著者
佐野 尚美
出版者
県立広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、ラットを用いて、栄養状態が肝臓におけるアルブミンの代謝動態に与える影響を検討した。低蛋白質食群のアルブミン値は高蛋白質食群、標準蛋白質食群より低値を示したが、肝臓での合成量は低蛋白食群が最も多かった。高蛋白質食群と標準蛋白質食群のアルブミン値はほぼ同レベルであったが、それらの代謝動態は異なっていた。栄養状態を正確に把握するためには、ある一点の値を評価するだけでなく、代謝動態を動的に評価することが重要であると考えられた。
著者
大矢 雅則 須鎗 弘樹 渡邉 昇 下井田 宏雄 宮沢 政清 戸川 美郎
出版者
東京理科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

この一年間に亘る研究成果について述べる.数理科学を対象とする領域は多様であるが,その中で情報科学と関連のあると考えられる分野に焦点を当て,それを解析的,特に函数解析や確率解析の手法を用いてできるだけ統一的に展開した.つまり,多様な分野を横に結ぶ″Key″となる概念を見い出し,それによって統一的に様々な分野を扱い,具体的に次のような内容の研究を行なった.1.情報理論の基幹であるエントロピー理論を解析的,確率論的,量子論的に展開し,量子制御通信過程における誤り確率の数学的な一般式を導き,光パルス変調方式の効率を数理的に調べた.2.遺伝子配列の整列化,相互エントロピーを用いた生物の類縁度の定式化による系統樹を作成し,遺伝子の情報論的取り扱いの有用性を示した.3.一般量子系の状態に対して,幾つかのフラクタル次元,及び量子ε-エントロピーを定式化し,それの具体的な力学系への応用を議論した.4.ニューラル・ネット及びシミュレーティッド・アニーリングについて数学的に厳密に定式化を行なった.特に,ニューラル・ネットを用いた最適値問題の解法における解の安定性を保障する幾つかの結果を得た.5.R^<n+>上で定められた非線形力学系の漸近安定解の外部からのノイズの影響について研究を行った.また,負性抵抗を含む回路がストレイキャパシタンスの影響により不安定になるケースについて調べた.6.デジタル回路網におけるバースト型のトラフィック問題を待ち行列モデルを使って解析し,光通信における通信路や交換機バッファーの容量,誤り確率等の最適値問題を数理的に研究した.7.最近のスーパーコンピュータの発達と数式処理のソフトウェアの発展を利用して函数値の高速かつ精密な算法を情報理論的見地から再検討し,組合せ最適値問題や非線形画法などで利用可能な新しい計算手法を開発するための基礎的研究を行なった.
著者
戸川 美郎 須鎗 弘樹 渡辺 昇 下井田 宏雄 宮沢 政清 大矢 雅則
出版者
東京理科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

今年度の研究実績について述べる.エントロピー理論はClausius,Boltzmann,Shannon等に始まり,その後,von Neumannによって,量子力学構築が試みられ,量子系のエントロピー理論が生まれ,現在も様々な分野において,その研究が続けられている.本研究計画においても,以上のような背景にもとづいて,次に示すような研究実績をあげてきた.(1)解がカオス的に境界に漸近する力学系において,境界が存在する相空間上の位相的エントロピーのパラメーター依存性を調べた.(2)画像処理に用いられる回路の安定性の条件を見つけることができた.(3)光通信における誤り確率の定式化並びに相互エントロピーによる変調効率の比較等を行うことができた.(4)ガウス通信過程への相互エントロピーの応用等を論じた.(5)量子系のエントロピーの最大化,ファジーエントロピーの諸性質などについても論じた.(6)遺伝子解析にエントロピー理論を応用するため,2個の生物塩基配列,あるいはアミノ酸列をコンピュータによって,整列化する際,DP matcingを用いたアルゴリズムを提案し,従来の整列化法を比較検討した.(7)また,2個の塩基配列だけでなく,n個の塩基配列を同時に整列化する方法も提案し,その速さ等を従来の方法と比較検討した.(8)RGSMP(Reallocatable Generalized Semi-Markov Process)と呼ばれる一般の待ち行列ネットワークに応用することが出来る確率過程を提案し,その基本的な特性の解析を調べた.(9)RGSMPの定常分布の構造をあらかじめ仮定することにより,RGSMPの状態推移の構造が定常分布にどのように反映しているかを議論した.(10)ポアソン到着を持つ無限窓口待ち行列の系内仕事量のモーメントを計算しバースト型到着モデルへの応用を論じた.(11)率保存則についてサーベイを行うとともに,パルム測度に関する基本的な公式や各種の確率過程の定常分布を特徴づける式などがすべて率保存則より導かれることを示した.
著者
奥村 誠 杉恵 頼寧 塚井 誠人 小松 登志子 岡村 敏之 藤原 章正
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究の目的は,交通工学,衛生工学,水資源工学などの立場からの知見を総合し,中小都市に即した緊急時の給水計画のあり方と,その立案の効率化のためのシステムの開発であり、基本的な分析ツールの開発を行った。第1に代替水源としての可能性の高い地下水利用を念頭におき,地震時の地上・地下構造物の破損により新たな汚染源が発生した場合の飲用可能性を検討するためのシミュレーション方法を開発するとともに,簡便水質測定法の精度の検討を行った。第2に緊急給水作業に対する道路ネットワーク,耐震配水池,井戸水での代替の効果を検討するため,給水車による飲料水の配送計画モデルを作成した。次いで,東広島市西条地区を対象に,収集した各種のデータを地理情報システム上に整理するとともに,それを用いた具体的な検討を進めた。まず,残存井戸における地下水位と流向流速調査に基づいて利用可能水量の検討を行った。つぎに汚染シミュレーションに基づく汚染拡散を踏まえた簡易水質検査井戸の選定方法の検討,人口と井戸の分布を踏まえた緊急給水点配置の計画モデルを加えて,緊急時の簡易水質測定体制,給水点の設置,給水車の配備を事前に立案する手順を整理した。いずれの問題も複雑な計算を内包するものであり,現時点でパソコン上の簡便な検討システムの構築は困難であることがわかった。具体的な知見は以下の通りである。第1に地下水の季節的な量的変動にかかわらず,緊急時に必要な水量はほぼ確保できる。第2に芸予地震時に断水した広島県島嶼部では,日常的に井戸水を用いている世帯を中心にかなりの井戸水が飲用に使われていた。第3に汚染シミュレーションを用いれば,井戸の汚染リスクが計算でき,その影響を最小にするような検査井戸が選定できる。第4に使用可能井戸を踏まえて緊急飲料水の配送を考えれば,一定のコスト削減が可能である。
著者
田中 淳 宇井 忠英
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

北海道駒ケ岳ならびに樽前山は、日本の活火山の中でも最も活動的な火山であるが、噴火の規模や推移は多様であり、迅速な避難が必要であることから、防災意識の涵養が求められる。そこで、住民意識調査と地域リーダーへの面接調査を実施した。駒ヶ岳調査は、駒ヶ岳周辺4町の住民から郵送法で439票(回収率=43%)の回答を、樽前山調査は、苫小牧市内危険の高い地区と低い地区2地区の住民から211票(回収率=42%)の回答を得た。地域リーダーへの面接調査は、12人を対象とした。主な知見を示すと以下の通りである。1.この15年間で防災意識も防災情報行動も向上している。2.駒ヶ岳小噴火ならびに2000年有珠山噴火への関心は高く、大半の人が周囲の人と話題にしているが、職場や同業者で話題になる率が高い。3.防災教育上の課題として、避難の判断を行政に依存していると思われる点、前回の噴火パターンへの拘泥や誤った周期説が流布してしまっている点等が見いだされた。4.防災情報行動にとって重要なのは、単に危険性を認知させたり、不安を高めるだけではなく、関心を高めることが必要である。5.防災情報行動は、噴火への関心の程度といった個人変数だけではなく、地域要因も関係していることを示している。6.地域凝集性の高い地区では、資源動員論でいうフレーム増幅戦略が、未形成な地域では、フレーム拡張戦略が採用されている。
著者
島田 淳子 中津川 研一 大橋 きょう子 小田 きく子
出版者
昭和女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

ジアシルグリセロール(DAG)の調理上の特徴を把握するために、脇方酸組成、トコフェロール含量等を可能な限り揃えたDAGとトリアシルグリセロール(TAG)を調製し、試料とした。試料油と脱イオン水を、(1)油相体積分率を変えて、(2)水相として各種塩類溶液を用いて、(3)HLB3から14までのポリグリセリン脂肪酸エステルを用いて、混合撹伴し、乳化の型および保存による安定性を評価した。その結果、DAGは乳化剤無添加でかなり安定なW/O型エマルションを形成すること、抱水性が大きいこと、および一般にO/Wエマルションになる条件でW/Oエマルションとなる条件あることが見出された。塩類はいずれもDAGの乳化安定性を高めた。次にマヨネーズを模した組成の濃厚エマルションを調整した。DAGから調製したエマルションの平均粒子径はTAGのそれより小さく、粘度は高かった。しかも平均粒子径をほぼ同じにしてもDAGエマルションの粘度はTAGのそれより高く、これよりDAGと卵黄成分の間に何らかの相互作用のある事が示唆された。食塩はDAGの粘度に大きく影響した。最後にDAGの自動酸化および熱酸化に対する安定性および揚げ加熱に対する安定性を検討した。試料油を紫外線照射有り・無しで、40℃で自動酸化および180℃で熱酸化させた。また、モデル揚げ材料として、アルブミン及びα-コーンスターチを用いて一定条件下で揚げ加熱を行い検討した。その結果,DAGの酸化安定性および家庭レベルにおける揚げ加熱に対する安定性はTAGとほぼ同等とみなせた。しかし強制フライ条件においては、AVの上昇および色差計による明度の低下が、DAGにおいてTAGより顕著であった揚げ加熱中にDAGの中に溶出した水分がTAGのそれより高かったことがその原因と考えられた。以上より、DAG調理上の特性は通常の食用油脂とほぼ同等と考えられる。
著者
原田 隆典 村上 啓介
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

剛性マトリックス法による震源・地震波伝播過程の定式を一般化することに成功した。コンピュータプログラムを整備し、試算例として、震源断層の深さや表層地盤の厚さによって、断層による永久変位を含む地表の地震動の時間・空間分布特性がどのように変わるかについて調べ、表層地盤の厚さや、断層上端の深さが重要な要因であることを明らかにした。地表面の動きを3次元的に視覚化し、震源域の地表面の動きは、台風時の雲の動きのように渦を巻いていることを始めて示すことができた。地表面の水平・鉛直方向の3成分変位に関する運動と共に地表面の傾きや回転に関する運動の3成分波形が大きくなるなど従来あまり知られていない地震動特性に関する成果を得ることができた。断層近傍に典型的な都市高速道路の連続高架橋とパイプラインを想定し、3次元非線形応答解析を実施し、その応答挙動を調べた。断層に平行なケースや横断するケース、回転地震動の影響を調べた。その結果、断層を横断する連続高架橋とパイプラインにおいても、断層上に表層地盤が存在する場合(断層が地表に現れない場合)には、応答を崩壊限度内に抑えることが可能であるが、断層が地表に現れるような場合には、断層を横断するケースで、応答は崩壊限度を大きく超え、特に、連続高架橋の橋脚に大きなねじりモーメントが発生することを示した。長波理論に基づく津波シミュレーションコードの改善を行っい、日向灘地震(1968年)、南海地震(1854年)による津波高記録と計算結果を比較し、計算精度の妥当性を確認した。また、日向灘地震については、沿岸構造物への津波の波力を計算するプログラムを開発した。試算例では、波力と地震力を比べると、波力は1/10程度と見積もられる結果であったが、条件を変えた試算例も実施する必要がある。
著者
坂野 達郎
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、住民が河川災害時にどのような行動を取るのか、その意思決定過程のプロトコルデータを収集し、プロトコルデータから状況の認識に用いた知識や推論の過程を事実推論ルールとして抽出し、状況認識から行動を決断する過程を行動ルールとして抽出し、抽出した推論ルールをもとにして、避難行動のシミュレーションを行うことを目的とする3ヵ年の継続研究である。まず、平成14年度に、ビデオを用いた水害疑似体験実験を行い、非難行動決定過程の発話プロトコルを収集し、同プロトコルから様相分離法で2270の命題を抽出した。平成15年度は、平成14年度に抽出した行為命題に対して、動詞とその動詞と共起する名詞句の格(特に「対象格」「随伴格」「目標格」「道具格」)に着目して分類を行った。その結果、動詞とその動詞と共起する名詞句に出現する名詞の辞書的意味から、プラグマティックな解釈を行わずに、行為の分類が可能であることを明らかにした。平成16年度は、状況認識に関する889命題を抽出し、(1)事象が生起している時間により、既定事実(過去の経験)、即時的状況(避難行動時間帯内で生じる現況及び予測)、恒常的属性・普遍的真理に分類でき、(2)避難行為動詞に伴う格の意味内容から記述対象が、水害原因、非難場所、避難経路、水害情報および同伴者に分類でき、(3)述語句の特徴から事実記述的な命題と評価命題に分類できることを明らかにした。最後に、行為命題と状況記述命題を組み合わせて、避難行動をシミュレートした。今回の実験では性別、住宅、居住地の地理的状況、家族の状況などの要因を厳密にコントロールしてデータが取得できていないため、個人個人の状況に応じたシミュレーションまではできなかったが、水害経験者、未経験者の行動の差異を再現することはできた。
著者
河田 惠昭 林 春男 柄谷 友香 寶 馨 中川 一 越村 俊一 佐藤 寛 渡辺 正幸 角田 宇子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

フィリッピンのイロコス・ノルテ州を流れるラオアグ川を対象として,発展途上国の開発と防災戦略の事例研究を実施した.この州とラオアグ市にとってはコンクリート製の連続堤防はいくつかの点で歓迎すべき構造物である.それは,台風のたびに発生していた洪水や浸水から開放されること,第二に旧河道や氾濫原において氾濫を」前提としない開発が可能になること,第三に頻繁な維持管理を必要としない構造物は,行政の維持管理能力の低さを補うことができることである.しかし,異常な想定外の外力が働いた場合,氾濫を前提としない開発や生活が被災し,未曾有になる恐れがある.援助側の技術者は,非構造物対策,すなわち,1)構造物を長期にわたって維持管理するための対策,2)住民の防災意識を高めるための対策,3)気象情報の収集と伝達,危険地域の把握,避難勧告など被害抑止のための対策,4)救援活動など被害軽減のための対策が含まれることを知らなければならない.すべての対策において,援助が何らかの役割を果たすためには,まず行政や住民の災害への対応の現状と過去を知る必要がある.調査期間中,台風が来襲し,堤防が決壊し被害が発生した.その原因としては,堤防建設技術の未熟さが指摘でき,防災構造物建設のための必要な知識や技術の取得と移転,実際の建設時における遵守など,構造物を根付かせるための対策も援助側は考えなければならないことがわかった.援助側の技術者は,非構造物対策を考慮に入れた上で,どのような構造物が地域に根付くかを計画する必要がある.そのためには社会を研究している専門家の参加を得て,地域の履歴を知ることは開発援助ではとくに重要である.それは,1)記憶の蓄積と共有化,2)被災者像,3)防災意識の向上の過程,4)防災対策の有無,5)被災者の生活・生計を誰が助けたのか,6)復旧における住民の労働力提供の有無を調べることは価値がある.
著者
加地 正英 久能 治子 佐藤 能啓
出版者
久留米大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2000

【目的】インフルエンザは合併症併発の頻度が高い感染症で、それはインフルエンザ自体の治療以外の医療費が必要となる。本研究では合併症としての心臓に対しての影響に注目して、どの様な場合に影響が大きいのを検討した。【対象および方法】対象は1999年から2002年に、インフルエンザと診断され、腎機能障害例や高血圧などない症例を対象とした。病原診断は迅速診断キットを用いた。指標としてbrain natriuretic peptide (BNP)濃度を測定した。インフルエンザA、B感染例で年齢、性別、急性期・回復期BNP濃度を比較、また両群内で40歳以上の群と39歳以下の群で比較検討した。【結果】インフルエンザA55例、B50例を対象とした。BNP濃度はインフルエンザAで急性期12.4±12.7(pg/mL)回復期9.3±10.3(pg/mL)、インフルエンザBで急性期11.5±12.4(pg/mL)回復期9.1±8.6(pg/mL)で両群の急性期、回復期で有意差が確認された(P<0.01)。なお両群の急性期と回復期のBNP濃度に差はなかった。インフルエンザAおよびBとも急性期のBNP濃度はいずれも40歳以上の年令群が39歳以下の群より有意に高く、特に40歳以上の群で急性期と回復期の比較で有意差を認めたが(P<0.01)、39歳以下では急性期と回復に関して差はなかった。【考察】BNPは左心室への負荷を反映するものであり、慢性心不全などでは上昇することが知られている。本検討からインフルエンザ感染とBNP濃度および年令の間に緊密な関連があり、高齢になるほどインフルエンザ罹患時に心室負荷が大きいと推測した。BNPの値だけで、高齢者の循環器系の障害を論議できるわけではないが、高血圧や心不全を有する患者がインフルエンザに罹患した場合にはより大きな影響を与えると推測される。そのため臨床現場で高齢者のインフルエンザでは心臓に対する大きなインパクトの可能性が考えられ、その側面からも適切な対処が医療費などの増加を抑える可能性を含んでいると考えられた。
著者
渡邉 俊雄 藤原 靖弘 富永 和作 谷川 徹也 樋口 和秀
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

Prostaglandin(PG)の代謝酵素である15-hydroxyprostaglandin dehydrogenase(15-PGDH)の胃癌の病態生理における役割について検討した。進行胃癌71例中35例において15-PGDH蛋白の発現は低下しており、多変量解析では15-PGDHの発現低下は生命予後の不良と関連していた。15-PGDH陰性群では15-PGDH陽性群に比較してKi67陽性率は有意に高値であった。15-PGDH発現をsiRNA法でノックダウンすると胃癌細胞株であるAGS細胞の増殖能は亢進した。以上の結果から15-PGDHは胃癌における独立した予後規定因子であることが判明した。
著者
川角 由和 中田 邦博 児玉 寛 岡本 詔治 森山 浩江 若林 三奈 松岡 久和 潮見 佳男
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、第一にEU域内市場の拡大・展開を受け、EUレベルで進行する私法の統一化の動きを全体として跡付けてその特質を解明すること、第2に、こうした動きを基礎づける近代ヨーロッパ私法の原理(とくに契約法にみられる原理的共通性)や統一私法典の構想等を分析し、わが国の私法への影響を考察することにある。今回の研究期間内には、とくにこうしたヨーロッパ私法統一の動向そのものの分析と、日本法に対してそれがどのような影響を及ぼすのかを比較法的手法を用いて解明することに重点を置くものとした。この期間内には、本研究の中核メンバーによってヨーロッパ契約法原則の意義を明らかにし、それが日本法にどのような影響を及ぼすかを検討するシンポジウムを、比較法学会において開催した。また、こうした研究作業の基礎資料となる「ヨーロッパ契約法原則」についての翻訳プロジェクトに取り組み、すでに潮見佳男=中田邦博=松岡久和『ヨーロッパ契約法原則I・II』(法律文化社、2006)の刊行を終わり、IIIの刊行を予定している。また、これまでの研究成果を集大成した『ヨーロッパ私法の展開と課題』の刊行が予定している。以上のように、本研究は、さらなる展開を示しつつあるヨーロッパ私法・契約法の全体像を解明するために、さまざまなプロジェクトにおいて深化し、またすぐれた研究成果を挙げている。
著者
小島 陽 落合 鍾一 福沢 康
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

機能的かつ機械的性質に優れたウィスカ強化アルミニウム合金複合材を得るには、製造法がポイントとなり、いかにウィスカを均一に分散させるかにある。現在のところ製造法には、大別して鋳造法と粉末冶金法がある。本研究では、粉末冶金法でウィスカ強化アルミニウム合金複合材を得る製造工程を確立し、複合材の特徴である耐熱性、耐摩耗性にも優れた高性能製品の作製のための基礎データを集め、また得られた複合材の高温特性を調べ、金属組織学的立場から高温特性と金属下部組織との関連を明らかにすることを目的とした。本研究に用いた粉末法は、SiCウィスカとA6061アルミニウム合金粉末を混合後、ホットプレスで一次成形した後さらに熱間押出しを行ない複合材を製造し、機械的特性や摩耗特性について調べた。特に、SiCウィスカの前処理、アルミニウム合金粉末の粒度、混合方法の影響について調べ、複合材の製造における問題点を考察した。本研究で得られた成果をまとめると以下のとおりである。SiCウィスカに前処理を施して、44μm以下のアルミニウム合金粉末を用いることにより強度は向上した。混合方法としてボールミルを用いると、ウィスカの体積率で5%、マグネットスターラを用いるとウィスカの体積率で2%までの複合材で強度の向上がみられた。混合方法によりウィスカの損傷や分散状態に差が生じ、これが強度に大きな影響を及ぼしていることが示された。また、ウィスカの損傷は、押出し工程までに激しくなり、アスペクト比も混合方法などに関係なく一定となった。SiCウィスカ強化アルミニウム合金複合材は、ウィスカ体積率10%で耐摩耗性が母材のアルミニウム合金の約3倍と非常に大きな結果となり、耐摩性材として有効であることが明らかとなった。
著者
樋口 泰一
出版者
大阪市立大学
雑誌
特定研究
巻号頁・発行日
1987

1.人工細胞, 人工分子組織体の集積反応場を構成する機能性素子の構造化学的研究を行った. 集積体の主体(第1素子)はシクロデキストリン(CD)類であり, 個別の第1, 2素子が持たなかった新たな機能と構造を研究した. また, 有機物質に対する反応場としてのCDモデル構造や, 生体機能と関連の深い幾つかのステロイド系化合物の異性体群につき, その集積様式に及ぼす水酸基〜水素結合の効果をしらべた.2.機能上向上のため修飾されたβ-シクロデキストリン(β-CD)類の結晶場ならびに相互作用:β+CDの6位の水酸基1〜2個を数種の置換基(-SC(CH_3)_3,-SCH_2C(CH_3)_3,-SC_6H_5,+S(0)C_6H_5で置換した6つの誘導体の結晶構造から, それらの結晶場とそこにおけるホスト部(CD環), ゲスト部(置換基)間の相互作用を詳細に比較検討し, 置換(修飾)基のもたらす効果を明らかにした.3.2種の大環状素子の集積(2重マクロ環)結晶場の構造とカチオン(Li^+,K^+,Na^+,Rb^+)の捕捉機能:結晶学的構造研究から, γ-CD・12-クラウンー4(CE)から成る集積体は無限に続く大きなカラム構造を作っており, その中で2重環構造を形成しているγ-CDとCEとの相互作用には3通りある. その内の1つ-2けのCEが隣接-の集積場にLi^+,Na^+,K^+などが取り込まれる. Li^+やNa^+とCEとの相互作用は類似しているがK^+は違った相互作用を示した. Rb^+は取り込まれなかった. カチオンを捕捉する場合にはCEのコンフォメーションは変形して対応することを明らかにした.4.胆汁酸に含まれるジヒドロキシコール酸の4つの異性体は夫々違った水素結合を形成し, それに伴って分子の集積様式, 反応場の構造に差異が生じる. ミセルや液晶形成との関係を検討す.
著者
竹内 勇剛
出版者
静岡大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は,知的人工物と人間との日常的な生活環境の中での自然なコミュニケーションの実現を目指し,知的人工物の知性と身体性に対する人間の認知的姿勢に基づいた適切なコミュニケーション環境モデルを提案することを目的とした.そこでまず,様々な状況におけるコンピュータやエージェントの一般的な利用場面を通して,それらの知性と身体性がどのような認知的姿勢のもとでそれらと人間との間の社会的なインタラクションに寄与しているかを検討した.この際,心理学的手法を用いた実験に対して統計的な分析を行なうことで,より定量的な視点での考察が可能になる.その結果,人間はアバターのように背後に実在する人間が操作しているような対象に対して,設計者が想定するように「アバター」として機能していることを基盤とした反応をせずに,インタラクションの実際の対象となっているアバターの像そのものに,人格性を帰属させた対人的反応を示すことが明らかになった.すなわち,人間はたとえ仮想的で実体を伴わない人工物であっても,その振る舞いが知的であると認知されると,そこに独立した人格性を帰属させ,背後にある様々な"仕組み"も対面している人工物自身の機能として認知してしまう反応をするのである.さらに,仮想的な身体を有した人物像との対話場面において,人間はその人物像のもつ身体的機能(視認・聴取・口述)を自然なものとして認知し,たとえば画面上に表示された人物像に対して,直接手にとったものを見せたり,話し掛けたり,人物像が発する音声が聞き取りづらいときに画面に近づいて耳を傾けるなどの間身体的反応が観察された.これらのことは,Reeves & Nass(1996)で主張されているMedia Equationパラダイムに基づく人工物とのインタラクションモデルを実証的なデータにも基づいて支持するものであり,ロボットなどの実体を伴った人工物とのインタラクションと仮想的な身体をもった知的人工物との特別な心理学的差異は存在しないことを示唆するものとして意義深い成果となった.
著者
TANSURIYAVONG Suriyon
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

本研究は、双方向映像通信を利用したコミュニケーションにおいて,効果的に状況映像を伝えつつ,かつプライバシの保護手法を確立することを目的としている.具体的には,(1)状況映像の中から個々の人物像を実時間で自動的に抽出・認識・追跡する手法を確立し,(2)個々の人物像の細部を加工し隠蔽表示が可能とする制御機能を実現し,(3)プライバシ保護機能を組み込んだ双方向映像通信システムを構築して運用実験を行い,システムの有効性を確認することである.研究実績:(1)動画像処理装置IMPA-VISINを利用した人物像の実時間抽出手法の確立背景差分法と移動方向コードを組合せてビデオ映像から人物像を実時間で自動的に抽出する手法を確立した.(2)IDバッジを利用した人物の認識実験名札サイズの紙に印刷してIDバッジを作成し,認識用のビットパターンを決めて,画素の輝度の差を利用してビットパターンをIDバッジの背景から抽出し,ラベリング処理を行って,ビットパターンのコードを認識する実験システムを構築した.(3)人物の顔画像を利用した人物の認識実験多重解像度モザイク化処理を利用し,正面顔から12×12,合計144次元の顔部品特徴ベクトルを求め,それらから顔辞書を作成した.入力映像から実時間で自動的に正面顔を抽出し,モザイク化処理を施して顔辞書と照合し,人物を認識するシステムを構築した.(4)同一人物の追跡と人物隠蔽実験上記の(1)の抽出結果を利用して,人物像のラベリング処理をし,フレーム間での変化を追いつつ,同一人物を追跡しながら隠蔽表示できるシステムを構築した.隠蔽表示方法としては,シルエット表示,名前付きシルエット表示,名札シルエット表示及び透明人間表示を用いた.上記の(2)又は(3)と組み合わせて,識別した人物の名前と各隠蔽表示方法で,状況映像における人物のプライバシ保護手法を開発した.さらに,運用実験を行いシステムの有効性を確認した.(5)2000年9月13日に長岡技術科学大学で開催された電子情報通信学会オフィスシステム研究会で研究成果を発表した.(6)2001年11月16日にOrlando Florida, USAで開催されたWorkshop on Perceptive User Interfaces(PUI'01)にて研究成果を発表した.
著者
岩橋 政宏
出版者
長岡技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

従来の監視カメラは常に我々を写し続け、受信者に対して被写体の細部までを克明に伝えてしまう。いわば被写体の気持ちを無視した映像通信システムとなっている。これに対し本研究では、映りたくない人は自動的に隠す、いわば見られる人の気持ちを反映するプライバシー・コンシャスなビデオ通信方式を開発し、これをもって国際交流に貢献することを目的としている。1年目は、1)映像中から人物領域を抽出し、2)カメラからの距離に応じて人物ごとの透明度を決め、3)必要最小限の情報のみを圧縮符号化および伝送し、4)受信側で透明人間を映し出す方法を提案した。提案手法はとくに、画像符号化の国際標準であるJPEG2000(JP2K)の要素技術を活用しているため、世界的に普及しているIPコアなどのハードウェア・ソフトウェア資産を活用でき、開発期間の短縮や製品コストの削減が可能となる優れた特徴を有している。2年目は、5)本システムをDSPによりハードゥェア実現し、6)諸般の利用形態における改善点を明らかにし、システムの実用化を目指した評価実験を行った。既存の画像認識モジュールと既存の画像符号化モジュールを単に組み合わせるだけでは学術的な特色があるとは言えない。本研究では、7)JP2K画像符号化国際標準の要素技術を活用し、8)認識処理にフィードバックすることで人物領域や透明度を決定する。このような点で学術的に特色があり独創的であると言える。結果として、認識と符号化の協調技術が開発され、小型で省電力な知能ビデオカメラの開発が期待できる。更にはこれを太陽電池と風力発電で駆動することで、プライバシー・コンシャスな環境調和型モニタリング・システムを構築できる、あるいは、人に緊張感を強要しない遠隔共同研究空間を提供できる、等の意義を有する。
著者
溝口 紀子
出版者
静岡文化芸術大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、フランスのメディア・スポーツ、スポーツ・ジャーナリズムにおける社会的背景や歴史的変遷を明らかにし、商業的な放映権とスポーツ団体の利益を擁護しながらも、「公共放送」の重要性を認め、どのようにメディア・スポーツ文化を構築していったのかを検証した。さらに、フランス人と日本人のメディア・スポーツ関係者による公開シンポジウムを開催することで、公共性やグローバル化の中における現代のメディア・スポーツの実像を明らかにし、メディア・スポーツのアイデンティティやスポーツ・ジャーナリズム、メディア・スポーツ文化について考察した。
著者
竹下 覚
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

1.近紫外励起用赤色発光Yvo_<4<:Bi^<3+>,Eu^<3+>ナノ蛍光体Yvo_<4>:Bi^<3+>,Eu^<3+>ナノ蛍光体を用いた太陽電池用波長変換材料を作製し、作製条件の最適化を行ったのち、シミュレーションと実験の比較を行った。その結果、より高効率な波長変換を実現するためには、波長変換層による反射」損失をさらに抑制する必要があることを明らかにした。また、実用化に向けた耐久性評価のため、ナノ蛍光体・ポリマー複合膜の長期耐光性試験を実施したところ、発光強度の特異な時間変動現象を発見した。この現象の起源について追究し、ナノ蛍光体が光触媒とよく似た作用によってポリマーを光分解していることを明らかにした。2.近紫外励起用緑色発光Zn_<2>GeO_<4>:Mn^<2+>ナノ蛍光体ソルボサーマル法によって作製したZn_<2>GeO4:Mn^<2+>ナノ蛍光体において、Mn^<2+>イオンの分布状態が発光特性に与える影響を調べるため、反応機構および粒子生成プロセスを解析した。その結果、Mn^<2+>イオンが粒子表面に偏析し、Mn2+間のエネルギー移動に起因する蛍光強度の低下(濃度消光)が生じていることを明らかにした。3.近紫外励起用赤色発光アパタイトナノ蛍光体近紫外励起用赤色発光ナノ蛍光体の応用の幅を広げるため、Yvo_<4>:Bi^<3+>,Eu^<3+>ナノ蛍光体よりも高い生体親和性を有するEu^<3+>ドープアパタイトに着目した。フランスCIRIMAT Instituteに3ヶ月間滞在し、当該分野の専門家であるDr.Christophe Drouetのもとで研究を行った。Eu^<3+>ドープアパタイトナノ粒子の合成法はすでに確立されているが、分散安定性が低く、強く凝集したナノ粒子が得られるという問題を抱えている。そこで、ナノ粒子の凝集・分散を制御する手法を探究し、親水性高分子鎖を有する配位子で表面修飾することで、分散安定性の高いナノ粒子が得られることを明らかにした。
著者
斎藤 正徳 井宮 淳 島倉 信 亀井 宏行 田中 秀文 奥野 光
出版者
東京工業大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1992

地磁気のベクトル計測が行える探査装置として、「3軸グラジオメータ」を世界に先駆け開発した。3軸グラジオメータは、1インチ径のリングコアを用いたフラックスゲート型センサを3組直交配置した磁力計を、垂直方向50cm離して1本の支持棒に取り付けたもので、出力は磁気勾配3成分(上下のセンサの差出力)と、上方のセンサで捕らえた地磁気3成分である。センサ高は、支持棒への取り付け位置を調整することで、任意に変えられる。測定は、指示棒に取り付けられた水準器で垂直度を確認しながら行う。垂直軸周りのセンサの回転は、上方のセンサからの地磁気3成分を用い、補正することもできる。感度は磁気勾配で、1nTである。本体には、4,000点での測定値を記憶できるメモリを備えており、RS-232Cインターフェイスを介して、コンピュータにデータ転送できる。バッテリ-駆動で、約8時間測定可能である。この3軸グラジオメータを用い、夷森古墳(宮城県宮崎町)、根岸遺跡(福島県いわき市)、大戸古窯跡群(福島県会津若松市)、田尻遺跡(群馬県子持村)、猿田窯跡(群馬県藤岡市)、大寺山洞穴(千葉県館山市)、石ノ形古墳(静岡県袋井市)、大知波峠廃寺(静岡県湖西市)、象鼻山1号墳(岐阜県養老町)、稲荷塚古墳(京都府長岡京市)、久米田貝吹山古墳(大阪府岸和田市)、行者塚古墳(兵庫県加古川市)、七日市遺跡(兵庫県春日町)、東山古墳群(兵庫県中町)、岩戸山古墳(福岡県八女市)、西都原古墳群横穴墓(宮崎県西都市)の各種遺跡において探査実験を行い、本装置の有効性を確認するとともに,本装置をもちいた探査アルゴリズムを確立した。