著者
園山 繁樹
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

家庭では会話ができるにもかかわらず、学校等で話せなくなる選択性緘黙については、いまだわかっていないことが多い。本研究では質問紙調査と事例研究を行い、以下の成果を得た。a)選択性緘黙の状況は個人差が大きく多様である。b)小学校低学年以下の子どもには、教師・親・コンサルタントによる協働的アプローチが有効である。c)小学校高学年以降では、本人の自発性を強化するアプローチの有効性が示唆された。
著者
剣持 久木 近藤 孝弘 西山 暁義 川喜田 敦子 吉岡 潤
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、ドイツ、ポーランド、フランス各地で、歴史博物館、教科書対話そして学術交流の現状を視察し、各国から専門家を招請して、数多くのシンポジウムを開催してきた。その結果、ヨーロッパ公共圏の形成の展望とともに、現在依然存在している限界の実情も確認できた。本研究の成果は、2016年度中に公刊予定の論文集に掲載する予定である。そこでは、独仏(西山)、独ポ(吉岡)国境地域の歴史博物館、ドイツ(川喜田)とフランス(剣持)における歴史教養番組、さらには歴史娯楽教育(近藤)の分析に加えて、ドイツ、ポーランド、フランスの研究者からの寄稿も予定している。
著者
伊藤 隆 御厨 貴 季武 嘉也 有馬 学 武田 知己 小池 聖一 梶田 明宏
出版者
政策研究大学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

近代日本史料情報の収集、整理、公開及び将来期待される史料情報機関への提言作成を目的として以下のような研究成果をあげた。1、史料収集ア)ヒアリング調査。史料所在に詳しい研究者を合計19名招聘し、ヒアリングを実施した。イ)史料所在調査。史料所在情報を収集するため、12回の出張を行った。さらにさまざまな史料目録類を収集した。また、中央官公庁に対し精力的に所蔵史料の問い合わせを行った。2、史料整理多くの研究協力者に手伝ってもらって、収集した史料群約20文書の整理を行った。その一部は既に目録を活字化したが、全体の量は膨大であったので残念ながら作業は完結せず、今後も整理を続行する予定である。3、ホームページの充実以前より開設しているホームページ(http//:kins.grips.ac.jp)に情報を追加するなど、その充実をはかった。また、他機関が行っているインターネット上での史料情報公開に関して考察を加え、その問題点等を探った。5、新機関への提言我々は会合の都度、どのような史料情報集約機関が望ましいのか、情報を交換し話し合ってきた。以上、詳細については研究成果報告書に譲るが、そのほかに本研究の成果を中心として『近代日本人物史料情報辞典』(仮題)という刊行本を出版する予定である。
著者
吉村 誠 葛 崎偉 中田 充
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は,頭に浮かぶイメージから的確な言語表現を見いだす「思考イメージの言語表現支援システム」を実現することを目的としており,以下のような技術の開発を行うものである.1)単語から連想語を導き出す機構を構築する.2)単語から文例を導き出すプロセスを実現する.3)1)と2)を統合することにより,「思考イメージの言語表現支援システム」を実現する.1)を実現するために,概念階層を持つ連想語辞書を構築した.また,2)のために毎日新聞社の新聞記事データを用いた文例DBを実装した.連想語辞書の構築にあたっては,基準辞書としてEDR電子化辞書を用い,その概念階層を利用して連想語を求める仕組みを構築した.その際,EDR電子化辞書の「関連概念」と,他の電子化辞書中の関連語,反義語などを登録できる機能を辞書システムに持たせることで,概念体系を横断した検索を実現した.文例DBでは,指定されたキーワードを含む文例を高速に検索する必要があるため,連想語辞書にある単語と文例データベース中の文例との間の対応表を作成し,全文検索を行う際の時間の短縮を実現した.さらに,キーワードを入力して,文例を提示する「思考イメージの言語表現支援システム」のプロトタイプを作成した.最後に,連想語辞書の妥当性を検証するために,50人程度の被験者に対してアンケートを行い刺激語から導き出された連想語が被験者にとって妥当であるかどうかを評価した.その結果,妥当な連想語が求められているものの,ある種の連想語についてはその妥当性に問題があることも判明した.また,刺激語・連想語から導き出した文例についてもその妥当性を検証するため,同様のアンケート調査を行った,その結果として,多くの場合妥当な文例が得られているものの,特定の場合において妥当性が低い文例が得られていることが明らかになった.
著者
生田 宏一 谷一 靖江 原 崇裕 今井 久美子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

IL-7は胸腺や骨髄のストローマ細胞や上皮細胞が産生するサイトカインであり、リンパ球の増殖・生存・分化・成熟に不可欠である。しかしながら、リンパ組織におけるIL-7産生細胞の分布と機能については不明の点が多い。我々は、この問題を明らかにするために、まずIL-7-GFPノックインマウスを作製した。IL-7-GFPマウスでは骨髄ストローマ細胞、胸腺上皮細胞、腸管上皮細胞とともに、リンパ節やパイエル板のT細胞領域ストローマ細胞やリンパ管内皮細胞でGFPが発現していた。さらに、DSSにて大腸炎を誘導すると大腸上皮細胞におけるGFPの発現が上昇した。したがって、IL-7-GFPマウスは生理的ならび病的状態におけるIL-7産生細胞を明らかにするために有用であることがわかった。次に、我々はIL-7-floxedマウスを作製した。このマウスをFoxN1-Creトランスジェニック(Tg)マウスと交配し、胸腺上皮細胞でのみIL-7を欠損したコンディショナルノックアウト(cKO)マウスを得た。FoxN1-Cre IL-7flox/floxマウスでは胸腺の全細胞数とγδT細胞数が1/15に減少した。一方、腸管上皮細胞でのみIL-7を欠損したVillin-Cre(Vil-Cre) IL-7flox/floxマウスでは、小腸のαβIELにほとんど変化がなく、またγδIELも30%程度減少しているもののかなりの数が残っていた。これらの結果から、胸腺上皮細胞が産生するIL-7が胸腺細胞の増幅と生存に大きなはたらきをしていることが明らかとなった。さらに、小腸のγδ型上皮内リンパ球が著しく減少したことから、この細胞集団が胸腺に由来することが示唆された。次に、Albumin-Cre(Alb-Cre) Tgマウスと交配し、肝細胞でのみIL-7を欠損したcKOマウスを得た。このマウスでは成体肝臓のNKT細胞とT細胞が減少し、胎児肝臓におけるB細胞の分化が低下していた。この結果から、肝細胞が産生するIL-7が肝臓におけるNKT細胞の維持やB細胞の分化に一定のはたらきをしていることが明らかとなった。
著者
中田 誠一 角谷 寛
出版者
藤田保健衛生大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

平成22年度から平成24年までの3年間で北海道八雲町での1年に1回の耳鼻咽喉科地域検診と睡眠や眠気に対してのアンケート調査を行い、かつ簡易睡眠呼吸検査装置を地域に常備し行っていった。睡眠時無呼吸は無呼吸低呼吸指数.が、10.6±7.7回/hrであり、高齢者の数値として考えると病的というより加齢に応じた無呼吸が徐々に進行していると思われた。また睡眠の質の調査では入眠障害や中途覚醒よりも、より早朝覚醒での訴えが多かった。
著者
中島 貴子
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

行政機関における化学物質の人体毒性評価に関する日本と米国の決定的な差異をもたらしている最大の理由は、両国におけるレギュラトリ・サイエンスの在り方の相違によるものである、という前年度の研究成果を踏まえ、今年度は、「レギュラトリ・サイエンス」という概念の発展経緯について日米比較を行った。その結果、以下の結論および仮説を得た。(1)欧米でレギュラトリ・サイエンスという概念の普及にもっとも貢献したのは、科学論者であり、法学者であるシェーラ・ジュサノフ(ハーバード大学教授)である。彼女は1990年、リサーチ・サイエンスとの相対比較によってレギュラトリ・サイエンスを定義した。その視点はすぐれて社会学的。(2)一方、日本ではジャサノフとは全く独立に、内山充(元東北大学教授、薬剤師研修センター理事)が1970年という早い時期からからレギュラトリ・サイエンスの概念を打ち出していた。その内容は、レギュラトリ・サイエンスには従来の科学とは全く異なる目的・方法が必要とされる点を明示するもので、自然科学的かつ創造的。(3)しかしながら、レギュラトリ・サイエンスの規模、レベルにおいて、日本はアメリカよりもはるかに劣っているといわざるを得ない。その理由は、第一に、日本では内山の意図するレギュラトリ・サイエンスの真意や価値が、本来、レギュラトリ・サイエンチストを輩出すべき大学や、自らレギュラトリ・サイエンチストたるべき国立系研究機関で十分な理解を得られなかったこと。第二に、内山の影響力を医薬品行政にとどめ、他の関連行政には伝播させないような、省庁間の壁が厚かったことが考えられる。(4)したがって、今後、日本で健全なレギュラトリ・サイエンスを育むためには、レギュラトリ・サイエンスに関する内山の先駆的な主張に、大学、国立系研究機関ならびに関係省庁が真摯に耳を傾ける必要がある。
著者
江本 直也
出版者
日本医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

2型糖尿病の基本的治療は食事制限と適切な運動である。しかし、それぞれの生活習慣の改善は簡単ではない。2型糖尿病治療に対する解決法を考案するため、血糖コントロールの悪い糖尿病患者に対して神経経済学的観点から行動経済学的アンケート調査を試みた。その結果、1型と2型糖尿病は基本的に異なった疾患であること、2型糖尿病の中年の患者では定量的リテラシー能力が低いこと、このことが糖尿病発症に関与している可能性があり、アンケートの回収率が低くなる要因でもあり、さらに、ここに先送り傾向が重なると合併症が進行することが示された。
著者
川又 勝子 佐々木 栄一
出版者
東北生活文化大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

かつて仙台地方で隆盛した型染めである注染による浴衣・手拭いの資料を調査・収集し、これら文様の電子保存と、破損文様の電子的修復を試み、591枚の型紙文様を収録することができた。さらに染見本や、手拭い図案カード等771種類の文様も電子保存し『仙台型染資料集IV~VI』を作成したことで、これまで散逸していた仙台地方の伝統染色に関する資料を集約することができた。これら文様は、型紙の復刻やデジタルプリント等へも応用できる。
著者
廣津 信義 宮地 力
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

記録系・採点系・格闘技系五輪競技として、陸上(リレー競技) ・体操・柔道を主な対象とし、競技をシステムして捉えて定式化する数学モデリングを行った。リレー競技については、合計タイムの確率分布を算出するモデル、体操については、団体戦での総合得点の確率分布を算出するモデル、柔道については、団体戦でのチーム・選手を相対評価する AHP (Analytic Hierarchy Process)を用いたモデルを作成した。指導者の意見を反映し競技現場で適用可能な数学モデルを提示することができた。
著者
三浦 玲一 川端 有子 戸田山 みどり 渡辺 美樹
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

戸田山の日本における『ちびくろサンボ』の受容史研究から、児童文学の評価においては、「優れた」作品であることが、(児童文学として)「教えるに値する」という価値観/イデオロギーと密接に繋がっていることが示された。渡辺の考察は、このことと関連して、児童文学においては、先行する作品から断絶することで成立する独創性(オリジナリティ)の重視が比較的希薄なこと、同時に、ある種の作品においては、児童文学のコンヴェンション/規範に積極的に依拠しようとする姿勢が見られ、それが評価されていることを調査した。非政治的な「美学的価値」や作者の「オリジナリティ」の虚構性は、いわゆる文学研究においても(多くの論争を巻き起こしながら)既に指摘されている点である。本研究は、そのような性質が、より明示的、あからさまに承認されている場としての「児童文学」を対象とした。個々の作品がその固有性としてもつ、オリジナルな美学的価値とは、20世紀初頭のいわゆるハイ・モダニズムの時代に、芸術としての文学という体制が確立すると共に、自明視されることになる。エレイン・ショウォールターの著作に代表されるような、歴史的なジェンダー研究は、このハイ・モダニズム体制の成立を、文学が(性的な含意を伴った)「表現」として認知される過程と同時進行し、それゆえ、このような美学の成立は、世紀転換期のジェンダー配置の転換と、密接に結び付いていることを示唆している。三浦および川端の研究は、クィア理論以降の拡張されたセクシュアリティの理解から見るとき、児童文学のテクストとみなされるものも亦、セクシュアリティ、ジェンダーの力学から構成されており、そこでは、「児童文学」であることからむしろ積極的に、伝統、規範に依拠しようとしつつ、そのことでむしろ逆説的に、転覆的なジェンダーを描くこととなった諸作品のありようを考察した。
著者
田中 秀数 小野 俊雄 栗田 伸之 佐藤 卓
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

我々はフラストレーションの強いスピン系での顕著な量子効果を調べた。まず,我々はBa3CoSb2O9の磁化過程を測定し,全磁場領域で磁化曲線が理論と一致することより,この物質が理想に近いスピン1/2三角格子反強磁性体であることを示した。続いて,スピン1/2籠目格子反強磁性体Cs2Cu3SnF12の磁気励起を中性子非弾性散乱で測定し,励起エネルギーが通常とは逆に,スピン波理論で求めた値よりも大きく減少する負の量子再規格化現象を発見した。更に,新規ダイマー磁性体Ba2CoSi2O6Cl2を合成し,その強磁場磁化過程を測定することより,磁場中でマグノン結晶ができることを見出した。
著者
一階 千絵
出版者
群馬県立女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は、九州地方で民俗芸能として行われている女相撲と、専業の女力士による女相撲興行の関係性を文献資料より明らかにしていくことを目的とするものである。九州における民俗芸能の女相撲のうち、興行女相撲の影響により始められたとされる事例は、長崎市式見のもののみであった。しかし、昭和御大典(1928)時に仮装、余興として女相撲が始められたとする事例が複数あり、これは女相撲興行が盛んに行われていた時期と重なることから、間接的な影響として、女性達が仮装、余興のモチーフとして力士や相撲を選択する土壌を作った可能性を指摘できる。
著者
田垣 正晋
出版者
大阪府立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

市町村障害者基本計画における、質問紙調査の自由記述データ、グループインタビュー、ワークショップの記録といった質的データの活用方法を、いくつかの自治体の実例をもとに検討した。分析手法としてはKJ法のみならず、テキストマイニングを適宜組み合わせたほうが、調査実施者の「アカウンタビリティ」の維持には有効と考えられた。調査結果は「事実」の同定というよりも、関係者が新しいストーリーを生み出す題材として、質的データは重要であることがわかった。
著者
徳丸 亜木
出版者
鹿児島大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

本科研においては、鹿児島県薩摩半島の森殿信仰、山口県豊浦郡豊浦町のモリサマ信仰、沖縄県宮古島の御嶽信仰を調査対象として、各信仰対象に纏わる伝承がいかなる経緯で形作られ、或いは、古い伝承から別の形へと再構成されてゆくかを捉える事を目的として、平成九年度、ならびに十年度にかけて調査、研究を継続した。伝承の再構成過程を最も明確になし得たのは、山口県下のモリサマ信仰であり、そこで、伝承者と民間宗教者との相互作用的なコミュニケーションに基づく伝承再構成過程の特質として以下の諸点を明らかに成し得た。一、 民間宗教者の「森神」祭祀への関与は、「森神」を死霊の祭り場とする祭祀者側の意織に基づいて行われる。そこには土地の霊を祀るとする地霊祭祀の観念が接合しており、祭祀者は死霊祭祀の意識を枠組みとして、民間宗教者からの伝承への後次的な脚色を受容し、その由来伝承の再構成を行う。二、 多くの場合、「異人殺し」伝承が創出、あるいは付加される。集落の外部より寄り来る「異人」は、地域の歴史的コンテキストと対応のもとで落人と位置づけられ由来伝承が構成される傾向が強い。その場合、民間宗教者により、「森神」は落人が死んだ土地であると、地域の歴史的コンテキストに合致した解説がなされる。三、 祭祀者と落人の死霊との関係は、一つは、その先祖自体が、その「生きた時間」において落人の死に何らかの形で関わり、その家筋に連なる子孫に、死霊による崇りなどの発現が生じるという形で現れる。今一つは、死霊が宿る土地を屋敷地としている、あるいは所有している事を理由として、自己の帰属する家と「森神」との因果関係を意識する。四、 「森神」に対する死霊祭祀の場としての意識、および家筋や死霊が宿る祭地への居住や土地所有に基づく祭家への帰属意識が、その死霊の祭家に対する崇り発現の背景にある。旧来から「森神」が祭祀されていた事例の場合、家の生活史上生じた危機的状況の災因は、家に関わる死霊の存在に帰結され、家の盛衰と死霊祭祀との因果関係が因縁として意識される。この過程で、家の生活史上の様々な出来事がいわば、家の内包的なコンテキストとして、「森神」にまつわる伝承に取り込まれ再構成されてゆく。五、 また、家に危機的状況が生じた時点で、「森神」が民間宗教者によって新たに創出される場合もある。この場合も、その「森神」に対する民間宗教者の「解説」は、その家の構成員の信仰的な意識の枠組み、背景としての家の生活史上の事件(家の内包的コンテキスト)、地域の歴史的コンテキストを接合してゆく形で提示され、結果として死霊祭祀の由来伝承を持つ「森神」が創出される。六、 こうした「森神」伝承の再構成過程は、民間宗教者と祭家との間で、相互の信仰世界に影響する形で生じ、その相互作用の中で「森神」の伝承は活性化され、再構成される場合もある。七、 以上の様な伝承再構成過程を示す家の家族員には、家の生活史上の危機的状況を、信仰的な側面での解決に求める様な、特有のパーソナリティが認められる。そうした家では、宗教者の解釈を受けつつ、「森神」に対する意識を一定の枠組みの中で再構成してゆき、その帰結として日蓮系宗教者の祭祀を受容する。反対にその様なパーソナリティが希薄な家では、家の危機的状況が生じても、その原因は信仰的側面に帰結されず、「森神」伝承の再構成には結び付いて行かない。
著者
酒井 邦嘉
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

左前頭葉の一部「文法中枢」に脳腫瘍がある患者で純粋な文法障害が生じることを実証しました。左前頭葉に脳腫瘍を持つ患者に文法判断テストを実施し、その腫瘍部位を磁気共鳴映像法(MRI)で調べたところ、左前頭葉の一部である「文法中枢」に腫瘍がある患者では、左前頭葉の他の部位に腫瘍がある患者より誤答率が高くなりました。臨床的には失語症と診断されていないにもかかわらず、今回のように顕著な文法障害(「失文法」)が特定されたのは初めてのことです。
著者
折山 早苗 宮腰 由紀子 小林 敏生
出版者
県立広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

16時間夜勤時の看護師の眠気、疲労感および睡眠状況ならびに夜勤時にとる仮眠の影響を明らかにし、パフォーマンス維持に効果のある仮眠のとり方を実施した。まず、質問紙調査を行い、眠気や疲労感の増加する時刻などを明らかにした後に夜勤時の仮眠のとり方を決定し、夜勤時の仮眠時間ならびに仮眠開始時刻の条件をかえて、実験室で行った後に、臨床実験を行った。仮眠開始時刻によって朝方にかけて眠気、疲労感、パフォーマンスの変化が異なることが明らかとなり、パフォーマンス維持効果のある仮眠のとり方が明らかになった。
著者
篠原 和大 藤井 道彦 小松 かおり
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

弥生時代の農耕集落として著名な登呂遺跡の復元された環境を活用しながら、弥生時代の農耕を中心とする生業のありかたを具体的に復元することを試みた。復元された水田での栽培実験や静岡・清水平野を中心とした弥生遺跡の検討、レプリカ法を用いた植物資料の収集をおこなった結果、「登呂モデル」としてある地域で弥生時代に農耕が形成され展開していく過程を示すことができた。
著者
山本 淳司
出版者
京都大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

SDに係る議論は、FDと同様に具体論の展開が求められるが、一般論としてのアドミニストレーター論が中心で、現場の職員が業務の改善を実感できる道筋を提示しきれていない。これらを解決するため、(1)定型的な実務を含む現場の職員業務を階層化した上で分析し、OJT (On-the-Job Training)への組入れを念頭に置き、業務改善の具体化を検討すること、(2)業務改善案をシミュレートし強い職員組織を提案すること、を研究の目的として設定し、この目的を遂行するために以下のような段階で進めた。1) 対象となる職員業務と職員層の特定…教学関係のマネージャークラスを主対象2) 業務の適切性を判断し業務を分析…業務プロセス等を整理3) 実務分析に基づく業務内容の見直し…業務内容が明示できるかを確認4) 業務に必要な資質や能力等の検討…予め提示の場合も検討(事務分掌規程等を参考)5) 実務に基づくSD分析のOJTへの組入れ…人事制度と連動している先行事例を参照6) 強い職員組織の提案を行うべく検討…フィージビリティを考慮研究を進めるに当たっては、代表者が関与している他の研究課題における意識調査等の一部も参考に、先行研究にも意識しながら進めた。比較検討においては、業務改善を前提として業務フロー等を確認すると、組織論的にみてプレイングマネージャーがミドルアップダウンの機能を果たすか否かに関わらず、職務説明書が予め明示され、求められた業務遂行能力等を持った職員が大学のミッションやコンプライアンスを意識し、意欲を持って業務を誠実に遂行していれば、業務はスムーズに行われていることが分かった。また、業務の対象を限定してフロー等を確認すると、業務改善に資することもあるが、大括りのjob間の重複業務等の調整には至らないため、業務全体の組換えを前提として業務に適合した組織を構築する方が望ましい等の課題が見えてきた。個々の職員を見た場合の背景として、我が国の労働慣行ともいえる無限定な業務へのスタンス等を求めることは必ずしもプラス効果を発揮していないことが考えられる。強い職員組織の提案は、その裏付けとして単純な想定しかできなかったが、今後、実務に直結した面談調査も踏まえて、更なる成果を挙げ人事制度と連動したプログラムの試行に繋げて行く計画である。
著者
佐藤 環
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究においては、近代日本における中等学校学科課程への弓道教育導入過程に関してその歴史的特質を考察した。まず、学科課程に弓道教育が導入可能となった昭和戦前期の全道府県の学校種ごとに実施状況をデータベース化して全体像を明らかにした。次に山形県を事例とした旧制中学校の弓道教育については、山形県中等学校体育連盟主催の体育大会で活躍することを目標にして活性化がなされた。最後に、東京府、茨城県および新潟県における高等女学校では、殆どの学校で弓道部活動が行われており男子校に比べて活発であった。戦前期中等学校における弓道教育は、主として女子中等学校に浸透していたことが明らかとなった。