著者
松本 純
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.69, no.12, pp.1595-1608, 1980-12-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
20

30例の悪性高血圧患者に透析療法を施行した.悪性高血圧の診断は,厚生省医療研究班,悪性高血圧小委員会の提唱した診断基準によつた.この30症例を,治療として用いたβ-blockerの使用の有無により3群に分類した. I. 3群の特徴, (1)大量のβ-blockerを要した群(A群)は15名(50%)で,内12例は基礎疾患が本態性高血圧症(EH)で,透析開始前に本症の発症をみた.残り3例の基礎疾患は慢性腎炎(CN)で,透析開始後に本症の発症を認めた.治療前後のレニン活性(PRA)は全例,異常高値を示し,又低Na血症が治療前後に見られた. 15例中10例(70%)が死亡した.さらに軽度のやせが認められた. (2) β-blockerを要さず,透析により血圧の管理を行ない得た群(C群)は9名(30%)で,内1名が死亡した.基礎疾患は全例CNで,発症時のPRA,血清Na値および体重は正常であつた. (3) β-blockerを間欠的に投与した群(B群)は6名(20%)で全員生存しており,基礎疾患はEHとCNが3名ずつで,特微はA群とC群の中間の成績を示した.すなわち発症時の高レニン,低Na血症は治療により改善した. II.不良な予後に関係する因子として, (1)基礎疾患がEHの症例, (2)高レニン血症, (3)低Na血症, (4)やせ, (5)高度の眼底変化(K-W 4度),の五つが判明した.
著者
安住 祐輝 永井 秀利 中村 貞吾
出版者
電気・情報関係学会九州支部連合大会委員会
雑誌
電気関係学会九州支部連合大会講演論文集 2021年度電気・情報関係学会九州支部連合大会(第74回連合大会)講演論文集
巻号頁・発行日
pp.223, 2021-09-17 (Released:2022-04-27)

ポーカーは手札がランダムに配られ,相手の手札はゲームの最後に公開されるまでわからない不完全情報ゲームである.本研究では,フィックスリミットテキサスホールデムにおいて相手の特徴を知るための情報の一つであるブラフ率を推定して,プレイヤの行動選択に役立てることを目指す.相手のブラフ率を推定するモデルを作成するにあたって線形回帰分析を用いる. 作成したモデルを用いて対戦相手のブラフ率を推定し,推定したブラフ率に応じて最適な行動選択をするプレイヤ作成する.コンピュータプレイヤと対戦実験を行ったところ,作成したプレイヤがブラフ率を推定しないプレイヤに比べて多くのチップを稼ぐという結果が得られた.
著者
吉田 ますみ
出版者
公益財団法人 史学会
雑誌
史学雑誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.126, no.6, pp.1-35, 2017 (Released:2018-10-20)

本稿は、第一次世界大戦が日本の海運にいかなる影響を与えたかを、その政治過程を踏まえて明らかにすることを目的とする。従来、大正期以降の日本海運は経済史、経営史の枠組みで検討されることが多く、国家産業である海運業や海運政策の政治との結節は問われてこなかった。本稿では、大戦中の一九一七年一〇月に船腹の流出を防ぐ目的で施行された緊急勅令・戦時船舶管理令の立案、審議、運用過程を検討することを通じて、当該期の政府、政党、当業者の対抗や共鳴の諸相を描出するとともに、日本海運業への影響を論じた。 地方利益欲求の吸収による支持獲得が雛形となりつつあった一九一〇年代、大戦による海運勃興の中心地であった阪神地方は、政治的には未だ空白地帯であった。世界市場での自由活動を制限する戦時船舶管理令の発令は、同地方の海運業者、特に社外船主の陳情活動と政府攻撃を惹起し、彼らは政党への接近により同令の実施緩和を達成することを画策した。他方、同地における反政府の気色を看取した政党も、船主から資金や動員の援助を受けながら同地での党大会を開催した。船主との直接の接触のなかで、政友会は逓相からの緩和言質獲得へと動く。 戦時船舶管理令の起草段階では、田健治郎逓相および伊東巳代治ら官僚閥によって、行政による専断的な海運業の指導が構想されていた。しかし、第40議会での同令への事後承諾獲得にあたって、衆議院第一党である政友会の事前交渉により、逓信省は骨抜きとも言える実施緩和を議事上で明言するに至った。禁止されていたスエズ以東の外国間航海が実態として届出制となり、日本船舶はインドや南洋、南方方面への進出を加速させる。当業者と政党の接近、介入は、行政の構想を挫折させただけでなく、その結末は大戦末期の日本海運の航路発展も規定したと言える。
著者
鈴木 亨 伊藤 南 名木野 匡 和田 敏弘 星川 仁人 大竹 浩也 五十嵐 雅彦
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.84-93, 2019-02-28 (Released:2019-02-28)
参考文献数
29

83歳男性.38歳時に2型糖尿病と診断された.81歳時に不明熱と下腿紫斑,肺門部リンパ節腫脹,甲状腺機能低下症で入院したが確定診断には至らず,その後軽快し退院した.外来では経口血糖降下薬でHbA1c(NGSP値)は6 %台であったが,2ヶ月前より急激な血糖コントロール悪化(HbA1c 9.6 %)を認め,精査加療目的に入院した.赤血球連銭形成とγ-グロブリン高値,内因性インスリン分泌能低下に加え,肺門部リンパ節腫脹,膵臓のびまん性腫大,間質性肺炎,腎腫大を認め,血清IgG4は高値であった.肺門部リンパ節・腎生検でリンパ球とIgG4陽性形質細胞の浸潤像を認めIgG4関連疾患と診断された.ステロイド治療が奏功し,血清IgG4値の低下と共に肺門部リンパ節腫脹や膵・腎腫大は縮小し,その後2年間のステロイド治療でインスリン分泌能も改善した.IgG4関連疾患の正確な診断と適切な治療が重要と考えられた.
著者
古谷 力 折原 裕 高木 さつき 吉田 淑子
出版者
Japanese Society for Plant Cell and Molecular Biology
雑誌
植物組織培養 (ISSN:02895773)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.82-86, 1988 (Released:2010-04-30)
参考文献数
11

奥多摩産ワサビ (Wsabia japonica Matsum.) の根茎より6種の分化段階の異なる培養組織を得た. これらの sinigrin 含量, myrosinase 活性を比較し, 分化と辛味発現の関係を考察した. Myrosinase 活性は脱分化したカルスから幼苗にいたるまですべての培養株に認められたが, sinigrin は少なくとも幼根・子葉様組織を併せ持つまで分化が進まなければ検出できなかった. さらに分化段階が進むにつれ sinigrin 含量は増加した. ワサビ原植物では sinigrin は全草に認められるが, 特に根茎部に多い. このてとから分化段階の進行による sinigrin 含量の増加は根茎部の肥大によるところが大きいと考えられる.

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出版者
芳本倉太郎
巻号頁・発行日
1929
著者
柴田 勇
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.131-138, 1963-06-30 (Released:2009-11-12)
参考文献数
28

Common geological features of the known kimberlite-occurring regions in the continents are briefly described with special notice to certain tectonic processes that seem to be linked to the eruption of kimberlites.Some investigators suppose that kimberlite magma originated in the peridotite layer just below the Mohorovicic discontinuity. Judging, however, from the tectonic processes prior to the eruption of kimberlites in most regions and the structural model concerning to the crust and the upper mantle supported by the writer, sources of kimberlites might be in more deeper part of the mantle than the peridotite layer.
著者
新藤 永実子 佐野 秀樹
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.214-220, 2014 (Released:2016-10-04)
参考文献数
17

本研究は,臨床美術アートプログラムが与える心理的影響に,描画への苦手意識をもつ者とそうでない者の間で違いがみられるかどうかを検討したものである。臨床美術とはもともと認知症予防や改善のために開発されたアートプログラムであり,そこで用いられる抽象的対象を表現するアナログ表現というものは,作品にうまい・下手といった技術的評価は存在しない。そのため描画に対する抵抗が少なく,誰にも受け入れやすい表現活動であると考えられる。実験参加者は23名(描画得意群13名,描画苦手群10名)で,アートプログラム実施前後で心理尺度に回答してもらった。本研究では心理状態の変化を“二次元気分尺度”,アートプログラム制作における体験過程の深まりを“芸術療法における体験過程尺度”を用いて測定した。その結果,描画に対して苦手意識がある者でもそうでない者でも,アートプログラムの実施前より実施後のほうが,ポジティブで活力がありリラックスした心理状態へと変化し,アートプログラムにおいて同程度に充実した体験ができることがわかった。
著者
保坂 遊 音山 若穂
出版者
一般社団法人 日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.95-106, 2016 (Released:2017-03-22)
参考文献数
37

本研究では,児童養護施設の児童に対する心理的・行動的支援の一環として臨床美術による介入を行い,その実践を通して,児童の行動や情緒に肯定的な変化が認められるか否かについて検証することを目的とした。施設に入所する 32 名の児童を対象として,介入群と非介入群とに分け,介入群には計 8 回からなる臨床美術のセッションを行った。介入前後の CBCL を比較した結果では,介入群において CBCL 総得点をはじめ,内向尺度および攻撃的行動尺度に肯定的な変化が認められた。また,支援員や教諭の報告にも,介入後に肯定的な変化が認められる児童が含まれていることが示された。
著者
井上 孝 下野 正基 市村 賢二 真坂 信夫 宮越 照一
出版者
日本歯内療法協会
雑誌
日本歯内療法協会雑誌 (ISSN:03895238)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.34-41, 1993 (Released:2019-10-31)
参考文献数
14
被引用文献数
1

Interaction between 4-META/MMA-TBB resin and dental pulp was investigated in vivo and in vitro. ① A cavity was prepared and the pulp was exposed in the occlusal surface of the tooth and filled with 4-META/MMA-TBB resin. Newly formed dentin was recognized just below the agent. During the healing stage, no inflammatory cell was observed but macrophages were detected close to the newly formed dentin, where tunnnel defects were appeared. ② 4-META/MMA-TBB resin was applied on the surface of pulp and 0.5% agar in vitro to investigate the surface structure on the resin after polymerization. When polymerization occured on the pulp, the surface of the resin revealed rods in shape. On the other hand, abundant cavities were found at the resin surface on the 0.5% agar. Taken all together, the surface structure of polymerized 4-META/MMA-TBB may cause macrophage migration around the interface between pulp and resin.
著者
西 正孝 山西 敏彦 林 巧
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌 (ISSN:00047120)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.115-120, 2004 (Released:2019-01-31)
参考文献数
36

核融合炉開発は進展し, 国際熱核融合実験炉ITERの工学設計が完成して建設活動を始めるべく準備が進められている。現在, 開発を進めている核融合炉は重水素とトリチウムを燃料とするが, トリチウムは放射性気体であり, また, 天然には稀少であるため, 核融合炉内で消費量に見合う量の生産を行う。このため, トリチウムの有効利用とその取り扱いに係る安全を確保するトリチウム・システムの開発は核融合炉の実現に必要不可欠である。本稿では, 核融合炉のトリチウム・システムについて, ITERのトリチウム・システムの設計とその技術基盤を中心に紹介するとともに, 今後の課題について述べる。