著者
森平 雅彦
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、高麗時代の朝鮮半島に元朝治下の中国より朱子学が伝来・普及した背景について、対元関係を軸に解明するものである。最終年度となる本年度は、まず13世紀末から14世紀初頭にかけての初期段階において、高麗知識人が朱子学を摂取するにいたった契機として、元の禿魯花(turγaγ=質子)制度、および禿魯花が充当されるケシク(kesig=皇帝の宿衛)制度との関連性を総合的かつ詳細に解明した。すなわち根本資料の一角をなす「崔文度墓誌銘」(韓国国立中央博物館所蔵)や『櫟翁稗説』(お茶の水図書館所蔵)の実物調査をふまえた考察を通じ、当該期には安〓・白頤正・李斉賢・崔文度などの朱子学先駆者が、みな禿魯花として、あるいは禿魯花をへてケシクの構成員となった国王・王族のケシク勤務に随従して元都に長期滞在し、そのなかで朱子学に触れた状況が実証的に解明され、元との政治関係が朱子学伝播を媒介する構造の一端が明らかになった。以上の成果は12月9・10日開催の九州史学会大会(於九州大学)において「朱子学の高麗伝来と元朝ケシク制」と題して発表した。また14世紀の状況について両国交流の制度的環境(外交・交通など)を含めた基礎リサーチを完了した。すなわち14世紀前半には、元で開始された科挙への応試が高麗国内の朱子学学習熱を刺激し、かかる背景のもとで国家規模の蒐書事業が推進され、また高麗国内でも朱子学書が刊行されるにいたった。さらに双方の交流パイプが拡大・深化するなか、元の儒教振興政策・中国知識人の高麗訪問、高麗人の元での科挙受験や仕官にともなう人的交流や留学機会の増加、交易商品としての書籍移入など、朱子学の学習契機にも多様化がみられた。その後14世紀後半には元との関係が冷却化するものの、移入された元版本やその複製本の刊行による基盤整備のもと、高麗国内における朱子学振興の態勢が強化されていったとみられる。
著者
戸井田 宏美
出版者
千葉大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

湿潤な日本において,現在の細霧冷房法は細霧噴霧速度や噴霧時間は気象条件などによらず一定であり,日射強度や換気速度を考慮して可変とする制御法の検討が十分でないために,温室内気温の不均一化,高相対湿度,蒸発しきれなかった水滴の植物表面への付着による病害発生などの問題がある.本年度は,比較的小規模の実験用植物生産施設において,上記の問題を解決することを目的として(1)細霧発生方法の改良および(2)細霧発生量制御方法の改良について,短期的な効果の検証を行った.(1)日射のない室内において細霧ノズルに直径10cmの送風装置を取り付けて強制通風した場合の細霧蒸発率は,従来の送風装置のない場合に比べて1.6倍の95%となり,ノズル直下の気温水平分布もより均一となった.送風装置の効果により発生させた細霧のほとんどが蒸発するために,植物に未蒸発細霧が付着して病害が発生する危険を回避でき,細霧冷房システムを連続運転できることが示された.(2)従来,細霧冷房システムは未蒸発細霧を蒸発させるためにタイマー制御による断続噴霧を行うが,これにより気温および相対湿度の急激な変動が起こる.また,噴霧速度および噴霧時間は気象条件などによらず一定であった.(1)の細霧冷房システムを小型植物生産施設内に設置し連続運転を行った結果,未蒸発細霧の植物表面への付着は見られず,施設内気温を外気温より常に低く維持でき,かつ,気温および相対湿度の変動を減少させることができた.さらに,噴霧速度を可変とすることにより気温低下幅も可変となったため,連続運転制御法を確立するための基礎知見を得ることができた.植物生産施設内気温の測定には,通常,通風乾湿球計を用いるが,細霧冷房システム運転中には未蒸発細霧がセンサー部に付着して,実際の気温よりも低い数値を計測してしまう問題があることが本研究中に明らかとなった.そのため,細霧冷房システム運転中の正確な気温の測定法についても検討を行い,新たな測定法を提案した.
著者
林 真紀夫 谷 晃
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

細霧システム利用に関する試験を行い、以下の成果が得られた。1.冷房時の温室内環境の把握実用規模の大型温室において細霧冷房時の環境計測を行い、細霧の断続噴霧運転における、温室内の温湿度環境の経時変化の実態を明らかにした。2.換気率解析細霧冷房では、温室の換気率の大小が温湿度環境に大きく影響することから、日本型温室と大型フェンロー温室で換気率測定を行い、実態を把握した。3.運転制御法の検討細霧冷房では一般に断続的細霧噴霧を行う運転制御が行われている。1時間当たりの噴霧量が同じ場合に、どのような細霧噴霧周期が適当かを検討した。その結果、1回当たりの噴霧時間を短くすることで、温湿度変動幅が小さくなり、未蒸発細霧の落下が少なくなることが判明した。4.細霧冷房設計用ソフトウェア開発温室諸元、屋外乾湿球温度、温室内吸収日射量のパラメータを与えることで、温室の換気率および温室内蒸発散量との関係で温室内気温および相対湿度を推定することのできるVETH線図(Ventilation-Evaporation-Temperature-Humidity関係線図)をコンピュータ画面上で描くソフトウェアを開発し、細霧冷房設計に役立てられるようにした。5.薬剤散布における細霧付着の改善細霧システムを利用した薬剤散布において、葉表面および裏面への薬剤付着量を調べた。この結果、葉裏面への付着量は極めて少ないことが明らかとなった。しかし、攪拌扇による空気攪拌によって、葉裏面への付着量が若干増加することが確認できた。
著者
佐瀬 勘紀 石井 雅久 池口 厚男 蔵田 憲次 兼子 敬子
出版者
独立行政法人農業技術研究機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

半乾燥地域に位置するアリゾナ大学環境調節農業センター(CEAC)のポリエチレン二重被覆温室を用いて環境測定を行った結果、自然換気と組み合わせた細霧冷房において、一定の設定気温の下で、換気量を減少させると湿度が増加し、細霧冷房のための水消費量が減少することを明らかにした。これは熱収支に基づく予測と一致した。また、気温と湿度を同時に制御する簡易な制御アルゴリズムを考案し、トマト栽培下で動作させた結果、目標の気温24〜25℃、相対湿度65〜75%にほぼ制御できることを明らかにした。水消費量の抑制は、湿度が高まることによる蒸散量の減少が大きく寄与した。一方、細霧冷房時の環境の分布特性も明らかとなり、特に、気流について、温室中央では上方に、周囲では内側あるいは下方に向かう気流が発生していることが明らかとなった。光質については、赤色/遠赤色比が、畝間では下方にいくに従って徐々に減少し、群落内では中央高さで最小となった。対象温室は天窓の開口部が屋根自体が開閉するという特徴があり、自然換気の基本的特性を解明するため、縮尺1/15の模型を用いて風洞実験を行った。その結果、天窓の開口部が風下に面し、両側窓が開放されている場合、温室内平均気流速やその分布が優れることを明らかにした。天窓の開口部が風上に面している場合は、外気が天窓上端から巻き込むように流入し、温室内に逆流を伴う循環流が形成された。天窓開口部の向きは平均気温には影響しなかったが、開口部が風下に面している場合、温室の中央から風下にかけて高温域が発生した。換気窓開口部への防虫スクリーンの設置の影響は大きく、温室内気流速は設置しない場合の40〜68%まで減少した。これらの結果は、半乾燥地において水使用量を抑制しつつ効率的な生物生産が可能であることを示している。
著者
吉田 敏 位田 晴久 下町 多佳志 川満 芳信 尾崎 行生 渡部 由香 安永 円理子
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

西南暖地の施設園芸における冷却技術の普及を阻む原因が,冷却技術を導入したときの温度効果を定量的に評価する手法や,冷却がもたらす植物生育,収量および収穫物の品質への影響について,生産現場に十分な理解が得られていないことにあるとの観点から,環境制御施設,模擬実験温室および実際の生産現場において施設冷房・冷却を導入した場合の環境観測および植物生体計測に関する検討を行い,冷却がもたらす生産性向上効果について評価した.
著者
羽生 剛
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,植物ホルモンであるジベレリンによってブドウの果実が種なしになるメカニズムの解明をのため,種なし化(単為結果)に関係している遺伝子の解析を行った.その結果,ジベレリン処理による反応に関係していると考えられるジベレリンを植物体内で代謝する遺伝子,種が無くても果実が肥大するために必要であると考えられる細胞分裂関連遺伝子,果実に糖を蓄積するのに必要な遺伝子を同定することができた.
著者
中川 理 矢ヶ崎 善太郎 並木 誠士 石田 潤一郎 笠原 一人
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

2年間の調査・研究により明らかになったことの概要は、以下のとおりである。1)芸術にかかわる人々の中で、郊外居住地の開発を最も促したのは、画家である。ただし、明治前半期までは、彼らの居住地は、近世までの居住地と変わらなかった。明治後半期になり、画家の地位向上にともない、画業の環境を求めて画家の郊外移住が始まった。2)京都市周辺部での郊外住宅地の開発は、昭和初期から盛んになるが、この開発行為の多くの事例で、画家、映画関係者、大学教員などの文化人の郊外居住の需要が前提になっていることがうかがえる。3)東山地域では、数寄者といわれる、茶の湯に親しんだ文化人たちが、独自の居住環境を作り上げていた。4)等持院かいわいの住宅地には、日本画家を中心とした「絵描き村」と呼ばれる地区がある。この地域では、関西のモダニズムをリードした建築家・本野精吾なども居住しており、画家と建築家とのサロン的交流があった。5)下鴨地域では、昭和のはじめから洋画家が集住し、その後、官吏やサラリーマンも住む住宅地になっていった。北白川地域では、昭和初期から土地会社により宅地開発が進み、京大教授を中心とした学者や医者などが住む宅地が形成された。6)大学教員が郊外地に住む場合には、同じ大学の教員である建築家に設計を依頼するケースが多く見られ、大学内で郊外居住をめぐるサロン的交流があったと考えられる。
著者
青田 洋一 飯塚 晴彦
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

長時間着座時の腰痛を緩和するために我々が開発してきた持続受動運動(CPM)装置は椅子の背もたれと座面に可動式エアバッグを設置したものである。一方の縮小時に他方が拡大する連動逆位相型と同時収縮する連動同位相型とがあるが、いずれも健常者では腰痛予防効果は従来型のCPMと比較して、腰痛予防効果は優れている。今回の検証で逆位相型は腰椎・骨盤の動きが大きく同位相型は重心の移動が大きい特徴を有し、両者の腰痛予防機序が異なることが明らかとなった。しかし深部静脈血栓の予防効果や腰痛患者に対する腰痛予防効果は限定的であり、さらなる動作様式の工夫が必要である。
著者
森 啓 中森 享
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

古生代の四放サンゴ及び中生代以降に知られる六放サンゴには、骨格外側にしわをきざんでいる種属がある。このしわは一般に成長輪と呼ばれ、日輪、月輪、年輪が知られている。このサンゴの成長輪によって、一年の日数は地質時代が若くなるにつれて少なくなってきた、という解釈が現在の定説となっている。本研究の目的は、この定説の基礎となっている日輪等を再検討することである。研究試料として第四系琉球層群産の単体サンゴTruncatoflabellum formosumと、群体サンゴTrachy-phyllia geoffroiを用い、SEMによって成長輪の幅、数を調べ、あわせて骨格の酸素安定同位体比によって年間成長率を測定した。T.farmosumの成長輪幅は0.05〜0.20mmで、年間成長率は3.0〜3.8mm(平均33mm)である。これは一年に平均24の成長輪が発達していることを示し、一つひとつの成長輪は日輪ではないと考えられる。一方T.geoffroiの成長輪幅は5〜20μmに集中し、年間成長率は二つのサンゴ体で、それぞれ4.0〜4.8mm、2.0〜3.1mmであった。この場合、成長輪を日輪とすると、年間成長率とよく符号する。またこの成長輪幅は他の研究で求められた日輪幅とほゞ一致している。四放サンゴの成長輪幅は50μmあるいはそれ以上で、六放サンゴの日輪幅よりかなり大きく、もしこれを日輪とすれば、年間成長率はきわめて高いものとなり、薄片等によって推定されてきた成長率と大きく異っている。以上の結果、(1)六放サンゴには2種類の成長輪が認められ、一つは日輪、もう一つは2週間に1つできる成長輪である。後者の幅は四放サンゴのそれにほゞ一致する。この事実は、従来の定説の基礎となった成長輪形成の基本的解釈に誤りがあると結論され、旧来の一年の日数の経年変化は再検討されるべきことを示している。
著者
重原 孝臣
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

点状散乱体を持つ量子擬可積分系のスペクトル(エネルギー固有値および波動関数)の性質に関して、次のような知見が新たに得られた。1.点状散乱体を持つ量子擬可積分系では、場の理論等で最近話題になっている、量子異常や幾何学的位相(ベリ-の位相)が現れる。点状散乱体を持つ擬可積分系の量子力学は、数学的には関数解析の一分野である閉対称作用素の自己共役拡張理論に従って定式化されるが、その際不足空間の定義にスケールの選び方の任意性があり、その結果、系に質量スケールが導入される。このことが量子スペクトルに古典系では見られないエネルギー依存性をもたらす(量子異常)。また、散乱体を非摂動系の固有関数の節に置いた場合、その条件下で適当にパラメータ(散乱体の座標)を調節すると摂動固有関数と縮退が生じる。パラメータ空間において、この縮退点の回りを一回り回ると一般に波動関数の符号が反転する(幾何学的位相)。二次元系では縮退点はパラメータ空間内で孤立しているが、三次元系では縮退点は曲線群をなす。2.点状散乱体を持つ量子擬可積分系から得られた知見を、小さいが有限の大きさを持つ散乱体を持つ量子系に応用した結果、低エネルギー領域において散乱体は近似的に点状として振舞い、その影響は散乱体が弱引力の時に強く現れることを示した。また、量子系のユニタリー性を壊さずに散乱体の大きさを無限に小さくする極限操作の方法を示した。3.複数の点状散乱体を持つ量子擬可積分系のスペクトルの性質は各散乱体の結合強度で決まり、特に各散乱体は、結合強度で定まる特定のエネルギー領域に限りスペクトルに影響を与えることを示した。
著者
服部 泰直 山田 耕三 ドミトリ シャクマトフ 野倉 嗣紀 前田 定廣 三輪 拓夫 相川 弘明
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究では距離空間に現れる位相次元の特性を調べ、その他分野への応用について研究した。その成果を以下に要約する。服部は山田との共同研究により、距離空間上に定義される二つの超限次元、大きい帰納次元lndと順序次元O-dimの関連を調べ、「距離空間Xにおいて、Xがlndを持つことと、XがO-dimを持つこととは同等であり、、かつlndX<O-dimXが成り立つ」ことを証明した。これは、F.G.Arenasの問題に対する肯定解である。距離空間の群構造に関して服部は、「実数空間上の通常の位相より弱く、点列{2n:n=1,2,...}が0に収束し、さらに位相群となる距離位相が存在する」ことを証明し、「そのような位相で線形性を保つものは存在しない」ことを証明した。これは、R.Fricの問題の解である。位相群に関しては更に、山田により距離空間の自由群の位相構造について研究され、自由群の位相構造がその近傍系により表現されることが示された。また、Shakhmatovは、コンパクト生成な距離位相群や、自由アーベル位相群における位相的性質を次元論の観点から調べた。服部は、順序空間における連続関数の拡張性について調べ、「完全正規な順序空間において、ある条件を満たせば、Dugundjiの拡張定理が成立する」ことを証明した。そして、服部はGruenhageと大田との共同研究により、順序空間の部分空間でDugundjiの拡張性を持つものを決定した。これにより、Heath-Lutzer、van Douwenの問題は完全に解決された。順序空間における完全正規性と被覆的性質については、三輪により研究された。野倉とShakhmatovは、距離空間上の超空間における連続な選択関数の存在性について研究した。吉川と前田は微分幾何学的立場より、複素射影空間内における円形の構造について研究した。服部は距離空間おけるfinitistic spacesの性質について研究し、finitistic spacesに対する万有空間の存在、及びPasynkovのタイプのfactorization theoremを証明した。相川は、調和関数と測度そして位相次元との関連について研究した。
著者
佐藤 悠
出版者
山梨大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

基音とその整数倍の周波数からなる倍音(ハーモニクス)から構成される複雑音を楽音という。楽音においては構成音の周波数に相当する複数の音の高さ(tone height,ピッチ)ではなく基音周波数に相当する単一のピッチが認知される。また2倍の周波数のピッチは同じ音名の音であるという感覚が生じる(tone chroma)。このピッチ感覚の音響手がかりとしては周波数情報であるスペクトルキューと時間波形の繰り返しであるテンポラルキューであることが心理物理実験から提唱されている。しかし音響手がかりの情報処理を行う大脳皮質での神経機構は現在まったく不明である。本研究では覚醒ネコの大脳皮質高次聴覚野において単一神経活動を記録し、ハーモニクス構造を持つ複合楽音刺激にたいする反応を調べた。心理物理実験と適合する神経細胞はごくわずか(数ユニット)ではあるが大脳皮質高次聴覚野において発見された。大脳皮質高次聴覚野からのトップダウンアプローチは現時点においてまだ実験継続中である。さらに研究の途中において大脳皮質一次聴覚野においてピッチに反応するニューロンが豊富に存在することが明らかとなった。豊富に存在する一次聴覚野ニューロンの反応を優先的に調べた。結果は論文として発表予定である(Cereb Cortex, in press)。すなわちピッチに反応する一次聴覚野ニューロンは純音でのベスト周波数に一致する基音周波数とそのオクターブ下の周波数に感受性を持つ。しかし同じようなスペクトル帯域の雑音には反応しない。基音への周波数同調性は抑制性周波数応答野が非選択性のハーモニクスにのみ存在し選択性ハーモニクスには存在しないことに起因する。一次聴覚野は雑音と楽音の区別、および楽音の音程認知に重要な役割をすることが明らかとなった。
著者
佐藤 卓己
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2000

歴史学と社会学の学際領域であるドイツ新聞学の学説史的研究を通じて、メディア学の体系的研究に寄与する視点を構築することが、この萌芽的研究の課題であった。20世紀初頭のドイツで、歴史的手法を利用して成立した新聞学の社会史研究は、情報化社会が本格化する中でメディア研究の方法論が模索される現在、参照すべき貴重な系譜といえる。既に執筆済みの「第三帝国におけるメディア学の革新」(『思想』833号)、「ドイツ広報史のアポリア-ナチ宣伝からナチ広報へ」(『広報研究』4号)に加えて、この萌芽的研究に関連する成果としては、「ナチズムのメディア学」(『岩波講座文学 2 メディアの力学』所収)を発表した。ドイツを代表する世論研究者エリザベス・ノエル・ノイマンの反ユダヤ主義と戦争責任に関するドイツ公示学会での論争を紹介しつつ、総力戦体制化で誕生したアメリカのマス・コミュニケーション学とナチ新聞学の同質性を跡付けた。そうした連続性は戦時中はナチ新聞学の研究者として活躍し、戦後はアメリカ占領軍の指導に協力してマス・コミュニケーション学や世論調査研究の普及につとめた、小野秀雄・小山栄三など東京大学文学部新聞研究室(戦後の新聞研究所、現在の社会情報研究所)のメディア研究者においても確認できる。こうした総力戦体制期のファシスト的公共性とメディア研究の関係を、ドイツ-アメリカ-日本の比較において考察する著作『ファシズムのメディア学』(中公新書)を2004年の刊行を目指して現在執筆している。
著者
曽野 裕夫
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は、一般的な契約法理として、契約プロセス(契約の締結交渉から履行、さらに履行後の関係にかかわる一連の過程)における「交渉力濫用」を規制する民事法上の法理の可能性をさぐることにある。具体的には、3つの視点から検討を進めた。1 交渉力濫用規制の意味の明確化--民事規制と行政規制の同質性と異質性独占禁止法上の「優越的地位の濫用」規制は、行政による交渉力濫用規制である。この問題が、民事規制としてはどのように扱われるかを検討するための基礎作業として、コモンローにおける《既存義務の準則pre-existing duty rule》の沿革について検討を行い、民事規制の独自性についての試論をまとめた。2 交渉力濫用規制の理念的基盤となる契約法パラダイムの検討交渉力濫用の民事規制とは、当事者の私的秩序形成(private ordering)に国家法がいかに対峙すべきかという問題でもある。その観点から、private ordering論についての基礎的・比較法的考察としてUCC第2編にみられる契約法パラダイムの検討を行った。3 交渉力濫用法理の比較法的・法技術的検討(1)著作権ライセンス契約における著作権の譲渡、または、ライセンサー倒産時に生じうる、新たな著作権者による交渉力濫用に対応するための法制度のあり方を検討した。(2)売買契約において物的瑕疵のある商品が引渡された場合の、買主の救済過程において生じうる交渉力濫用(機会主義的行動)の規制について、CISG、UNIDROIT国際商事契約原則と日本法との比較法的考察を行った。(3)いわゆるADR法の制定に関連して、ADR係属中の時効完成を阻止するための法制度のありかたについて検討を行った。この成果は研究発表という形では公にできなかったが、パブリックコメントとして司法制度改革推進本部に提出した。
著者
吉田 正夫 大津 浩三 山本 雅道
出版者
岡山大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

受容膜のターンオーバーに関しては, 感桿型をもつ甲殻類, 昆虫, 繊毛型をもつ脊椎動物の各視細胞で知られている. 本研究のナメクジウオは同一動物が再種の型の視細胞をもつが, 明暗によりターンオーバーを示すものは感桿型であるジョセフ, ヘッセ細胞のみであった. 繊毛型のラメラ細胞でターンオーバーが見られなかったが, 脊椎動物の円盤膜も, それ自身がターンオーバーするのではなく色素上皮細胞に喰われることによる現象であること, 即ち視細胞自身の活性に基くものでないことに着眼, 進化的2型と対応したターンオーバーの意味を探ることを本年度の目標とし, 繊毛型視細胞(クラゲ, ホタテガイの遠位網膜)の明暗順応過程の調査を行っている. 現在のところ上記の作業仮説に反する結果は得られていないが, 進化的にも, 膜の生理機能の上でも広く且重要な結論となり得るので, 今少し調査の必要がある.
著者
緒方 規矩雄
出版者
新潟大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1983

二次元アクリルアミドゲルで分画し単離した動物のリボゾール蛋白から蛋白を抽出して微量のシクエンサーでN末端附近のアミノ酸配列を決定することを試みた。小亜粒子1.8mgを大型の二次元アクリルアミドゲル電気泳動装置で分画したものを、ギ酸で抽出Biogel P-2で精製した21μgを微量のシクエンサーでN末端から32アミノ酸配列を決定しえてS26に対するcDNAのクローンの確認を用いた。蛋白に特異のcDNAの確認に蛋白のアミノ酸組成も重要である。そこで二次元アクリルアミドゲル電気泳動法で分画したArtemia salinaのリボゾーム蛋白0.1μg-1μgについて水解後、ダブシル誘導体に加え、逆相の高速液体クロマトグラフィーを用いることによってアミノ酸を分離定量してアミノ酸組成を測定した。この際微量定量の為蛋白の試量に外からのアミノ酸の爽雑が問題になるが、蛋白分子篩高速液体クロマトグラフィーで目的を達することができた。この様にしてえたアミノ酸組成をチトクロームC、Artemia salinaのリボゾーム蛋白S6、S8について従来のアミノ酸自動分析計によるものと比較したが、チロシンを除いて極めて近い価をえて信頼できる分析法であることがわかった。従来のものが蛋白30-40μg必要なのに0.1-1μgあれば充分である。尚アミノ酸組成をリボゾーム蛋白に対するcDNAの同定に使ったものとしてS11、S26、S35aがある。合成ヌクレオチドをプローブにしてcDNAのクローニングは最近多く行われているが、私共は牛のオプシンについての一次構造かつ18塩基のプローブを作成しcDNAをえることができた。これを組み合わせて、(1)二次元アクリルアミドゲルでの蛋白の分離とN末端附近のアミノ酸配列の決定、(2)それを基にした合成ヌクレオチドプローブの作成、(3)蛋白に対するcDNAのクローン化、(4)(1)又はアミノ酸組成からのクローンの確認、(5)クローンのヌクレオチド配列からの蛋白質のアミノ酸配列の推定というシステム化が考えられた。
著者
濱谷 清裕 伊藤 玲子 江口 英孝 早田 みどり 早田 みどり 江口 英孝
出版者
財団法人放射線影響研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

放射線関連成人甲状腺乳頭癌の遺伝子変異に関する特徴を明らかにするため、発癌の初期段階に生じる遺伝子変異に焦点を当て解析を行った。被曝線量の増加に伴い、RET遺伝子の3'部位が別の遺伝子の5'部位に結合したキメラ遺伝子(RET/PTC再配列)を持つ症例の頻度が有意に増加し、他方散発性(放射線被曝のない)成人甲状腺乳頭癌で頻繁に検出されるBRAF点突然変異を持つ症例は有意に減少することを見出した。
著者
藤谷 秀雄
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

セミアクティブ制御装置であるMRダンパー(可変ダンパーの一種)だけを試験器で加振して制御力を検出し、制御対象の構造物が制御された応答をコンピュータによるシミュレーションで求め、その応答変位と応答速度を試験器で制御装置に再現すると同時に制御計算も行いMRダンパーを制御するというリアルタイム・ハイブリッド実験手法を確立した。これによってセミアクティブ制振構造の応答低減効果を検証した。このとき等価サイクル数を減衰性能を評価する指標として採用し、その有効性を示した。
著者
松井 高峯 牧野 壮一 石黒 直隆
出版者
帯広畜産大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

羊のスクレイピー、牛の海綿状脳症(BSE)、およびクロイツフェルト-ヤコブ病(CJD)に代表される伝達性海綿状脳症(プリオン病)の病原体(プリオン)は病原体特異的な核酸を持たないことから、遺伝子型別および抗原型別は病原体型別には応用できない。しかしプリオンは生物学的性状あるいは生化学的性状によりある程度区別可能である。そこで本研究では、日本の羊スクレイピーの病原体に多様性("株")が存在するか否かを明らかにするための一連の実験を行なった。また、プリオンの多様性を規定するPrP以外の宿主の遺伝的要因についても検討を加えた。我が国で過去10年間に日本で発生した羊スクレイピーの11例を選抜し、マウスに接種して伝達性と羊脳内に蓄積したPrP^<Sc>の蛋白質分解処理抵抗性を調べた。その結果、使用した11例のスクレイピーは生物性状および生化学性状の異なる3群に分類された。つまり日本には複数のスクレイピー病原体が存在することが明らかとなった。本研究のような多数の羊スクレイピーを材料としてその性状を詳細に比較検討した研究はこれまでに英国で報告があるのみで、日本では本研究が初めての例である。本研究で得られた成績は、日本に存在するスクレイピー病原体が動物種を越えて牛や人間に感染する危険性を評価するための重要な知見となる。人ではアポリポプロテインE(ApoE)の特定の遺伝子型が、アルツハイマー病の危険因子であり、またCJDの病型に関与することが示唆されている。そこで本研究では、羊スクレイピーにおいてApoEが病型や病原体株の多様性に関与するか否かを検討した。まず羊ApoE遺伝子をクロ―ニングして塩基配列を決定した。次に羊ApoE遺伝子の多型を調べた結果、羊には3種のApoE遺伝子型があることが明らかとなったが、羊ApoE遺伝子の多型とスクレイピー病原体の生物性状および病型に関連は認められなかった。
著者
矢藤 優子
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,行動計測機器「デジタルペン」を用いて,幼児の書字・描画活動のプロセスとその発達過程を明らかにすることを目的とした。本研究の結果,「なぐり描き」を含む幼児期の描画活動は学童期に必要とされる書字能力の発達と連続的な関係にあることが示唆され,また,描画研究を行うにあたって,これまでのように完成された絵画(何を描いたのか)を分析するばかりでなく,「どのように描いたのか」というプロセスを分析することによって,新たな知見を得られることが示された。