著者
中島 貴子
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
no.3, pp.90-101, 2005

乳児用粉ミルクに工業廃棄物由来のヒ素化合物が混入して大規模な被害が発生した森永ヒ素ミルク中毒事件は,今年2005年8月24日,公式発表から50年目を迎える.しかし,事件の全体像は今なお把握されていない.被害者に対する恒久救済機関の運営実態への疑問の声もある.被害者の現在を正視すると同時に,事件史の教訓を徹底的に整理する必要がある.病因物質が市場に流通してから恒久救済機関が発足するまでの約20年を振り返ると,食中毒事件における疫学と事故調査の独立性の必要が指摘できる.また,事後対応における行政と専門家の関係についての課題も指摘できる.本格的な歴史研究のためには本事件に関連する一次資料の収集・保存が必要である.
著者
廣田 照幸 佐久間 亜紀 筒井 美紀 徳久 恭子 荒井 英治郎 植上 一希 末冨 芳 布村 育子 森 直人 小野 方資 宇内 一文 丸山 和昭 冨士原 雅弘 長嶺 宏作 古賀 徹 岩田 考 太田 拓紀 清水 唯一朗 二宮 祐 冨士原 雅弘 佐藤 晋平 田中 真秀 金子 良事 長嶺 宏作 香川 七海 中嶋 亮太 高木 加奈絵
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の成果として、a)初期教育研究大会の成立と講師団選出過程、b)日教組結成から1950年までの法的な位置づけと政治的な立ち位置の変容、c)「教え子を戦場に送るな」のスローガンの成立過程、d)人材確保法の成立過程、e)日教組におけるストライキ批准体制の確立、f)1973年春闘におけるストライキ戦術と交渉の解明、g)連合加入をめぐる400日抗争の解明、h)1995年の文部省と日教組の和解のプロセス、i)国際労働運動における日教組の位置を明らかにした。以上の点から、労働運動体と教育運動体としての日教組との二重性をふまえ、日教組の多面的な運動、それぞれに与えた影響を実証的に明らかにした。
著者
永岡 美佳 藤田 博喜 中野 政尚 渡辺 均 住谷 秀一
出版者
日本保健物理学会
雑誌
保健物理 (ISSN:03676110)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.104-113, 2013 (Released:2014-03-06)
参考文献数
25
被引用文献数
1 4

Monthly deposition samples were collected at the Nuclear Fuel Cycle Engineering Laboratories located about 115 km south of the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant (NPP), and the radioactive nuclides were analyzed. Although radionuclides such as 131I, 129mTe-129Te and 132Te-132I with 134Cs and 137Cs were observed by gamma spectrometry at the early time of the Fukushima Daiichi NPP accident, only 134Cs and 137Cs were detected as of September 2011. The annual depositions of 134Cs and 137Cs were about 19,000 and 17,000 Bq m-2, respectively in March 2011-February 2012 after the accident. Moreover, 90Sr was detected in some samples. Monthly 90Sr deposition in March 2011 was 5.1 Bq m-2 month-1 and then decreased after that. On the other hand, 239, 240Pu concentration was the same level with the concentration before the accident.

240 0 0 0 OA 軍用記 7巻

著者
伊勢貞丈 著
出版者
巻号頁・発行日
vol.[4],
著者
髙久 宏佑 諸澤 崇裕
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
pp.2109, (Released:2021-10-31)
参考文献数
27

日本における観賞魚飼育は古くから一般的なものであり、近年では希少性や美麗性から日本に生息する絶滅危惧魚類も取引対象として扱われるようになってきた。さらにネットオークションによる取引の増加に伴い、個人等による野外採集個体の消費的な取引の増加も懸念されているが、一方で絶滅危惧種の捕獲、流通に係る定量的データの収集は難しく、種ごとの取引現況について量的な把握が行われたことはない。そこで本研究では、環境省レッドリストに掲載されている 184種の絶滅危惧魚類の取引の実態把握を目的として、ネットオークションにおける 10年間分の取引情報を利用した大局的な集計と分析を行うとともに、取引特性の類型化を試みた。取引データ集計の結果、ネットオークションでは 88種の取引が確認された。また、全取引数の過半数以上は取引数の多い上位 10種において占められており、さらにアカメ、オヤニラミ、ゼニタナゴの 3種の取引が、そのうちの大部分を占めていた。取引数や取引額、養殖や野外採集と思われる取引数等を種ごとに集計した 6変数による階層的クラスター分析の結果では、 8つのサブグループに分けられ、ネットオークションでの取引には、主流取引型、薄利多売型、高付加価値少売型等のいくつかの特徴的な類型を有することが分かった。また、特に多くの取引が確認されたタナゴ類の中には、養殖個体として抽出された取引が多く認められる種がおり、一部の種については、他の観賞魚のように養殖個体に由来する取引が主流になりつつある可能性が考えられた。
著者
砂野 唯
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.109, no.12, pp.866-873, 2014 (Released:2018-04-09)
参考文献数
14

科学的にも,また,文化人類学的にもアフリカのアルコール飲料の研究は魅力的である。アフリカのアルコール飲料には様々な原料が使用されており,未だに十分な調査がされていないものや希少な酒は数多い。本稿では,食事として摂取されるエチオピアの珍しいアルコール飲料について解説して頂いた。
著者
三浦 麻子 小林 哲郎
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.1-12, 2015-08-31 (Released:2015-09-09)
参考文献数
33
被引用文献数
35 1

This study focused on satisficing in online surveys—behavior in which panels do not devote an appropriate amount of attentional resources when answering questions. It carried out questionnaire surveys that could not be answered properly without closely reading the instructions and questions to empirically investigate the prevalence and patterns of satisficing. To detect satisficing tendencies, a screening survey was conducted with questions that necessitated a close reading of the instructions, while the main survey used questions that required a close reading of the item content. Identical surveys were carried out at two different survey companies, and results showed that satisficing due to skipping instructions occurs very frequently. Furthermore, while satisficing due to skipping scale items appears to be relatively rare, trends in satisficing differed between the survey companies. These results indicate one method for preventing satisficing, which was discussed in relation to the merits and demerits of screening respondents with satisficing tendencies.
著者
曽宮 正晴 岡田 玲緒奈 木下 喬弘 安川 康介 曽宮 正晴 岡田 玲緒奈 木下 喬弘 安川 康介 曽宮 正晴 岡田 玲緒奈 木下 喬弘 安川 康介
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.29-38, 2022-09

2019 年に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は,人類に甚大な影響を与えた未曾有のパンデミックであり,COVID-19 に対する最も有効な対策としてワクチンが注目された.新型コロナウイルスに対するワクチン(以下,新型コロナワクチン)の開発は,mRNA ワクチンやベクターワクチンという新しい技術を基にしたものが先行した.このことも影響し,国内承認を目前にメディアやSocial Networking Service(SNS)では連日,不安を煽る不正確な情報が氾濫する状況にあった.パンデミックの収束の大きな鍵となるワクチンの接種率を高めるためには,こうしたワクチン忌避を解消する取り組みが喫緊の課題であった.「こびナビ」は,日米の医師を中心とした新型コロナワクチン啓発プロジェクトであり,新型コロナワクチン及び新型コロナウイルス感染症に関する正確な情報を発信する目的で,2021年2月に設立した.特徴は専門家集団が議論を通じて科学的根拠に基づく情報を提供したことであり,発足当初より様々なSNS を活用して,より多くの人に正確な情報を発信する活動を行なってきた.本報告では特に,Clubhouse やTwitter,Instagram 等のSNS を利用した,科学的根拠に基づいたタイムリーな科学・医療コミュニケーションの実践について述べる.本活動の実践の記録が,今後の科学・医療コミュニケーションの一助になるものと期待する.

238 0 0 0 OA 平治物語[絵巻]

出版者
住吉内記 [ほか写]
巻号頁・発行日
vol.第2軸 信西巻, 1700
著者
井深 雄二
出版者
名古屋工業大学
雑誌
名古屋工業大学紀要 (ISSN:0918595X)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.43-51, 1996-03-31
著者
Tomomi Kinoshita Ryu-ta Abe Akiyo Hineno Kazuhiro Tsunekawa Shunya Nakane Shu-ichi Ikeda
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
Internal Medicine (ISSN:09182918)
巻号頁・発行日
vol.53, no.19, pp.2185-2200, 2014 (Released:2014-10-01)
参考文献数
49
被引用文献数
57 97

Objective To investigate the causes of neurological manifestations in girls immunized with the human papillomavirus (HPV) vaccine. Methods During the past nine months, 44 girls visited us complaining of several symptoms after HPV vaccination. Four patients with other proven disorders were excluded, and the remaining forty subjects were enrolled in this study. Results The age at initial vaccination ranged from 11 to 17 years, and the average incubation period after the first dose of the vaccine was 5.47±5.00 months. Frequent manifestations included headaches, general fatigue, coldness of the legs, limb pain and weakness. The skin temperature examined in 28 girls with limb symptoms exhibited a slight decrease in the fingers (30.4±2.6°C) and a moderate decrease in the toes (27.1±3.7°C). Digital plethysmograms revealed a reduced height of the waves, especially in the toes. The limb symptoms of four girls were compatible with the Japanese clinical diagnostic criteria for complex regional pain syndrome (CRPS), while those in the other 14 girls were consistent with foreign diagnostic criteria for CRPS. The Schellong test identified eight patients with orthostatic hypotension and four patients with postural orthostatic tachycardia syndrome. The girls with orthostatic intolerance and CRPS commonly experienced transient violent tremors and persistent asthenia. Electron-microscopic examinations of the intradermal nerves showed an abnormal pathology in the unmyelinated fibers in two of the three girls examined. Conclusion The symptoms observed in this study can be explained by abnormal peripheral sympathetic responses. The most common previous diagnosis in the studied girls was psychosomatic disease. The social problems of the study participants remained unresolved in that the severely disabled girls stopped going to school.
著者
福井 隆雄 木村 聡貴 門田 浩二 五味 裕章
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.407, pp.37-42, 2006-11-28
参考文献数
5
被引用文献数
1

停止しているエスカレータに乗り込む際に違和感を持つことは多くの人々が経験する現象の1つである.従来は,停止していると認識しているにも関わらず,「動いているエスカレータ用」の運動プログラムが乗り込む前から働き,予測と実際の感覚フィードバックの不一致のため違和感が生じると説明されてきた.また,最初の段差が他に比べて低いといった構造的な不均一性によって違和感が生じるのではないかとも考えられた.本研究では,稼働中のエスカレータ,停止中のエスカレータ,段差の構造をエスカレータに似せた木製階段への運動における運動学的特性を比較検討した.その結果,停止エスカレータに乗り込むまでは,「止まっているエスカレータ」として適切に認識し運動していることが示された.そして,停止エスカレータに乗込んだ後に,身体が前の方に急激に傾く振る舞いが観察された.これは,木製階段では見られず,停止しているエスカレータ固有のものであった.このことから,停止しているエスカレータに乗り込んでから,「動いているエスカレータ用」の運動プログラムが潜在的に駆動されている可能性が示された.また,違和感については停止しているエスカレータ,木製階段への運動における内観評定を行った.内観評定については,木製階段においてはほとんど違和感が生じなかったのに対し,停止しているエスカレータでは乗り込み後,違和感と相関する行動指標が同定された.違和感は構造的不均一性により引き起こされるものではないことが示された.