著者
田中 雅一 DEANTONI Andrea. DE ANTONI A.
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本研究は「現代の京都における死に関する宗教的象徴(シンボリズム)と境界的(リミナルな)空間」を検討することである。本年度に本研究は調査上でのデータ収集と参考研究に基づき進んだ。調査上でのデータ収集は次の三点に注目した:(1)「京都怪談夜バス」観光ツアーで参与観察(7月-9月)(2)それが訪れる心霊スポットと言われている場所での調査(3)インターネットと雑誌における「心霊スポット」についての語分析とその噂の広まり方の検討(1)ツアーに参加した上で、ツアーの構築戦略に注目し、その実践と関わっている業者、ガイドさん、そして観光客に対するインタービューを行った。観光客の中でMixiの「心霊スポット」やオカルト等に関するコミュニティに参加している方々が多いと理解した上で、Mixi上でも調査とインタービューを行った。さらに同コミュニティが準備するイベントにも参加し、参与観察によるデータ収集を行った。(2)「心霊スポット」のローカルな歴史を調べた後、居住者にインタービューを行った結果、彼らの記憶とアイデンティティ構築過程、彼らの「心霊スポット」という語に対する認識を検討した。また、京都の不動産業者に対するインタービューによって、その地域のイメージと「心霊スポット」の噂における地域の経済(主に土地の値段)に対する影響を検討した。(3)専門雑誌における京都の「心霊ポット」に対する語の分析を行った。それに、専用ソフトウエアーを用い、インターネット(ウェブサイト、Wikipedia、SNS等)における「心霊スポット」の噂の構築過程・広まり方、それによって起きる抵抗を検討した。参考研究によって、観光学と人類学に注目し、上記のデータに基づき、理論的なアプローチを検討した。主に、モノの人類学という新たな理論的なアプローチに基づき、「心霊スポット」に関わる人たちの体験に注目し、それの関係性上での構築過程を分析した。
著者
小野 哲也 池畑 広伸
出版者
東北大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1995

ヒトが環境中の有害物質に曝されるときは少量ずつを長期にわたる場合が多いが、この時のリスクが大量を1回だけ曝されたときに比べどうなるかはほとんど分かっていない。本研究では遺伝子に働いて突然変異を誘発することが証明されている放射線を用い、4Gy(大量)1回照射と0.15Gy(少量)78回分割照射時に誘発される突然変異がどれ程違うかについて検討した。突然変異はヒトのリスク評価に最も有用と思われるマウスを用いた。ただしこのマウスは突然変異の検出が容易に行えるように開発された大腸菌lacZ遺伝子導入マウス(Muta)を用いた。非照射での脾臓における突然変異頻度は(7.64±2.72)×10^<-5>であるのに対し、4GyのX線を照射後16週待ったものでは(12.11±4.31)×10^<-5>であり照射による増加は約1.6倍であった。他方1回0.15Gyを週3回づづ6カ月間(26週間)照射し続けた後16週間待ったものでは(14.42±6.34)×10^<-5>であった。この時に同じエイジで非照射のものでは(8.08±1.48)×10^<-5>であったので、X線による誘発は1.8倍となる。放射線による突然変異誘発は多くの場合線量に比例することが分かっているので、今回のシステムにもそれが成り立つと仮定すると、上記のデータは大量1回照射時の誘発が1.12×10^<-5>/Gyであり、少量長期照射の場合は0.54×10^<-5>/Gyであることを示し、長期照射のリスクは1回照射時の約50%に減少することを示している。今回の実験から少量を長期に暴露された時は大量を一時に暴露された時よりリスクが低下することが分かったが、実験データには誤差が大きいことから定量的な解析のためには今後さらに高い線量の放射線を使って再調査する必要がある。
著者
石川 達夫
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

まず、プラハの成立の事情を探ってゆくと、プラハはヨーロッパでもかなり特殊な地位にある町であることが明らかになった。「プラハ」の名の語源に関しては様々な説があるが、極めて信憑性の高い説によれば、「プラハ」は「プラヒ」(浅瀬)という言葉に由来する。ヨーロッパの中央に位置する町プラハは、エルベ川支流のヴルタヴァ川の浅瀬(プラヒ)でヨーロッパの東西南北を結ぶ道が交差する地点にできた町であり、古来ヨーロッパの十字路だったのである。しかし、人口に膾炙した伝説によれば、「プラハ」は「敷居」に由来するという。これは、プラハを創設したチェコ最初の王妃リブシェにまつわる伝説であり、この有名な伝説は時代と共に変容しながら、チェコのみならずドイツの様々な芸術作品を生んでいった。このように、プラハの様々な固有名詞に関する一連の研究によって、プラハの極めて興味深い文化史を掘り起こすことができた。プラハは、町の成立当初から、単にチェコ人だけの町ではなく、ユダヤ人とドイツ人の町でもあった。プラハの文化史を辿ることによって、その特徴を成す複数文化的な性格を明らかにすることができた。特に、ヨーロッパの様々な民族の人々がプラハにやって来て、チェコ人以外の芸術家たちが壮麗な宮殿や見事な彫刻を造ったバロックの時代、やはりヨーロッパの様々な民族の人々がプラハにやって来て、国際色豊かな文化を形成した両大戦間の時代など、プラハはヨーロッパの文化の十字路と呼ぶにふさわしい性格を有してきたことが分かった。一九三〇年代にプラハに移住した、チェコ語の姓を持つオーストリアの画家・劇作家オスカル・ココシュカが言ったように、プラハは「ヨーロッパが最後に辿り着いた、コスモポリタン的な中心地」になっていたのである。
著者
河田 恵昭 岡 二三生 片田 敏孝 福和 伸夫 田村 圭子 鈴木 進吾 今村 文彦 目黒 公郎 牧 紀男 浦川 豪 中林 一樹 永松 伸吾 高橋 智幸
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2012-05-31

本研究では、逆転の発想に基づき、加害側の災害の立場から、南海トラフ巨大地震や首都直下地震によって、過酷事象が発生し、未曽有の被害をもたらすにはどのように“人間社会を攻めればよいのか”を考究して、巨大災害が起こった時の現代社会の様々な弱点を見出し、その中で被害が極端に拡大する可能性のある「最悪の被災シナリオ」被害を軽減するためには、新たに縮災を定義し、減災だけでなく、災害による被害が発生することを前提にして、すみやかに回復するという新たな概念が必要であることを示した。そして、これを実現するには、防災省を創設し、国難災害が起こるという前提に立って、日常的に準備する必要があることを明らかにした。
著者
土屋 好古
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、ロシア第一次革命を、伝統的な帝国的統治と「長期の19世紀」という時代の大きな要素であった国民形成との相克という観点から考察した。第一に、日露戦争の失敗の中で、専制体制を批判する左派自由主義の人びとは、明治維新後立憲体制を構築し国民国家となった日本を一つのモデルとしたこと、第二に彼らの構想は、「性と民族の別なき四尾選挙」に基づく市民的国民形成を志向するものであったこと、などを明らかにした。
著者
鳥羽 研二
出版者
独立行政法人国立長寿医療研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、認知症患者の筋・運動系機能の低下の特性を明らかにし、脳画像解析等を用いて認知症の疾患別に転倒リスクの解析を行った。杏林大学もの忘れセンター受診患者のうち、転倒の記録がとれ、研究の同意が得られた約400名を対象とした。評価項目は認知機能、意欲、うつ、ADL等の総合的機能評価、Up & Goテスト(TUG)、バランステストその他の身体機能検査、転倒スコア、脊椎後弯角測定、足関節可動域、脳血流シンチグラム、血液生化学検査等であり、以下の成果を得た。(1)認知症の病型別解析で、レヴィ小体病と脳血管性認知症の転倒が有意に高頻度であった。(2)認知症高齢者の意欲が低下する機序として、前頭側頭葉のほか視床、大脳辺縁系や白質の血流障害が関連する可能性が示唆された。(3)足関節可動域の減少ならびに、脊椎後弯角の増大が転倒率の増大と関連していた。(4)認知症外来患者98名のうち1年間で33名(34%)が転倒した。転倒者と非転倒者で転倒歴、転倒スコア、老年症候群保有数、開眼片足立ち時間、TUG、Functional reach(FR)、重心動揺距離、血清P, Alb濃度に違いが認められた。(5) Ca拮抗薬服薬患者はレニン・アンジオテンシン阻害薬服薬患者に比べて大脳白質病変の程度が強く、大脳白質病変の程度は大動脈のスティッフネスが亢進していた。(6)自覚的不安感を検出するハンカチテストは転倒予測に有用である可能性が示され、陽性患者は、ハンカチの把持により両側後頭葉の血流増加が見られることが示された。(7)血中ビタミンD濃度は握力、TUG、FRと有意な相関を示した。(8)マウスの両側頸動脈外周を微小コイルを被覆することにより脳梁部の虚血障害を起こすことができ、モデルマウスの作製に成功した。
著者
加藤 進昌 小野寺 節 毛利 資郎 岩城 徹 橋本 大彦 有村 公良
出版者
東京大学
雑誌
特別研究促進費
巻号頁・発行日
2001

本研究は、新変異型プリオン(PrPSc:スクレイピー型プリオン)が原因と考えられるヒト海綿状脳症(変異型Creutzfeldt-Jakob Disease : vCJD)および食物連鎖の上でvCJDの原因と考えられる牛海綿状脳症(BSE;より一般的で動物種を越えた名称としては、伝達性海綿状脳症Transmissible Spongiform Encephalopathy : TSEとも呼ばれる)について、諸外国の医療機関・政府機関における、1)感染予防対策、2)発症機序解明、発症予防、診断・検出方法の開発動向、および関連する基礎研究、3)発症者への対策、についての調査研究を目的とした。具体的にはスコットランドを中心に一時2万頭を越えるBSE牛が発見されたイギリス(エジンバラNCJDSU、ロンドン神経研究所)を中心に、vCJDが発見されたフランス(パリBioRad社、サルペトリエール病院)、イタリア(パレルモ大学、ローマ大学)、アイルランド(サーベイランスセンター)を歴訪し、各国での感染対策、汚染組織の処理や食品安全確保対策、診断方法開発の現状、さらにはヒトでの発症例の具体的な症状と、発見からマスコミ発表に至る事実経過などにわたって、詳細な調査を行った。それぞれの調査報告書をまとめ、一部は国内医学雑誌に小特集の形で報告した。また、フランスから専門家2名を招聘して、共同研究者を加えて2002年11月に東京大学において国際シンポジウムを開催した。わが国でも既に数頭のBSE牛が発見され、今後診断技術の普及によってその数が増えることが想定されている。肉骨粉での汚染はアジアでは更に深刻であるとの観測もあり、ヒトへの感染対策、食品安全確保対策の早急な整備が必要であることが痛感された
著者
小谷 信司 鈴木 良弥 渡辺 寛望
出版者
山梨大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

発話が不可能で両手両足の自由がきかない重複肢体不自由者に対して、視線を利用したコミュニケーション実現を目指している。過去の研究において、短い語彙入力の場合、有効性が認められたが、長い文章入力の場合で、誤入力が生じると、極端に効率が悪くなることが判明した。そこで、静的属性(知識・経験)、基本属性(時間・空間的情報)、動的属性(周囲・人物情報)を組み合わせて、その状況に応じた予測変換を実現することを目指した。シミュレーション実験と健常者による実験において良好な結果が得られた。現在、支援学校に協力してもらい生徒と一緒に取組を行い、その有効性を検証中である。
著者
眞鍋 諒太朗
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本年度はニホンウナギの産卵回遊生態を明らかにすることを目的として,スタミナトンネルを用いて黄ウナギと銀ウナギの遊泳能力比較実験とポップアップタグを用いたニホンウナギの産卵回遊の追跡実験を行った.遊泳能力比較実験では,定着期と産卵回遊を行う直前のウナギの遊泳能力を比較するため,黄ウナギ8個体と銀ウナギ9個体をスタミナトンネル内で0.4-1.1m/sの速度で遊泳させ,各遊泳速度における酸素消費量と臨界遊泳速度を求めた,その結果,各遊泳速度において黄ウナギと銀ウナギの酸素消費量に有意差は認められず,臨界遊泳速度も黄ウナギ(0.77±0.14m/s)と銀ウナギ(0.79±0.15m/s)でほぼ変わらなかった.今回は銀化直前の黄ウナギを用いたため,遊泳能力に差がなかった可能性が考えられる.今後銀化直前ではない黄ウナギを用いて比較する必要性が考えられた。ポップアップタグ実験では16本のタグを利根川産銀ウナギと三河湾産銀ウナギに装着し,それぞれ千葉県九十九里浜と愛知県恋路ヶ浜にて放流した.その結果,現在16個体のうち,13個体のタグが浮上している.浮上した13個体の中で最長の追跡期間は69日間で,最長追跡距離は1120kmのデータが得られた,さらに,その内5個体が黒潮を超えた地点でタグが浮上した.1例としてEe12は放流後,沿岸では200m未満の浅い深度を遊泳していたが,大陸棚を超えて水深が深くなると,昼間は500-800mの深度を遊泳し,夜間は0-400mの深度まで浮上する日周鉛直移動を開始した.その後,タグが浮上するまで日周鉛直移動を続けていた.今回の成果により,ニホンウナギの沿岸から黒潮を超えるまでの産卵回遊生態が明らかになった,今後浮上するタグ3本の浮上地点を加味することでニホンウナギの産卵回遊経路と回遊中の環境が明らかになってくるものと期待され,この研究分野で大きな進展となる.さらに,得られる知見はニホンウナギの完全養殖技術にも重要な示唆を与えるものと期待される.
著者
吉川 昌之介 山本 達男 寺脇 良郎 笹川 千尋 江崎 孝行 檀原 宏文 渡辺 治雄 岡村 登 橋本 一 吉村 文信
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1987

組換えDNA実験技術を始めとする分子生物学的、分子遺伝学的技術を病原細菌の病原性の解析に応用することを目的としてこの総合研究班を結成し、3年間補助金を受けた。研究分担者総数21名という大規模な班員構成からなり、各分担者の対象とする菌種も多岐にわたり、ビルレンス遺伝子の存在部位も染色体性、プラスミド性、およびバクテリオファ-ジ性と異るため各分担者の研究達成の難易度には著しい差があった。組換え体の選択方法、汎用される宿主・ベクタ-系でクロ-ン化できるか否か、EK系を用いることができるか否か、仮にクロ-ン化できたとしてそれが完全に形質発現するかなどにも大きな差があった。この壁を乗り切るためにベクタ-系を開発するところから始めたり、新たに宿主に特殊の変異を生じさせたり、遺伝子導入のために特殊の方法を採用したり多くの試行錯誤が行われた。幸に長時間にわたる班会議の議論を通じてこれら問題点の克服の方法が模索され、解決のための示唆が与えられた結果、各分担者それぞれがほぼ所期の目的を達した。セラチアの線毛、サルモネラの病原性、赤痢菌の病原性、大腸菌の表層構造、赤痢菌の抗原、らい菌の抗原、バクテロイデスの病原性、とくに線毛、腸管感染病原菌の粘着因子、コレラ菌の溶血毒、ナグビブリオの溶血毒、腸炎ビブリオの溶血毒、緑膿菌のサイトトキシン、Pseudomonas cepaciaの溶血毒などにつき、その遺伝子の存在様式、遺伝的構造、塩基配列の決定、形質発現の調節機構、前駆体物質のプロセツシング機構などを明らかにし、その病原的意義の解明に一定の知見を得ることができた。これらは多くの原著論文の他、シンポジウム、講演、研究会、総説などに発表したが、各分担者それぞれにより深く研究を堀り下げ、より完全な形で完成するべく努力を続けることになろう。ともあれ本邦のこの領域の発展に大いに寄与したことは間違いないと思う。
著者
藤島 政博 道羅 英夫 GORTZ Hans-Dieter FOKIN Sergei
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

繊毛虫Paramecium属とその核内共生細菌Holospora属を野外採集し, 世界分布図に棲息が確認された場所をプロットすることを目的とし, 北欧(フィンランド, スウェーデン, ノルウェー)とその周辺国(エストニア, ロシア), 中国, ブラジル及びオーストラリアで現地協力者の協力を得て採集を行った。その結果, オーストラリアとブラジルで, P. caudatum, P. aurelia species, P. bursaria, 及び, 新種と思われるP. bursaria類似の細胞を採集したが, Holospora維持細胞は採集できなかった
著者
藤田 幸弘
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

咀嚼は上下顎の歯で食塊を破壊し粉砕するという一連のリズミカルな運動であり、歯根膜を支配する感覚受容器あるいは咀嚼筋を支配する筋紡錘からの入力により制御されている。一方、力仕事を行う際などにみられる“咬みしめる"といった動作もまた咀嚼筋を支配する筋紡錘により制御されている。申請者は、既に本科学研究費(奨励A特別研究員)の支援により、タングステン微小電極を下歯槽神経に直接刺入し、歯根膜を支配する受容器からの神経電図をヒトにおいて記録する方法を確立している。そこで、平成5年度においては上記のような観点から、微小神経電図法をさらに咀嚼筋のひとつである咬筋の筋紡錘に適用し、その神経発射活動の記録を試み、顎運動制御における咬筋筋紡錘の機能的役割を追求することを目的とした研究計画を立て、研究を進め、現在までに以下のような結果が得られた。1.咬筋筋紡錘の求心神経線維の発射活動が記録可能であった。すなわち、開閉口運動を指示し下顎頭の位置を確認した後、頬骨弓の下縁を触診にて調べ、関節結節前縁の下方10-20mmの位置よりタングステン微小電極(長さ8mm尖端径1mum、尖端抵抗9-10MOMEGA)を経皮的に15-20mm刺入することにより求心神経線維の発射活動が記録された。そして、この活動電位は他動的な開口時に発火がみられたことより、明かに咬筋筋紡錘の求心神経線維のものであると同定された。2.咬筋の表面筋電図を同時に記録し、咬みしめ時における咬筋筋電図および1.で記録された咬筋筋紡錘神経電図における発火様式を比較検討した結果、咬筋におけるalpha-gamma連合の存在が確認された。以上の結果は第36回歯科基礎医学会総会において発表の予定である。
著者
松澤 和宏
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

1996年にソシュール自身の手による草稿が発見され、それ以前に発見されていた草稿と共に『一般言語学草稿』(ガリマール、2002年)が刊行された。しかしながらこの版は数多くの判読上の誤りを含み、50頁にのぼる草稿を無視している。本研究の目的は注釈を付した文献学的な校訂版を作成し、ソシュールの沈黙に関わる問題を検討することであった。すなわち、なぜソシュールは理論的体系の試みを放棄したのか、という問題である。本計画は、草稿の解読に伴う困難のために完全には実現できなかったが、草稿が我々に示すのは一般理論の構築の不可能性を表現しているもう一人のソシュールであることが明らかになった。
著者
田中 志信 村田 和香 山越 憲一
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

1. 生体情報の宅宅収集壮置の試作: 既に開発済みの心拍出量と血圧の無拘束同時計測システムに被測定者の姿勢状態を記録する簡易行動シナリオ計測を組み合わせたシステム(生体情報の在宅収集装置)を試作した。姿勢計測の角度分解能は約3゜、測定間隔は0.1,0.2,0.5秒で静止画表示・アニメーション表示・ヒストグラム解析などのが可能である。循環生理情報に関しては血圧・心拍出量と共に末梢循環抵抗、心拍数、一回拍出量が演算処理され24時間分のデータがトレンド表示される。健常成人を対象としたフィールド試用の結果、無拘束下で得られた循環動態の24時間計測値と被験者の各種行動・姿勢変化との詳細な対応付が可能であることが確認された。2. スペクトル析による循環生理機能の日内変動の解析: 健常成人を対象に1日目は通常の日常生活、2日目は終日ベッド安静という条件下で連続48時間の無拘束循環生理機能計測実験を行い、日常生活における行動様式が各パラメータに及ぼす影響を検討した。その結果、各パラメータともに概ね12時間及び24時間を主な周期とする日内変動が存在し、行動様式の違いは12時間周期に対してはあまり影響を及ぼさないものの概日周期に対しては大きく影響することが確認された。3. 高齢者を対象とした日常生活下における姿勢解析: 生活環境の異なる高齢者を対象とし日中約10時間の無拘束姿勢計測を行った。対象者は年齢71〜83歳の女性8名で、日常生活下における行動や活動性というものが客観的に評価可能であることが確認されるとともに、生活環境の違い、すなわち在宅か施設や病院で生活しているか、さらには同じ在宅でも単身か家族と同居かといった違いで、日常取る姿勢の種類や頻度、活動性に大きな差が見られることが客観的に示された。これらの結果から、何らかの障害を持つ高齢者の治療に際して「寝たきり」状態を惹起させないためには、障害の快復状況に応じて患者の生活環境をも考慮すべきであることが確認され、機能面の評価に加え、生活スタイル、生活信条をも把握したリハビリテーションプログラムの必要性が示された。
著者
戸川 達男 斉藤 浩一 大塚 公雄 山越 憲一 小川 充洋
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究は、戸川らがコンセプトを提唱し、実際に研究を進めてきた高齢者の健康状態を在宅でモニタするための技術のさらなる開発を進めるものである。これらの技術の特色は、家屋および家具にモニタ機器を組み込むことにより、被検者の日常生活を妨げずに生理量や行動を計測するというところにある。被検者は無侵襲かつ無拘束で計測が可能であり、計測は自動化されており煩雑な機器操作を求められない。また、計測されていることすら意識させずに在宅で計測が遂行可能である。本研究では、これまでの研究成果を実用化するため、長期間にわたってデータを収集し、得られたデータの解析・解釈の方法を確立することを目的とした。具体的には、このために一般家庭で使用できるシステムを開発することをねらいとした。研究においては以下を行った。まず、独居被験者を対象とした生理量および行動モニタリングのためのシステムを構築し、モニタリング実験を行い、連続3ヶ月以上のメンテナンスなしでのモニタリングが可能であることを実証した。また、3世代家庭においても行動センサを用いてのモニタリングを行なった。また、小型の3軸加速度および3軸磁気センサを内蔵した腕時計型データロガーを開発し、生活行動中の測位が可能であるかどうかについて検討した。また、収集した行動データの定量評価法の開発を試み、具体的な評価法を示した。生理量モニタりんぐについては、ベッド内温度計、浴槽内心電計、トイレ体重計を用いた1ヶ月以上の連続計測を示したほか、トイレ体重計を改良した。また、被験者のプライバシや家庭に導入するモニタ機器のセキュリティに関して検討を行った。結果、本研究においては、長期の在宅健康モニタリングと、それを支援するための定量的評価プロセスが可能であることを示した。なお、被験者のプライバシ保護については更なる議論が必要と考えられた。
著者
崔 雄 八村 広三郎 伊坂 忠夫 遠藤 保子 関口 博之 吉村 ミツ 丸茂 美恵子 阪田 真己子
出版者
群馬工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目標は、時間の流れとともに消失してしまいがちな舞踊の情報を、モーションキャプチャによる身体動作と各種の生体情報の同時計測によって計測・保存し、モーションキャプチャだけでは解析できない舞踊での演技者の足を使う方法(足づかい)、などを定量的に分析することである。さらに、モーションデータから類似する身体動作を検索するシステムとデジタルアーカイブされた能のモーションデータをインターネット環境に公開して、VR環境で観覧できるシステムの構築も行った。その結果、舞踊動作データの数値的解析だけでなく、VR環境におけるデジタルアーカイブを行うことによって、舞踊家や舞踊研究者は対象の舞踊についての新たな情報をフィードバックとして得ることができると期待される。
著者
澤山 利広 久保田 賢一 久保田 真弓 金子 洋三 福永 敬 津川 智明
出版者
関西大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、新たな半世紀を見据えた我が国の政府系国際協力ボランティア(国際V)に関する政策提言である。まず、自己変革の途上にある米国と韓国のV事業に込められた国家戦略等を整理した。次に、ブータン、フィリピン、ガーナを対象に日米韓の国際Vの派遣実績をMDGs等の国際的なコンセンサスを踏まえ、派遣国側のODA大綱等と受入国側の開発計画等と照らし合わせて、傾向と特色を明らかにした。これらの省察を通じて、JOCV隊員の特性を礼節等とし、隊員自身自身にはコンピテンシーの向上が見られた。帰国隊員による国内還元については、専門技術支援とコーディネート業務に加え、社会開発活動に特筆すべき点を見出した。
著者
杉田 茂樹
出版者
小樽商科大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

○研究目的極めて大量の科学論文を掲載する無料の電子ジャーナル(以下、「OAメガジャーナル」という。)の急成長が学術出版関係者の注目を集めている。本研究は、OAメガジャーナルの全般的特質とそれが科学文献流通において占める位置と影響を明らかにすることを目的とした。○研究方法標準的学術雑誌引用情報索引による各OAメガジャーナルの論文出版状況,インパクトファクター等の調査、国際図書館コンソーシアム連合年次会議等における情報収集を踏まえ、OAメガジャーナルの投稿規程や編集方針、刊行元出版社・学会の報告書類、関連論文などを中心に文献調査を行った。○研究成果、代表的OAメガジャーナルである、PLoS ONE (PUBLIC LIBRARY of SCIENCE刊行)の成長要因として、別の高品質誌でPLoSが培ってきたブランド力、草創期の高インパクトファクター、査読プロセスの簡略化に伴う出版スピード、比較的安価な論文出版加工料(Article Processing Charge)設定などが挙げられる。PLoS ONE以外で同様の簡略査読方式を採用する学術誌は約10誌存在し、「メガ」と称すべき成長はまだ見られない。また、OAメガジャーナルへのさらなる論文集中のメカニズムとして、・別の学術雑誌でリジェクトされた論文を、著者の希望があれば受け皿としてのOAメガジャーナルに掲載するモデル(カスケード査読)は学術出版全体に広まりつつあり、ひとつの出版社の内部だけでなく、複数学会誌間の投稿論文転送もはじまっている。一方、論文出版加工料でなく個人会員制や機関会員制をとる簡略査読誌もあらわれ、OA出版の多様化がさらに進みつつあることがうかがわれた。
著者
夏目 淳 根来 民子
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

熱性けいれん重積後早期に行ったMRI拡散強調画像(DWI)で24人中7人、約1/4の小児に片側海馬の異常高信号が認められた。異常は発作の持続が長い患者でみられやすかった。急性期にDWIで異常高信号を呈した海馬は1カ月後には萎縮を呈していた。重積発作後2年の時点でFDG-PETを行ったところDWI異常と同側の側頭葉ではブドウ糖代謝の低下がみられた。ただし典型的な内側側頭葉てんかんにおけるブドウ糖代謝の低下よりもその程度は軽かった。また熱性けいれん重積症の患者ではMRIでHIMAL (hippocampal malrotation)と呼ばれる先天性の海馬の形成異常を示唆する所見もみられた。易けいれん性を引き起こす先天性の素因と重積発作による海馬の損傷の2段階の機序によって後に側頭葉てんかんが発症するという2ヒット仮説が考えられた。
著者
中村 幸雄
出版者
杏林大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1990

重症排卵障害による不妊症例に対しゴナドトロピン(hMG)律動的皮下投与法による排卵誘発を試み、その有効性、低多胎発生率や排卵機序を解明した。従来の連日筋注法より高い排卵率、妊娠率が得られ、副作用の一つである多胎発生も認められなかった。低多胎発生率の理由として律動的皮下投与法では複数個の卵胞が発育しても実際に破裂する卵胞が少数のため多胎発生が少ないものと考えられた。また多嚢胞性卵巣症候群ではゴナドトロピン療法中に卵巣過剰刺激症候群(OMSS)を発生しやすいが、その機序としてLFSH比の高値が考えられた。GnRHアゴニストを併用することによりLH/FSH比が有意に低下し、OHSSの予防が可能であった。hMG律動的皮下投与法に妊娠した18症例の着床-非着床期間の血中ホルモン動態を詳細に比較解析し、妊娠成立のための至適内分泌環境、特に黄体機能についても検討を加えた。着床においてはP,E_2の高値ではなく、P/E_2値が重要な意義をもっており、黄体期初期から中期におけるP/E_2比の高値症例で妊娠成立の可能性が高いと考えられた。また連日筋中法ではpremature luteinizationやpremature LH riseが高頻度に出現し、妊娠成立に悪影響を及ぼすとされているが、律動的皮下投与法でもそれらは高頻度(40〜50%)に出現した。しかし着床、非着床期間にその出現頻度とパターンに差違が認められなかったことより、妊娠成立の予後を左右する因子とは成り得ないことが確認された。以上の3年間の研究成果より、hMG律動的皮下投与法は高い排卵率や妊娠率、低多胎発生、重篤なOHSSの防止などの優れた排卵誘発法であり、重傷排卵障害患者に対して有効な治療法として臨床的意義をもつものと考えられた。