著者
井鷺 裕司 村上 哲明 加藤 英寿 安部 哲人 藤井 紀行
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

生物多様性ホットスポットに生育する絶滅危惧植物を対象に、野生に生育する全個体の植物体の生育場所、繁殖状況、遺伝子型を明らかにすることで、絶滅危惧植物の状況を正しく評価し、適切な保全策を構築することを目的とした。本研究のアプローチにより、絶滅危惧種では、現存する個体数よりも遺伝的に評価した個体数が著しく少ない場合が多いことが明らかになった。また,種を構成する局所集団ごとに遺伝的分化しているため、それぞれを個別の保全対象とすべき種や、更新個体の遺伝解析により未知の繁殖個体の存在が明らかになった種など、生物保全上有用な情報が得られた。
著者
嶋田 義仁 砂野 幸稔 鷹木 恵子 今村 薫 菊地 滋夫 縄田 浩志
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

イスラーム圏アフリカにおける白色系民族と黒色系民族の紛争と共存のメカニズムを総合的に地域比較するなかで,宗教と民族の関係を宗教人類学的に考察することが本研究の全体構想であった。本研究期間中に総計41回の海外調査を24ヵ国において実施した。また,4回の国際ワークショップを開催して国際的な研究者ネットワークの構築を図るとともに,4巻の『イスラーム圏アフリカ論集』を発刊して西アフリカ,東アフリカ,北アフリカそれぞれのイスラーム圏を総合的に比較研究した。イスラーム圏アフリカにおける白色系民族と黒色系民族の紛争と共存のメカニズムの宗教人類学的論考をまとめた『イスラーム圏アフリカ論集V』を,電子ジャーナルとして現在編集中である。
著者
飯塚 正人 大塚 和夫 黒木 英充 酒井 啓子 近藤 信彰 床呂 郁哉 中田 考 新井 和広 山岸 智子
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

ムスリム(イスラーム教徒)を反米武装闘争(「テロ」)に駆り立ててきた/いる,ほとんど唯一の要因と思われる「イスラームフォビア(ムスリムへの迫害・攻撃)」意識の広範な浸透の実態とその要因,また「イスラームフォビア」として認識される具体的な事例は何かを地域毎に現地調査した。その結果,パレスチナ問題をはじめとする中東での紛争・戦争が世界中のムスリムに共通の被害者意識を与えていること,それゆえに反米武装闘争を自衛の戦いとして支持する者が多く,反イスラエル武装闘争を支持する者に至っては依然増加を続ける気配であることが明らかになった。
著者
白尾 智明 関野 祐子 安田 浩樹
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

初代培養神経細胞系と遺伝子変異動物を用いて、神経細胞樹状突起スパイン内のアクチン結合タンパクの変化はシナプス機能変化に直接結びつくことを明らかとした。次いで、アクチン結合タンパクのスパイン内集積動態を測定することにより、グルタミン酸作動精神系繊維は、グルタミン酸受容体の二つのサブタイプを使って、両方向性にアクチン結合タンパクのスパイン内集積を制御していることが明らかとなった。
著者
田中 博 山崎 孝治 伊藤 久徳 森 厚 向川 均 山根 省三
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

近年の異常気象や地球温暖化の研究において、北極振動が特に注目されている。初年度の平成18年度には、2006年7月8-9日に第1回北極振動研究集会を筑波大学で開催し、約30名の参加を集めて最新の情報提供や活発な議論が行われた。研究代表者は2007年2月19-20日にアラスカ大学で開催された第7回極域気候変動に関する国際会議(GCCA-7)に主催者のひとりとして参加し、北極振動研究に関するレビュー講演を行った。2007年3月2-3日には筑波大学で第2回北極振動研究会を開催し、約40名の参加者を集めて、研究成果報告と今後の研究計画について議論した。2年目の平成19年度には、5月に開始された地球惑星科学連合大会で「北極域の科学」ユニオンセッションを企画して、研究成果報告を行った。そして日本気象学会の査読付き国際学術誌である気象集誌の12月号に、北極振動研究の成果を集めた「北極振動特集号」を企画し、本研究実績のまとめとして12編の論文およびノートが発刊された。北極振動は、任意の定常外力に共鳴して起こる大気大循環の力学的な特異固有モードとして理解される一方で、それを励起する太平洋と大西洋のストームトラックの活動が互いに独立に大振幅でNAOとNPOのテレコネクションを励起するため、統計的な見かけのモードに見えるという理解に至った。
著者
仁木 和久
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

記憶、認知に重要な役割を果たす脳基盤として大脳新皮質が注目されがちであるが、本研究では大脳新皮質とも連携して働く海馬や扁桃体等の下部脳領域に注目し、全脳にわたる連携活動の解明を目指した脳イメージング研究を展開した。記憶・認知に関与する感情の役割等を解明するなど 7 本の国際論文誌にその研究成果を発表した。東日本大震による損傷によりMRI-EEG バインディング同時計測系構築が破損したが、平行開発した DTI(拡散テンソルイメージング)を用いた神経繊維走行解析と脳機能活動や心理物理量との関連性の解析が Brain Connectome 解析として近年注目される研究の一手法として注目を集めるなど、本研究が目指した大脳新皮質と海馬、扁桃体等の下部脳領域に渡る連係動作の解析手法を構築できた。
著者
加藤 泰史 青山 治城 入江 幸男 大橋 容一郎 篠澤 和久 直江 清隆 舟場 保之 別所 良美 松井 佳子 松田 純 宮島 光志 村松 聡 山内 廣隆 山田 秀 高田 純 RIESSLAND Andreas
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本研究の研究成果としては、(1)現代価値論の観点から「尊厳」概念を絶対的価値として基礎づけることの可能性と重要性が明らかになったこと、(2)ドイツの「人間の尊厳」理解として義務論的なハーバマスにせよ(人間の尊厳/人間の生命の尊厳)、功利主義的なビルンバッハーにしても(規範的に強い意味での尊厳/規範的に弱い意味での尊厳)、「尊厳」概念は二重構造を持っており、それが一般的に妥当性を持つとして広く受け入れられていること、しかしまた同時に(3)ドイツの「尊厳」理解において身体性を重視する議論が新たに提示され始めており、この点で従来のパラダイムが転換する可能性があること、それに対して(4)日本の「尊厳」概念史がほとんど研究されていないことが判明し、本研究でも研究の一環としてそれに取り組み、一定程度明らかになったが、その根柢には「生命の尊厳」という理解が成立しており、それはきわめて密接に身体性と関連していて、この点で(3)の論点と哲学的に関連づけることが可能であり今後の重要な哲学的課題になること、(5)「人間の尊厳」概念から「人権」概念を基礎づけることの重要性が明らかになったこと、(6)近代ヨーロッパの「尊厳」概念成立に際してヨーロッパの外部からの影響が考えられうることなどを指摘できる。これらの研究成果は、まずは『ドイツ応用倫理学研究』に掲載して公表したが(第2号まで公刊済み)、第一年度の平成19年度以降各年度に開催されたワークショップやシンポジウムの研究発表をもとにして論文集を編纂して差しあたりドイツで公刊予定(たとえば、その内のひとつとして、Gerhard Schonrich/Yasushi Kato (Hgg.), Wurde als Wert, mentis Verlagが編集作業中である)である。そして、これらの論文集の翻訳は日本でも刊行を予定している。また、特に(4)に関しては、加藤/松井がこの研究プロジェクトを代表してドイツのビーレフェルト大学で開催されたワークショップ「尊厳-経験的・文化的・規範的次元」において「Bioethics in modern Japan: The case for “Dignity of life"」というテーマで研究発表した。さらに研究成果の一部は最終年度の平成22年度の終わりにNHK文化センター名古屋教室の協力を得て市民講座「現代倫理・「人間の尊厳」を考える」で江湖に還元することもできた。
著者
清水 信義 浅川 修一 清水 厚志 佐々木 貴史
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

ヒトゲノム解読によって30億のDNA塩基配列から23,000余の遺伝子が同定された。しかし、機能が判明あるいは推定できるものは6割程度で残り4割の機能は不明である。ゲノムに潜む遺伝子の探索は未完成であくまでも暫定的であり、それらの中には機能を全く推定できない遺伝子が、我々の厳密な解析から1,000個以上存在することが判明した。申請者はこれら顔の見えない遺伝子を「カオナシ遺伝子」と命名しゲノムワイドに探索して300個を厳選し、ゲノム解読研究で培ったノウハウの総力を結集して、ゲノム構造の決定・mRNAトランスクリプトの確認・タンパク質構造の推定・比較ゲノム解析などを行った。特に、機能解析のきっかけを得るためにメダカをモデル生物として選択し、メダカWGSデータからメダカ型カオナシ遺伝子を同定した。メダカの発生過程は40ステージに分類されている。各ステージ毎に受精卵を100~1000個採取し合成したcDNAを用いて発生過程におけるメダカカオナシ遺伝子の発現量の変化を観察した。その後にメダカの胚発生をモルフォリノアンチセンスオリゴでノックダウンし形態形成の異常を観察した。その結果、現在までに130個のメダカ型カオナシ遺伝子に関して発生過程における遺伝子発現パターンおよび形態形成への影響などを分類することができた。このうち、60個の遺伝子に関しては発生過程で形態形成異常が確認された。
著者
清水 信義 浅川 修一 清水 厚志 佐々木 貴史 楊 浩 塩浜 愛子 小島 サビヌ和子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

カオナシ遺伝子を統合的に解析するために、慶應ヒト遺伝子データベースを構築し、メダカカオナシ遺伝子のノックダウン解析結果や初期胚における発現パターンによる検索を可能とした。さらにヒトカオナシ遺伝子を培養細胞で強制発現させた細胞内局在解析や、高効率なメダカ発現コンストラクトの開発を行った。タンパク質コード遺伝子のみならず小分子カオナシRNAを対象としてシーケンシングと解析を行った。
著者
森岡 清志 大谷 信介 松本 康 園部 雅久 金子 勇 直井 道子 中尾 啓子
出版者
東京都立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1994

本研究の目的は、第一に都市度とパーソナルネットワークの関連を都市間比較を通して明らかにすること、第二に、都市度の他に、階層性、家族的特性などのパーソナルネットワークへの効果も明らかにすること、第三に、「それほど親しくない人びと」とのネットワークを年賀状調査を中心とする事例分析をもとに捉え、機関や集団の存在を明らかにしながら、パーソナルネットワークと都市社会構造との連結点を具体的に把握することの三点である。第一と第二の研究目的に従って、平成6年度と平成7年度には、仮説の検討、調査票の作製、全国7地区における実査、調査票の点検、エラーチェックなどをおこなった。調査地は東京都文京区、調布市、福岡市中央区、西区、新潟市、富士市、松江市であり、各地点300サンプルを選挙人名簿から抽出した。回収率は全体で約48%であった。詳細は報告書第2章に記載されている。また、この調査結果の解析と知見については報告書の第3章〜第11章にまとめられている。平成8年度は、上記調査の集計分析の他、第三の研究目的を達成するべく年賀状調査を実施した。現在この事例分析の知見を整理・検討しているところである。調査票にもとづく大規模調査の結果は、都市度と友人ネットワークとに先行研究で示されたようなストレートな相関を見出しえないものとなった。都市度の高低は、遠距離に居住する友人数の大小と有意な相関を示し、むしろ親族ネットワークと都市度との間に興味深い関連が見出されるものとなった。このような結果の差異は、親しい親族数、友人数の聴き方のちがいによっても生じたものと思われる。
著者
神林 恒道 渡辺 裕 上倉 庸敬 大橋 良介 三浦 信一郎 森谷 宇一 木村 和実 高梨 友宏
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

この「三つの世紀末」という基盤研究のタイトルから連想されるのは、十九世紀末の、いわゆる「世紀末」と呼ばれた時代の暗く停滞したム-ドかもしれない。われわれはいままさに「二十世紀末」を生きている。そこからややもすれば「世紀末」という言葉に引きずられて、われわれの時代をこれと同調させてしまうところがあるのではなかろうか。しかしまた実際に、六十年代頃から現在に及ぶ芸術の動きを見やるとき、そこには芸術それ自体としてもはや新たなものは生み出しえない一種の先詰まりの状況が指摘されもする。といってかつての「世紀末」のような暗さはあまり感じられない。ダント-の「プル-ラリズム」、つまり「何でもあり」という言葉が端的に示すように、その気分は案外あっけらかんとしたものだと言えなくもない。今日の「何でもあり」の情況の反対の極に位置づけられるものが、かつて「ポスト・モダン」という視点から反省的に眺められた「芸術のモダニズム」の展開であろう。ところで「ポスト・モダン」という言い方は、いってみれば形容矛盾である。なぜならばmodernの本来の語義であるmodoとは、「現在、ただ今」を意味するものだからである。形容矛盾でないとすれば、この言葉のよって立つ視点は、「モダン(近代)」を過ぎ去ったひとつの歴史的時代として捉えているということになる。それでは過去にさかのぼって、いったいどこに「芸術における近代」の始まりなり起点を求めたらよいのだろうか。そこから浮かび上がってくるのが、「十八世紀末」のロマン主義と呼ばれた芸術の動向である。ロマン主義者たちが掲げた理念として、「新しい神話」の創造というものがある。そこにはエポックメイキングな時代として自覚された「近代」に相応しい芸術の創造へ向けての期待が込められている。この時代の気分は、「世紀末」の暗さとは対照的であるとも言える。つまりこの「三つの世紀末」という比較研究を貫く全体的テーマは、「芸術における近代」」の意味の問い直しにあったのである。
著者
長谷川 信美 西脇 亜也 井戸田 幸子 福田 明 樋口 広芳 園田 立信
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

中国青海省東チベット高原北部と南部の,土地の利用・管理方式と繁殖方式の異なる2つの地域において,ヤクの行動生態とその放牧地植生および生態系物質循環に与える影響を比較研究した。北部は青海省の優良放牧モデル地区で,南部は放牧地の荒廃と砂漠化の進行が懸念されている地域である。野草地の生態系を保全して劣化・砂漠化を防ぎ,ヤクの生産性を維持し,持続的に放牧利用するために必要な基礎的データを得ることを本研究の目的とした。平成15年8月より平成18年8月まで,玉樹蔵族自治州玉樹県で3回,海北蔵族自治州門源回族自治県で4回計7回の調査・実験を行った。成雌ヤクの3日間行動観察と排泄行動記録・排糞量測定,GPS受信機による行動軌跡記録,採食行動調査と採食植物観察,草地植生調査,糞・植物・土壌サンプル採取と成分分析を行った。4年間の研究の結果,南部は北部と比較し,寒季の反芻時間が短く,ヤクの糞排泄成分と量から推定した生態系物質循環量はほぼ1/2と低く,ヤクは嗜好性の低い植物種さえも採食しており,過放牧となっていることが明かとなった。現状のまま放牧を続けていけば,今後植生はさらに劣化し,裸地化・砂漠化することが懸念された。しかし,生態系が良好に保たれているとされていた南部においても,現在行われている暖寒2季輪換放牧方式では,特に暖季放牧地で植生の劣化が起きており,ヤクは繁殖に必要な栄養を十分には摂取できていず,現在の方式に代わる新たな放牧方式を今後検討する必要があることが明らかとなった。
著者
福来 正孝 岡村 定矩 安田 直樹 市川 伸一 土居 守 須藤 靖 市川 隆
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

SDSSプロヂェクトは1993年よりその建設が開始され、1998/9年に觀測機材が完成2000年春より探査觀測を始め、2005年6月の末を以って當初の觀測計画を終へた。撮像は予定領域の115%、分光は76%である。分光の達成率が稍低いのは2004年2005年冬春期の天候不良の為である。SDSSでは欠損領域を埋める事を第一の目的とし、當計画遂行中其有効性が確認された二つの新プロヂェクト(1)銀河内の星の分布の觀測に據る銀河形状の研究、(2)超新星の探査を加へてSDSS-IIとして三年間の觀測延長を行ふ事を決定し、その觀測は2005年7月より始まっている。現在迄に一般に公開されているデータは9600平方度の天域に存在する2億9000万個の天體(約半数が銀河)及127万銀河のスペクトルである。本科研費はSDSS當初計画觀測の中、後期及び追加觀測の期間に當る。SDSSは現在迄に當初目論まれた學門的目標を十分に満足のいく程度に達成し、本觀測に據って得られたデータベースは今世紀中に亘り用ひられるものと見込まれる。サイエンスの解析は部分サンプルを用ひ有意に出来ると判断されたものから爲され科研費チームメンバーによる論文は160編とされ尚科研費研究期間中では108編の論文が出版された。被引用回數は合計16000回に上り非常に高いと考へられる。SDSSに據って探られた天體物理學は宇宙論、大規模構造クエーサによる高赤方偏移宇宙、銀河物理學、星特に低温星の物理學、太陽系内小惑星の探索等夛岐に及ぶが、特に宇宙の發展と原状を記述する宇宙論を定量的に確証したことはプロヂェクト最大の成果と云ってよい。更に、SDSSで見出されてた或はこの様な探査の有効性が確認された幾つかの現象が今後の大規模觀測計画の指針、或は目標を與へるものとなったことは我々にとって十分満足のいく事である。
著者
西方 篤
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

耐候性鋼製のくし型プローブ電極を試作し、新潟市の苗引橋と福山市の両国橋(いずれも耐候性鋼橋梁)において、耐候性鋼の腐食モニタリングを2年間実施した。低周波数のインピーダンスの逆数1/Z_<10mH>の平均値は、腐食減量から得られた平均腐食速度Icorrと極めて高い相関を示し、相関式(Icorr/μAcm^<-2>)=17. 7×(Z10mHz/Ωcm^2)^<-0. 16>を得た。この相関式によりモニタリングデータから直接平均腐食速度を推定することが可能となった。
著者
二村 雄次 佐野 力 安部 哲也 梛野 正人 横山 幸浩 國料 俊男 千賀 威 西尾 秀樹
出版者
愛知県がんセンター(研究所)
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

大腸癌皮下発癌モデルに対してNek2 siRNAとS1併用投与群はNek2 siRNA単独投与群より有効であった。Nek2 siRNAとCDDP併用投与群においても有効であり、相加効果であった。ラットでのNek2 siRNAの血中移行は局所投与後15minで最高となり60minでほぼ消失していた。またNek2 siRNAの毒性試験より無毒性量(NOAEL : No Obeserved Adverse Effect Levels)は3.7(mg/kg)で、Nek2 siRNAの最大推奨初期投与量(MRSD : Maximum Recommended Starting Dose)は0.0285(mg/kg)であった。
著者
滝沢 茂 大槻 憲四郎 宮崎 修一 田中 秀実 西川 修 松井 智彰 八田 珠朗 興野 純 小澤 佳奈
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

地震断層を引き起こした地殻の歪みエネルギーは主に粉砕粒子の非晶質化に費やされると予測して、粉砕粒子内の非晶質化を示し溶解熱測定を行った。この溶解熱測定はフッカ水素酸液用の試料カプセの開発に成功した。このカプセルは国内外を通じて例がない。特殊なカプセルで溶解熱を測定した結果、石英結晶をアモルファス化するのに要した熱量は約2000J/gであり、これをエネルギー量に換算すると1011ergオーダーとなる。この新知見に基づくと地震断層時の破壊エネルギーは表面エネルギー、すべり摩擦熱エネルギーおよび波動エネルギーとして分配され、主に消費されるエネルギーはすべり摩擦熱エネルギーと波動エネルギーと考えらているが、本研究課題の結論は最も消費エネルギーの大きいのは、結晶内消費エネルギーで、この事は新知見で物質地震学の新展開となる。
著者
谷本 正幸 藤井 俊彰 圓道 知博
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、3次元空間情報を「光線」によって表現し、映像システムを構成する入力系・処理系・表示系を光線ベースで統一的に捉え直すことによって画像工学の体系を再構築し、新しい学理である光線画像工学の創成することを目指したものである。このためには、入力・処理・表示の全てに関して光線ベースで取り扱う技術が必要となる。このうち、表示に関しては光線を再現する方式のディスプレイが提案されてきており、我々の研究室でも光線空間データを実際の光線として再現することに既に成功している。このため本研究では主に光線空間の取得(入力)および処理に関する基盤技術の確立に注力した。光線空間の取得については、マルチカメラによる光線情報の取得を基盤技術と捉え、マルチカメラシステムを高効率・高精度で構築するための位置合わせの手法と、得られた多視点画像群を補正し、光線空間を構築する手法を開発した。これらにより、マルチカメラシステムを用いて光線空間を構築する基礎技術を確立した。光線べースの画像信号処理としては、光線空間の信号処理によって、シーンの分離および合成と、光学現象の再現を含む特殊映像効果の生成を実現した。また、光線情報の通信に必要な情報圧縮・符号化についても多視点画像間の類似性を利用することにより従来の動画像圧縮を超える効率を実現し、光線情報の圧縮符号化の基礎を確立した。さらに、3次元画像情報を光波面として記述するホログラムと光線空間との相互変換を実現した。ホログラムは究極の3次元画像表示方式であると言われており、光波とその伝播という物理現象に基づく記述方式である。このホログラムと光線空間とが理論的に等価な情報を表現し、相互に変換可能であることが示されたことは、光線空間が入出力方式に依らない普遍的な3次元空間情報の記述法であることを裏付けただけでなく、これに物理的な意味を与えた点においても画期的である。
著者
近藤 勝彦 日詰 雅博 小西 達夫 川上 昭吾 船本 常男 岩科 司
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

近藤勝彦が代表のグループは、今まで27年間にわたって中華人民共和国中国科学院植物研究所系統与進化植物学国家重点実験室(北京市、香山)を中心とした洪徳元教授(中国科学アカデミー会員)グループをカウンターパートとして、日本と中国に共通して分布する植物種を分析して日本フロラの起源、種間関係ならびに絶滅危惧種の保全、異なった場所での塩基配列の変化、多様性、構成関連種の系統関係、動態、デモグラフィー、染色体核形態の変化などをさぐってきた。さらに2000年から、ロシア連邦を研究対象に加え、ユーラシア大陸ウラル山脈以東の構成植物に研究範囲を拡大し、ロシア科学アカデミー会員(A.A.Korobkov,P.V.Kulikov,M.S.Knyasev,A.Gontcharove,V.P.Verkholat,A.Shmakov),モスクワ国立大学(P.Zhmylev,M.V.Remizowa,D.D.Sokoloff)、モスクワ国立教育大学(N.I.Shorina,E.Kurchenko,I.V.Tatarenko,A.P.Zhmyleva,E.D.Tatarenko)、アルタイ国立大学(A.Shmakov,S.Smirnov,M.Kucev)、ブリヤート国立大学(D.G.Chimitov,S.A.Kholboeva,B.B.Namzalov)、オーレル国立大学(N.M.Derzhavina)、されにはモンゴルをも加え、ホフト国立大学(D.Oyunchimeg)の方々と、日本の植物相関連植物が分布する東アジアユーラシア大陸の東アジアフロラを研究してきた。東端に位置する日本列島島嶼域は全北植物界、北植物亜界の東アジア植物区系に属し、地史的に大陸と接合したり分離したりしてきた島環境が個体群遺伝子給源を保持しながら、時には遺伝子浮動を起こして繁栄してきたか、また、アルタイ山脈はロシア連邦シベリア地方の中央部を南北に縦断し、ヨーロッパ・フロラとアジア・フロラがぶつかり合って南北に境界線を作り上げ、混ざり合って自生しているが、これら2フロラがどのようにして共存しているのか、雑種性は頻繁に起きてきた可能性が大いにある。これら両端域に共通して自生する被子植物種で今迄に分類、系統、分布学的に問題を提起している分類群に注目して、発生生物学的データー集積と絶滅危惧性の扱いに注目しながら、近藤等(東京農業大学)の日本側グループとロシア側グループは、相互関連植物の分布、構造、パターンの成因を分子系統進化、分子細胞遺伝学的ならびに核形態学的研究による種分化に関する研究、および特異的種の絶滅危惧性を含めて今までに増して共同研究を進めた。しかし、まだ分析していない植物も多く、研究の継続を期待する。
著者
加瀬 友喜 田吹 亮一 速水 格 武田 正倫 遠藤 一佳 千葉 聡
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

1.海底洞窟特有のソビエツブ科巻貝の2新属4新種、クチキレエビスガイ科の1新属2新種、従来全く知られていない殻形態を示す1新属1新種(Pluviostillac palauensis)を発見、報告した。2.海底洞窟のシラタマアマガイ属巻貝の殻体を検討し,2新種を含む6種を識別し,コハクカノコガイ属と単系統群(コハクカノコガイ科)を構成することを明らかにした.また、それらの軟体の解剖学的研究を進め、殻体による結果を支持した。3.マーシャル島の化石種を検討し,この種はシラタマアマガイ属に近縁な新属であることを明らかにし,同類が中新世には既に海底洞窟のような環境に適応していたことを示した.4.海底洞窟のシラタマアマガイ属と河川に生息するコハクカノコガイ類の殻体および軟体の解剖学的研究を進めた。また、両者の環境を繋ぐanchialineやhyporheic環境から多くの未知のコハクカノコガイ類を発見し、それらを分類学的に検討し、2新属を認めた。5.コハクカノコガイ類を含むアマガイ上目の解剖と分子系統学的研究から、同目は複数回地上環境へ進出し、また、コハクカノコガイ類は海底洞窟などの隠生的な環境に適応した後、anchialineやhyporheic環境、さらに地上の河川に進出したことを明らかにした。6.海底洞窟及びanchialine環境の微小甲殻類のカラヌス目Ridgewayia属の1新種を見いだした。この種は北大西洋や地中海の種に近縁であることが強く示唆された.また、アミ目のHeteromysoides属とHeteromysis属の4新種、BochusaceaのThetispelecaris属の1新種を見いだした。Thetispelecaris属の新種は同属の2番目の記録であり、その由来は海底洞窟から深海に進化したことが示唆された。
著者
塩谷 雅人 西 憲敬 小川 利紘 長谷部 文雄 VOMEL Holger OLTMANS Samu
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1998

本研究費にもとづき,1998,1999年度,東太平洋ガラパゴス諸島のサンクリストバルで3回,中央太平洋キリバスのクリスマス島で2回の観測キャンペーンをおこなった.さらに,1999年9月-10月には,船舶から赤道東太平洋域のオゾン観測をおこなった.これらのキャンペーンによって取得したデータは現在解析中であるが,これまでのところ以下のような知見が得られている.1.サンクリストバルと西太平洋のシンガポールにおけるゾンデデータを比較したところ,対流圏界面が北半球の冬に低圧・高高度・低温になるという特徴が両観測点で見られたが,海面水温と対応していると考えられていた圏界面高度の差は明瞭ではなかった.2.サンクリストバルにおける水蒸気観測データから,東部太平洋域でも3月の圏界面付近で水蒸気は飽和していることがわかった.また,9月の観測では水蒸気が未飽和であるプロファイルも得られたが,これは赤道ケルビン波の下方変位位相部に当たっていて乾燥したオゾンの豊富な成層圏大気が下降してきたのを観測していたことがわかった.3.サンクリストバルにおける対流圏オゾン分布は,3-4月には対流圏内でほぼ一定値(〜30ppb)をとるのに対して,9月には地表付近(20ppb)から6-7km付近まで増加(50ppb)したあと上部対流圏まではほぼ一定の値をとるという特徴が見られた.これは赤道波と関連した成層圏からのオゾンの洩れ出しが,特に9月には顕著に見られるためではないかと考えられる.4.船舶からのGPS/オゾンゾンデ観測より,地表〜高度5kmほどの領域で,しばしばオゾンの少ない湿った薄い大気層が2,3つ存在することが見出された.これはちょうど北風が卓越する高度領域とも対応しており,船の北側に位置するITCZとの関連が示唆される.また,同様の特徴は,サンクリストバルやクリスマス島でのオゾン観測データにも見ることができた.