著者
加藤 優貴 長町 和弥 杉本 麻樹 稲見 昌彦 北崎 充晃
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.22-31, 2021 (Released:2021-04-01)
参考文献数
28

Pseudo physical contact is used for communication in virtual environments such as VRChat. We hypothesized that the pseudo physical contact could affect interpersonal impression and communication, and the interpersonal impression would be modulated by appearance of body or avatar type. To test these hypotheses, we performed a questionnaire survey for VRChat users (N=341). In results, interpersonal impression and communication difficulty were improved after the pseudo physical contact, but the avatar type did not modulate the interpersonal impression. These results suggest that the pseudo physical contact could improve the interpersonal impression and communication in virtual environments.
著者
岡久 雄二
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
pp.2034, (Released:2021-08-31)
参考文献数
86

希少種を対象としたバードウォッチング観光では、旅行者が保護活動について学ぶ機会の提供や、経済効果による保護活動のインセンティブ向上などの好適な影響が期待される。一方、安易な自然観光資源活用は対象種に負の影響を与える危険性を伴う。そのため、負の影響を最小限に留めつつ、活用が対象種の保護活動に与える好影響を高めることが必要である。本稿では接近実験と文献に基づく統計解析により観察圧がトキ Nipponia nipponの行動と繁殖に及ぼす負の影響を明らかにし、産業連関表に基づいて、トキを目的とした観光需要が佐渡島の経済とトキの保護に与える経済波及効果を評価することで、トキの観光活用に対する提言を行った。トキに軽自動車で接近した場合、逃避距離は最長で 145 mであったが、平均逃避距離は 2015年の 106.9 mから 2019年の 62.5 mまで経年的に短縮した。トキの警戒行動は自動車の接近に伴って増加したが、群れサイズが大きいほど増加が緩やかであった。 1羽でいる場合には 184 mまで接近すると警戒行動が 1回以上増加したが、 5羽の群れでは 128 mまで接近しなければ警戒行動が増加しなかった。次に、人間の観察がトキの繁殖成績に及ぼす影響を推定した結果、野生絶滅以前の日本産トキについては営巣林への立ち入り規制によってトキの繁殖成績が有意に向上していた。また、年間約 5万人の観光客がトキを目的として佐渡島に来島しており、トキの観光活用がもたらす経済効果は 44.5億円と推定された。トキの生息環境保全に重要な役割を果たす農林水産業に対する波及効果は約 3,460万円、飼育トキの公開施設であるトキの森公園における環境保全協力金収入は約 1,600万円であった。これらより、野生下のトキの観光活用に対して 3つの提言を行う。 1)水田におけるトキの観察は単独個体ではなく群れを対象とし、最短観察距離を 150 mと定めることでトキへの影響を抑制すること。 2)営巣個体への観察圧が日本産トキの繁殖成績を低下させたことを教訓とし、営巣個体についての観光活用は行わないこと。 3)野生下のトキの観光活用においてトキ環境保全協力金を徴収する仕組みを導入するか、トキの森公園との連携を図ること。本稿で示した情報が活用され、トキへの影響を抑制しつつ、観光活用を通じたトキ保護活動の持続可能性確保が実現されることが望まれる。
著者
大竹 文雄 小原 美紀
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.54-71, 2010

本稿では,失業率が犯罪の発生率に与える影響を,1976年から2008年の時系列データおよび,1975年から2005年までの5年毎の都道府県別パネルデータを用いて実証的に分析する.時系列データを用いた犯罪の発生率は,失業率が上昇すると上昇し,人口あたり警察官数が増えると減る.しかしながらこの関係は犯罪種別で異なる.県別パネルデータを用いた分析でも類似の傾向が確認されるが,失業率の上昇よりも貧困率の上昇が犯罪発生率を高める影響が大きいことが分かる.両データを用いた分析により,犯罪の発生率が,犯罪の機会費用と密接な関係をもつ労働市場の状況や所得状況,警察などの犯罪抑止力と整合的な関係にあることが示された.
著者
Nakar Eldad
出版者
三田哲學會
雑誌
哲学 (ISSN:05632099)
巻号頁・発行日
vol.117, pp.89-123, 2007-03

特集記憶の社会学投稿論文はじめに2. 第二次世界大戦を題材とする日本のマンガ 2.1. 1950年代後半から1960年代後半まで 2.1.1. 英雄的な戦闘 : 羅憲的語り 2.1.2 プロットの構成に見られる類似点 2.1.3. 単純なプロット,可愛らしい登場人物,歴史的リアリズム 2.1.4. 悲惨な戦争 : 拒絶された語り 2.2. 1960年代後半から1970年代後半まで 2.2.1. 悲惨な戦争 : 羅憲的語り 2.2.2 プロットの構成の類似点 2.2.3. 個人の証言と女性の記憶 2.2.4. 英雄的な戦闘 : 薄れゆく語り3. 自己を映す鏡 3.1. 1945年~1954年 : 時間の隔たり 3.2. 1950年代後半から1960年代後半まで : 肯定的な過去のイメージの出現 3.3. 1960年代後半から1970年代後半まで : 忌まわしい過去の記憶4. マンガの社会的枠組As the literature on collective memory acknowledges, when individuals recall their past, their memory is a collaborative product, influenced by society, and modeled by the collective frame of the day. Collective memory, scholars agree, is substantiated through multiple forms of communication. To infer on how a certain society remembers its past, scholars, thus, take on the task of investigating various mediums and different cultural productions. In Japan, it seems, however, that scholars failed to include manga into the above comprehension. As if manga is not a medium of communication that abide by the collective memory frame of the day, whenever the issue of collective memories of World War II in Japan has been addressed-and there were ample investigations on the issue so far-only few scholars looked at Japanese manga. Responding to the above tendency, in my paper, I choose to concern myself solely with the fictional representation of WW II over the manga. I seek to put manga tales of WW II against the social environment from which I argue they draw their ideas and worldview. I apt to demonstrate that manga narration of WW II is also a reflection of the different times in which it was produced.
著者
大谷 修
出版者
学校法人 敬心学園 職業教育研究開発センター
雑誌
敬心・研究ジャーナル (ISSN:24326240)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.1-7, 2019 (Released:2019-07-16)
参考文献数
26

消毒や漂白のために用いられる塩素系製剤はしばしば健康被害をもたらす。塩素系製剤である次亜塩素酸ナトリウム(ハイター)は水溶液中で加水分解して次亜塩素酸を生じる。この次亜塩素酸が殺菌効果を発揮する。 次亜塩素酸は排水管などの金属を腐食させる。次亜塩素酸ナトリウムはトイレ掃除に使う塩酸や酸性洗剤と反応して有毒な塩素ガスを生じる。塩素ガスを吸引すると、肺水腫などの重篤な呼吸器障害を生じる。レジオネラ感染を予防する目的で温泉水に次亜塩素酸ナトリウムを加えても窒素化合物と反応してクロラミンを生じるので殺菌効果が小さい。塩素処理したスイミングプールにおいても喘息等を発症するリスクが高まり、アレルギー疾患を増悪する。急性胃腸炎を起こすノロウイルス感染を防ぐには、牡蠣などの生食を避けること、感染者に調理や給仕をさせないこと、およびトイレ、ドアノブ、手すり、壁面スイッチなどを適切な濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を含んだペーパータオルで拭くことが重要である。吐物や便は、まず拭き取ってから、床面を次亜塩 素酸ナトリウム水溶液を含んだペーパータオルで拭く。次亜塩素酸ナトリウム水溶液をスプレー等で噴射するのは次亜塩素酸を含んだエアロゾルを吸引するので健康被害をもたらす恐れがあり危険である。感染防止で最も重要なのは手指衛生を保つことである。ノロウイルスはアルコール抵抗性を示すので、頻回に石鹸と流水で少なくとも20秒間手を洗うことが重要である。
著者
前川 直哉
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.81, pp.5-23, 2007

This paper elucidates historical changes in the images of homoeroticism between male students in the Meiji Era and examines the factors behind this change.<BR><BR>During the Meiji Era, intellectuals subscribed to a morality that prohibited homosexuality. However, some male students, known as <I>kouha</I> (solid students), shared common values that placed a positive value on homoeroticism between male students. They loathed falling victim to womenʼs charms, and aspired to develop ideal relations between themselves and other elite male students.<BR><BR>In the 1900s, the number of girls attending school increased markedly, and the presence of female students increased. These women came to be seen as suitable love or marriage partners for male students. In modern Japan,the emergence of female students helped to form the ideology of romantic love and a new positive image composed of love, marriage, and family.<BR><BR>These changes brought about by the emergence of female students had an impact on the images of homoeroticism between male students. After the 1900s, a form of homoeroticism called "love between men" became popular among the <I>nampa</I> (soft students), and the <I>kouha</I> students lost their monopoly on homoeroticism. However, "love between men" was just a substitute for love between men and women. On the other hand,the kouha students strengthened their belief that they should avoid falling in love, as they thought it was too feminine. Therefore, they called close relations between men "friendships between men," avoiding the use of the word "love." In this way, homoeroticism between male students was separated into "love between men," as an imitation, and "friendship between men." Homoeroticism between male students was transformed into a form adapted to heterosexism.
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.390-410, 2017-04-15
著者
中川 一夫 池内 真理 次田 陽子
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.425-427, 1986-08-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
7
被引用文献数
8 6

植物性食品材料54種中のグルタチオン含有量を酵素サイクリング法を用いて定量したところ, 0.07~28.7mg/100gの範囲にあった. これらの食品材料のなかでは, ホウレンソウ, キャベツ, シロナ, パセリ, キュウリ, カボチャ, トマト, サヤエンドウ, ソラマメ, エノキタケには相対的に高いグルタチオン含有量が認められたが, 動物肝グルタチオン量に比べると低く, およそ10分の1以下にすぎない.
著者
山口 二郎 宮本 太郎 遠藤 乾 空井 護 高橋 伸彰 村上 信一郎 齋藤 純一 杉田 敦 中北 浩爾 小川 有美 小原 隆治 遠藤 誠治 野田 昌吾 宇野 重規 田村 哲樹 宇野 重規 田村 哲樹
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2007

本研究はグローバル化した金融資本主義の矛盾が明らかになる一方、民主政治による政策決定が円滑に進まないという困難な状況において、民主政治をどう再生させるかという問いに取り組んだ。基礎的な再分配政策に加えて、雇用、生活支援などのサービスを市民社会の自発性を引き出す形で展開することで、新たな福祉国家モデルを追求するというのが21世紀的な危機に対する処方箋となることを明らかにした。
著者
大谷 卓史
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.441-444, 2012-09-05 (Released:2012-09-01)
参考文献数
16
被引用文献数
2 1
著者
平山 朝治 Asaji HIRAYAMA
出版者
筑波大学国際日本研究専攻
雑誌
筑波大学経済学論集 = The University of Tsukuba economic review (ISSN:03858049)
巻号頁・発行日
vol.72, 2020-03

2020年3月発行予定「筑波大学経済学論集72号」に掲載予定の著者原稿
著者
川上 和人 江田 真毅
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.7-23, 2018 (Released:2018-05-11)
参考文献数
158
被引用文献数
1

鳥類の起源を巡る論争は,シソチョウArchaeopteryxの発見以来長期にわたって続けられてきている.鳥類は現生動物ではワニ目に最も近縁であることは古くから認められてきていたが,その直接の祖先としては翼竜類やワニ目,槽歯類,鳥盤類恐竜,獣脚類恐竜など様々な分類群が提案されてきている.獣脚類恐竜は叉骨,掌骨や肩,後肢の骨学的特徴,気嚢など鳥と多くの特徴を共有しており,鳥類に最も近縁と考えられてきている.最近では羽毛恐竜の発見や化石に含まれるアミノ酸配列の分子生物学的な系統解析の結果,発生学的に証明された指骨の相同性,などの証拠もそろい,鳥類の起源は獣脚類のコエルロサウルス類のマニラプトル類に起源を持つと考えることについて一定の合意に至っている.一般に恐竜は白亜紀末に絶滅したと言われてきているが,鳥類は系統学的には恐竜の一部であり,古生物学の世界では恐竜は絶滅していないという考え方が主流となってきている.このため最近では,鳥類は鳥類型恐竜,鳥類以外の従来の恐竜は非鳥類型恐竜と呼ばれる. 羽毛恐竜の発見は,最近の古生物学の中でも特に注目されている話題の一つである.マニラプトル類を含むコエルロサウルス類では,正羽を持つ無飛翔性羽毛恐竜が多数発見されており,鳥類との系統関係を補強する証拠の一つとなっている.また,フィラメント状の原羽毛は鳥類の直接の祖先とは異なる系統の鳥盤類恐竜からも見つかっており,最近では多くの恐竜が羽毛を持っていた可能性が指摘されている.また,オルニトミモサウルス類のオルニトミムスOrnithomimus edmontonicusは無飛翔性だが翼を持っていたことが示されている.二足歩行,気嚢,叉骨,羽毛,翼などは飛行と強い関係のある現生鳥類の特徴だが,これらは祖先的な無飛翔性の恐竜が飛翔と無関係に獲得していた前適応的な形質であると言える.これに対して,竜骨突起が発達した胸骨や尾端骨で形成された尾,歯のない嘴などは,鳥類が飛翔性とともに獲得してきた特徴である. 鳥類と恐竜の関係が明らかになることで,現生鳥類の研究から得られた成果が恐竜研究に活用され,また恐竜研究による成果が現生鳥類の理解に貢献してきた.今後,鳥類学と恐竜学が協働することにより,両者の研究がさらに発展することが期待される.
著者
小玉 敏子
出版者
日本英学史学会
雑誌
英学史研究 (ISSN:03869490)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.32, pp.1-11, 1999 (Released:2009-09-16)
参考文献数
17

Some twenty years ago, this writer referred to Exercises in the Yokohama Dialect in Yokohama in the Meiji Era. As Frank Daniels (1948) states, “for all its fooling (humorous 'English' spellings of Japanese words, mock-serious grammatical notes, etc.), ” the pamphlet shows its author to have been “an acute and accurate observer.” The review of the pamphlet in The Japan Gazette (Nov. 1, 1879), reprinted from The New Quarterly Magazine, indicates the author of the pamphlet was Hoffman Atkinson, though his name does not appear on any of the copies this writer has seen. Hoffman Atkinson was a resident of Yokohama for several years and later became secretary of the American Legation in St. Petersburg.No copy of the first edition has been found, but its review is found in The Japan Weekly Mail (Nov. 22, 1873). A copy of the second edition (1874), as well as some copies of the revised and enlarged edition, has been kept in the Yokohama Archives of History. The edition, revised and enlarged by “the Bishop of Homoco, ” was published in 1879, and has been reprinted many times, though the date of reprint is not always included.Some facts about F. A. Cope, whose pseudonym was “the Bishop of Homoco, ” and about John Grigor and Ng Choy, to whom, in addition to Max Muller, the pamphlet was dedicated, have been ascertained.