径別料金体系の導入が望まれる。
著者
周 月霞 吉武 央気 東海林 太郎 森下 祐 小河 健一郎 堀江 隆生 関谷 雄大 中村 洋平 河野 誉仁 林田 寿文
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
河川技術論文集 (ISSN:24366714)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.205-210, 2022 (Released:2022-09-01)
参考文献数
11

気候変動における想定最大規模洪水の発生及び環境の単調化を背景に,治水と環境を一体的検討できる3 次元河道設計ツールが益々重要となっている.本検討では,三重県雲出川の直轄区間を対象として,3次元河道設計ツール(iRIC-Nay2DH, EvaTRiP (Pro))を用いて治水・環境の一体的検討を試行し,その有効性の確認・留意点及び課題を抽出することを目的とした.ALB 測量データを用いて構築した水理解析モデル及び河川特徴を反映する環境評価閾値の設定は,治水,環境を一体で予測できることを確認した.また,大河川において3次元ツールを活用するにあたり,地形等の条件設定の留意点,現地調査結果の精度不足や3次元ツールに中長期視点で植生動態を考慮できない等の課題を整理した.
著者
関口 安義
出版者
文教大学
雑誌
文学部紀要 = Bulletin of The Faculty of Language and Literature (ISSN:09145975)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.120-89, 2006-03-01

東京上野の国立西洋美術館には、松方コレクションと呼ばれる西洋の絵画・彫刻・工芸品、特にフランス印象派の絵画とロダンの彫刻で知られた美術収集品がある。実業家の松方幸次郎が大正後期から昭和初期にかけて収集したものとされている。この松方コレクションは、すぐれた美術鑑賞眼を持つ成瀬正一の協力のもとになったことは、意外と知られていない。国立西洋美術館は開館当初こそ松方コレクションが成瀬正一の助力で形成されたことを小さく報じていたものの、一九九八(平成一〇)年秋の改築後は、そのいわれを記した案内板も消え、『国立西洋美術館名作選(1)』という立派なカタログの高階秀爾の「序文」にも、成瀬正一の名はない。本論では、芥川龍之介の友人成瀬正一の松方コレクションとのかかわりを中心に、同時代青年の文学と美術への関心に光を当てることとする。本論もわたしの芥川研究の一環である。