著者
武藤 芳照 若吉 浩二
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1997

水泳競技(競泳)のレースには、ストローク局面、スタート局面、ターン局面及びフィニッシュ局面が存在し、競技力向上にはこれらの要素をより客観的に評価していく必要がある。そこで、我々は、1987年より、ビデオ映像を用いた競泳のレース分析に関する研究を開始し、レース中における各要素を客観的に評価して、それらのデータを選手や指導者にフィードバックすることを試行してきた。そこで、本研究の目的では、1)大幅なハードウェアの改良により、分析時間の短縮及び分析データの精度を高めること、2)システムアップとソフトウェアの開発により、自動データ入力を試みること、3)個人データベースのネットワーク化及び個人のデータの数年間の比較を瞬時に行えるようにすること、4)レース分析結果より、競技力向上に活用可能な研究成果を得ることを目的に行ったものである。その結果、レース分析の実験システムにおけるハードウェア及びソフトウェアの開発により、分析データの即時フィードバックを実現することができた。また、過去5年間のレース分析結果の個人別データベースを作成し、インターネット上で閲覧可能なデータベースシステムとしての構築に成功した。これらのデータは、個人名、種目、大会等のキーワード入力により、個人データの数年間の比較または選手間の比較を瞬時に行えるようにした。さらに、これまでのデータを活用することで、スタート、ターン及びフィニッシュタイムから、それらの技能の能力を評価することも可能となった。
著者
土肥 修司 田辺 久美子 柳舘 冨美 杉山 陽子
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

Na^+-K^+ATPaseは細胞内外のNa^+とK^+の濃度を調節・制御しており、麻酔薬によるシグナル伝達機構にどう影響するかを、麻酔作用の重要なターゲットである脊髄後根神経節ニューロン(感覚ニューロン)および脊髄後角ニューロンにおいて検討した。Na^+-K^+ATPaseもイオントランスポーターであるCation-Chloride Cotransporters(CCC)も、エンドセリンも麻酔薬の脊髄の疼痛シグナル制御機構にさまざまな影響を与え、正常と損傷を受けた動物とによって異なること、グリア細胞もその作用の一端を担っていることを示唆する結果を得た。
著者
澤登 俊雄 村井 敏邦 前野 育三 福田 雅章 荒木 伸怡 斉藤 豊治 新倉 修
出版者
国学院大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1994

本研究は、主として、アメリカ、イギリス カナダ、ドイツ、フランス、北欧各国の少年司法制度、児童福祉制度における「こどもの権利保障」の内容につき、体系的に整理された詳細な「共同調査項目表」を作成し、それに基づいて調査・分析を行った。この「共同調査項目表」は、少年手続を審判前、審判段階、処分決定と処遇の3段階に分け、それぞれ少年の権利保障、適正手続の観点から有意義と思われる全25項目(さらに細項目は約225項目に分かれる)について調査する質問票であり、各質問番号を各国横断的に比較することで、明確に各国権利保障の状況の比較分析ができるよう工夫されている。これについて、最新の法令、判例、運用等を紹介したことはもちろん、これらでは十分に解明しえない諸点については、外国人研究者への直接質問等により正確を期した。これらの比較の上に立って、各段階、各国毎に、適正手続、国親思想、保護主義、刑罰主義、職権主義、当事者主義等の基本概念を縦軸に、「少年司法運営に関する国連最低基準規則」、「子ともの権利条約」等、子どもの権利保障を重視した諸々の国際準則が各国においてどのような影響を与えているかを横軸に、総括的なまとめを行った。その際、これらの知見が、日本法、とりわけいま問題となっている少年手続の基本構造をめぐる議論にどのような示唆を与えるものかを常に念頭に置いて分析したことはいうまでもない。詳細は今年中に発行を予定されている書物(「少年司法と適正手続」)に譲ることとするが、国際準則の影響下、全般的には子どもの権利保障が進みつつあるものの、各国固有の歴史的、政治的、社会的背景を反映し、各国における問題関心、権利保障の具体的な現れ方には、看過できない大きな相違があることが感じられた。
著者
深田 吉孝 富岡 憲治 河村 悟 津田 基之 徳永 史生 塚原 保夫
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

交付申請書に記載の研究実施計画に沿って研究を進め、以下の知見を得た。【視覚の光情報伝達】種々の部位特異的変異を導入した光受容蛋白質を作成して光応答特性を調べた結果、光受容蛋白質の特性(桿体型または錐体型)を規定するアミノ酸を同定することに成功した(七田)。また、脊椎動物視細胞に発現する諸蛋白質の性質を検討し、カルシウム(河村、深田)あるいはリン脂質代謝系(林)を介した未知の光情報調節機構があるという証拠をつかんだ。一方、無脊椎動物については、ロドプシンキナーゼの一次構造を決定し、脊椎動物のロドプシンキナーゼとβアドレナリン受容体キナーゼの両者の特徴を併せもつことを明らかにした(津田)。この事実は、無脊椎動物のロドプシンが脊椎動物の光受容蛋白質と古くに分岐して以来、独立して進化し、色覚などの視覚システムを発達させたという知見(岩部、深田、徳永)と矛盾しない。【光受容系と概日時計】節足動物の視葉におけるセロトニンやドーパミンの量に概日リズムがあることを見出し、その投与により視覚ニューロンの光応答特性が変化することから、生体アミンによって周期的に視感度が調節されている可能性が考えられた(冨岡)。魚類においては光以外に温度がメラトニン合成の概日リズムを規定する重要な環境因子であることが判った(飯郷)。また、ヤツメウナギやカエルの松果体・脳については、光受容蛋白質やセロトニンに対する抗体を用いて、光受容細胞を幾つかのクラスに分類することができた(保、大石)。ピノプシン抗体を用いた免疫組織学的解析からは、鳥類の松果体におけるピノプシンの局在を示す(荒木、深田)と共に、濾胞を形成しない新しいタイプの光受容細胞を同定した(蛭薙、海老原)。一方、ショウジョウバエ変異体の概日時計に与える光の効果を解析した結果、口ドプシン以外の光受容系の存在が示唆された(塚原)。
著者
柴田 直 三田 吉郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

過去に経験した最もよく似た事例の連想・想起により、人間は迅速かつ柔軟にものごとの認識・判断を行っているという「連想原理」に基づき、我々はこれまで脳の機能を模擬した知能VLSIシステムの開発を行ってきた。本研究の主眼は、これまでの静止画像の認識に加え、さらに動画像の意味を理解できるシステム構築の基礎技術確立である。“What is it?"をさらに一歩進め、“What is it doing?"の認識を可能にするシステム高機能化の研究である。動きの理解には、先ず動画像から動きの情報を抽出し、それを特徴ベクトル表現に変換することが必須である。そのため、実時間の動き場生成VLSIプロセッサを新たな回路方式で実現した。アナログVLSIでは、時間領域演算に基づく新たなハードウェアアルゴリズムを導入し、500fpsでのnormal optical flow生成可能なCMOSイメージセンサを開発した。またデジタルVLSIでは、方向性エッジ情報を用いたブロックマッチング法を新規開発し、これにより超高速の高精度動きフィールド生成に成功した。このチップは、2.8GHzCPUを用いたソフトウェア処理と比較して、たった100分の1の遅い周波数動作で1000倍以上高速の高密度動きフィールド生成を実現した。また各瞬間の動きフィールドをコンパクトに表現する動き成分空間分布ヒストグラム(PPMD)ベクトル、さらにPPMDベクトルを時間的・空間的に積分してあるアクション全体を表現するMotion History Vector等のアルゴリズムを開発、前者は隠れマルコフモデルを用いて認識を行い、後者は従来の連想マッチングで認識を行う。これらのアルゴリズムにより、エゴモーションの認識、簡単なジェスチャーの認識、さらに動き物体の追跡がロバストに行えることを実証した。
著者
山崎 喜比古 井上 洋士 江川 緑 小澤 温 中山 和弘 坂野 純子 伊藤 美樹子 清水 準一 江川 緑 小澤 温 中川 薫 中山 和弘 坂野 純子 清水 由香 楠永 敏恵 伊藤 美樹子 清水 準一 石川 ひろの
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

病・障害・ストレスと生きる人々において、様々な苦痛や困難がもたらされている現実とともに、よりよく生きようと苦痛・困難に日々対処し、生活・人生の再構築に努める懸命な営みがあることに着眼し、様々な病気・障害・ストレスと生きることを余儀なくされた人々を対象に実証研究と理論研究を行い、その成果は、英文原著17 件を含む研究論文26 件、国内外での学会発表60 件、書籍2 件に纏めて発表してきた。
著者
吉村 長久 大谷 篤史 山城 健児 山田 亮
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

ARMS2遺伝子A69Sの迅速検出キットを作成した。A69S多型は滲出型加齢黄斑変性に対する光線力学療法後の視力予後に相関し、抗VEGF治療の後の視力予後には相関しなかったことから、このキットを用いることによって、個別化医療が実現できると考えられた。さらに他の候補として、VEGF遺伝子、PEDF遺伝子が治療後反応を予測し、精度の高い個別化医療の実現が可能であることが分かった。
著者
石丸 隆 山口 征矢 長島 秀樹 神田 譲太 茂木 正人 平譯 享 北出 裕次郎
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

練習船「海鷹丸」による,南大洋インド洋セクターの調査・研究をH14,16,17年度の3次にわたって実施した.調査海域は,H14年度はケルゲレン海台付近およびウイルクスランド沖,H16年度は,リュツォ・ホルム湾沖及びウイルクスランド沖,H17年度は,リュツォ・ホルム湾沖である.主調査海域のケルゲレン海台周辺,リュツォ・ホルム湾沖およびウイルクスランド沖では深層水の形成機構や挙動,表層生態系と海洋環境との関係,中深層生態系の解明を主テーマとして,ADCP, CTD等による海洋観測と,水中光学的測定,表層性動植物プランクトン,仔稚魚の分布,基礎生産力測定,多段式開閉ネットによる各層生物採集等を行った.また,リュツォ・ホルム湾沖では,昭和基地と呼応したエアロゾルの観測を行った.観測海域に至る各航路上では,連続プランクトン採集器の曳航を行い(H16年度はGraham Hosie氏が乗船して担当),オーストラリア南極局の「オーロラオーストラリス」や「しらせ」による採集試料と合わせて,プランクトン群集の変動と海洋環境の長期変動との関係解明のための解析を行なう.H17年度は当初,南大洋航海の計画は無かったが,海洋構造や生態系の中長期変動を捉えるためには可能な限り継続的な調査を行うことが求められるため,国立極地研究所との協同によりリュツォ・ホルム湾沖の観測を行うこととなった.現在までに,インド洋セクターにおける深層循環の経路や流量,海氷の広がりと,氷縁における植物プランクトンのブルームとの関係等について論文を発表した.また,採集したオキアミを用いた研究により計量魚探によるオキアミ資源量の高精度な推定のための基礎的研究の成果を発表した.また,プランクトン群集組成に大きな経年変動を認め,これが南極発散線の発達や南極周極流の経路と密接な関係を持つことなどが明らかとなり,学会発表を行い投稿準備中である.
著者
竹本 幹夫 山中 玲子 小林 健二 落合 博志 大谷 節子 石井 倫子 表 きよし 三宅 晶子
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2001

本研究においては、現代の能楽研究における資料調査の実績を踏まえ、全国に散在する文庫・図書館・個人所蔵の謡本を博捜し、曲目索引を作成して『国書総目録』【能の本】以後に発見された謡曲作品・伝本を網羅的に補足することから出発し、上記500曲の各作品ごとに、伝存するテキストの系統関係を調査した上で、主要な系統の伝本を、一曲につき数本ずつ翻刻することを目指した。室町期成立の能のテキストを網羅的に翻刻・集成するような事業は今まで全く存在せず、本研究が能楽のみならず、近世・近代前期の文芸研究、および国語学に与える影響は、きわめて大きい。最終的な成果は、『謡曲大成』(仮称)の刊行を企図しているが、一曲ごとに数十本存在する伝本を書写・校合する作業が予想以上に難航し、このたびようやくア行74曲の系統付けが完了した。C-18として付属させた冊子がその成果内容である。これらの作業過程で、古写本・古版本の新出資料を複数調査することが出来た。その中には江戸時代版行番外謡本の系統研究に重要な位置を占める、伊藤正義氏蔵「寛永頃刊行観世流異書体小本」のような稀覯本も含んでいる。早稲田大学演劇博物館蔵「春藤流升形十番綴謡本」三百番のような、従来存在は知られていたが位置付けが不明であった本についても発見があった。この本は、観世流系ワキ方であった福王流の江戸後期の大規模な謡本集成に先駆けて行われた、金春流系ワキ方系の謡本集成としては比較的早い例に属することなどが明らかとなった。また謡本研究とは直接関連しないが、本研究費による謡本の所在調査の過程で、研究分担者や研究協力者による、曲ごとの作品研究が活性化した。さらには、本研究費による謡本調査の過程で、研究代表者の竹本による世阿弥能楽論書『三道』の最善本の発見なども行われた。いずれも本研究の特筆すべき副次的成果といえよう。
著者
山本 博文 佐藤 孝之 宮崎 勝美 松方 冬子 松澤 克行 横山 伊徳 鶴田 啓 保谷 徹 鶴田 啓 保谷 徹 横山 伊徳 小宮 木代良 杉本 史子 杉森 玲子 箱石 大 松井 洋子 松本 良太 山口 和夫 荒木 裕行 及川 亘 岡 美穂子 小野 将 木村 直樹 松澤 裕作
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、江戸時代および明治時代に編纂された史料集を網羅的に蒐集し、その記事をデータベースとして一般公開すること、蒐集した史料の伝存過程および作成された背景について分析・考察すること、を目的としている。本研究は、従来、交流する機会のなかった異なる分野の研究者が、1つの史実を通じて活発な議論を戦わせる土壌を作り、近世史研究の進展に大きく寄与することになった。
著者
三上 正男 長田 和雄 石塚 正秀 清水 厚 田中 泰宙 関山 剛 山田 豊 原 由香里 眞木 貴史
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

ダストの気候インパクトの定量的評価を高精度に行うことが出来るダストモデルの開発を、(1)発生過程の観測解析、(2)ダスト輸送途上の解析、(3)ダスト沈着量の観測解析と(4)ダストモデルの高度化のための技術開発により行った。(1)では、粒径別鉛直ダスト輸送量の評価法を確立し、ダスト発生モデルの検証を行い、スキームの最適化を行った。また(2)衛星及び地上ライダーの解析から、アジア域ダストがサハラ等に較べて高高度・長距離にわたって輸送される実態や、輸送中のダストでは粒径分布変化よりも内部混合の進行による形状変化が重要であることを明らかにした。さらに(3)乾性・湿性沈着観測ネットワークによる沈着フラックスの観測データを用いて、全球ダストモデルMASINGARの粒径分布とモデルのダスト発生過程の改良を行うと共に(4)高精度データ同化システムと衛星ライダー観測値を組み合わせ、全球ダスト分布の客観解析値を作成し、東アジアのダスト発生量のモデル誤差推定を行なった。また同同化システムにより、モデルの再現性を大幅に向上することが可能となった。これらにより、発生・輸送・沈着各過程を寄り現実的に再現できるモデルを開発することが出来た。
著者
玉木 賢策 沖野 郷子 岡村 慶 沖野 郷子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

研究期間内に複数回の海底熱水鉱床探査航海を実施し、まだ未確立の部分の多い海底熱水鉱床の探査手法の確立を目指し、同時に海底熱水鉱床の形成機構に関する研究を実施。海底熱水鉱床が形成される中央海嶺系(実験海域:インド洋)、島弧火山系(伊豆小笠原火山弧)の比較研究により研究を実施する。探査航海に使用する装置としては、有人潜水調査船「しんかい6500」、ROV(Remote Operated Vehicle : 有索無人潜水艇)、海水化学現場分析装置を搭載した採水システム、潜水船等搭載型深海磁力計を使用し、深海探査を実施する。本研究期間中に、中央海嶺および島弧火山系のそれぞれにおいて新たな熱水鉱床を複数発見することを目指す。探査手法として(X)磁気探査手法と(Y)化学探査手法についての開発を行う。
著者
清家 泰 奥村 稔 三田村 緒佐武 千賀 有希子 矢島 啓 井上 徹教 中村 由行 相崎 守弘 山口 啓子 日向野 純也 山室 真澄 山室 真澄 中野 伸一
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

実験区(高濃度酸素水導入窪地)の他に、対照区(高濃度酸素水導入の影響の及ばない窪地)を設け、比較検討した。湖底直上1m層への高濃度酸素水の導入による改善効果として、明らかになった研究成果の概要を以下に示す。(1)対照区では底層水中に高濃度の硫化水素(H_2S)が観測されたのに対し、実験区ではH_2Sが消失した(H_2S+1/2O_2→H_2O+S^0↓)。(2)対照区では底層水中の溶存酸素(DO)濃度が無酸素に近い状態で推移したのに対し、実験区では窪地全域のDOが増大した。また、対照区では底層水中の酸化還元電位(ORP)が負の領域で推移したのに対し、実験区では正の領域まで上昇した。(3)湖底堆積物中のH_2S濃度を鉛直的にみると、対照区では表層部のみでH_2S濃度の減少が観られたのに対し、実験区では表層から5cm程度の深度まで濃度が激減した。また、メタンCH_4(温暖化ガス)もH_2Sの鉛直分布と同様の傾向を示した。(4)対照区に比べ実験区では、底層水中PO_4^<3->に明瞭な減少傾向が観られた。実験区の湖底泥表面に酸化膜の形成が観られたことから、湖底泥界面における共沈現象及び湖底からのPO_4^<3->の溶出抑制が示唆された。(5)対照区に比べて実験区では、底層水中の無機態窒素(NH_<4+>+NO_<2->+NO_<3->)に減少傾向が観られた。酸素導入により、湖底泥界面における窒素除去機能(硝化・脱窒)が活性化したことを示唆する。湖底堆積物の深度別脱窒活性を観ると、対照区では表層部のみ活性を示したのに対し、実験区では表層から5cm程度の深度まで顕著な活性を示した。この結果は、高濃度酸素水の供給により、脱窒部位が大きく拡大したことを意味する。(6)対照区ではベントス(底生生物)が皆無であったのに対し、実験区では、アサリやサルボウガイのような二枚貝の加入は認められなかったものの、多毛類を中心とするベントスの棲息が確認された。以上のように、松江土建(株)社製の気液溶解装置を用いるWEPシステムは、無酸素水塊への酸素供給を起点に、生物に有毒なH_2Sの消失、温室効果ガスであるCH_4の消失、栄養塩(N,P)の減少及びベントスの復活等に絶大な効果を発揮した。通常、還元的な湖底堆積物に対する自然任せの酸素供給では、その効果は、精々、湖底泥表層部の数mmまでと云われていることを考えると、本システムによる底質改善効果(泥深約0~40mm)は絶大である。このようにWEPシステムは、本研究で対象としたような比較的広範囲の窪地に対して有効であり、特に湖底の底質改善に極めて有効であると云える。今後、ランニングコストの低減が図れれば、有用性はさらに高まるものと考えられる。
著者
川人 祥二
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、極短時間の光の変化を画素単位で捉える排出制御型電荷変調素子 DOM (Draining Only Modulator)を用いた高時間分解撮像デバイスとバイオイメージング、 超高分解能 3 次元計測への応用について研究を行った。DOM 素子を用いて試作した蛍光寿命イメージセンサにより 2.5ns と 10ns の蛍光寿命の差を明確に区別したイメージングが可能であることを示した。DOM 素子を用いた TOF3 次元計測に対しては、極短時間パルス光に対する素子応答を用いた高分解能距離計測方式を考案し、試作により 300μm の分解能(2ps の時間分解能)を得た。
著者
佐藤 嘉倫 近藤 博之 尾嶋 史章 斎藤 友里子 三隅 一百 石田 浩 三輪 哲 小林 大祐 中尾 啓子
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

地位達成過程の背後にある制度に着目することで、不平等を生み出すメカニズムのより深い理解をすることが可能になる。たとえば、貧困にいたるプロセスは男女で異なるが、それは労働市場と家族制度における男女の位置の違いを反映している。また、日韓の労働市場の制度の違いにより、出産後、日本の女性のほとんどが非正規雇用者になるが、韓国の女性は正規雇用、非正規雇用、自営の3つのセクターに入る、という違いが生じる。
著者
松山 隆司 東海 彰吾 杉本 晃宏 和田 俊和 波部 斉 川嶋 宏彰
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2001

3次元ビデオ映像の能動的実時間撮影・圧縮・編集・表示法の開発を目指して、平成13年度〜15年度の3年間の研究により以下の成果を得た。(1)Myrinet高速ネットワークでPC30台を結合し、IEEE1394首振りカメラ25台を持つ能動的実時間3次元ビデオ映像撮影用PCクラスタシステムを開発した。(2)首振りカメラを準視点固定型パン・チルト・ズームカメラとしてモデル化し、高精度にキャリブレーションを行う手法を開発した。(3)3平面視体積交差法およびPCクラスタを用いた並列パイプライン処理システムを開発し、毎秒10フレームを超える処理速度で人体動作の3次元ディジタル化を実現した。(4)より高精度な3次元形状復元、高精細テクスチャマッピングの実現を目指した、人体部位の分散協調的ズームアップ撮影のための多視点カメラワークの最適化法を考案した。(5)視体積交差法で得られた3次元形状の復元精度向上のため、弾性メッシュモデルの動的変形による高精度3次元形状復元アルゴリズムを開発した。(6)対象の観察視点・視線情報を利用した高品質テクスチャマッピングアルゴリズムを考案した。(7)複数のランバーシアン参照球を用いた光環境センシシグ法(複数光源の推定法)を考案した。(8)スケルトン・キューブ(枠のみからなる立方体)を用いたセルフシャドウに基づく光環境センシング法を考案した。(9)3次元ビデオと全方位パノラマ映像を素材として使った3次元ビデオ映像のインタラクティブ編集システムを開発した。(10)正多面体展開図を用いた全方位パノラマビデオ映像の符号化法を開発しMPEG会議へ標準化提案を行った。(11)3次元ビデオ映像の圧縮法を考案しMPEG会議へ標準化提案を行った。
著者
大野 健一 大野 泉 細野 昭雄 上江洲 佐代子 川端 望 木村 福成 ALTENBURG Tilman LEFTWICH Adrian KHAN Mushtaq GEBRE-AB Newai GEBREHIWOT Berihu Assefa 森 純一 PHAM Hong Chuong NGUYEN Thi Xuan Thuy
出版者
政策研究大学院大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

市場経済やグローバル化と矛盾しない産業振興を「プロアクティブな産業政策」と定義し、東アジアを中心にそのような政策事例を収集・比較したうえで、その具体的な内容、つくり方、組織、文書などを解説する英文・和文の書物を出版した。また研究成果を現実の開発政策に適用するために、本学が国際協力機構(JICA)等と共同で実施しているエチオピア政府およびベトナム政府との産業政策対話において、カイゼン、官民協力、行動計画のつくり方などにつき提言を行い、そのいくつかは実際に採用された。
著者
加藤 泰浩 中村 謙太郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

我々は東太平洋の広範囲に,希土類元素(レアアース;REE)を豊冨に含有した『深海低含金属堆積物』が分布していることを発見した.この新発見の資源は,(1)レアアース含有量が非常に高い,(2)資源量が膨大かつ探査が容易,(3)放射性元素であるウラン,トリウムの含有量が低い,(3)弱酸でほとんどのレアアースが回収できる,など資源として理想的な条件を備えている.公海上に存在しているが,国際海底機構への鉱区申請を経て我が国が開発することができる(技術的にも採鉱が可能な)資源であり,レアアース資源の安定確保という国家的課題を解決する切り札となり得るものである.本研究では,この含金属堆積物鉱床について,特に有望と見込まれる東太平洋域における分布状況とレアアース含有量(併せて他の有用元素含有量も)を網羅的に把握し,将来的な資源開発を見据えた資源ポテンシャル評価を行うことを目的としている.本年度はその初年度として,テキサスA&M大学における堆積物コア試料採取を行い,それらの鉱物同定(XRD),および全岩化学組成分析(XRF,ICP-MS)を行う予定であったが,より包括的な研究である基盤研究(S)が採択されたため,本研究は2010年8月25日をもって廃止となった.
著者
渡邊 公一郎 米津 幸太郎 今井 亮 高橋 亮平 横山 拓史 中西 哲也 実松 健造
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

多くの鉱物・エネルギー資源を海外依存する我が国では、資源安定供給に向けて継続的に学術的な資源探査を行うことは必須であり、本研究では、レアメタル・金属・炭化水素資源を含む地下資源ポテンシャル評価のための新しい資源データモデル開発をアフリカ及び東南アジア各国の資源国で行った。結果、エジプト・シナイ半島の重希土類元素濃集帯、アルジェリア南部・ホガールでのレアメタル花崗岩体の発見、リビアでのリモートセンシングによる炭化水素資源の抽出を成し遂げた。東南アジア・モンゴルでは金、希土類元素、スズ、タングステン、モリブデンの新たな濃集地域の発見および既存鉱床の成因モデル開発を行い、探査・開発の指針を示した。
著者
諸橋 憲一郎
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

核内受容体型転写因子であるAd4BP/SF-1は副腎皮質における各種遺伝子の転写を通じ、細胞の分化と機能維持に重要な機能を担っている。この因子の機能を通じ細胞が分化するにあたっては、クロマチン構造の制御を通じ、機能するエンハンサーが選択ならびに変換されるはずである。本研究では副腎皮質を対象として、Ad4BP/SF-1ならびにヒストン修飾を認識する抗体を用いたクロマチン免疫沈降法と大容量シークエンスをおこなった。その結果、Ad4BP/SF-1が遺伝子近傍または内部に存在するエンハンサーに結合することで解糖系遺伝子を制御していることが明らかになった