著者
岡内 三真 長澤 和俊 菊地 徹夫 大橋 一章 吉村 作治 谷川 章雄
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

平成12年度〜平成14年度にかけて、西域都護府を軸としてシルクロード史の再検討を行った。西域都護府は前漢王朝の西域経営の拠点であり、文献史料によっておよその位置が比定されているが、正確な位置が確認されていない。漢王朝の西域進出はシルクロード形成の重要な要因であり、西域都護府を設置した烏壘城を比定できれば、漢王朝の西域経営の実態を明らかにできる。そこで、西域都護府の位置を確認するため、新疆文物考古研究所との共同による現地調査を実施した。平成12年8〜9月、平成13年5月、平成14年5月に中国新疆ウイグル自治区を訪問し、現地での調査を行った。調査地は西域都護府の所在地と推定される新疆ウイグル自治区輪台県・策大爾郷を中心とした地域であり、烏壘城の可能性が高いと推定される遺跡を踏査し、立地や構造、遺物などを確認した。本格的な発掘調査を行えなかったため、西域都護府の位置を断定するには到らなかったが、遺跡の現状を確認することができ、西域都護府の構造等に関してある程度の予測を立てられた。また比較のためにシルクロードの天山北路、天山南路のルートに沿って遺跡の調査、博物館での遺物の調査を行った。時期は漢代に限定されないが、新疆の都城址に関しての現状確認と資料の収集を実施することができた。2001年には早稲田大学で国際シンポジウム「甦るシルクロード」を開催し、2002年には日本中国考古学会第8回大会において西域都護府の調査概要を報告し、研究者との意見交換を行った。現在3年間で得られた成果の整理・分析を行い、調査報告およびデータベースの作成作業を進めており、今後の研究の基礎となるデータを提供する予定である。
著者
菅野 正嗣
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

自律分散的な制御手法によるセンサネットワークは、集中制御によるものよりも、データ損失やネットワーク障害に対するロバスト性が高い。それは、制御情報に対する依存性の強さに拠るものであることを示した。また、自律分散的な方法で、ノード間の時刻の同期や逆相同期を行なう手法を提案し、その特性を明らかにした。さらに、メッシュ構造を持つ実システムを対象として、省電力化のための適応的な制御方式を提案した。
著者
堀池 寛 福田 武司 鈴木 幸子 山岡 信夫 近藤 浩夫 峰原 英介 宮本 斉児 峰原 英介 宮本 斉児 近藤 浩夫
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、ピコ秒パルスを持った高輝度の自由電子レーザーを利用して、原子炉や燃料集合体等の大型構造体の非熱解体技術への適用性を実験的に調べた。軽水炉用燃料被覆管材料であるジルカロイ4等を用いて、市販最新鋭レーザーと切削形状を比較した結果、これら原子炉材料の効率的(狭切削幅)非熱プロセスが実現可能であることを示した。また、ナノ秒パルスレーザーを用い、加工切削形状へ与える基礎的な条件を確認し、厚肉構造材を加工するために必要なレーザー光および導光のための光学系が備えるべき条件を実験的に確認した。
著者
西野 正巳
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

イスラーム主義の再定義を行うべく、その代表的イデオローグであるサイイド・クトゥブの思想と、その後継世代の思想を比較検討した。具体的には、1966年のサイイド・クトゥブ処刑後、その思想の継承と普及に努めたとされる実弟ムハンマド・クトゥブの思想を主な研究対象とした。さらにムハンマド・クトゥブの弟子筋とされるオサーマ・ビン・ラーディンらアルカーイダの思想、今日イラクで活動する武装勢力の思想など、9・11事件以降顕在化した新勢力の思想動向も研究対象に加えた。なおクトゥブ兄弟の思想は従来型一次資料である書籍や雑誌の形態で入手可能だが、一方、オサーマ・ビン・ラーディンやイラク武装勢力の思想はビデオテープ、音声テープ、ウェブサイト上のビデオファイルや音声ファイル、電子掲示板への書き込みといった形態で入手することになる。そのため資料収集に際しては、中東諸国の方式に対応したビデオデッキやDVDプレーヤー、アラビア語表示機能を備えたパソコンなどを駆使した。思想分析の結果、現時点までに得られた暫定的結論ないし仮説を述べると、1960年代にサイイド・クトゥブが確立したイスラーム主義思想の基本的枠組みは、おそらく2005年現在に至るまで後継世代にそのまま引き継がれている。即ち、イスラーム法が適用されるイスラーム社会の建設を目指すことが、彼らの思想の根幹をなしている。但しムハンマド・クトゥブのように既にイスラーム法の適用が相当程度進んでいるとされる社会に居住する者と、イラク武装勢力のようにイスラーム法が適用されているとは言い難い社会に居住する者では、自分達の暮らす社会に対する態度が大幅に相違することとなる。即ち、前者は穏健かつ漸進的な社会変革を唱えることが可能な立場にあるが、後者は急進的変革を主張せざるを得ない。その結果、イスラーム世界外部の者の目には、前者と後者が大きく異なる思想に見えることもある。
著者
長田 浩彰
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究において研究代表者は、ナチの言うドイツ人とユダヤ人の「人種混淆」に対する住民意識が、それを禁止したニュルンベルク法(1935)以前と以後では、どう変化していったのかを、当時の小説や映画、ナチ党関係の雑誌類、現実の裁判事例などを分析対象として研究した。ナチ体制下では、性犯罪者的ユダヤ人イメージとえせ科学的劣等人種イメージが並存する中、禁止立法を経ても、「混血」を罪悪とするイメージが一般化するまでに至らなかったことが、最終的な本研究の結論となる。
著者
岩崎 徹也
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

平成11年度中における原油価格急騰は、OPEC(石油輸出国機構)の減産による需給の逼迫、国際石油資本を含む石油企業の在庫抑制政策、石油先物市場における投機的売買が背景となっている。OPECの減算継続は、原油価格低下で産油国経済が疲弊、青年層の失業問題が深刻化してイスラム原理主義を含む反体制勢力が台頭した。原理主義国家イランでは、保守派主導の政治に不満を持つ青年層が改革派を支持し、原理主義の台頭を危惧するサウジアラビアは、イランのハタミ政権による現実主義外交を評価してOPEC二大産油国の協調が強まり、OPECの団結強化を一層促進した。原油価格低下は石油産業の世界的再編をも促進した。メガ・マージャー進展は、コスト削減・資本効率の向上を目的としており、その背景には、世界的資本過剰による金融肥大化・カジノ経済が大きく影響していると考えられる。平成12年末の原油価格下落は、主として米国の株式市況低下・消費減退等の景気の息切れによると考えられるが、米国景気の失速はアジアや欧州にも悪影響を与えており、石油需要は減速する可能性が強まった。価格騰貴に増産で応えていたOPECも,一転減算による価格防衛の姿勢を強めた。産油国としては、長期の石油価格低迷期に経済不振を続け、人口増加による雇用問題の深刻化から、イスラム原理主義などの反体制勢力も台頭しており、大幅な価格下落は受入れがたく、OPEC加盟国の団結は、価格低下への恐怖と主産油国であるサウジアラビア、イランの協調により強まったといえる。平成13年9月の米国同時多発テロは、真相は不明ながら、イスラム原理主義過激派の世界的ネットワークが米国をテロの標的としていたことは事実であり、アラブ・イスラム世界に台頭する原理主義勢力が、穏健派を含め、反米的であることも事実である。反米意識の背景の一つには、米国及び米系多国籍企業の主導するグローバリゼーションへの反発がある。中東・イスラム諸国は、東アジア諸国のように多国籍企業に依存した輸出指向型の開発が困難であり、若年層を中心とした雇用問題が深刻化しているなか、米国が支配する(と考えられている)IMF等の主導する構造調整は、市場経済化を進展させ、社会格差を拡大しているとの反発もあり、これらが反米意識の高まり、ひいては,過激派の暴走を是認する一因となっているといえる。こうした社会経済的問題の解決なくしては、個別テロ組織を壊滅しても中東地域の安定はもたらされず、中長期的な石油供給の安定化にもつながらないといえる。
著者
鈴木 啓助
出版者
信州大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

中部山岳地域の八方尾根、西穂高岳、乗鞍岳、木曽駒ヶ岳、御岳、八ヶ岳において積雪全層採取を行い、全層の詳細化学分析を実施中である。なお、乗鞍岳においては、同地点で複数回の採取を行い時間変化を検討する。さらに、特異な濃度変化を示す木曽駒ヶ岳については、尾根から山麓までの多点でのサンプリングを実施した。各採取地点において積雪全層の断面観測を行い、層構造が攪乱されていないことを確認し、積雪全層を3cm間隔で採取した。採取した雪試料は清浄なビニール袋に入れて実験室に持ち帰り、実験室で融解した後ろ過し、pHおよび電導度を測定した。また、イオンクロマトグラフ(DIONEX : DX-500)により主要イオン濃度を測定した。湿性沈着および乾性沈着によって大気から積雪中にもたらされた化学物質は、積雪表面からの融雪水の移動がなければ堆積した時の層に保存される。そのために、積雪全層から雪試料を採取することにより、初冬の積雪開始時から採取時までの積雪層の化学特性が時系列的に解析可能となる。現在までのところ、次のことが明らかになった。1.海塩起源物質であるNa^+やCl^-の濃度は、八方尾根、西穂高岳などの北アルプス北部では高濃度であるが、木曽駒ヶ岳や八ヶ岳などでは比較的低い濃度を示す。2.黄砂が観測された際には積雪中のCa^<2+>やSO_4^<2->の濃度が大きくなる。3.人為起源物質であるNO_3^-やnssSO_4^<2->の濃度は比較的どの地点においても高濃度の場合があり、特に、太平洋に近い地点での降雪では比較的高濃度になる。
著者
鎌田 倫子 中河 和子 札野 寛子 峯 正志 後藤 寛樹
出版者
国立大学法人富山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

1.プログラム調査の実施石川・富山地域における7つの日本語プログラムの現場調査を実施し、結果の分析と評価方法の研究会を行った。平成20年度にパイロットスタディを行い、概要調査票、プログラム関係者への調査票、承諾書などの評価ツールを整備し平成21年度に7つのプログラムの現場調査を実施した。2.調査結果分析調査票調査の結果から、いわゆる学校型、地域型というだけでは収まりきらない日本語教育の現場の多様性が浮き彫りになった。学校主催プログラムの中にも教授法や組織形態が典型的な学校型に当たる留学生センターの大規模プログラムと、様々な特徴を持つ周辺的な小規模プログラムの存在が明らかになった。自治体主催や市民参加自主プログラムのいわゆる地域型にも、学校主催を凌ぐ規模を持つ学校型プログラムや、学校型を志向する疑似学校型プログラム(尾崎2004)、相互活動を目的とする多文化共生型プログラム(尾崎2004)等、特徴的で多様なプログラムの存在が現場調査から裏付けられた。(学会発表、報告書)3.プログラム評価法の研究会<エンパワメント評価>目標の達成度を見る従来型の評価法では捉えきれないプログラムの多様性の把握、活動や組織自体の改善を目指す評価法としてエンパワメント評価に着目し、文献研究会を実施した。エンパワメント評価は評価自体を、組織をエンパワする活動と位置付け、評価活動を通じて組織や活動の在り方を改善していく評価方法である。NPO等の実施する社会活動等に適用されることが多く、教育機関でエンパワメント評価を行った例は日本ではまだ見られない。しかし、この評価法は地域型日本語プログラムや周辺的な学校型小規模プログラムへの適用可能性は高いと考える。(フォーラム発表、文献)今後、作成した評価ツールの検討、採取記述データの分析等を進めながら、エンパワメント評価の試行可能性を探る所存である。
著者
緒方 裕子
出版者
熊本県立大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

黄砂粒子に含まれる鉄成分の海水への溶解性について検討を行った。これまでの研究により、水透析法によって黄砂粒子中のFeが溶解する粒子の存在が確認された。そこで、実際に海水へ沈着した場合の溶解性を調べるために、人工海水を用いて個別粒子におけるFeの溶解性を調べた。純水への溶解性と比較するため、同一黄砂イベント時に採取した黄砂粒子を用いて、海水透析、水透析における溶解性を比較した。走査電子顕微鏡とEDX(エネルギー分散型X線)分析器を用いて個別粒子分析を行い、海水透析法と水透析法を用いて溶解性成分を除去し、透析前後の相対重量比を比較した。その結果、海水、純水の両方において、透析前後でFeの溶解性はほとんど確認されなかった。水透析においてFeの溶解性が確認された粒子と比較した結果、透析前の黄砂粒子の組成が異なっていた。これらの結果から、黄砂粒子に含まれるFeの溶解性について、黄砂イベントごとに異なっている事が示された。Fe溶解性の変化は、(1)長距離輸送過程における硫黄化合物質との混合、(2)黄砂粒子の鉱物組成、(3)黄砂粒子の粒径、(4)黄砂粒子の濃度、などにより異なると考えられる。また、Ca,Mgの溶解性が海水と純水で異なっていた。特にCaは水にほとんど溶解したが、海水には溶解しないものが見られた。海水透析後に含まれていたCaは非水溶性であったことから、これらの相違は海水透析による変化であるといえる。従って、海水透析により黄砂粒子中のCa及びMgにおいて、溶解性が変化することが示唆された。Feについては海水及び純粋の両方でほとんど溶解しなかったことから、今後さらに様々なケースで採取された粒子の溶解性を調べる必要がある。
著者
松本 佐保 廣部 泉
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究補助金の成果として、研究代表者は、英国における国際関係史学会で、18年度にThe Yellow Peril and the Russo-Japanese war-The Racial question and Anglo-Japanese relations-, 19年度にJapanese Pan-Asianism and the West, 1894-1919, 20年度にAustralian defense policy and White Australian policy, 1901-1921という題目で三回学会発表、また日本では日本オーストラリア学界で20年6月に「オーストラリア移民規制問題と大英帝国の問題、1894-1924年」という課題で白豪主義と日系移民の問題について成果発表を行った。本発表はインドという英国にとって重要な植民地からの白人自治領への移民問題がインド・ナショナリズムを生み、これが後にインドがアジア主義運動に関わるきっかけになったなど、次なる研究への発展にもつながった。なお、The Yellow Peril and the Russo-Japanese war-The Racial question and Anglo-Japanese relations-は『中京大学紀要』(2007年)、Japanese Pan-Asianism and the West,1894-1919は『東北学院大学紀要』(2008年)に論文として、オーストラリア学会での報告は『西洋史学』(2008年)の学会発表報告という形で掲載された。またこれら成果の集大成として、英国の高水準の学術書出版社と知られるオックフォード大学出版会から共著、The Diplomats' World, a cultural history of diplomacy, 1851-1914として2008年の12月に出版された。以上の経緯から本研究は人種問題を国際関係などの政治・外交研究において位置付け、外交文化史研究という新しい研究分野を切り開き、学会への多大なる貢献となった。
著者
安達 修一 大山 正幸 辻野 喜夫 小田 美光 亀田 貴之
出版者
相模女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

日本へ-来する黄砂粒子について、成分の化学分析、肺に-着した-の生物学的影響などを調べた。その結果、大阪と韓国ソウルで集めた黄砂粒子から大気汚染物質が検出され、-来する過程で都市や工業地帯の汚染物質を付着したと考えられる。肺に入った-の影響は、汚染のない黄砂粒子に比べて強く、付着した成分が健康影響を及ぼすことを予測させる結果である。黄砂粒子に含まれる発がん物質の量は、これだけで肺がんを発生するとは考えにくい量であるものの、要因の一つになることが考えられ、今後検討すべき課題である。
著者
植田 宏文 藤原 秀夫 丸茂 俊彦 五百旗頭 真吾 林田 秀樹
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、資産の証券化を通じた市場型間接金融の拡大等に代表される金融システムの変革が、どのような経路を通じて経済の成長に資するのか、さらにその問題点は何かについて理論・実証的に明らかにすることを目的として分析を継続してきた。これらの分析は、現在における経済諸問題の背景を明確化させ、混迷を深める今日において将来のあるべき方向性を示す上でたいへん意義があるものと言える。
著者
田中 美栄子 田伏 正佳
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究では人工知能の基礎となるような複雑系科学に的を絞り、経済系、脳の解明に応用数学の経験と計算能力を投入することを目的とした。主テーマは経済情報物理学、人間乱数のHMMモデル、非侵襲的診断へのニューラルネットワーク応用、エージェントの協調、であるが、経済情報物理学の占める割合が特に大きかった。初年度は協力者田伏との共同研究で、次年度以降は代表者田中が単独で、学部学生9名の卒業研究テーマとしても用いながら行い、モデルと実データの解析から様々の新たな知見を得ることができた。後半には研究の重点を複雑系としての経済現象にしぼり、「経済物理学」と「人工市場」の二つ研究グループと接触を保ちながら、経済物理学はポジティブフィードバックによるマルチエージェント・シミュレーションから、パラメータ空間が二つの相に分かれその臨界点に対応する値でちょうど実際の高頻度金融データと同じ統計性を示すことを具体的な形で明らかにした。結果の前半は2001年4月発行のINFORMATION誌第4巻に、後半はEmpirical Science of Financial Fluctuations(Springer,2002)に掲載された。また、高頻度金融(TICK)データの性質を高速コンピュータ解析で扱い、スケール不変な統計性から乱流との類似、細かな動きの予測可能性、および多国間の為替の同時取引を仮想的に行った場合の裁定機会とその緩和時間について具体的な知見を多く得た。最後に複雑系経済学の国際的な研究センターの一つであるサンタフェ研究所を2月に訪問して意見交換を行った。人間乱数の研究は実データの時系列解析により個人の性格に対応した特徴をパラメータに取り入れることが可能であることを明らかにした。非侵襲的診断へのニューラルネットワーク応用は吉田氏の開発した計測機器と共に特許申請した。
著者
北山 斡人
出版者
福岡工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

焼結助剤としてランタノイド中最もイオン半径の大きなLaと最も小さなLuの酸化物を選択し、(1-x)La_2O_3+xLu_2O_3(x=0,0,1,0.2,0.3,…,1)の混合比で窒化ケイ素焼結体を作製し、その…転移の活性化エネルギーを決定した。その結果、x=0.3でx=1の値にほぼ等しくなった。このことは、イオン半径の小さな希土類元素が、より強く窒化ケイ素粒界界面に結合することを強く示唆する。
著者
竹谷 和之 アンドレス オルティス・ 武内 旬子 東谷 頴人 ORTIZ-OSES Anders オセス アンドレス・オル アンドレス オルティス.
出版者
神戸市外国語大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1996

本研究ではバスク民族スポーツの分布地域を都市部(平成8年度)、山間部(平成9年度)および海岸部(平成10年度)に区分し調査・研究を実施した。都市部(主にビルバオ市やビトリア市)ではバスク経済の発展とともに、新しい価値意識が浸透しており、バスク人の民族スポーツに対する深い思い入れは希薄になりつつある。しかしスペクタクル性の高いバスクスポーツ(ペロタ)には多くの人が観戦に赴き、勝敗に賭けることにより昔ながらの「スポーツ」を維持している。形態は近代化してはいるもののバスク人のアイデンティティを確認する装置として機能している。守護聖人祭では、プログラムの中にバスクスポーツのエキシビションが組み込まれているが、これは観光としてのスペクタクルである。山間部(スペイン・ナバラ県北部、フランスバスク東部)では都市部のような急激な変化は見られないものの、経済中心社会の影響は徐々にではあるがバスクスポーツにも及んでいる。余暇や娯楽が少ない地域ではバスクスポーツに多くの人々が集まる。これは民族スポーツが伝承されてきた自然環境の中で行われることに意味があると思われる。つまりバスクスポーツの原初形態である労働が残存している地域ではまだその価値は失せていない。労働がよく理解できるからこそより人々の関心が集中するのである。海岸部(スペイン・ギプスコア県やフランス・ラブール地方)では動物を使用した儀礼的なスポーツが多く見られることである。とくに「ガチョウ」「アヒル」といった名称で知られているスポーツは、水、船、落下及び耐久力などが構成要素であり、参加者の勇気と「残酷性」をあわせもった内容となっている。この残酷性を除去する方法として、都市近郊の村落ではこれらの動物の代わりにボールが使用される。ここでは動物使用の本来の意味は消失し、単なるスポーツへと変容しているのである。伝統を重んじるとされるバスク人の価値基準が変化していることもここで確認することができる。これらのスポーツに共通するのは、民族スポーツに固有の精神的側面が見られないことである。キリスト教の普及により、バスクスポーツはキリスト教文化に組み込まれているのである。
著者
横川 宗彦 大竹 浩靖
出版者
工学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

環境保護の観点から,油剤を使用しないセミドライMQL加工やドライ冷風加工などにおいて,空気単層流の加工点の冷却メカニズム,加工熱と供給空気冷却との熱収支限界の基礎関係を把握するための実験と解析をし,また実際のCBN研削により確認した.赤外線加熱器によって,想定した加工熱を工作物に与え,その加熱点に与える空気の供給状態を変化させ実験を行い,また加工点の空気除熱伝熱関係を逆問題解析し,種々の供給条件における冷却特性を求めた.供給空気の流速が速く,低温になるほど,加工点および周囲の冷却性が高くなるとわかった.また,CBNホイールで高能率冷風円筒研削を行い,工作物の表面組織状態,硬さ分布,残留応力分布を測定した.0.2Nm^3/min,-60℃の冷風で,高能率研削でも油剤と同じ冷却効果が得られることを確認した.さらに,高速空気流の中に水滴ミストを混入させ,ミスト添加による乱れの増加や潜熱による冷却性向上を目的に基礎実験と解析を行い,その効果を明らかにした.流速をレーザドップラー流速計で測定し,加熱点における液滴や液膜の状態を高速CCDカメラによって測定,観察した.加熱点温度は電圧制御され,定常状態にし,外挿値により加熱表面温度をフーリエの法則を用いて壁面熱流束を求めた.水滴を添加させたことによる気相の攪乱効果よりも液膜形成による潜熱効果が大きいことがわかった.水滴量0.3L/hでは,空気単層流の約3倍であり,水滴量に比例して冷却性効果があった.また,水滴速度が速い方が熱伝達率が高くなることがわかった.しかし,冷却性を高めるためにはある程度以上の水滴量が必要とわかった.以上のように,空気単層流でも流量を少なくしても,流速を向上させることにより熱伝達率が向上し,冷却性が向上する.また水滴を圧縮空気とともに供給することによって,潜熱から冷却性が高くなることがわかった.
著者
木下 博雄 渡邊 健夫 格内 敏 YASHIRODA Yoko YOSHIDA Yukiko KAMEMURA Kazuo 新部 正人
出版者
兵庫県立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、次世代リソグラフィ技術である極端紫外線露光法を2009年までに実用化するために、その課題の一つであるマスク基板の無欠陥化を目標とする。このため、多層膜が形成されたガラス基板上の欠陥を露光光と同一のEUV光で直接観察し、さらにミラウ型の位相差干渉顕微鏡の構築により、サブナノメートル(0,03nm)の微細な表面界面の3次元像の形成を実現させる。当該研究機関において、1)EUV顕微鏡の製作、2)ビームスプリッタの製作技術、3)プログラム欠陥をもつ位相欠陥マスクの製作と評価、を進めた。1)については、形状精度、表面粗さともに、0.3nm以下を満足させるNA0.3、30倍のシュバルツシュルト光学系を入手し、ニュースバルビームライン3に設置した。2)については、厚さ100nm以下のメンブレン構造とせねばならないことから、膜応力の低減、均一化など、さまざまな改良を進めているが、未だに干渉実験に供するものが出来上がっていない。3)のプログラム欠陥に対しては、HOYAの協力を求め、高さ5nm、幅90nm〜500nmの凹凸欠陥をもつガラス基板に多層膜を形成したマスクにて評価を進めた。この結果、凹、凸とも5nmの高さで90nmの幅をもつ立相欠陥の観察に世界で初めて実現できた。本研究課題の位相差型顕微鏡の開発は、ビームスプリッタの製作の困難さから、現時点では実現できなかった。しかしながら、極端紫外線領域での顕微鏡により位相欠陥の観察が可能となり、ほぼ初期目標を満足させることが出来たと考えている。この種の位相欠陥の観察として、ゾーンプレートを用いる方式も米国Berkeley研究所で行われているが、本方式が解像度、観察領域ともに優れている。今後、この成果は、極端紫外線リソグラフィ用のマスク評価として、HOYA、旭硝子、Seleteの国内機関の他、Samsung電子等に解放し、利用研究が進められる。
著者
三浦 泰之
出版者
北海道開拓記念館
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究課題では、近世中後期から近世近代移行期における北海道・東北・北陸(以下、北日本と呼ぶ)の各地域で行われた芸能興行について基礎的なデータを集積し、芸能者・芸能集団の移動とそれぞれの地域における興行主の動向や存在形態及び興行主間のネットワークに着目することで、当該期の北日本に展開した芸能興行をめぐる政治的・社会的・文化的な状況を明らかにすることを目的としている。本年度は、前年度までの調査で重要性を把握した青森県内に重点を置いて調査を進めた。具体的な内容は以下の通りである。1、前年度に引き続いて、弘前藩庁の日記である『弘前藩御国日記』(弘前市立弘前図書館所蔵)の記載から、弘前藩領内における芸能興行に関わる内容を抽出し、データベース化を実施した。具体的には、城下町弘前や青森・鰺ケ沢などの地方都市における芸能興行の実態や興行主の動向、弘前藩領を往来した、松前・秋田・仙台・江戸・大坂などに出自をもつ旅芸人の存在形態を具体的に示す史料を収集した。同日記は、寛文元年(1661)から元治元年(1864)の間、全3300冊余が残されているが、芸能興行に関わる主な記事は抽出することが出来たと考えている。2、青森県立図書館所蔵の菊池家文書(南部藩の給人で代々、下北半島の田名部代官所下役)と西谷家文書(弘前藩の支藩、黒石藩領内の商人)の調査も行い、芸能興行に関わる記述を抽出した。今後は、本研究課題で集積した史料をもとに、松前・蝦夷地に視座を置きつつ、当該期の北日本社会における芸能興行の様相、北日本社会を往来した芸能者・芸能集団の動向、興行主間のネットワークなどについて考察を深め、北日本社会の構造や文化的特質の解明を進めていきたいと考えている。
著者
高橋 信雄
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1,親の意識は、音反応出現後に安堵感を示し、その後、就学前までは聴覚とことばを意識していた。就学後は、聾学校の場合には手話を、通常小学校の場合には子どもの得意とするコミュニケーションを心がけているが、聴覚への意識が十分には持続できないことが多かった。教師側は、聾学校では聴覚活用の意識が十分でなく、通常小学校では聴覚的な配慮が十分ではなかった。2,対象児の変容:(1)コミュニケーション様式の変容:通常学校に通う児の場合、聴覚口話が多いが、十分には通じないと思われる児では、手話を併用している。この場合、親も子も手話が十分でなく、簡単な日常生活程度の簡単な手話しか使用されず、コミュニケーションが不十分となるだけでなく、意味概念上の深まりが極めて浅いことがわかった。(2)聴覚情報処理上の変容:コミュニケーションモードの種類に係わらず、術後の年数と共に向上していった。音声情報処理能力は、電極の挿入具合ばかりでなく、術前の聴覚的な活用能力が大きく影響していると思われる。(3)言語能力の変容:小学校の低学年では、読字力、語彙力、文法力、読解・鑑賞力の各領域において学年相応の力を持っているが、聴覚的情報受容力が十分でない群では、読字力以外の領域の力は、学年があがるにつれて伸びが鈍くなった。(4)話しことばの変容:構音は、年数と共に改善が認められたが、聴取能力に依存するところが大きく、個人差が大きかった。また、聴取能力の向上だけでは、一部の音は歪んだり、鼻音化することも多く、発音指導が必要であった。手指コミュニケーションモードの児ほどその傾向は強かった。(5)聾学校では、体系的なリハビリプログラムがなく(93%)、病院・リハビリ施設・学校との連携したプログラムが必要と思われた。いずれの項目も、個人差が大きく、リハビリ後の親や教師などの意識が、術後の成績に大きく関連すると思われた。
著者
今西 英雄 稲本 勝彦 三島 睦夫 小池 安比古 土井 元章
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

系統の異なるユリりん茎を用い、-1.5〜-2.0℃の氷温下で長期貯蔵した場合の貯蔵可能期間を調べるとともに、温度降下処理を行い処理後のりん茎の生存率を調べてりん茎の50%生存可能な品温(LT50値)を求め、系統間の長期氷温貯蔵に対する耐性を評価した。その結果、氷温貯蔵期間が長くなるにつれて、テッポウユリ、オリエンタル系、アジアティック系の品種ではLT50値が高くなり氷温に対する耐性が次第に低くなること、LA系の品種ではほぼ一定で耐性が変わらないことを明らかにし、系統間の氷温貯蔵耐性の差異を確かめた。オリエンタル系とLA系のりん茎を-1.5℃と-2.0℃の異なる温度で異なる期間貯蔵後に栽培したところ、氷温財蔵耐性の低いオリエンタル系の品種では両温度ともに、4か月の貯蔵では正常に生育するが、7か月以上貯蔵すると採花時の花や葉に障害が発生し切花品質が低下するため、生存はしているものの使用できなくなるが、耐性の高いLA系では11か月貯蔵しても正常に生育することを確認した。低温による氷温下での貯蔵耐性の付与については、1℃4〜8週間の予冷により、りん片および茎の糖濃度が直まり、氷温で長期貯蔵後の栽培においても切花品質が高いこと、12℃8週間に続いて1℃8週間の予冷を組み合わせると、さらに切花品質が高まること、一方1℃の予冷期間が12週以上と長くなると茎が伸長を始め糖度が低下し、貯蔵中に死に至るりん茎が増加することを明らかにした。CA貯蔵の効果については、-1.5℃の氷温帯で、酸素濃度を2〜3%に維持したCA環境で貯蔵してきた場合、アジアティック系でのみ、開花率が高くなり、切花品質が向上するという結果を得たが、オリエンタル系ではかえって開花率、切花品質の低下がみられ、所期の効果を得ることができなかった。