著者
藤井 恵介 岡田 安弘 兼村 晋哉 高橋 徹 山本 均 山下 了 松本 重貴
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究の目的は、LHCの結果を踏まえ、テラスケールの物理の全容解明のため電子・陽電子リニアコライダー(ILC)が果たすべき役割を明確化しILCが取るべき具体的物理研究戦略を確立、もってILC計画早期実現に供することにある。本研究によって、ILCでは、3つの主要プローブ:ヒッグス、トップ、新粒子直接探索により、LHCから得られる知見を質的に新しい段階へと押し上げる重要な情報を提供する研究が可能となることが明らかになった。本研究で得られた成果は、ILC技術設計書物理の巻の中核をなし、欧州戦略、米国戦略(スノーマス研究)の策定のための入力として重要な役割を果たし、ILC計画実現に向け大きく貢献した。
著者
田中 喜代次 奥野 純子 重松 良祐 大藏 倫博 鈴木 隆雄 金 憲経 鈴木 隆雄 金 憲経
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

要介護化予防を目的とした包括的指針作成において,1)下肢および上肢筋力,平衡性体力,歩行能力,移乗能力および日常生活動作の遂行度に基づく身体機能評価が望ましいこと,2)運動プログラムは体力差や年齢などを考慮し,教室において集団指導,小集団指導または個別指導を適宜選択し,さらに運動習慣化のために在宅運動プログラムの提供が必要であること,3)運動指導ボランティアとその活動を取り巻く自治体や関連団体との連携を強め,長期的活動形態を構築することが必要となることの3点が重要であると考えられた.今後はこれらの研究結果を踏まえ,要介護化予防事業をさらに発展させるために,実践的な検証を推し進めていきたい.
著者
寳示戸 雅之 波多野 隆介 村野 健太郎 林 健太郎 神山 和則 荻野 暁史
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

<発生>農業に由来するアンモニア発生量を発生源別にできるだけ正確に見積もり、これを1kmメッシュ地図として示すとともに畑地、水田、草地からの発生量実態を観測した。<実態>国内27地点の大気中アンモニア、アンモニウム塩濃度を観測するとともに、栃木県の集約酪農地帯において湿性沈着、乾性沈着を観測し、地域内発生量からみた「大気を介した窒素循環」の実態を推定した。<影響>北海道標津川流域を対象として河川水の濃度と投入窒素量の解析から、流域に投入された窒素の一部は河川へ流出するものの残りは硝酸態窒素となり、脱窒を介して河川への炭酸イオンを増加させることを推定した。
著者
大串 隆之 高林 純示 山内 淳 石原 道博
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

植物-植食性昆虫-捕食者からなる多栄養段階のシステムを対象にして、フィードバック・ループの生成メカニズムとしての植物-植食者相互作用の重要性を実証し、その高次栄養段階に与える影響とメカニズムの生態学的・化学的・分子生物学的基盤を明らかにした。さらに、植食者の被食に対する植物の防衛戦略とその結果生じる間接効果についての理論も発展させた。これまでの3年間の総括を行い、間接効果と非栄養関係を従来の食物網構造に組み込んだ新たな「間接相互作用網」の考え方を提唱した(Annual Review of Ecology, Evolution, and Systematics 36:81-105)。さらに、「間接相互作用網」の生態学的意義とその概念の適用について世界に先駆けて単行本の編集を行った(Ohgushi, T., Craig, T. & Price, P.W. 2006. Ecological Communities : Plant Mediation in Indirect Interaction Webs, Cambridge Univ. Press)。本プロジェクトの成果の多くは、すでに国際誌に公表されている(研究発表リストを参照)。これらの成果に基づいて、植物の形質を介した間接効果が植物上の昆虫群集における相互作用と種の多様性を生み出している重要なメカニズムであることを指摘し、間接相互作用網に基づく生物群集の理解のための新たなアプローチを確立した。このように、本プロジェクトは陸域生態系の栄養段階を通したフィードバック・ループの実態解明と理論の確立に大きな貢献を成し遂げた。
著者
田中 朝雄 田中 真奈美 村上 博 三井 洋司 田中 真奈実 田中 真奈美 田中 朝雄
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

宿主寄生体間情報伝達物質の検出のため、ヒト脳神経系及び寄生原虫クルーズ・トリパノソーマを等しく認識する単クローン抗体(Wood,J.N.et al.,Nature,1982)を用い、ヒト臓器別およびトリパノソーマのcDNAライブラリーを精査し、多数の新規遺伝子を得た。ノザンブロット解析により、元来この抗体が認識する神経や心筋細胞、クルーズ・トリパノソーマのみに発現が認められるBradeion遺伝子が選別され、その後の生体機能解析へと進んだ。現在までにこの新規生理活性物質の生体機能解明・情報整備をほぼ完備することが出来た。即ち、1.成人脳の神経細胞での発現が認められ、2種のタイプが存在する(α及びβと呼称)。アミノ酸配列の特徴として、成長ホルモンやサイトカイン受容体特異的配列が認められ、膜貫通部分やATP/GTP結合部位も含めてオーファン受容体としての特徴的配列を有する。2.ノザンブロット解析でヒト成人脳、心臓(脳の10%以下)でのみ検知可能であり、他臓器・胎児期では検出感度以下の発現しか示さない。3.マウス脳でβ型相同遺伝子配列が存在する(94%の相同性)。マウス第11番染色体に位置し、3エクソン、2イントロンの構成で約17kb領域にコードされる。4.細胞内局在部位は、αはミトコンドリア、βは核周囲細胞質である。5.培養ヒト癌細胞に過剰発現させると、アポトーシスを誘導する。6.ヒト培養大腸癌・メラノーマ細胞株で強度遺伝子発現を示す。大腸癌の患者検体でもこの強度発現は確認された。7.アンチセンス・リボザイムで大腸癌細胞で発現を抑制すると、細胞増殖速度に顕著な影響が現れ、増殖抑制及び癌細胞の形質転換が起こる。脳神経系細胞の寿命制御・脱落防止に関しては、遺伝子病としての脳神経退行性疾患やアルツハイマー病、ハンチントン病で疾病の分子基盤解明とそれを応用した医薬品・医療機器開発が世界規模で推進されている。また、C.elegansやマウス等モデル生物系を含めた物質解明及びヒトへの応用が試みられているが、これは脳神経系という臓器・細胞の持つ種特異性や個体差というものが研究の限界となり、ヒト細胞を用いた方法論の整備が叫ばれている。Bradeionは、このような従来型のアプローチでは決して抽出されることのできないヒトの生物共進化や「寄生」という環境適合から焦点を当ててのみ得られるヒト脳神経生存(脱落)に関わる新規物質である。従って、本研究は、このような細胞寿命制御因子Bradeionの発見と機能解明を行った。この知見から現在、老化・癌化等の細胞変異制御のために、1.有用生理活性物質としてのヒト脳オーファン受容体の生体機能解明、2.脳内高次機能構築・細胞脱落の機構解析、3.脳神経細胞死、癌早期診断及び遺伝子治療に向けての技術開発、医療機器開発、を行っており、広範な新規産業創造シーズへ活用することを目指してさらなる研究が展開されている。
著者
山下 光雄 室岡 義勝 小野 比佐好 林 誠 山下 光雄
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

マメ科植物と根粒菌との共生系を利用して、生物的窒素固定能に加えて重金属集積などの有用機能を付与し発現する共生工学基盤技術を構築し、環境浄化に応用する目的で下記の研究を行った1.共生工学基盤技術の開発:共生分子遺伝機構を解明するため、マメ科モデル植物のミヤコグサを用いて共生状態と非共生状態における遺伝子発現の違いをマクロアレー技術を用いて測定した。2.メタロチオネイン4量体遺伝子およびファイトケラチン合成酵素遺伝子の根粒バクテロイド内での発現:メタロチオネイン4量体遺伝子とアラビドプシスより分離したファイトケラチン合成遺伝子をベクターにつないでレンゲソウ根粒菌Mesorhizobium fuakuii subsp. rengeiに導入し、この組換え根粒菌をレンゲソウ種子に感染させ根粒を形成させた。インサイチュハイブリダイゼーションにより根粒バクテロイド内で両遺伝子が発現していることが観察された。3.根粒バクテロイドの輸送系の改変による植物組織への物質移動の試み:上記遺伝子を導入した組換え根粒菌は、野性株に比べて20倍のカドミウムの取り込みを示したが、この組換え菌をレンゲソウに接種して、根粒を形成させたところ、組換え根粒では野生型根粒の1.5-1.8倍のカドミウム蓄積にとどまった。これは根粒内への重金属取り込み能の不足と考えられた。そこで、金属イオンの膜透過に関与するシロイヌナズナのIRT1(iron-regulated transporter)遺伝子を取得し、上記組換え根粒菌株に組み込んだ。IRT1遺伝子を組み込んだ根粒菌はカドミウムを1.5倍近く取りこんだ。そこで、この組換え根粒菌をレンゲソウに感染させ、根粒を形成させた。4.創生レンゲソウの重金属集積能試験:B3:PCS(IRT1)を感染して根粒形成させたレンゲソウを、カドミウムを含む人工土壌で生育させ、植物組織各部位のカドミウム濃度を測定した。その結果、IRT1遺伝子発現によるカドミウム集積能には差が見られなかった。したがって、根粒内における根粒菌によるカドミウム集積の限定要因は、植物細胞によるものだと考えられた。5.土壌のファイトレメディエーション:稲田の土壌を用いて組換えレンゲソウを栽培して、カドミュウム浄化能を試験した。非組換え根粒菌を感染させたレンゲソウでは、汚染人工土壌中のカドミウム取り込み効率が約0.4%であったのに対して、MTL4およびAtPCSの2つの重金属結合遺伝子を組み込んだ根粒菌を感染させたレンゲソウは、同程度のカドミウムに汚染されたフィールド土壌中のカドミウムを約9%も吸収していた。
著者
工藤 信樹 鈴木 亮 山本 克之 岡田 健吾 坂口 克至 八木 智史 渡辺 典子 千田 裕樹 奥山 学 松井 智子 吉松 幸里
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究の最終的な目的は,パルス超音波と微小気泡を用いることにより,効率が良く生体に対する安全性が高いin vivoソノポレーション手法を開発することにある.今回の研究では,手法の効率向上を主な目的として,ソノポレーションに伴う細胞変化をタイムラプス観察する光学顕微鏡システムを開発した.また,気泡位置を制御できる光ピンセット装置も開発し,細胞膜損傷の程度や発生部位の制御を実現した.開発した装置を用いて,数10分間の比較的早い時間内に起きる細胞の損傷と修復を観察し,その発生機序について検討した.また,気泡に取り込まれた薬剤の効果発現をとらえるために観察チャンバを改良し,最大20時間程度にわたって細胞に生じる変化を連続観察する手法を確立した.さらに,特定の細胞にのみ付着するターゲティング気泡とシェルに薬剤を付着した気泡を作製し,提案するソノポレーションにおけるこれらの気泡の有用性を確認した.
著者
長谷川 公一 町村 敬志 喜多川 進 品田 知美 野田 浩資 平尾 桂子 池田 和弘
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究は、気候変動政策の政策形成過程と政策ネットワークに関する国際比較研究の日本版である。主要3紙の関連記事を対象としたメディア分析と主要な関係団体に対する質問紙調査とインタビュー調査からなる。後者では、省庁・政府系研究機関・業界団体・民間シンクタンク・NGO・自治体・政党・マスメディア・企業など125団体の気候変動問題担当者に質問紙を用いて面接、72団体から回答を得た(回収率57.6%)経済・業界団体などのように、自主的な削減の取り組みを評価し、大きな削減目標に消極的なグループと、地方自治体・環境NGOなどのように、法的な削減を求め、削減に積極的なグループとに2極化していることがわかった。
著者
中別府 雄作 作見 邦彦 土本 大介 岡 素雅子 盛 子敬
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

DNAおよびRNAの前駆体であるヌクレオチドは放射線や生体内外の環境ストレスにより多様な化学修飾を受けるが、その放射線生物影響における意義は不明で、早急に解決すべき課題である。本研究では、環境ストレスによる修飾ヌクレオチドの生成が引き起こす生体障害を「ヌクレオチドプールの恒常性の破綻」としてとらえ、以下の5つのアプローチで多様な放射線生物応答の制御機構を明らかにする目的で研究を開始した。[1] 放射線照射により生じる修飾ヌクレオチドを同定し、in vivoでの活性酸素や金属等の存在による生成への影響を解析した。[2] 放射線照射等で生成される修飾ヌクレオチドの細胞への影響を解析することで、Bystander effectsのメディエータとして機能する可能性を検討した。[3] 修飾ヌクレオチド分解酵素を網羅的に探索する目的で、新規修飾ヌクレオチドの調製を始めた。[4] DNA中の修飾ヌクレオチド修復酵素を網羅的に探索する目的で、アッセイ系の確立を進めた。[5] 神経変性の病態モデルマウスの導入を進めている。
著者
浅井 圭介 永井 大樹 沼田 大樹 姜 欣 近野 敦 近野 敦 中北 和之
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

本研究は,航空機の非線形領域における動安定性を調べる実験技術として,ハイブリッド・アプローチによる次世代動的風洞試験法を開発することを目的としている.従来のシリアルロボットに加えて,新規にHEXA型パラレルロボットとその制御系を開発し,それらを用いて縦運動と横運動が連成する2自由度の加振実験を実施した.これと並行して,非定常感圧塗料や蛍光ミニタフトなどの先進的な光学計測手法を開発し,非定常運動するデルタ翼面上の前縁剥離渦の崩壊や空気力への周波数の影響を実験で明らかにした.これら一連の実験により,非線形飛行力学の研究を行うための基盤技術を構築することができた.
著者
佐藤 馨一 清水 浩志郎 為国 孝敏 竹内 伝史 小林 一郎 馬場 俊介 古屋 秀樹
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

平成16年度の研究は個別の大規模社会資本の整備事例をもとに、これらの総合的な評価を行い、今後の課題を整理した。平成15年度は道路公団の民営化論議が集中的に行われたこともあり、その是非や問題点について活発な意見交換がなされ、研究分担者間の共通認識が確立した。以下に平成16年度の研究成果を取りまとめる。(1)「公共事業方式と政府企業方式の混同の危険性」が指摘された。最近の民営化論議は大規模社会資本の将来展望を持つこともなく、財務分析のみが突出している、との批判がなされた。また、中部国際空港の整備事例を研究した結果、大規模社会資本が公共事業方式でなくとも実施可能なことを検証した。(2)大規模社会資本の更新投資の問題が取り上げられた。新幹線も高速道路も減価償却という発想がなく整備されてきた。このことにより更新のための投資財源がまったく存在しない事態を招いている。その結果、「荒廃する日本」と言われる日も間近にせまり、民営化論議はそれに拍車をかけている。(3)受益者負担による社会資本の整備方式は社会的便益を無視しており、公的な財源を用いて大規模社会資本を整備し、その利用価格を安くすることによって社会的便益を増大するという基本的な考え方に立ち戻るべきである。(4)大規模社会資本は土地依存型であり、ITのように技術依存型とは整備の仕方や活用はまったく異なる。地形も気象条件も多様な国土において経済効率を追い求めると、地域格差が増大し、過疎地域の切り捨てにつながる。竹島という小さな島の領有をめぐって日本と韓国が深刻な諍いをしているとき、国内の過疎地域を無視する国土政策は根本的に間違っている。「均衡ある国土の発展」という目標は、極めて重要な国家政策となる。
著者
亀井 宏行 渡邊 眞紀子 菱田 哲郎 塚本 敏夫 金谷 一朗 大城 道則
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

制約条件の多い海外での遺跡調査の効率化を図るために,エジプトのアルザヤーン神殿遺跡を対象にして,情報技術の導入を検討した。まずICタグ利用について検討し,遺物や文書管理だけではなく,建物や遺物の修復履歴の管理にも応用できることを示した。3次元スキャナは建物や碑文の記録ばかりでなく,遺構の発掘経過の記録にも用いた。サッカラの階段ピラミッドの3次元記録も実施した。GPS測量や衛星画像の導入を図り,神殿周辺の水環境地図を作成し,ペルシア時代のカナート,ローマ時代の井戸や水路網跡を発見した。地中レーダ探査に基づいた発掘調査では,文字を記した土器片(オストラカ)を発掘した。遺構の保存修復計画を立てるために, 3年間にわたる温湿度計測や風速・風向計測も実施した。
著者
鳥居 隆三 野瀬 俊明
出版者
滋賀医科大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究は、移植免疫に関わる均質化した遺伝的背景、すなわち同一MHC遺伝子をもつカニクイザルとそれら個体のiPS細胞を樹立することによって霊長類を用いた実用的な移植検定系の確立を目指すことを目的とし、本年度は以下の4点の結果を得た。1)均質化MHCサルコロニーの作製:カニクイザル1,668頭についてMHC遺伝子の中で免疫拒絶に関わる主要5遺伝子の分析を試みた結果、14種のハプロタイプと30頭のホモ接合体見出し、その中のホモオス2頭から採取した精液を用いて顕微授精を試みMHCホモとヘテロ個体の作出に成功した。これによって移植免疫寛容型カニクイザルコロニーの基盤が整備出来た。2)MHCホモ個体からのiPS細胞の作製:MHCホモ個体の皮膚細胞から山中4因子をレトロウィルスベクター法によってiPS細胞の樹立に成功し、継代も順調に行う事が出来た。3)サルiPS細胞の幹細胞特性:in vitroおよびin vivoでの多能性を確認し、すでに樹立していたカニクイザルES細胞と同等の特性を持つことを確認した。さらにキメラ能確認のために蛍光タンパク遺伝子導入ips細胞を作製し、顕微授精胚(4~8細胞期胚)に注入、卵管内移植したが38日目胎子ではキメラ形成は認められなかった。ただここで用いたiPS細胞はヒト型の扁平型コロニーであったことから、キメラが見られるマウス型、即ち立体型のコローニーの作製を検討すべく培養法を改善しマウス型コロニー様とした後、GFP遺伝子導入と授精胚への注入・移植した37日目の胎子におけるキメラ能を見た結果、蛍光は観察できなかった。今後樹立の段階でマウス型コロニーを形成するiPS細胞を用いてキメラ能の確認を行いたいと考える。4)生体内移植によるiPS細胞の安全性と疾患による影響の評価:サルの健常個体に山中4因子を導入したiPS細胞をカプセル内に封入して背部皮下に移植した結果、遺伝子発現レベルの解析では、内因性KLF4、c-mycの発現亢進が認められた。この結果から将来のiPS細胞から分化誘導した細胞移植においては、とくに各種疾患をもつ患者への移植は安全性確保のための影響評価が重要であることが示唆された。なお、当初予定の5)サルiPS細胞からのin vitro配偶子形成については、キメラ能をもつマウス型コローニーのサルiPS細胞樹立後に検討する予定である。
著者
家村 浩和 小川 一志 五十嵐 晃 高橋 良和 松久 貴 佐藤 忠信
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

本研究では、隣接する橋桁構造系や隣接建物系を取り上げ、それらの連結装置による連結により、同時振動制御を行うことを目的として、理論的実験的側面から種々の検討を行った。得られた主な結果は、次のとおりである。1) 大地震に対する制震システムにおいては、入力レベルに関わらず装置の性能制約範囲を超えない制御を実現する必要がある。特にアクティブマスダンパー装置における補助質量の変位制約問題を解決するために提案されている非線型可変ゲイン制御の実用性を検証するため、AMD装置を実物大構造フレームに実装した実験を行った。可変ゲイン制御アルゴリズムにより十分な制震効果を確保しつつ、装置の能力を有効に用いた制御が実現されることを示した。2) 阪神高速3号神戸線の震災復旧において、上部をラーメン構造とし橋脚の下端部に免震支承を設置するタイプの道路橋が建設されている。このタイプの免震橋では地震時において、免震支承には水平変形だけでなく、従来考慮されていなかった曲げ(回転変形)や軸力の変動が生じる。そのためそれらの効果の影響を実験的に評価する必要がある。そこで本研究では、多軸載荷が可能となる実験システムを用いて免震支承(LRB)の載荷実験を行い、水平変形・回転変形・変動軸力同時載荷条件下での復元力特性を検討した。その結果、変動軸力の効果は、回転変形の効果に比べ復元力特性への影響が大きいこと等を示した。3) 隣接する橋桁構造系や隣接建物系を制震する手法として、両者をジョイントダンパーで連結し、一体的に制御する方法が提案されている。本研究では5層と3層の隣接構造物の応答低減効果を得る手法として、LQ理論及びH^∞理論により制御器を設計し、シミュレーションを行った。特に制御における時間遅れの問題を取り上げ、数値モデルに対する検討を行った。その結果、H^∞制御においてはLQ制御に比べてはるかにロバスト安定性が得られ、ジョイントダンパーへの適用において優れていることが示された。
著者
陳 光輝 加藤 弘之 中兼 和津次 丸川 知雄 唐 成 加藤 弘之 梶谷 懐 大島 一二 陳 光輝
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

個票データの利用や収集が容易ではない中国,かつその内陸部農村地域の調査を,四川省社会科学院農業経済研究所の協力を得て行い,同省江油市農村地域206戸×3年,同小金県農村158戸×3年のパネルデータ(3年間継続調査できたのは前者が142戸,後者は127戸)を構築した.中国内陸農村地域の成長・発展は沿海や都市部に比べて伸び悩み,利子補填融資,財政支援,雇用創出等の貧困支援策のほか,現在は「新農村建設」政策が打ち出されている.そうした環境下の住民行動を「開発のミクロ経済学」を理論ベースとして分析し,以下の知見が得られた.1.山間部にある小金県は貧困世帯が多いが,政府からの移転所得は必ずしも貧困家庭のほうが多くを受けとっておらず,貧困支援策がうまく機能していない可能性を示唆している.2.所得水準の低い小金県のほうが道路,電気,水道・水利,医療施設といったインフラの現状に対する満足度は低く,整備を望む度合いが高かった.3.小金県の農業は,より恵まれた江油市のそれに比べて土地生産性が低く,得られる所得も低いが,それ以上に小金県は出稼ぎを含む非農業所得がめだって小さい.4.小金県の出稼ぎが少ない理由として,土地利用権の保障や農家間で土地を貸し借りする制度が十分でなく,出稼ぎのリスクが大きくなっていることが考えられた.5.天候不順などの収入低下ショックに直面した場合,江油市農家は貯蓄の取り崩し,小金県農民は親戚・友人からの借り入れに頼る度合いが大きかった.6.教育の収益率は有意であった.
著者
中澤 秀雄 嶋崎 尚子 玉野 和志 西城戸 誠 島西 智輝 木村 至聖 大國 充彦 澤口 恵一 新藤 慶 井上 博登 山本 薫子
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

世界(記憶)遺産という側面から、あるいはポスト3.11のエネルギー政策という観点から「石炭ルネサンス」と言うべき状況が生まれているが、これを先取りして我々産炭地研究会は、「炭鉱の普遍性に基づく産炭地研究・実践の国際的なネットワーキング」を展望しながらも、まずは資料の収集整理という基礎固め作業を継続してきた。夕張・釧路の個人宅から炭鉱関係資料をサルベージして整理目録化を進行させていることを筆頭に、多数の資料整理・目録化に成功した。ネットワーキングの面では、全国の博物館・元炭鉱マン・NPO等と関係を確立し、主要な全産炭地を訪問して資料整理・研究の面でも協働した。
著者
河野 孝太郎 江澤 元
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

研究初年次となる平成20年度は、南米チリ北部のアンデス山脈中にある極めて乾燥した高地(アタカマ高地、標高4860m地点)に設置した大口径(直径10m)の最新鋭サブミリ波望遠鏡ASTE(国立天文台、東京大学、他国内およびチリの大学が共同して運営)に、マサチューセッツ大学等のグループと協力して、ボロメーターカメラAzTEC(画素数144、ASTE望遠鏡への搭載時の視野約8分角、角分解能約30秒角)を搭載する。そして、かつてない広域かつ深い1.1mm帯撮像サーベイ観測を行い、初期宇宙にある形成されたばかりの若い銀河を新たに数100個規模で発見することを目標とした。AzTECカメラを用いたASTE望遠鏡での観測は極めて順調に始まった。今年は特に現地の天候が例年にも増して安定しており、極めてよい大気条件の下、非常に効率的に高品位の高赤方偏移天体探査が進行している。現在までに、既に10個以上の天域で、150平方分角あるいはそれ以上の広さでの、深さ1mJy(1σ)以下という感度を持った観測が進んでいる。観測はもちろん、データ処理はまだ途上であるが、それぞれの天域における予備的な解析から発見されつつある天体を合計すると、新たに発見された天体は既に100個程度に達していると思われる。他の波長のデータとの比較から、これらは多くが赤方偏移1以上の初期宇宙に存在することが示唆されている。従来の可視光・赤外線では見出せなかった、初期宇宙にある若く質量の大きい星形成銀河について、新たな展開を得ることができると大いに期待される成果であると言える。
著者
中野 照男 西川 杏太郎 内田 俊秀 西山 要一 尾立 和則 増田 勝彦 三浦 定俊 川野辺 渉 青木 繁夫 中野 照男
出版者
東京国立文化財研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

この研究は、展示や保管における日常的な地震対策に関する研究、地震発生時における緊急措置に関する研究の2本の柱から成る。両研究とも、阪神淡路大震災の折に被災した博物館等の機関、社寺、所蔵家をはじめ、文化財の救援活動に携わった諸機関、諸団体及び個人の協力を得ながら遂行した。震災直後に諸機関や諸団体が行った被害状況調査の報告、被災博物館等による被害の具体的状況に関する調査報告、震災後に博物館等が文化財や試料の収蔵、保管、公開、展示のために実施した改良や工夫に関する情報を、基礎的情報として、可能な限り収集し、それらを解析することによって、新しい防災対策策定のための指針を導き出そうと努めた。その上で、免震装置や吊金具、固着剤など、震災後に大いに着目されている装置や材料、防災対策にとって重要と思われる事項については、それらの有用性や問題点の所在を、実験や分析を踏まえて検討した。さらに、万一災害が発生した場合の文化財等の保全方法、被害を最小にとどめるための緊急措置、文化財等の救出や救援活動などについては、阪神淡路大震災やその他の災害の折の研究分担者、研究協力者の経験をもとにし、諸外国での研究成果を取入れて研究を進めた。また、災害に対応するための博物館や美術館、地方公共団体等のネットワークの形成に関しては、多くの機関に協力を呼びかけ、意見を交換しながら研究を行った。また、資料や参考文献等を多数収集したが、これらは、神戸市立博物館内の文化財防災資料センターにすべて移管し、今後の新たな研究や防災対策の策定に活用する。
著者
勝村 哲也 古勝 隆一 木島 史雄 金文 京 松原 孝俊 矢木 毅 小林 博行
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1998

朝鮮渡来漢籍の調査を行うのが目的であるが、今回は特に対島の宗家が所蔵し、厳原の長崎県立対島民族資料館に寄托されている漢籍と朝鮮版漢籍の調査をおこなった。その結果これらの典籍は、17世紀の中葉約50年間の間に渡来したものであり、ことにこの時期に朝鮮で出版された漢籍が集中的かつ良好に保存されている、極めてめずらしいケースであることが判明した。続いて建仁寺の両足院に保存されている対島府中の以酊庵(いていあん)関係文書(朝鮮との外交文書)・地図と南禅寺金地院文書(以酊庵に輪番として派遣された五山僧の記録)の全貌を把え、全文書を撮影した。これは研究者にとって極めて貴重な基礎資料となるものである。続いてカリフォルニア大学バークレイ校の東アジア図書館で調査し、旧三井文庫(新町三井)等わが国から当地に流出した資料約3000点を見出した。折りよく在外研究にめぐまれた九州大学の松原孝俊教授に紹介し、同教授によって調査が進められている。その結果も本研究に反映しうる。次にこうした資料をウェブによって公開利用に供するためのシステムを開発した。現在島根県立大学で試験的に運用しているウェブ・リトリーバル・システムがそれであって、このシステムによって、内外の諸機関のデータベースと相互に検索を行い、ウェブ上で検討に付することが可能になった。これも研究による大きな成果である。そのURLは以下である。http://ekanji.u-shimane.ac.jp/webusers/jsp/xmlweb/databases.jsphttp://nohara.u-shimane.ac.jp/dicl 204/dic-index.html
著者
阿部 正紀 半田 宏 日比 紀文
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

1.粒径を制御したフェライト・ナノビーズの開発:10-100nmの範囲で粒径を制御したFeフェライト(Fe_3O_4-γFe_2O_3固溶体)ナノ微粒子を作製する共沈法、部分酸化法、種成長法を開発した。2.ポリマー被覆ポリマー被覆フェライト・ナノビーズの開発:フェライト・ナノ微粒子を、たんぱく質の非特異的吸着が少ないポリGMAで被覆する共重合法および、乳化剤を用いない重合法を開発した。3.ポリマー被覆Feナノビーズの開発:フェライトより2倍も強い磁化を持つ金属Fe微粒子(粒径7-20nm)をポリGMAで被覆して、バイオスクリーニングに適した磁性ビーズを作製した。4.バイオスクリーニングによる分析の応用展開:ポリGMA被覆フェライト・ナノビーズ表面に、抗ガンや、タグ付きプロテインGを含む組み替えたんぱく質などを固定し、それらと相補的に結合するレセプターや抗体を高効率で単離することによって、我々のビーズが高速・高収率バイオスクリーニングに適している事を示した。5.ホール・バイオセンシングによる診断への応用展開:ポリGMA被覆フェライト・ナノビーズ表面にNA単鎖を固定し、これをホールセンサー表面に固定した相補的DNA単鎖と結合させて検出し、我々のビーズがDNA診断に活用できる事を示した。6.MRI造影剤による診断への応用展開:フェライト・ナノ粒子表面を多彩に修飾・加工する技術を開発した。その結果、粒径が約20nmで、表面が特定組み換えたんぱく質で被覆された新たなMRI造影剤候補物質を開発した。7.抗ガン磁気ハイパーサーミアへの応用展開:フェライト粒子を用いて、大腸癌細胞を非侵性の周波数180Hzの交流磁界によって誘導加熱してその殺傷効果を確認し、非侵性抗がんハイパーサーミアへの応用の可能性があることを明らかにした。