著者
佐藤 衆介 二宮 茂 山口 高弘
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

終日放牧、半日放牧=フリーストール(FS)、繋留舎飼の順で、睡眠は長く、敵対行動は少なくなった。放牧では血中オキシトシン(Oxy)が高く、N/L比やコルチゾール(Cor)は低かった。放牧地での刈取草摂食に比べて立毛草摂食で、Oxyは高く、Corは低くなった。エンリッチメント処理では、立位休息が短く、睡眠、摂食、伏臥、親和行動が多く、内臓廃棄は低く、肉質評価は高かった。ブラッシング処理後にOxyは上昇した。運動場解放により、行動は多様化し、Oxyは上昇した。
著者
小林 正彦 尾崎 正孝 嶋田 透 永田 昌男
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1997

1.カイコへの遺伝子導入の際にマーカーとして利用すべく,オモクローム色素(卵の漿膜の色素)の生成に関わる遺伝子群のひとつである,キヌレニンモノオキシゲナーゼ遺伝子を単離し,塩基配列を決定した。また,この遺伝子が第10連関群に所属することを明らかにし,同連関群に座乗する第2白卵遺伝子や無翅遺伝子との組換え価を調査した結果,この遺伝子がカイコの卵色の突然変異である第1白卵の正常遺伝子である可能性が濃厚となった。2.カイコのランダム増幅多型DNA(RAPD)や,既知の遺伝子を利用して,性染色体(Z染色体およびW染色体)や第10連関群の染色体の構造の解析を行った。3.カイコのZ染色体上の遺伝子の発現量を雌雄で比較することによって,カイコにおいては,遺伝子発現の量補正が存在しないことを明らかにするとともに,人為的に誘発した3倍体のカイコにおいても,遺伝子の量にほぼ比例した量のmRNAが転写されていること確認した。また3倍体においては,2倍体にくらべて細胞の大きさは増大するものの数は少なくなっており,各器官や虫体の大きさには2倍体と3倍体の間で差が見られないことが判明した。4.カイコ核多角体病ウイルスにおいて,多角体の形成に関する変異株や,感染状況に違いの見られる変異株について,原因遺伝子の単離および塩基配列の決定を行った。またウイルスに感染したカイコの体液に,ウイルスを不活化する効果があることを確認し,その因子およびその効果を阻害する因子について検討を行った。5.W染色体の上に転座染色体をもつカイコの限性系統から,転座染色体が再転座したものと思われる変異個体を複数分離し,それらの形質を支配する遺伝子のうち,第5連関群上のものを2つ,第6連関群上のものを1つ,第13連関群上のものを1つ,それぞれ確認した。また,それらの座位を調査した結果,常染色体の端に付着しているらしいことが示された。
著者
五十嵐 暁郎 高原 明生 太田 宏 我部 政明 古関 彰一 佐々木 寛 余 照彦 郭 洋春
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

本年度は、昨年度までの研究を継続するとともに、最終年度にあたり研究の集約と研究書および研究雑誌への論文掲載、また研究集会などにおける報告を主目的とした。各メンバーが執筆した論文については下記のリストを参照されたい。共同研究の成果は立教大学の平和・コミュニティ研究機構が出版している叢書、計3巻での執筆である。各巻の主題は、「コミュニティと平和」「移動するアジア」「ローカル・コミュニティにおける平和政策」であり、2007年度前半の刊行にむけて順調に進捗している。また、シュラーズと五十嵐は、環境問題と女性の政治参加について国会や全国の自治体の女性議員にインタビューを重ねてきた。その成果は日英両語で刊行する予定である。これらの研究にも表れているように、本研究ではグローバリゼーションの影響下における包括的安全保障の諸問題、その理論と実践を研究対象とするとともに、実践の主体として「市民」を想定しているが特徴である。すなわち、ローカルからリージョナル、グローバルの各レベルのコミュニティにおける包括的安全保障の諸問題に取り組むのは、コスモポリタンな価値観を共有し、それらを実現しようとする人々であり、NGOや自治体であるという観点からこの研究を行なってきた。市民の立場からする包括的安全保障の理論構築と実践の分析が、本研究に一貫した視点であった。
著者
藤本 強 小林 達雄 西本 豊弘 松井 章 佐川 正敏 吉田 邦夫
出版者
国学院大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

本研究は世界各地の土器の出現について、土器を発明・受容していく社会背景を解明することにその主眼を置いている。これまでの土器出現の問題は最古の土器の存在を突き止める研究に集約されていたが、本研究では地域ごとに異なる、生活の中に土器を取り入れていく人間活動の解明に努める。土器の用途は容器だけでなく、調理具・食器として、また鑑賞用や死者への副葬品、棺として使われてきた。ほかの素材に比べ土器が優れる点は、素材の粘土が入手しやすいこと、可塑性に富み自由な成形ができること、焼成後は硬く、耐火性を持つことである。衝撃を与えると粉々にでき、都合がよい素材である。これらの特性は、同じ形の土器が2つとない一方で、モチーフが特定の人間関係内で共有されることに繋がるのである。個性的な形は用途に応じてある程度のカタチを保たれながらも、様々に変化する。これらの共通性と独自性を時間軸に沿って整理し、地域毎の土器との向き合い方を研究していくことが中心となる。また、その土器保有していた集団の残した遺跡から検出された諸属性の分析から、当時の環境やそれに基づく生業活動を整理し、土器の受容形態を解明する。既存資料のデータの集成、整理分析を行ない各地域の土器出現の様相を解明してきた。世界的なデータベースの構築は困難なため東アジアを重点とした。また特定地域に絞って、土器を生活に組み込むシステムのモデル構築を試みた。一は土器自体に含まれる属性を分解し整理することにより、人間の製作物としての土器を徹底して分析し、製作モデルであり、他方は土器に付随するその他の遺物類や土器が検出された遺構・遺跡についても土器の使用痕跡と併せて解釈から土器の使用モデルの構築である。研究終了後の現在は、土器の出土状況の把握に重点をおいた発掘調査に継続的に取り組み、モデルの検証を図り、研究の位置づけを進めている。
著者
菱田 雅晴 毛里 和子 天児 慧 加藤 弘之 唐 亮 高原 明生 小嶋 華津子 朱 建榮 趙 宏偉 諏訪 一幸 阿古 智子 南 裕子 中岡 まり 加茂 具樹 中居 良文 呉 茂松 白 智立 鄭 永年 景 躍進 趙 秀梅
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

1978年末以来の中国の改革が"私利"を核とした社会システム全体の転型であることに呼応して、中国共産党自身にも"私化"傾向が著しく、組織としての私人性に加えての"私利性"は"領導核心作用"なるレトリックの正統性に深刻な影を落としている。最終的には、この党組織は、内外の環境変化から危機的様相を強め、存続そのものが危殆に瀕しているかの如く見えるものの、これら変化を所与の好機として、この世界最大の政党にして最大規模の利害集団はその存在基盤を再鋳造し、新たな存在根拠を強固なものとしつつあるものとの暫定的結論を得た。
著者
黒田 一雄 勝間 靖 岡田 亜弥 北村 友人 澤田 康幸 山田 肖子 米澤 彰純 浜野 隆 小川 啓一 澤村 信英 杉村 美紀 吉田 和浩 園田 茂人 鈴木 隆子
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究の成果は、政治経済社会のグローバリゼーションによって、従来国家(ナショナル)のレベルにおいて主な政策決定がなされてきた教育においても、世界的(グローバル)もしくは地域的(リージョナル)なレベルでの政策の立案や実施の重要性が増しつつあることを明らかにしたことである。これらの成果は、様々な国際会議や出版を通じて、日本や国際社会の国際教育交流・協力・連携の実践・政策過程に対して、実際にインプットされた。
著者
藤吉 康志 川島 正行 山崎 孝治 塚本 修 岡本 創 杉本 伸夫 三浦 和彦
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

当該研究期間、2002年と2004年の2回、北極海上に発生する雲と降水システムの総合的な観測を実施した。まず、北極海に出現する大きな気象擾乱には、背の低いタイプと背の高いタイプがあり、前者は北極海起源、後者は北太平洋起源の低気圧であるとを示した。次に、北極層雲の水平構造を調べ、対流性と層状性の構造の2つの水平パターンが存在することを見出した。この結果は、詳細な数値モデルによるシミュレーションの結果と整合的であった。また、雲レーダーを用いた観測で、雲の鉛直構造を明らかにし、雲頂高度がほぼ-45℃に存在すること、2km以下と5km付近の2高度で雲の出現頻度が高いこと、更に、北極海では雲は多層構造を示していることなどを明らかにすることができた。さらに、雲レーダーとライダーと組み合わせるアルゴリズムによって、雲粒の粒径分布も求めることができた。海洋と大気との乱流フラックスも実測し、放射収支と合わせて、北極海での熱収支を見積もることができた。また、客観解析データとレーダーデータを基に、北極域での水収支とその季節変動も見積もることができた。更に、エアロゾル-海洋-大気-雲の相互作用を新たに見出した。これは、海水温の変化と、海起源の雲核の数濃度や大気境界層内の雲の発達とが良く対応していることを観測事実として示したもので、北極海上における下層雲の形成過程が、温暖化に伴う海水温変化に影響を受けることを示した画期的な成果である。以上の成果は、国内外での学会で発表し、他国の研究者から高い評価を受けた。更に、熱帯・中緯度との観測結果との比較も行い、2012年にESA(Europe Space Agency)とJAXAとで共同で打ち上げ予定の雲観測衛星(EarthCARE)の科学的基礎データとしての重要性を強調した。
著者
園田 直子 日高 真吾 岡山 隆之 大谷 肇 増田 勝彦 青木 睦 近藤 正子 増田 勝彦 青木 睦 金山 正子 関 正純 村本 聡子 森田 恒之 大江 礼三郎
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

図書・文書資料に適用できる劣化度評価法のうち、ローリングテストはほぼ非破壊で実施でき、通常の物性試験では測定不可能なほど劣化の進んだ紙の劣化度評価に適用できる可能性を持つ。アコースティック・エミッションは最小限の破壊はあるものの、劣化度評価に有効である。極微量のサンプル量を必要とする熱分解分析法は劣化度評価だけでなく、これにより劣化機構の違いが解明できることが示唆された。紙の劣化度を考慮に入れながら強化処理法を検証した結果、セルロース誘導体による強化処理は状態の良い酸性紙に対する予防保存的措置として、ペーパースプリット法は対処療法という位置づけが明確になった。
著者
高槻 成紀 吉田 邦夫 須田 知樹 佐藤 雅俊 佐藤 喜和
出版者
麻布大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

研究の目的は野生馬タヒを自然復帰した保護区におけるギルドの解析であった。草食獣については大型のタヒとアカシカの群落選択と食性比較をおこない、タヒは草原をアカシカは森林を利用し、食物もタヒはイネ科を主体とし、アカシカはイネ科と双子葉を半々程度食べていることがわかった。最終年には当初予定していなかったユキウサギとシベリアマーモットを含めた比較ができた。肉食動物については鳥類は営巣崖値の調査が危険であるためにサンプルの確保ができず、断念した。しかしオオカミとキツネの比較はできた。ただし糞分析法を採用したため、アカギツネとコサックギツネの区別はできず、「キツネ類」としてまとめた。この分析によりオオカミはもっぱら哺乳類を食すが、キツネは夏は昆虫をよく食すことがわかった。またオオカミは保護区外の家畜をよく採食していることがわかり、保全上の問題が浮上した。タヒ個体数の順調な増加は保護区の設立目的からして歓迎されているが、保護区を生態系保全という視点でみた場合、草食獣による影響が強くなりつつある。そこで森林群落での影響調査を実施したところ、構成樹木の非常に高い枯死率、ディア・ラインの形成、若木の生長阻害が認められた。資源利用とこれらの結果から、タヒ・草原系とアカシカ・森林系の関係において、タヒ・草原系には有利に葉たらしているが、アカシカ・森林系が縮小・退行していることが懸念される。全体としては初期の目的をほぼ達成することができたが、食肉鳥類が分析できなかったこと、肉食獣の同定に限界があった点は課題を残した。これらの成果は順次論文として公表する予定であり、資源利用の基礎となるバイオマス推定についてはすでに投稿中であり、食性などは論文準備中である。
著者
大口 敬 桑原 雅夫 鹿田 成則 片倉 正彦 吉井 稔雄 赤羽 弘和
出版者
東京都立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2001

自動車の運転者の認知・挙動には様々な場面が想定されるが,本研究では道路における安全性評価・効率性評価(交通容量)に関連した道路線形・道路構造・周辺車両との関係性における速度感,距離感,および案内標識などの視認性を対象とする.こうした運転特性を分析・検討するために,これまで困難とされてきた室内実験手法による実証データの収集を可能とする室内実験システムを確立すること,その場合の実際の道路交通環境下における挙動との違い,相似関係を明確化し,実験結果の評価方法を確立することを目的としている.また,こうした実験による実証的検討を通して,運転者の認知・判断・挙動の特性を「リスク認知」という観点から整理・統合することを試みる.今年度は,東京都立大学に既設の動景観画像室内実験装置を用いて,交通事故が多発しているカーブ道路区間を対象に,熟練運転者と初心運転者によるカーブ走行特性が異なることを利用して,道路上の運転者からの模擬視界を生成する3次元CGモデルにより,交通安全施設の有無,施設のタイプ(ポストコーン,デリニエータ),設置形態と運用形態(高さ,設置頻度)の異なる条件を設定し,交通安全施設設置効果の実験的検証を行った.また,交差点信号機の下などによく設置される補助標識である名称標識に代えて,記号や色などによる認知しやすい補助標識と案内システムの併用による交差点案内システムの有効性検証の実験も行った.これらの実験を通して,視認開始距離における画像を表示するには,汎用のCG画像では画素の精度により限界があること,速度感の認知にはまだ課題が残されているものの,室内実験システムにより,こうしたドライバの認知挙動実験が一定の範囲で可能であることを明らかにした.
著者
玉浦 裕 阿部 正紀 北本 仁孝 金子 宏 長谷川 紀子
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

集光太陽ビームをセラミックスに照射し1300-1600℃に急速加熱すると、特殊な反応中間体を経由し、空気酸素分圧下で酸素放出反応が進行することを世界で初めて明らかにし、この反応で生成したセラミックス還元体が水を分解(水素生成過程)することを見出した(特開2008-094636)。これを用いるソーラー水素生産の実用化に向け、ロータリー式太陽反応炉およびビームダウン式集光システムの開発を行った。
著者
遠藤 泰生 荒木 純子 増井 志津代 中野 勝郎 松原 宏之 平井 康大 山田 史郎 佐々木 弘通 田辺 千景 森 丈夫 矢口 祐人 高橋 均 橋川 健竜 岡山 裕
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

領土の拡大と大量移民の流入を規定条件に建国後の国民構成が多元性を増したアメリカ合衆国においては、社会文化的に様々の背景を持つ新たな国民を公民に束ねる公共規範の必要性が高まり、政治・宗教・経済・ジェンダーなどの植民地時代以来の社会諸規範が、汎用性を高める方向にその内実を変えた。18世紀と19世紀を架橋するそうした新たな視野から、合衆国における市民社会涵養の歴史を研究する必要性が強調されねばならない。
著者
新井 洋由 井上 貴雄 高根沢 康一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

生体膜を構成するリン脂質には炭素数や二重結合の違いにより様々な脂肪酸鎖が結合している。このような「リン脂質脂肪酸鎖の多様性と非対称性」は昔から良く知られているが、その形成機構や生理的意義はほとんど明らかになっておらず、生体膜リン脂質分野における大きな課題である。我々は、遺伝学的解析が容易な線虫C. elegansを用いて、リン脂質脂肪酸鎖の多様性・非対称性に関与すると考えられる新規脂質関連遺伝子について、網羅的に欠損変異体を作製し、その生理機能ならびに反応機構を解析を行った。主な研究成果は以下のとおりである。・細胞内型ホスホリパーゼA1の機能解析を行い、細胞内型ホスホリパーゼA1が細胞内小胞輸送系(特に逆行輸送系)を介し、上皮系細胞の非対称分裂を制御することを見出した(非対称分裂に関わるβカテニンの細胞内非対称局在を制御)。・上皮細胞に選択的に発現するホスホリパーゼPAF-AH(II)についてノックアウトマウスを用いた解析を行い、PAF-AH(II)が酸素ストレスによろて障害を受けたリン脂質を代謝し、酸化ストレス防御因子として機能することを個体レベルで示した。・線虫をモデルとした遺伝学的手法により、細胞内シグナル伝達において極めて重要な役割を持つホスファチジルイノシトール(PI)に高度不飽和脂肪酸を導入する遺伝子mboa-7を同定した。今後、mboa-7/LPIATの解析により、PIの脂肪酸鎖の構造がPIの関与する生命現象にどのように寄与するか、といった生体膜脂肪酸分子種の本質に初めて迫ることが可能となる。
著者
小峯 裕己 谷合 哲行 木村 洋
出版者
千葉工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

化学物質による室内空気汚染に関する対策を講じる際に、竣工直後における室内の化学物質濃度、放散量の経時変化、濃度の減衰時間などの予測が不可欠である。本研究では、小形チャンバー法を用いて、環境因子の変化する実環境を考慮した建材からの化学物質放散量推定式を明らかにし、化学物質放散量測定値に基づく室内濃度予測手法を提案することを目的とする。本研究成果は以下の通りである。1)HCHOを放散する木質建材が単体で存在する条件下において、建材設置量、温湿度、換気量が異なる実環境を想定した模型実験を行い、小形チャンバー法を用いたHCHO放散速度推定式に基づく、HCHO気中濃度予測式の妥当性を検証した。2)種類、HCHO発散等級の異なる木質建材が混在する条件下に置いて、温湿度、N/L値(換気回数/試料負荷率)を系統的に変化させ、単体のHCHO放散速度推定値に基づいた室内HCHO濃度予測式の妥当性を検証した。3)種類、HCHO発散等級の異なる木質建材が混在し、温湿度変動が存在する条件下において、HCHO気中濃度予測式の妥当性を、実環境における長期間暴露試験により検証した。4)塗料から放散されるトルエン放散速度測定値に基づいて、環境因子がトルエン濃度の経時変化に与える影響について明らかにした。内部拡散支配型放散過程においては、温度の影響が少ないが、蒸散支配型放散過程においては温度の影響が大きいことが明らかにされた。また、トルエン濃度の減衰機関は二成分指数間モデルを用いて予測できることを示した。5)HCHOを放散する建材とトルエンを放散する塗料が混在する条件下において、HCHO、及びトルエンの放散速度に与える相互影響を明らかにし、それぞれの化学物質の期中濃度予測に与える影響を明らかにした。塗料からのトルエンの放散挙動は塗膜への吸着・再放散があるために、設置後5日程度は影響があることを明らかにした。竣工直後で塗膜が乾き切っていない状況でHCHO濃度の測定を実施すると、危険側の評価をしてしまう可能性がある。
著者
大成 博文 田頭 昭二
出版者
徳山工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

マイクロ・ナノバブル技術を用いて、大量微細生物の超高速粉砕・水処理システムの開発研究において、以下の主要な成果を得た。(1)マイクロバブルは、収縮して「マイクロナノバブル」へと変化する。その際、マイクロバブル内から気泡が噴出することによって気泡が動揺しながら上昇する。(2)マイクロバブルの収縮に伴って、負の電位が増加する。とくに、気泡サイズが40μmよりも小さくなると急速に負電位が増加し、そのピークは10〜30μm前後である。(3)マイクロバブルは収縮の最終過程で光熱反応を起こし、自発光する。その発光色は青白いことから、相当の高温で発光してしることが推測された。(4)マイクロバブルを生物に供給することによって、生物の体内では特別の生理活性作用が生まれる。この活性によって、生物の斃死防止、成長促進、抗加齢が可能となる。また、微生物においては、大量の増殖やその制御が可能となる。さらに、マイクロバブルの濃度を制御することによって、細菌の除去や洗浄、殺菌が可能となった。(5)マイクロバブルの発生装置を改良することによって、大量微細生物を瞬時に粉砕・切断することが可能となった。(6)マイクロバブルを排水内に供給することによって、排水処理槽内の微生物を約2倍に増加させることによって、アンモニア性窒素の硝化を大幅に促進させることが可能となった。以上の成果を踏まえ、マイクロバブル技術を利用した各種水処理システムの方法を新たに開発した。
著者
伊藤 鉄也 伊井 春樹 鈴木 淳 入口 敦志 荒木 浩 海野 圭介 スティーヴン・G ネルソン 伊藤 鉄也
出版者
国文学研究資料館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本課題は、日本文学に関する情報を所有する海外の機関や研究者を確認し、どのような情報が収集・利用されているか、またはどのようなテーマで研究がなされているかを解明することにある。そのために、日本文学や文化に特化したものを集積・分析し、諸外国の研究者相互の連携を推進し、情報網を広げ、質の高い研究情報を蓄積し、国内外の研究者へ提供してきた。国際集会の開催、刊行物「日本文学研究ジャーナル」第1~4号の作成はその成果の具体的な証である。
著者
成瀬 恵治 毛利 聡 中村 一文 竹居 孝二 山田 浩司 入部 玄太郎 片野坂 友紀
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

生体内では至るところで、重力・伸展や剪断応力といった物理的な機械刺激が生じている。細胞の機械受容システムを介して伝達されるこのような刺激は、単に生体にとって不利益なストレスではなく、発生過程や臓器機能発現に不可欠な生体情報であることが次第に明らかになってきた。本研究では、独自のメカニカルストレス負荷システムおよび評価系の開発を通して生体での機械受容環境を再現し、生体の巧みなメカニカルストレス応答機構を明らかにする。
著者
大野 茂男 平井 秀一 鈴木 厚 秋本 和憲 山下 暁朗 廣瀬 智威 中谷 雅明 佐々木 和教
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

上皮細胞を初めとする様々な細胞の極性制御の要として働いている普遍的な細胞極性シグナル経路、PAR-aPKC 系の新規構成員として ASPP2 を発見し、細胞極性の制御と細胞死の制御の間の関係を示唆した。PAR-aPKC 系の新たな制御機構として、aPKC 結合タンパク質 KIBRA が aPKCのキナーゼ活性を基質と競合的に抑制し Lgl とは異なる機構で aPKC を通じたアピカル膜ドメイン形成のプロセスを特異的に抑制することを見いだした。
著者
冨山 明男 細川 茂雄 宋 明良
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

沸騰水型原子炉燃料集合体設計における実規模試験依存度低減に資する流動評価手法として, (a)ロッドバンドル及びロッド支持体(スペーサ)構造を適正に考慮し, かつ目的に応じた適正な空間分解能で気泡流動を評価できるハイブリッド計算技術、及び(b)ロッド間隙部形状及びスペーサ構造が気泡挙動と液相速度場に及ぼす影響を正確に測定し, ハイブリッド計算遂行に必要な実験相関式を構築するための複雑流路内気泡・液相流動実験技術を開発するとともに, (c)この2種の技術を融合統合化したロッドバンドル内スペーサ近傍気泡流動評価技術を開発した.