著者
仁平 恒夫 金岡 正樹 久保田 哲史 森嶋 輝也
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

水稲、畑作露地野菜、酪農の企業的農業経営体を、事業構造と展開過程、生産量等に基づき類型化し、費用・収益構造等の分析により競争優位の源泉を摘出しビジネスモデルとしてまとめた。また、農業生産法人のバリュー・チェーン構築に重要なブランド戦略を明らかにした。さらに、酪農のTMRセンターを対象にコスト低減のための飼料作物立地配置モデルや、企業的経営体の基幹従業員のモチベーション向上のため職務満足度が判断できる簡易手法を開発した。
著者
森下 知晃 小澤 一仁 鈴木 勝彦 芳川 雅子
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では,本来直接観察・サンプル採取を行えない日本列島のような島弧深部相当(最上部マントル/下部地殻)でのプロセスを理解するために,アルバニアなどに露出するオフィオライトに着目し,野外調査および,採取した試料の解析を行った。その結果, 島弧深部相当,特にマントル相当の岩相について下位から上位にかけて(1)中央海嶺とは異なり,流体の流入を伴うようなマグマ活動に関連した岩相が上位にかけて増加すること(2)かんらん岩層の上位には,シリカの付加が普遍的に観察されること(3)これまで中央海嶺環境で形成されて来たと考えられていた西側部分について,一部が島弧でのマグマ活動および加水作用をうけていることを明らかにした。
著者
平田 武
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、政治学研究上の空白となっているハプスブルク君主国とその継承諸国の政治発展をヨーロッパ全体の政治発展の中に位置づけることに寄与する目的をもって始めたものである。研究期間中には研究文献・同時代文献・史資料の収集とその分析をすすめ、その成果の一部として、ハプスブルク君主国のオーストリア側における政治発展を概観した研究(雑誌論文)、東中欧・南東欧地域における政治発展の見取り図を含む論文(近刊の共同研究論文集に所収の予定)、1920年代の当該地域におけるデモクラシーの崩壊事例の研究などをまとめた。
著者
蔡 兆申 BILLANGEON Pierre-marie
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

この研究では、如何に超伝導量子ビット(コヒーレント制御可能な2準位の量子システム)を多数集積し、それらを自由に結合させ、コヒーレンスを保ちながら、量子状態の操作を行うことができるか、ということを研究することがその主題である。このような研究は、将来の量子コンピュータの実現を視野に入れて行っている。2009年度では、二つの量子ビットと結合させる幾つかの方法を研究した。まず二つの量子ビットを、第三の量子ビットを介して結合させる方式を考慮した。この方法はすでに本研究グループで以前より研究されていたものを改良・発展したものである。この新結合方式は、この量子系の時間発展を解析的に研究したことにより得られたものである。現在この最新の結果を論文にまとめている最中である。またこの結合方式の回路を実現するため、新たな多層超伝導配線を備えた微小アルミトンネル接合回路の作製法を開発した。このような多層配線構造は、量子ビット数のスケールアップには欠かせないものであると考えている。すでにこの新結合式を取り込んだ資料の作成を終え、現在その評価をする準備を行っている。二番目の結合方式の研究のアプローチは、既にイェール大学で研究が進んでいる超伝導マイクロ波共振器を介した量子ビットの結合方法である。我々のグループでも超伝導共振器関連の研究を過去数年間行ってきた。我々はこの共振器を介し、遠方にある量子ビット同士を結合させることを考えた。このような結合方式の資料を作成し、現在その特性評価を行っている。上記二つの結合方式の違いは、量子ビット型結合器を使うものが隣接するする量子ビットを結合させる機能を持つが、共振器型の結合器は遠方の量子ビットを結合できる特徴を備えている。二つの方式は量子誤り訂正などの重要なアルゴリズムを実行するにあたり、異なった特性を示すので、実際に実験的に確かめる必要がある。
著者
谷村 眞治 三村 耕司 劉 凱欣
出版者
大阪府立大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1997

1995年1月17日未明に発生した阪神大震災では,数多くの土木・建築構造物に壊滅的打撃を与えた.それらの中の特異な破壊・損傷例で特に注目すべきものは,鉄筋コンクリート構造物に発生した水平ひび割れや圧縮破壊による損傷・破壊現象である.本研究は上記のような直下型大地震による特異なコンクリート構造物の衝撃破壊の発生メカニズムを解明し,そのような衝撃破壊の防止法に対する有効な資料を提供する目的で,コンクリートに対する衝撃実験と数値計算の両面より直下地震動による典型的コンクリート構造物の動的挙動及び破壊について詳しく調べた.実験は,主に今までほとんど研究されていない低衝撃速度荷重下で鋼板によって補強されているコンクリート柱と内部に脆性材料を詰めた鋼管の座屈現象及び,縦偏心衝撃を受ける矩形断面体の動的挙動を調べた.数値解析は,縦特性曲線法,有限要素法及び個別要素法によって異方性体の応力波伝ぱ現象など基礎的な面から直下地震動による速度負荷を受ける種々のコンクリート構造物の動的挙動および破壊など実際の応用の面まで広い範囲にわたって行われた.縦特性曲線法により,異方性体の三次元応力波伝ぱ問題を解析するための特性分析と数値積分式を導出する上で,その計算ソフトを完成した.これは,今まで他に発表されていない成果である.また,大型汎用型衝撃応答解析コードにより,直下型地震特有の揺れ初期の激しい1波又は2波がコンクリート構造物の動的挙動に及ぼす影響を調べた.その結果,その構造物に生じる応力値,特に初期の過渡応答時の応力値は揺れ速度の初期の波形の大きさのみならず,その形状(周期,立上がり時間,立下がり時間),構造物の長さ,その上に載る上部構造物の形状(境界条件)によって変わる様子を定量的に出した.
著者
千野 拓政
出版者
早稲田大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

2012年度は、前年度に引き続き、北京、上海、香港、台北、シンガポールで高校生を対象にアンケート調査、インタビューを進めるとともに、サブカルチャーに関する資料を収集し、あわせてこれまでの研究成果を逐次公表した。調査に関しては、各地の協力者に、高校生対象のアンケート、インタビューをお願いしたほか、千野自身が4月16~18日、7月3~6日、9月17~20日、11月27~29日に上海へ、7月1~3日、11月25~27日に北京へ出張し、アンケート調査、インタビューを行った。香港、台湾、シンガポールでの調査は、現地協力者の都合で年度内に終了することができず、その後も引き続き継続している。資料の袖手に関しては、北京、上海で千野が漫画、アニメーション、ライトノベル、BLに関する同人雑誌および商業誌、単行本を収集した。現在も継続して収集を進めている。成果の公表に関しては、これまでの調査と2012年度の調査をもとに以下の口頭発表を行った。6月30日に天津の南開大学で開催された国際学術討論会「亜州経験与文化研究的多元範式」における基調報告「東亜諸都市的亜文化与青少年的心理―動漫、軽小説、cosplay以及村上春樹―」。7月2日に南開大学日語系で行った講演「從北斎到宮崎駿」。11月26日に北京大学で行った講演「総体戦体制与中国現当代文化」。12月9日に早稲田大学で開かれた東アジア人文学フォーラムにおける学術報告「東アジア諸都市のサブカルチャーと若者のこころ」。2013年3月12日、に上海大学で行った講演「角色与交往:東亜諸城市的青年文化与青少年的心理―動漫、軽小説、cosplay以及村上春樹―」。上記研究の最終的な報告として、早稲田大学総合人科学センターの電子ジャーナルRILASに論文を執筆予定であるほか、勉誠出版から単行本にまとめて出版する予定である。
著者
北川 裕之 三上 雅久 菅原 一幸 菅原 一幸
出版者
神戸薬科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

研究成果の概要 : 硫酸化グリコサミノグリカンと呼ばれる糖鎖は、タンパク質と共有結合をしたプロテオグリカンと呼ばれる形で、ほとんど全ての細胞表面や細胞と細胞との間隙に存在している。最近、ヒトの癌や遺伝病の原因として硫酸化グリコサミノグリカン鎖の合成異常の実例が多く示されている。本研究では、硫酸化グリコサミノグリカン鎖がどのように合成され、どのようにその機能を発揮するのか、またその合成がうまくできないとなぜ異常が生じるかを細胞レベル解析し、その一例を示した。
著者
芳坂 貴弘
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、これまで開発してきた4塩基コドンなどを用いたタンパク質の部位特異的二重蛍光標識法をさらに発展させることで、タンパク質の立体構造やその変化をFRETにより解析する手法の確立を行なった。実際に、マルトース結合タンパク質などについて基質結合に伴う立体構造変化のFRETを用いた検出や、二重標識に有用なN末端特異的な非天然アミノ酸誘導体の導入法、高効率アンバーサプレッサーtRNAの開発などを達成した。
著者
矢谷 博文 江草 宏 田畑 泰彦 田畑 泰彦
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は,チタンインプラント埋入部周辺の骨組織再生を誘導するための基盤技術を確立することを目的に行われた。チタンインプラントに設けた内空に生理活性物質(b-FGF)を徐放するゼラチンスポンジ生体材料を組み込むことにより,埋入周囲における骨組織新生の誘導が可能であることが明らかとなった。また,骨組織再生を誘導する合成ペプチドおよび小分子化合物を特定し,これらの骨組織再生における役割を明らかにした。
著者
神門 典子
出版者
国立情報学研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は、探索・学習などの「探索的検索(Exploratoly Search)」の過程を支援する多次元ファセット検索のプロトタイプシステムMew(Multi-faceted Exploratoly search system for Web resources)を、メタデータや特定の分類体系を想定しない大規模なコンテンツ集合の検索に適用することである。今年度は、a)探索における利用者の認知過程を調べるとともに、b)あらかじめメタデータが付与されていないコンテンツへのファセット検索を適用するための手法の精緻化、c)画面インタフェースの改善、d)検索エンジンの改良について研究をすすめた。Mewの特徴は、トピック、時間、空間、データの種類などの多次元ディレクトリとコンテンツの内容とベストマッチ検索を組み合わせ、(1)ナビゲートnavigate, (2)ビューview, (3)サーチsearchをシームレスに、繰り返しできることである。ディレクトリをたどる「ナビゲート」は、検索語を思いつかない場合や不慣れな分野の探索を支援する。「ビュー」は検索結果を運ディレクトリのクラスに分類して表示し、検索結果を多側面から分類し、関心の明確化、比較、分析などを支援する。「サーチ」は任意の検索語や文、ディレクトリのクラスラベルをキーとできる。Mewでは、また、検索結果に適応して、下位分類や探索プランに相当する「視点」を、自動表示する。これは、利用者に1)検索ニーズの具体化、分析視点や追加検索語の提案、想定外の関係への「気づき」を促し、2)探索の指針など探索を導くメタ認知を与える。たとえば、食べ物なら、料理法、季節、産地や入手法、栄養など ; 旅行を計画するなら、行き先、気候、見所、費用、飛行機・列車、ホテル予約など ; ビジネス戦略を考えるなら、シード、市場ニーズ、コスト、他社競合、利益予測など、というように各トピックに応じたサブカテゴリが「視点」として提示され、検索結果を整理したり、探索すべき方向を示唆する。認知実験では、利用者がこのような視点を想起できるかどうかがExpertiseと深くかかわっていることが示唆された。
著者
佐伯 万騎男 上崎 善規
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

骨吸収性疾患の治療において破骨細胞分化を調節する小分子化合物は非常に有望な創薬候補として期待される。破骨細胞分化を調節するあらたな小分子化合物を見出すためcell-basedのスクリーニングシステムを開発し、harmineという非常に興味深い小分子化合物を発見した。harmineは破骨細胞分化に対し正負に働くシグナル(カルシニューリン-NFATおよびid2)を同時に活性化させるという興味深い性質をもつことが明らかになった。
著者
江草 由佳 高久 雅生
出版者
国立教育政策研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

既存のWeb APIに基づくマッシュアップを想定し、論文検索システムを連携する仕組みについて検討した。特に、論文の同定について着目し、教育研究論文索引とCiNiiとの論文単位のリンケージについて検討し、調査を行った。調査結果で得られたデータを元に、プロトタイプシステムを試作した。また、マッシュアッ プ実験の1つとして、任意のテキストを対象に、そのテキストに類似した文書の検索を実現する手法「ふわっと関連検索」を開発した。
著者
小川 由紀子
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

本研究ではカーボンナノチューブ(CNT)と糖鎖を分子レベルで複合化させることを目的として、始めに非水系溶媒中での酵素反応による糖鎖合成を検討し、次にCNTと親和性のある両親媒性糖鎖誘導体の合成を行った。オリゴ糖とアゾベンゼンからなる両親媒性糖鎖誘導体を用いることで、CNTの高効率分散と表面の糖鎖修飾を達成した。
著者
服部 徹太郎 諸橋 直弥
出版者
東北大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

申請者は,CO_2をLewis酸で活性化し,有機化合物へ親電子的に固定化する方法について研究しており,AlBr_3の存在下,トルエンのCO_2によるカルボキシル化が,過剰量のMe_3SiXの添加により著しく促進されることを見出している。本研究の目的は,本反応の反応機構を検証し,その原理を抽出して新しい高度分子変換法へ展開することであり,今年度は,下記の成果を得た。1. トルエンのCO_2によるカルボキシル化におけるシリル化剤の反応促進効果は,シリル化剤が活性種と考えられるCO_2とAlからなる錯体をよりいっそう活性化するためであることが昨年度の研究により示唆されたが,このことがIRによる活性種の分析でも支持された。また,CO_2圧下,R_3SiClとAlBr_3を反応させて得た反応混合物を用いると,窒素下でもトルエンを30%程度の収率でカルボキシル化できることを見出した。2. N-上に置換基を有するピロール類およびインドール類が,Me_2AlClの存在下に,CO_2で容易にカルボキシル化できることを見出した。3. CO_2を選択的かつ強く活性化する金属錯体を設計することを最終的な目標として,種々のモノおよびビスチアカリックス[4]アレーン類を合成し,チタンとの錯形成能を評価した。4. ケイ素上に種々の置換基を有するシリルアミンR_3SiNR'_2とAlCl_3を用いて,N-メチルピロール,N-メチルインドールを良好な収率でシリル化できることを見出した。また,シリルクロリドR_3SiClをAlCl_3,^iPr_2EtNとともに用いると,シリルアミンを用いた場合に比べて収率が向上した。5. 班員間共同研究により,1,1'-ビナフタレン-2,2'-ジカルボン酸の誘電率制御分割に成功した。
著者
丸田 恵美子 長谷川 雅美 上田 正文 関 剛 山崎 淳也
出版者
東邦大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

中部日本の太平洋側と日本海側の山岳域を比較して、森林の動態に対して積雪がどのように関与しているか、温暖化による積雪量の減少が森林の動態にどのような影響を与えるかについて以下のような結論を得た。冬季、日本海側では降雪日が多く、大気の水蒸気飽差(VPD)が低いために、森林限界付近での常緑針葉樹は、太平洋側に比べて葉からの水分消失量が少ない。積雪も多く、この中に埋まって越冬したシュートでは水分の減少はみられない。そのように、太平洋側に比べれば緩和された環境であっても、日本海側気候の北アルプス乗鞍岳・樹木限界のオオシラビソでは、冬季に積雪に埋まって保護されないと、強光ストレスと乾燥ストレスを受けて、葉の枯損や生育期間の光合成抑制といった影響を受け、やがては幹が枯損する。これを補うのが、積雪下で越冬できる下部のシュートであり、この部位が1本のオオシラビソ個体の90%以上の生産力をもっていると推定される。したがって温暖化によって積雪量が減少すると、この部位も減少し、オオシラビソ個体の存続も危ぶまれる。一方、冷温帯に優占する日本海型のブナの実生は、冬季に積雪の保護がないと、凍結・融解によ導管内にキャビテーションが生じ、翌春に開葉できずに枯死する。そのために、日本海側では積雪の保護を受けて、容易に実生が定着できるが、太平洋側では定着することができない。日本海型ブナは、太平洋側ではギャップ内に芽生えれば越冬はできるが、との後の数年間に、光合成系の強光阻害や晩霜害によって結局は枯死するので、冬季に積雪の保護がない太平洋側山地に定着することはできない。このことから、現存の日本海側に優占しているブナ林は、温暖化によって積雪量が減少すると更新が困難になる危険性があるということができる。
著者
森 厚 丸山 健人
出版者
東京学芸大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1997

本研究は教材開発も含めて行う予定であったが、教材開発そのものの成果は十分とは言えない。しかし、予備実験として以下のような様々な成果を得ることができた。1. 自動観測装置の作成人の手による観測は様々な困難を伴うので自動観測装置を開発した。PCとデジタルカメラを組み合わせた装置で、現在も自動的に5分おきに観測し、データの蓄積に多いに役立っている。以下の結果はこの装置で得られたデータによるものである。2. 空の明るさについての基礎的な研究(1) 理論との比較仰角が大きいところの空の明るさについて簡単化された理論モデルを用いて検討した。冬の良く晴れた日の観測結果とある程度の一致が確認されたので、空の明るさについての角度依存性がはっきりし、同時に、明るさの日変化・季節変化についても情報が得られた。これらはエアロゾルで大気が汚染される前の状態を反映していると考えられ、観測結果の背景場の特定の重要な鍵となる。また、エアロゾルによるミー散乱の量が多ければそれが明るくなるはずであるが、その点に関して次の(2)〜(4)のような傾向が見られた。(2) 空の明るさの時刻による違い冬の晴れた日では、午前中に比べて午後の方が空が明るいようである。前回の報告では逆のケースを報告したが、こちらのケースが多いようである。(3) 空の明るさの曜日による違い観測結果は、休日の方が空が暗い傾向がある。(4) 空の明るさの季節による違い(1)で述べた理論モデルを基準に考えると、夏は冬に比べて空の明るい傾向がある。3.空の青さについての基礎的な研究空の青さについて、昨年度検討したことを新たなデータを使って再確認した。以上、1.〜3.を踏まえ、早急に教材として確立したいと考えている。
著者
坂東 博 竹中 規訓
出版者
大阪府立大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1998

大気中のペルオキシラジカル(HO_2+RO_2、R=アルキル基等)は、炭化水素-HOx-NOxの連鎖反応サイクルを通して大気光化学反応系を駆動する重要な反応中間体である。本研究課題では測定系に吸引された試料大気に高濃度のCOとNOを添加し、一定条件下のHOx+NOx+CO連鎖反応サイクルで生産・蓄積するNO_2の量を測定することにより元の大気中のペルオキシラジカルの濃度を求める「化学増幅法」反応装置を作製し、目的の測定を行った。増幅されたNO_2の測定には従来から知られているルミノールとの化学発光法を使って実環境試料を対象に測定を行った。また、新しい技術として大気中に共存する他の酸化剤の妨害を受けない高選択性カップリング反応を利用した蛍光法によるNO_2検出技術の開発も平行して試みた。実環境大気に測定は(1)島根県隠岐島後国設隠岐酸性雨測定局(期間:98/7/22〜8/10)、(2)大阪府堺市大阪府立大工学部建物屋上(期間:98/9/10〜10/30)で行った。(1)は離島で人為影響の少ない遠隔地の代表的大気、(2)は都市域の典型的な汚染大気が測定対象である。(1)ではペルオキシラジカル濃度は太陽光強度と良い相関を示し、晴れた日の日中正午頃に最大濃度30-40ppt程度を示し、大気中ラジカルが光化学的に生成しているという従来の説を支持する結果を与えた。これに対して、(2)の測定では、日中13-14時頃に最大濃度20-30pptを示す点は(1)と同じであるが、日没後19-20時頃になってもラジカル濃度は10-20ppt近くも維持され、光化学的な発生とは違うラジカル発生機構が存在することが明らかになった。他汚染物質との相関から、この発生にはオゾン+オレフィンあるいは、NO_3ラジカル+オレフィン反応が関与している可能性が示唆された。新しいNO_2検出法開発として、3-aminonaphthalene-1,5-disulphonic acid(C-acid)を蛍光試薬とする系について、その蛍光スペクトル、強度分布、亜硝酸との蛍光体形成反応の条件等、基礎的な検討を行った。実用上の問題として、NO_2の溶液への取り込みの効率を高める必要があることが判明した。
著者
酒井 敏 紀本 岳志 余田 成男
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2003

「科学技術離れ・理科離れ」の原因の一つは、子供達が未知の謎や、まだ解ってないことに接する機会が失われつつあり、その結果、自分が自然現象の謎を解決したいという欲求が失われてきたことであると考える。そこで研究者が解ったこと(知識)を伝えるのではなく、まだ解っていないことを伝え、共に研究するという新しいプロジェクトを実施することを目的として、この研究を行った。研究テーマとしては、京都のヒートアイランド現象を取り上げた。これは、身近な現象でありながら、未だにその実態が明らかになっておらず、気温の多点観測を行うことで、学問的にも貴重な知見が得られる可能性が高いからである。この観測を行うために、観測装置の自作キットを作成した。通常の気象観測装置では、1測点あたり10万円程度かかってしまい、多数の観測点を配置するのは不可能であるが、データーロガーをはじめ、それを収納する防水ケース、センサを収納するラディエーションシールドなど、すべてを自作することで1測点あたりのコストを約10分の1に抑え、教育現場でも導入しやすいシステムを構築した。これらの材料は、電子部品を除けば、すべて、ホームセンターで入手できるものであり、特殊な材料は用いていない。それにもかかわらず、このキットは市販の製品と比較しても、まったく遜色のない性能を有している。これらのキット製作を目的とした実習を15年度、16年度に高校生に対して行った。ハンダ付けなどの作業は、彼らにとって新鮮であり、非常に興味をもって製作し、ほとんどの生徒が完成にこぎつけた。さらに、これらの装置を使い、16年度秋と冬に京都市内の約30点で高密度連続観測を行った。その結果、京都の都市部と郊外で数度のヒートアイランド現象が観測された。また、よく晴れた日の夜明け前に最大になるといわれているヒートアイランド現象が、常に日没直後に最大となることなど、これまでの通説を覆す結果が得られた。さらに、このような研究を通して、生徒の興味関心を大きく引き出すことに成功した。
著者
白岩 孝行 的場 澄人 山縣 耕太郎 杉山 慎 飯塚 芳徳 YOSHIKAWA Kenji 佐々木 央岳 福田 武博 對馬 あかね
出版者
総合地球環境学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

北部北太平で知られている気候レジームシフトと生物基礎生産量変動との関係について調べるために、アラスカ山脈オーロラピーク近傍に発達する氷河において氷コアを採取し、鉄濃度の分析を行った。その結果、10年間の平均鉄沈着量は8.8mg m^<-2>・yr^<-1>で、2001年2002年は、それぞれ、29、19mg m^<-2>・yr^<-1>だった。30m深の海洋表面混合層への鉄の供給は、10年間の平均値では、植物プランクトンを増殖させるほどの影響がないが、2001年、2002年の大規模黄砂時には影響を与えうることが推測された。
著者
金道 浩一 長田 俊人 徳永 将史 大道 英二 網塚 浩 海老原 孝雄 北澤 英明 杉山 清寛
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

非破壊100T領域でのスピン科学を展開するために、マグネットの開発を行った。新たなマグネットにより研究が進展したテーマは、「強磁場ESRおよびNMR」、「SPring-8における放射光X線を用いた実験」と「J-PARCにおけるパルス中性子源を用いた実験」である。また、非破壊100T発生および超ロングパルス磁場発生のためのモデルコイルのテスト実験に成功し、実用型のマグネットの製作が始まっている。