著者
村尾 修
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究プロジェクトでは,まず1999年台湾集集地震の被災地である集集を対象として,復興過程に関して継続的な観測を実施した.そして,その数年間の復興調査データ等を用いて,「空間復興モデル」を提案した.これは被災地の都市空間の復興過程を物的環境の変化すなわち建物の復興状況(被災,瓦礫の撤去,建設中)という視点から記述し,その変化を客観的に示す方法である.そこで得られた知見を活かし,より詳細な建築確認申請データを用いて.地域の復興過程を復興曲線として客観的に示す方法を提案した.さらにこの客観的な指標で示される地域の復興過程を支える社会的背景についても,調査した.その方法としては地域の資料を読み解くとともに,被災者,役人,その他のステークホルダーに対して面接調査を実施した.その成果のひとつとして,集集鎮志を翻訳し,現地の復興過程を理解するための情報として利用した.そして面接調査や資料など集集の復興過程を読み解き,復興のエスノグラフィ作成のための方法論としてまとめた.これは,地域の復興を包括的にとらえ,工学的な要素と社会学的要素を盛り込んだ復興研究のアプローチであり,本プロジェクトで実施した他地域の復興報告書等を活用した.復興過程を表す指標構築のための研究と平行して,復興をアーカイブズとして記録するための研究も行った.そのひとつとして,筆者がモニタリングしてきた復興の記録を都市史の中でどのように位置づけたらよいのかを考察し,復興デジタルアーカイブズの意義についてまとめた.そして,その考え方の一部を集集を対象として具体化(GoogleEarthを用いた復興デジタルアーカイブズ)し,方法論としてまとめた.
著者
渡部 幹夫 酒井 シヅ 杉山 章子 鈴木 晃仁 永島 剛
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

第二次世界大戦後占領下の日本において行なわれた、行政制度の法的な改正は多岐にわたる。GHQ公衆衛生福祉局サムス准将の主導により行なわれた保健医療制度の変革は、占領国の法律を超える積極的な予防医学的な法の精神で作られたようである。しかし今回の研究により、その法を実際に施行した日本の混乱と新たな問題の発生が明らかとなった。
著者
塩出 浩之
出版者
琉球大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、明治維新直後に誕生した日本の新聞が、公開の言論による政治空間を形成した過程について、近隣諸国との関係・紛争をめぐる議論を中心に分析した。征韓論と民権論の結合に象徴されるように、言論の自由(政府批判を含む)の追求とナショナリズムとは親和的だったが、"国益のための避戦"論のように議論には多様性があり、公に異論を戦わせること自体に重きが置かれていた。コミュニケーションの形態にも多様な模索があり、琉球併合問題をめぐっては中国の新聞との相互参照もみられた。
著者
押川 文子 村上 勇介 山本 博之 帯谷 知可 小森 宏美 田中 耕司 林 行夫 柳澤 雅之 篠原 拓嗣 臼杵 陽 大津留 智恵子 石井 正子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本科研は、複数地域を研究対象とする研究者による地域間比較や相互関連を重視したアプローチを用いることによって、グローバル化を経た世界各地の地域社会や政治の変容を実証的に検証し、それらが国内外を結ぶ格差の重層的構造によって結合されていること、その結果として加速するモビリティの拡大のなかで、人々が孤立する社会の「脆弱化」だけでなく、あらたなアイデンティティ形成や政治的結集を求める動きが各地で活性化していることを明らかにした。
著者
矢口 祐人 廣部 泉
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

平成19年度は18年度に引き続き、現地調査を通してアメリカのキリスト教原理主義団体に関する情報を収集した。夏季に矢口がサウスダコタ州を訪れ、キリスト教原理主義団体が展開する中絶反対運動の調査を行った。教会内のみならず、教育やコミュニティ活動を通して、中絶問題を巧妙に政治化する様子がみられた。また前年度に引き続き、コロラド大学のトーマス・ザイラー教授と意見交換を行った。さらに研究に必要な保守キリスト教団体関連の書籍・DVDなどを購入して、資料の充実を図るとともに、矢口と廣部で継続的に情報交換を続けた。廣部はそれをもとにキリスト教宣教の有効性を考察する論文を執筆し、発表した。平成20年に入ると、キリスト教原理主義団体の政治活動で注目すべき動きがみられた。同年11月のアメリカ合衆国大統領選挙の共和党候補として立候補したバプテスト派牧師で、前アーカンソー州知事のマイク・ハッカビーが、大方の予想を覆し、1月のアイオワ州予備選挙で勝利をおさめたのである。キリスト教原理主義団体の文化活動がアメリカの政治にどのような影響を及ぼしているかを、教会での活動のみならず、メディアや教育の場などにも注目して研究するためには、ハッカビーの選挙戦略とその効果を調査する必要が生まれた。インターネットなどで情報を収集するとともに、関連資料を購入し、米国キリスト教原理主義団体の文化戦略事業の実体と今後の展開について考察をすすめた。ハッカビーは最終的に敗北したものの、その支持基盤であるキリスト教原理主義の動きは活発であり、最終的に共和党候補となったマケインの戦略にも大きな影響を与えた。その意味では選挙戦を通して、キリスト教原理主義団体の文化戦略の理解を深めることができた。
著者
喜納 育江
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、アメリカ南西部における米墨国境地帯の文化的「境域」におけるチカーノとアメリカ先住民の文学について、これらの文学が、国境線で分断された故郷や大地とのつながりを求める先住民としての想像力を共有していることを明らかにした。特に、国内の研究成果が皆無に等しかったチカーナ文学の文学的想像力に注目し、チカーナと先住民文化の関係を明らかにする複数の研究論文を発表した。
著者
山浦 逸雄 矢嶋 征雄
出版者
信州大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1996

研究計画最終年度は前年度に引き続き、樹木の接地インピーダンス測定法の改良を行い、4電極法による測定法を導出するに至った。これにより初めて、樹木の接地インピーダンス測定が実用化の域に達したので特許出願を行った。次に、本学附属大室農場の天蚕用クヌギ林において、研究計画初年度(平成8年度)より準備した、組織と結合が十分安定している電極を用いて、幹電位の連続測定を1998年6月より開始した。幹電位変化には1日周期の変動がみられたため、その発現原因についてまず調査した。気温との相互相関関数を計算し検討した結果、24時間周期で変化する幹電位は、電極と植物組織との界面に生じる分極電圧の温度依存性が主原因であると推測された。浅間山火山活動と電位変化の比較については、電位観測期間中浅間山には特に目立った活動はなく比較に至らなかった。一方、地震については1998年8月から9月にかけて上高地地震が発生した。上田地方で震度1以上の有感地震(最高2まで)に対し、幹電位との比較を行ったが、地震発生前後においてとくに変わった電位変動は見られなかった。ただし、地震発生時には枝の揺れによるノイズと考えられる電位変動が記録されたこともあった。1999年1月23日には上田地方で本年度最大の揺れを感じた大町の地震(震度3、M4.7)においても、何らの異常電位も見出されなかった。一方、98年7月1日には長野県北部地震(震度2、M4.7)があり、上述のノイズによるものとみられる電位変化が記録された他、約20時間前に通常の電位波形の中に大きな単相性のhumped waveがみられた。しかし,1回だけの現象でこれが何に由来したかは不明であった。樹木の大地センサとしての可能性については、以上の研究を通じ根の接地インピーダンスや幹電位測定手法が本研究によって確立されたので、これらを手がかりにさらに研究を進めることが必要とされる。
著者
村上 勇介 狐崎 知己 細谷 広美 安原 毅 柳原 透 重冨 恵子 遅野井 茂雄 新木 秀和 幡谷 則子 二村 久則 山崎 圭一 新木 秀和 小森 宏美 後藤 雄介 佐野 誠 幡谷 則子 二村 久則 箕輪 真理 山本 博之 山崎 圭一 山脇 千賀子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

発展途上地域で最も早い時期から「民主化」と市場経済化を経験したラテンアメリカにおいて、近年、政治が最も不安定化しているアンデス諸国(ボリビア、コロンビア、エクアドル、ペルー、ベネズエラの5ヶ国)に関し、現地調査を踏まえつつ、ポスト新自由主義の時代に突入したアンデス諸国の現代的位相を歴史経路や構造的条件を重視しながら解明したうえで、近年の動向や情勢を分析した。そして、5ヶ国を比較する研究を行い、対象国間の共通点と相違点を洗い出し、事例の相対化を図り比較分析の枠組を検討した。
著者
松本 龍介
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2007

水素が材料の強度を劣化させる水素脆化はよく知られた現象である.水素エネルギーを安全に利用するためには,水素脆化のメカニズムの解明は非常に重要である.本研究では,水素と格子欠陥との相互作用に着目することで鋼材中での水素の役割に関する研究を行った.様々なシミュレーション手法を駆使した解析の結果,水素が格子欠陥を増殖し易くさせたり,運動性を大きく変化させることが明らかになった.
著者
松本 龍介
出版者
九州工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

機械材料の高性能化や高度な構造健全性の要請のため,ミクロスケール構造変化に立脚した力学モデル構築の試みが盛んになされている.中でも代表的なアプローチとして,量子計算から原子間相互作用力を定義し,分子動力学法による欠陥構造のダイナミクスの理解を経て,離散転位動力学法による転位構造と力学特性の関連の解明へと繋げようとする一連の研究が挙げられる.しかしながら,離散転位動力学問題の単なる大規模化によってマクロな構造解析を実施することは非現実である.本研究ではこの問題点を突破するために均質化理論に基づく解析手法の開発を行なった.初年度は,連続体解析における代表体積要素内に周期境界条件を仮定した離散転位動力学問題を格納することで,連続体によるマクロ問題と離散転位動力学法によるミクロ問題を結合したマルチスケール解析手法の定式化を行なった後,それを用いて弾性体粒子を分散させた1滑り系の金属基複合材料の塑性変形挙動の解析を行った.本年度は,それに引き続き,転位が介在物内に侵入できるように,理論及び解析プログラムを拡張した後,転位源の活性化及び,介在物への転位のパイルアップと侵入挙動と,応力-ひずみ曲線との関係を異なる寸法の介在物に対して明らかにした.さらに,2滑り系に拡張し,多結晶体の塑性変形挙動と粒径及び転位構造との関わりに関する解析を行った.そして,転位が粒界を横断するメカニズムを離散転位動力学法に導入することで,降伏応力と加工硬化係数に対する粒径効果が適切に導入されることを明らかにした.
著者
松本 龍二
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

前年度までに、テラヘルツの光信号列を制御することを目的に、電気制御を用いない光の特性のみを利用した反射型の光変調素子を提案し、単一信号のピコ秒オーダーの光変調を達成してきた。今年度は、(I)擬似的なテラヘルツのパルストレインによる連続的にパルス信号を変調する試みおよび、(II)位相変調型の光変調を提案した。(I)疑似テラヘルツを発生させる光学系を新規に組み立て、一つのフェムト秒パルスを1ps〜数psの間隔を持つパルストレインに分割した。フタロシアニン系の色素分散高分子薄膜をもちい連続パルス光の光変調を試みた。導波モードが斜め入射である問題点から、1psの応答は得ることができなかったが、各パルス光を時間的に分離できる数ピコ秒から10psオーダーの間隔であれば連続パルス光変調の可能性を示唆した。(II)偏光板を複数組み合わせ、これまでの強度のみの光変調ではなく、位相変化を用いた手法について検討した。出力光は、Johns行列を用いた計算方法で予測された。この結果、導波モード条件では著しい位相の変化が確認され、検出偏光板の方位角度に依存した複雑な変化を示した。フェムト秒レーザー励起により、おもに屈折率の嘘数部のみの変化で光変調が実現できた。このように、情報通信技術における次世代の技術、全光制御型の光変調方法としてのあたらしい可能性を見出した。確立した成果はApplied Physics Lettersで近日公開予定である。
著者
金井 利之
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本年度は最終年度ということもあり、これまでの文献資料収集及び自治体ヒアリングを続けるとともに、それらを多様な機会を活用して公表していく作業を行った。例えば、上越市や岡山市の事例調査報告がある。また、特に本年度に力を入れたことは、公共政策系大学院における教育と研究と実務の一体的有機的連関である。この成果として、大学院における「事例研究」(演習形式)で法務管理を採りあげるとともに、その成果を、担当教員として監修しつつ、大学院生に執筆させることを行い、併せて、事例報告の学会への蓄積を行った(『自治体法務NAVI』第一法規、において連載)。こうして採りあげることができたのは、京都市、尼崎市、神奈川県、横浜市、川崎市である。本年度には連載は終了しなかったが、今後も、1県3市町程度の原稿を調整しているところである。これらの事例情報の蓄積を踏まえつつ、法務管理に関する理論枠組みを整理するため、給与管理や第三セクター処理などの他の行政管理との比較をおこなった。特に、後者においては、多面的な側面を有する第三セクター管理では、財務・人事・法務・情報などの管理が全体として整合している必要があり、第三セクター処理という限られた側面ではあるが、他の行政管理との対比のなかで、法務管理の占める位置と特徴を分析した。このようにして、事例を蓄積することで、自治体の法務管理の全体像ないしは平均像が、おぼろげながら浮上しつつあると考えられる。また、これらの蓄積を公表することで、学界・実務界の関係者には重要な基盤情報を提供できたものと考えられる。今後は、この蓄積を踏まえて、自治体の法務管理に関する実証的な仮説を提示し、それに沿って文献・ヒアリング調査を行い、検証していく作業が必要と考えられる。
著者
北川 浩 比嘉 吉一 尾形 成信 中谷 彰宏
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

結晶粒をナノメートルオーダまで微細化したナノ多結晶材料は、結晶粒を構成する原子の数に対して粒界を構成する原子の割合が高く、その構造は不規則である上に十分に構造緩和しておらず準平衡な状態にある。本研究では、ナノ結晶材料の強度を律している一般的な動的組織要因を明らかにする目的で、原子モデルを用いた大規模コンピュータ・シミュレーションを実施して、つぎのような結果を得た。(1)材料強度が粒径の減少に伴って低下する、結晶粒微細化に伴う軟化現象(逆Hall-Petchの関係)が見出される.この関係は、強さと欠陥体積率の関係として整理することができ、ナノ多結晶材料の強度は粒界領域で生じる原子構造変化により律される。(2)結晶粒径が非常に小さいナノ多結晶材料では,粒内に転位が安定して存在することは出来ず,Frank-Read源のような転位源を粒内に持つことはできない。しかし,積層欠陥エネルギーが低い材料では、拡張転位の幅と結晶粒径が同じスケールとなり、結晶すべりは部分転位のみで生じて、粒内を貫く形で積層欠陥が形成される。(3)粒内の積層欠焔の形成による構造的異方性が、ひずみ硬化、繰り返し硬化、および力学異方性を引き起こす。また、積層欠陥は、粒界部での変形のアコモデーション機構と連動して結晶粒変形の可逆的な要素となることが見出される。(4)自由表面を有するナノ多結晶材料では、積層欠陥エネルギーが大きい場合,粒界すべりにより局所変形が進行し粒界部で破断するが,積層欠陥エネルギーの小さと部分、転位による結晶すべりが主となり、粒内に残存する積層欠陥により二次すべり系の活動が抑制されて,変形の局所化が抑制され材料全体の延性が向上する。(5)アモルファス金属に局在化した変形が生じると、局所的な温度上昇によりアシストされた変形誘起再結晶が生じ、ナノサイズの結晶粒が生成される。
著者
松本 龍介
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

金属ガラスは極めて高い降伏応力や特殊な機能特性を有するものの,マクロな延性が乏しいという欠点を有する.常温での金属ガラスの変形と破壊はせん断帯の生成と伝ぱによって支配されているため,その詳細を解明して対策を考えることが必要である.ここでは,まず,切欠きを含む平板にモードIIの変形を加えることで,切欠き底からせん断帯を伝ぱさせる大規模な分子動力学シミュレーションを実施し,せん断帯内部の温度と応力の時間変化を詳細に評価した.そして,分子動力学シミュレーションの結果に基づき,金属ガラス中のせん断帯を粘性流体を含むモードII型き裂としてモデル化することで,不安定伝ぱを生じる可能性のある限界せん断帯長さを計算した.そして,その結果から実験的に観察されているせん断帯の長さをうまく説明できることを示した.さらに,金属ガラスが示す圧縮下と引張下での延性の大きな違いを,それぞれの場合の限界せん断帯長さの違いから説明した.また,初年度に引き続き,ナノ結晶を含む材料中のせん断帯伝ぱ挙動に関する計算も実施し,せん断帯の伝ぱ抵抗をJ積分を用いて評価した.その結果,せん断帯の伝ぱ挙動を効率的に変化させるためには,せん断帯の幅に対して十分なサイズを有する結晶粒子が必要であることが明らかになった.本研究によって,金属ガラスの延性を向上させるためには,(1)限界せん断帯長さを長くすること,(2)せん断帯を捕捉する機構の導入が重要であることがわかった.(1)を達成するためには,不均質性によって低い応力レベルからせん断帯を生成させることが有効であり,(2)を達成するためには,適切なサイズの軟質介在物の導入が特に有効であると考えられる.
著者
宮崎 則幸 池田 徹 松本 龍介
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

先端デバイスの強度信頼性評価に使用することができる解析プログラムおよび実験手法を開発した。すなわち、解析プログラムとしては、異種材界面強度の破壊力学的評価プログラム、転位密度というミクロ情報を含む構成式を用いた転位密度評価解析プログラム、および大規模分子動力学解析プログラムを開発した。また、実験的手法としては、撮像装置として光学顕微鏡および走査型レーザ顕微鏡を用いた微小領域ひずみ計測システムを開発した。これらの解析的、実験的手法を用いて、電子デバイスの強度信頼性評価を行った。
著者
水本 浩典
出版者
神戸学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

阪神・淡路大震災から15年が経過するなかで、戦後最大の都市型大規模災害に関係する史料(本研究では「震災資料」と呼称)のうち、特に、被災地の小学校・中学校などで多数形成された「避難所」に関する「震災資料」の所在を捜索するとともに、調査を目的としている。初年度に実施した神戸市域の小学校及び中学校に対するアンケート調査を基に、「避難所資料」の確認と発見に努めた。最終年度である平成22年度は、兵庫県南部地震の震源地に近い旧北淡町の避難所資料調査にも調査範囲を拡大した。(1) 震災資料所在の確認と資料の発見・神戸市立長田小学校避難所資料の発見と資料調査実施(原資料の寄贈を受ける)・神戸市立鵯越小学校(現・廃校)廃棄資料中から避難所資料発見・移管・淡路市立野島小学校(現・廃校)避難所資料の確認と資料調査実施(2) 聞き取り調査(避難所運営に係わる「記憶」資料の記録化)実施・神戸市長田区被災者からの聞き取り調査実施・神戸市東灘区被災者からの聞き取り調査実施(3) 神戸市消防局当時職員に対する聞き取り調査実施・特に、神戸市長田区の消火活動・人命救助活動に従事した職員(30名)に実施
著者
松本 龍介
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

水素を安全に用いるためには,水素環境での金属材料の力学的挙動を正確に予測することが重要である.本研究では,材料/力学/環境的因子が金属の破壊形態に及ぼす影響を,解析と実験の両方から調べた.代表的な成果は以下の通りである.(a)境界条件によって支配的な水素の影響が変化する.(b)水素によって格子欠陥濃度が増大する機構を明らかにした.(c)水素が存在すると破壊直前に局所的な塑性ひずみ速度が急速に増大する.
著者
伊藤 冬樹
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究課題では,複数の分子を組み合わせることで形成される組織化分子配列系で進行するエネル1ギー・電子移動反応などの励起ダイナミクスについて時間・空間分解分光法を用い,時間発展と空間分布の階層性を明らかにすることを目的とする.組織化された分子配列系として光捕集能や光導電機能をもつ分子をDNAにインターカレートした機能組織体を対象とする.前年度のアクリジンオレンジーDNA薄膜における時間分解蛍光測定,蛍光異方性減衰の測定から,DNAにインターカレートして形成される分子配列系において高効率な励起エネルギー移動が生じていることを明らかにした.本年度は,この結果に基づき,DNA鎖上にカチオン性ポルフィリン(TMPyP)とシアニン系近赤外蛍光色素(DTrCI)を吸着させた系における励起エネルギー移動を観測し,これを利用した近赤外蛍光増強について検討した.TMPyPとDTTCIを混合したDNA緩衝溶液中ではTMPyPの濃度が増加するにつれて,DTTCIの蛍光強度はTMPyP非存在下の最大86倍程度増加した.このエネルギー移動過程のタイナミクスを検討するために,時間分解蛍光測定を行った.TMPyPの蛍光強度は2成分指数関数で減衰した.一方DTTCIの蛍光強度は立ち上がりと減衰の2成分指数関数で再現された.立ち上がり成分はTMPyPの早い減衰成分と一致したことからエネルギー移動によってDTrCIの励起状態が生成したことを示している.また,本研究課題により得られた知見に基づき,高分子薄膜中に形成された色素分子集合体の集台体サイズとその励起状態ダイナミクスに関する研究へと発展させることができた.
著者
石川 征靖 武田 直也
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1994

私達は国内の4大学4研究室(電通大、京大、東大教養、明治学院大)から提供された有機化合物試料における強磁性の発現を希釈冷凍機中で交流磁化率やM-H磁化曲線を測定して調べた。その結果、芳香族メチレンアミノ基をもつTEMPOラジカルをはじめとする7個の異なった化合物において0.07〜0.5Kの温度領域で強磁性転移を確認した。それぞれのグループの化合物は構造をはじめ全く異なった性質の物質であることを考えると、本研究で調べたような温度領域では有機強磁性の発現は相互作用は小さいながらもかなり普遍的な現象であることがわかった。どのような条件下で(どのようなラジカルで、どのような構造で)強磁性が発現し、その転移温度が高められるかを系統的に調べることが今後の課題で、TEMPOラジカルに関して結晶構造と強磁性の発現の相関についての研究を開始した。。また一方で、早大理工の研究室と強磁性ポリマーの探索に関する共同研究を開始した。本年度の研究成果は3篇発表済み、2篇投稿中である。
著者
吉田 裕久 大槻 和夫 植山 俊宏 三浦 和尚 位藤 紀美子 山元 隆春 牧戸 章 吉田 裕久
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

本研究では、3年間にわたって、説明的文章・文学作品・文章表現・音声表現の四つの領域班に分かれて、それぞれ予備調査・本研究を実施しつつ「国語能力の発達」に関する実証的な研究を進め、国語科教育改善への糸口を見出そうとした。本研究で得られた各領域班の研究から導かれた知見を一言で集約することはむずかしい。が、得られた成果を仮に集約してみると、次のようなことを言うことができる。1音声表現領域班が追究した対話能力の研究なかでの、「共同案」を組替えながら話し合いを行っていくことのできる力と、文学作品領域班の調査で得られた小・中学生の「続き物語」のなかに見られた、参加者的スタンスと観察者的スタンスをバランスよく選択していくことのできる力は、どこかでつながりあっているのではないだろうか。これは、文集表現領域班における調査結果についてもあてはまることである。さらに、説明的文章領域班の考察のなかで明らかになった、小学校6年以降の「メタ認知能力」の伸長の問題とも、これはリンクすると言えるのではないだろうか。2.対象や他者に同化・一体化していくということが可能になるかどうかというところに、少なくとも学童期初期の国語能力の発達の「峠」のようなものがあるように思われる。その同化・一体化が果たされた後、再び自己はことばを媒介としながら対象や他者とは異なる、自らの内部の何かを捉えることになる。それを意識しうるか否か、表現しうるか否か、ということがその次の「峠」なり「節目」なりになる。3.このような営みのなかで、その主体が関心を差し向ける「焦点」は移り動き、関心の幅と深さのようなものが、少しずつ少しずつその域を広げていくのではないか。対象や他者に同化・一体化しようとしたときとは異なった意味で、対象や他者をより広いパースペクティヴで捉えることができ、それを理解したり、その理解のもようを報告できるかどうかということが、その次の「節目」となるように思われる。4.対象や他者の包括的な理解と平行して、自己の内部の拡張もおこなわれるはずである。対象や他者の認識が構造化され、さらに自己の内部で追い育った独自な世界を、対象や他者に匹敵するものとして構築することができるか否かということが、おそらくその次にくる発達上の問題である。5.この科研の各領域班の調査研究で、とくに小学校高学年から中学生にかけて観察された、発達上の<停滞>や<ゆるみ>とも解釈される事象は、子どもの内面に目をやれば、そのような内部での葛藤が営まれているものであると考えることもできる。詳細な研究成果は、平成9年度末にまとめた中間報告書に続き、平成11年度末に刊行する最終報告書『国語科教育改善のための国語能力の発達に関する実証的・実践的研究II』(A4版160頁)に集約した。