著者
児玉 聡
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

今年度は、ジェレミー・ベンタムの功利主義に基づく政治思想を中心に研究し、それを口頭で発表したものをベースにした論文を現在校正中である(『公共性の哲学を学ぶ人のために』に収録)。また、功利主義的立場から生命倫理における臓器移植の問題について学会発表を行ない、発表に基づいた論文を現在執筆中である。1.ベンタムの政治思想に関しては、口頭発表に基づき、「何のための政治参加か--19世紀英国の政治哲学に即して--」という論文を現在校正中である。これは、ベンタムやジェームズ・ミル、ジョン・ステュアート・ミルの政治思想をもとにして、デモクラシーにおける二つの政治観(経済学的な理解と、参加や討議を通じた公共心の育成を強調する理解)を対比的に描き出し、政治参加における公共精神の役割を検討するものである。2.ベンタムの功利主義思想の応用として、生命倫理学の分野で、「慢性的な臓器不足問題についてのささやかな提案」という口頭発表を学会で行なった。これは、富の再配分の問題に関するベンタムの議論を参考にして、現在見直しが喫緊の課題となっている脳死・臓器移植法に関する提案を行なうものである。とくに、今日の英米圏で問題になっている限定的市場化や臓器提供の義務化の議論を検討し、提供臓器の慢性的不足を解決するために提案されている臓器移植に関する推定同意制、報償制度、市場化、義務化の持つ倫理的問題について、比較検討を行なった。現在、この発表に基づいた論文を執筆中である。
著者
太田 晴康
出版者
静岡福祉大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

平成20年度の研究実施結果について報告する。平成17年度に完成したアプリケーションソフトウェア(以下、ソフト)を前年度に引続いて、本学における障害学生ならびに支援者の意見を取り入れ、バージョンアップした。その結果、本学で便用するWindowsVista搭載のすべてのパーソナルコンピュータ(以下、パソコン)において安定したが実現した。現時点において、動作上の不都合が生じることはなく、静岡福祉大学における障害学生への情報コミュニケーション支援体制を支えるソフトとして活用されている。なお前年度、報告したように、同ソフトは、聴覚に障害のある生徒及び学生を対象とし授業における音声言語を、パソコンのキーボードを通じて入力者が要約入力し、書記言語に変換し、生徒及び学生に伝達する機能を有し、昨年度には、盲ろう学生にも対応可能な点字ディスプレーへの出力機能を付与したものの、新機能に関する今年度中の実証実験ならびに検証は実現しなかった。対象学生の不在、準備における時間不足がその理由である。しかしながら、本研究の継続的研究ともいえる「日中韓の高等教育機関における障害学生『情報コミュニケーション』支援システムの構築」(平成21年度科研費基盤研究(B))において、同ソフトを活用した実践事例に本研究成果を引き継ぐ予定である。また、本ソフトの動作中に、パソコン画面に表示された文字列を読み上げるスクリーンリーダー(画面読み上げソフト)が並行して動作する機能を付与したが、その事例研究についても、平成21年度科研費研究に引き継ぎたい。本研究は、障害の種別を超えた情報コミュニケーション支援という従来見られなかった発想の枠組みを提供したこと、少子高齢化時代における横断的なボランティア活動の可能性を示したことから、「独創的な発想に基づく、挑戦的で高い目標設定を掲げた芽生え期の研究」である萌芽研究としての役割を果たし得た内容と考える。
著者
壁谷 喜継
出版者
神戸大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

平成6年度科研費支給期間において、以下のことを解明した。1)球対称解の構造を決定した柳田の条件が成立しないとき、正値rapid-decay解の近傍は振動解(無限個の零点を持つ解)のみであることを示した。従来、rapid-decay解は孤立していることが知られていたが、その近傍の様子は柳田の条件が崩れたときには、知られていなかった。このことにより、今までに知られていた解の構造以外のものがあることがわかった。これは、砲撃法(shooting法)と変分法を組み合わせることにより、スケール不変量をうまく見つけだしたことによるものである。いままでは、変分法(関数解析的手法)と常微分方程式の関係がはっきりしなかったのであるが、それを解明したものである。今後は大域的な構造も明らかにしたい。2)m-Laplace方程式の指定された零点を持つ解の存在を示した。この方程式は、Laplace方程式の自然な拡張であるが、技術的にいくつかの困難を伴っている。それを克服し、一般性のある方法にするため、r=1での初期値問題を考え、全域に応用したものである。方程式は、r=0,r=∞に特異点を持つため、r=1から問題を解くことの方がやさしい。さらに、零点の数が指定されているので極座標に変換して零点の数を指定に添うようにした。極座標にすることで、Dirichlet,Neumann以外の境界値問題にも応用が容易になった。
著者
石井 明
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

中ソ関係のソ連側資料はソ連邦崩壊後、ある程度使えるようになった。さらに中国側資料を含め、中ソ間で1950年代、中ソ指導者間に生まれた認識のズレから、次第に相互不信がエスカレートしていく構造が出来上がっていく過程についての研究を深めた。中ソ対決は1969年3月、中ソ国境を流れるウスリ-江の川中島の珍宝島(ロシア語名、ダマンスキー島)で両国国境守備軍が戦った珍宝島事件でピークを迎える。この事件についても、両軍指揮官の回想を入手し、検討した上で、中国黒龍省虎林県の現地を訪れて、事件の真相を探った。珍宝島の対岸に位置する「209高地」(事件の際、ソ連側から砲撃を受けた。高さが209メートルなので、このように呼ばれている)に登って、考察した。事件は1969年3月3日と15日の2回の大きな衝突からなるが、第1回衝突は中国側優勢、第2回衝突は、敗勢を挽回しようと戦車まで動員したソ連側が優勢であったことが、裏付けられたと言ってよい。また、珍宝島が川の主要航路の中国側に位置していることも確認できた。なお、中ソ関係はその後、中ソ西部国境でも衝突が起き、対決状況が続く。中ソ冷戦と称される時期を経て、両国は関係改善に向けて瀬踏みを続けるが、両国間の見解の食い違いは調整がむつかしく、両国関係が正常化したのは1989年のゴルバチョブ書記長の訪中を持たねばならなかった。今後もこの分野の研究を進めて、中ソ対決の構造の全面的な研究を進めていきたい、と考えている。
著者
大竹 文雄 有賀 健 黒澤 昌子 佐々木 勝
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、職場における訓練需要の決定メカニズムおよび生産性ショックに対応するための組立ラインの組内の持ち場のローテーションおよび組間の配置転換を通じた組織変化と訓練需要との関連を分析した。具体的には、OJT(職場での仕事をしながらの訓練)の決定要因に関する推定とOJTが生産性に影響を与える効果についての推定を行った。この分析を行うために、二つの自動車組み立て企業における組み立てラインの作業員と組長について継続的な独自調査を行なった。
著者
宮下 志朗
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

19世紀フランス文学において「読書の文化史」の研究が立ち後れていることを実感して、16世紀研究者でありながら、あえて19世紀の読書空間の探索に乗りだしてみた。この間、平成12年度〜14年度の基盤研究(C)(2)「19世紀フランスにおける、著作権・印税システムと作家の関係について」(課題番号12610521)に続き、合計7年間を、19世紀読書空間の研究に捧げた。その成果を、前回のもの([]に入れた)と合わせて、箇条書きにしておきたい。・[パリでのシンポジウムでの発表を共著として公刊したこと(2001年、パリ)。]・[『書物史のために』(晶文社、2002年)を刊行したこと]・自著『本の都市リヨン』が韓国語に翻訳されたこと(2004年、ハンギル社)。・19世紀のパリで、読書クラブ・書店・新聞発行元として、英語話者を中心にヨーロッパ中に顧客を擁した、Galignani書店の資料類の調査をおこない、放送大学大学院の「地域文化研究III--ヨーロッパの歴史と文化」(第13回「近代読者の成立」)で具体的に紹介したこと。・「フランス的書物の周辺」と題する連載をおこなったこと(NHKテレビフランス語講座のテクスト)。・研究の実践態として、《ゾラ・セレクション》全11巻(藤原書店)の刊行を、小倉孝誠慶応大学教授とともに実現させたこと(『美術論集』『書簡集』が未刊)。・バルザックに関しても、今回の成果を生かし、短篇を翻訳中であること(光文社古典新訳文庫)。・本研究の総括として、「19世紀の読書の文化史」という主題で、単行本を執筆中であること(刀水書房)。
著者
平塚 和之 川崎 努 進士 秀明 川崎 努 平塚 和之
出版者
横浜国立大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2000

耐病性シグナル伝達経路の解明を目的として、病害応答情報伝達系の主要因子の一つとしてイネの過敏感細胞死の制御に関与するGタンパク質の役割を初めて明らかにし、それらの性状に関する重要な知見を得た。さらに、形質転換植物・細胞による発光レポーター遺伝子を指標とした病害応答遺伝子発現モニタリングシステムを確立し、抵抗性誘導剤の評価スクリーニングや、病害応答変異体選抜等に応用可能な実験系を構築した。また、病害抵抗性と密接に関連すると想定されるDNA傷害応答性発現遺伝子の発現制御について詳しく解析し、誘導抵抗性遺伝子発現との関連を明らかにした。興味深い結果としては、銅イオンによるこれら3種類の病害応答性プロモーターの応答性に基づき、環境調和型農薬としての銅剤の作用機作に関する有意義な知見が得られた。さらに、耐病性遺伝子発現の主要転写制御因子であるNPR1の作用機作や、耐病性遺伝子発現と関連する組織特異性を制御する新規GRASタンパク質が転写制御因子として機能することを初めて明らかにした。一方、エリシター応答性プロモーターと関連転写制御因子に関する研究を重点的に実施し、転写制御因子であるタバコのNtWRKY1,2,4がERF3遺伝子プロモーターのW-box配列と相互作用することを示し、一過的発現解析によりNtWRKY1,2,4がW-boxを介して転写活性化因子として機能することを明らかにした。NtWRKY4遺伝子は、低レベルで恒常的に発現しており、傷害によって発現が変化しないが、NtWRKY1と2は傷害処理によって迅速な発現誘導を示した。また、ERF3遺伝子の発現はERF3によって抑制されることも示唆された。高等植物の遺伝子発現制御系として関連因子群が詳細に明らかにされている例は希で、これらは耐病性シグナル伝達の末端として重要な転写制御に関する知見として最も詳細な研究として高い評価が得られている。
著者
石橋 由美
出版者
札幌医科大学衛生短期大学部
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1988

幼児の仲間との葛藤場面では、自己と仲間の意図の対立を調整する自己統制の働きが予想される。Rubinらの対人情報処理モデルによれば、仲間の意図の認知は社会的問題解決過程の一つの要因である。そこで本研究では幼児の仲間との葛藤場面における社会的問題解決パターンを分析し、仲間の意図情報の認知と解決パターンとの関係、及びその発達的変化について検討した。幼児が集団保育場面で日常的に経験する仲間との葛藤場面について保母に聞き取り収集を行い、4種の葛藤場面(物語1:おうちごっこの仲間入り、物語2:ブランコ交代、物語3:バケツを借りる、物語4:鬼ごっこ)を設定した。4、5、6歳児に、自己と仲間を主人公にした上述の4種の社会的葛藤を示す語を2コマの線画を用いて聞かせ、それに続く解決部分を自由に話させた。次に仲間の意図情報を与え、同様に解決部分を作話させた。子どもの反応はVTR記録され、反応パターンが分析された。ブランコ交代を拒否された場合、始めの自己の意図を実現するために仲間を説得したり、仲間の意図を取り入れた解決案を提案する解決パターンを示す者は、意図情報付加前には年長児に多い。しかしこの解決パターンは仲間の意図情報を与えることにより各年齢で増加する。また鬼ごっこでタッチされて自分が転んだ場合、鬼ごっこを継続する解決パターンを取る者は年長になるにつれて多くなるが、仲間の意図情報を与えることにより年少児でも増加する。これらの結果は、幼児の仲間との社会的問題解決過程で仲間や自己の意図の認知が一つの要因として働くことを示している。従って、これらの結果はRubinらの対人情報処理モデルを支持すると言えよう。
著者
樫田 美雄 寺嶋 吉保 玉置 俊晃 藤崎 和彦 出口 寛文 宮崎 彩子 高山 智子 太田 能 真鍋 陸太郎 五十嵐 素子 北村 隆憲 阿部 智恵子 岡田 光弘
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

ビデオエスノグラフィーという新しい研究手法を開発しつつ、実際的な分析にも成果をあげた。即ち、大学生が専門技能を学ぶ実践の状況を相互行為の観点から明らかにした。例えば、医学部PBLチュートリアルにおいて、レントゲン写真をみる'専門的'方法としての「離して見る」という技法が、教師から学ばれ、学生集団のなかで模倣的に獲得されていく状況が確認できた。教育を結果から評価するのではなく、プロセスとして分析していくことへの展望が得られた。ISCAR第2回サンジエゴ大会等で報告を行った。
著者
朝田 衞
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

有理数体に1のべき根をすべて添加して得られる代数体をKとする。 ガロア群が可解でないKの不分岐ガロア拡大についての以前の結果を強めることができた。結果は次の通りである。pを5以上の素数とするとき、Kの不分岐ガロア拡大体でそのガロア群がSL2(Zp) の可算個の直積と同型となるものが存在する。
著者
浅野 智彦 川崎 賢一 羽渕 一代 岩田 考 辻 泉 川崎 賢一 岩田 考 羽渕 一代 辻 泉
出版者
東京学芸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

韓国・ソウル市および東京都杉並区において16 歳から29 歳の男女を対象にパーソナルネットワーク、自発的集団への参加状況、社会的参加、政治的参加の各領域について量的調査を行った。その結果を統計的に分析した結果、集団所属の多元性および親密な友人関係が社会的参加・政治的参加を促進すること、ソウルとの比較において東京の若者が学校外の活動において不活発であることが明らかにされた(なお高校段階での部活については、社会的参加・政治的参加との関連がみられなかった)
著者
林部 敬吉 雨宮 正彦 中谷 広正
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、日本の伝統工芸技能の伝承方式を、楽器製造、鋳型成型、板金成型、印刷産業などの諸工業での世代間継承に生かすための方策について研究した。「わざ」の伝承には、習熟者と伝承者との間で暗黙知から暗黙知、暗黙知から形式知、形式知から形式知への交換と循環があり、暗黙知-暗黙知過程での継承者が作成した「継承ノート」、暗黙知から形式知過程で熟練者が作成した「伝承ノート」が継承と-伝承を効果的に媒介していた。本研究では、これらの「伝承ノート」と「継承ノート」を電子化した「伝承-継承WEBNOTE」を試作し、継承者と伝承者の間をつなぎ「わざ」の交流の場として知識を共有できる機能を持たせた。ここでは、技能を図解し、その要点を記すと共に、熟練者は継承者にコメントを、継承者は熟練者に質問することが可能である。このWEBNOTEでは、伝承-継承過程を記録・保存し、また誰でも他者が修練を積む過程を参照できる。
著者
吉村 健清 早川 式彦 溝上 哲也 徳井 教孝 八谷 寛 星山 佳治 豊嶋 英明
出版者
産業医科大学
雑誌
特定領域研究(C)
巻号頁・発行日
2000

地域住民を対象とした大規模コホート調査(JACC Study)の調査票情報および保存血清および1997年末までの予後追跡調査データを用いて、胃がんのリスク要因を解析した。死亡を結果指標としたコホート解析では、胃がんリスクを高める要因として、短い教育歴、胃がん家族歴あり(男:RR,1.6;女:RR,2.5)、男の喫煙(RR,1.3;喫煙開始10-19歳:RR,1.9)、女性では生殖歴・出産歴がないこと、胃がん検診未受診(男:RR,2.0)があげられた。家族歴では、特に女で母親が胃がんの塙合に高いリスクを示した。また胃がんには家族集積性があることも示唆された。一方で、これまで胃がん関連要因として報告されてきた緑黄色野菜・高塩分含有食品・緑茶の摂取との関連は明らかでなかった。追跡期間別に分けた分析方法を用いると、干物類は、胃がんがあると摂取が減少する可能性が示唆された。また、コホート内症例対照研究の手法により、調査開始時に採取された血清を用いて、IGF、SOD、sFAS、TGF-b1の4項目を測定、胃がん罹患および死亡との関連を検討した。TGF-b1は、女性において、4分位で最も低い群にくらべ、値が高い群ほど胃がん罹患・死亡のリスクが上昇する量-反応関係を認めた。その他の3項目は、罹患と死亡で一致した傾向は認めなかった。同様の手法により、胃がんとの関連が強いとされる血清項目を測定した結果、Helicobactor pylori陽性のオッズ比は1.2、pepsinogen低値(胃粘膜萎縮あり)のオッズ比は1.9であった。H. pyloriのリスクが比較的低かったことの理由として、本解析集団が高齢であることが考えられる。現在、H. pyloriのCag-A抗体について測定を進めている。
著者
平田 謙次 鷹岡 亮 瀬田 和久 仲林 清
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本年度は、以下に上げる3つの目標領域を定めて研究をすすめました。(1)eポートフォリオ共通インターフェイスの特定eポートフォリオの規格化をすすめているISO国際標準化機構での会議に参加し、研究発表を介して、eポートフォリオ規格の調査研究とのデータ定義について最新の研究を把握しました。韓国教育情報学術院での共同プロジェクトも進めています。国内の学会の年次大会において、課題セッションの企画と運営、および発表をおこない、品質と学習者情報との連携の方法について多様な視点から発表をおこない普及しましたが、国際学会でのスペシャルセッションの企画は叶いませんでした。(2)コンピテンシーセマンティック情報モデルの開発コンピテンシーセマンティック情報のデータ要素、属性について国内関連団体と共同により標準規格開発をおこない、その基礎となる2本の論文を執筆し書籍として刊行されました。また、当該テーマについてISO国際標準化機構会議においてプロジェクトの運営、研究発表、および規格提案をおこなってきています。(3)学習要求-学習活動ログ一致度測定機能企業組織における人材開発の要求調査を実施し、分析をし、アジア欧州会議の生涯学習委員会(ASEM-LLL)仕事場学習研究小委員会の運営と、会議での発表、および論文の執筆をおこないました。また、効果的学習活動について論文を執筆し、書籍の一節として発行しました。さらには、具体的な一致の連携についての方法論について、国際学会で発表し、その後、選抜された論文として書籍の一節として発行されました。
著者
伊藤 詔子
出版者
松山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究「文学批評理論としてのエコクリティシズム確立にむけての研究」2年目では、1年目のソローを中心とする研究から、1)エコクリティシズムの批評そのものの現状を分析し、2)環境文学の始まりとなったレイチェル・カーソンの『沈黙の春』を中心に、汚染の言説と環境正義のレトリックの特質を考察し、3)『沈黙の春』以降の女性環境作家作品について、発展的な考察をした。3点についての具体的成果は以下であった。1)ロレンス・ビュエルによる最新のエコクリティシズム研究書Future of Environmental Criticismをエコクリティシズム研究会で研究し、5人で協力してその邦訳を、巻末書誌、環境批評用語解説とともに鶴見書店より2007年5月に出版した。序文と第1章、5章、あとがき、原稿取りまとめ、監修を伊藤が担当した。また英語青年に「ビュエルエコクリティシズム三部作の完成に寄せて」と題して、エコクリティシズムの修正主義である第二波について概説した。2)アメリカ学会・学会誌の特集「自然と環境」に、「Silent Spring--Toxic Infernoを下って沈黙のジェンダー的ルーツを探る」と題する論文を寄稿し、エコクリティシズム第二派が焦点化する、汚染の言説と環境正義のテーマについて考察した。3)ソローとカーソン以降の女性環境作家について、阪大の人文COEプロジェクト「環境と文学」第三回フォーラムで講演し、その他二つの論文で調査研究の成果を発表した。(1)「ソローとホーガンのいきもの表象をめぐって」(日本ソロー学会『ヘンリー・ソロー研究論集』No.33(2)「『沈黙の春』とアポカリプス」ミネルヴァ書房名作シリーズ『カーソン』(2007年5月刊行)
著者
岩崎 雄一
出版者
横浜国立大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

水生生物の保全を目的とした亜鉛の水質環境基準の妥当性を検討する上での資料を得るために,以下の研究を行った。1.河川上流域において亜鉛濃度が河川底生動物群集に及ぼす影響去年度の成果より,底生動物群集の種多様性は基準値(30μg/L)の2倍程度の亜鉛濃度でも顕著に減少しないことが示唆された。本年度はこの成果を広く公表するべく,国際学会での発表や国際亜鉛協会への訪問等を行い,高い評価を受けた。さらに,この結果をより多く調査データを用いて検証するために,英国に3ヶ月間滞在し,英国・米国等の重金属汚染河川約400地点における底生動物調査結果を用いた解析に着手した。本研究の成果は日本の水質環境基準や海外で提示されている安全濃度の妥当性を検討する上で有用な資料となることが期待される。2.河川下流域において亜鉛濃度が河川底生動物群集に及ぼす影響前述した上流域の結果が下流域に適用可能かを検討するために,群馬県碓氷川水系及び粕川での野外調査を去年度実施した。暫定的な結果ではあるが,碓氷川での調査結果より下流域でも上流域の結果と同様な傾向が得られている。今後は,有機汚濁の進行した河川(粕川)での調査結果をまとめ,これら成果をできるだけ早く公表する予定である。上記に加え,亜鉛等重金属がファットヘッドミノー個体群に及ぼす影響を数理モデルを用いて評価した。その結果,当該個体群が維持される亜鉛濃度は約80μg/Lと推定された(掲載雑誌において,注目論文に選出された)。
著者
伊藤 剛
出版者
独立行政法人農業生物資源研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

昨年度得た多数の近縁ゲノム間での自然選択強度のデータを整理し、特に水平移行の有無に関して着目しながら、機能と自然選択による進化の関係を明らかにした。これまでの研究で、水平移行した遺伝子では自然選択の緩和が生じている可能性(=同義置換数に対して非同義置換数が比較的多い)が示されていた。一方で、遺伝子の機能に関する考察から、量的に偏ってより多く水平移行している遺伝子のうち、細胞表面構造に関係するタンパク質の遺伝子などでは正の自然選択が示唆された。しかし、そのほかの大量移行の例では、例えば遺伝子発現の制御に関与する遺伝子のように、分子レベルでの生命活動に大きな変化をもたらす可能性は考えられるものの、水平移行と正の自然選択の関係は必ずしも明確ではない。そこで、近縁種(株)間のオルソログにおいて、水平移行した遺伝子とそうでない内在性のものとで、フレームシフトによるタンパクコード遺伝子の読み枠の破壊があるかどうかを比較した。すると、例えば大腸菌K-12株とO157の間では、内在性遺伝子では1.0%(34/3291)でフレームシフトによる偽遺伝子化が見られたが、一方で水平移行したものでは6.9%(23/332)と明らかに水平移行での遺伝子破壊が多かった。これは、水平移行したものではむしろ大部分で自然選択が緩和されているという考え方を指示するものである。本研究により、水平遺伝子移行によって大きな生命多様性がもたらされるが、自然選択という意味では重要度の高いものは小数に限られることが明らかになった。本研究に関しては一部を論文化するとともに国内外の学会等でも発表しており、また全ての結果をデータベース化し可視化するプログラムも作成したので、誰でも容易に大量解析の全情報を活用できるようになっている。
著者
水間 大輔
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

本研究は中国古代の秦・漢において、いかなる防犯体制及び刑事手続体制が設けられていたのかを検討し、当時の国家が犯罪の予防をどのように実現させようとしていたのかを明らかにすることを目的とする。平成20年度は犯罪の捜査から、逮捕・取調べ・裁判を経て、刑罰の執行に至るまで、いかなる手続が設けられていたのかを明らかにしようと試みた。具体的には、(1)各手続の名称及びその内容、(2)各手続の際に作成される文書の名称及びその伝達、(3)各手続をいかなる者が担っていたのか、などの問題を中心に検討した。如上の問題を検討するため、秦律・漢律(秦・漢で行われていた法律)及び関連する史料の中から、刑事手続に関する史料を抽出して分析を加えた。秦律・漢律に関する史料は近年中国で出土した竹簡・木牘が中心となるので、それらを分析したり、あるいは中国の博物館へ赴いて実見したりした。さらに、秦・漢の刑事手続制度を後世の唐代以降の制度と比較することによって、秦・漢の刑事手続制加が前近代中国の中でも相対的にいかなる性質を有するものであったのかを把握するよう努めた。以上の検討、及びこの三年間の検討を通して、秦・漢の県における防犯体制及び刑事手続制度の全体像が明らかになった。それによると、秦・漢では地方の末端に至るまで、防犯と刑事手続を担う機関が設置されていた。また、裁判は県以上の機関によって行われるのが原則であったが、一部の郷・亭でも裁判を行う権限があったこと、県でも死刑判決が下せたことなど、秦・漢の刑事手続制度は唐代以降と比べると、地方機関の権限が大きかった。それゆえ、秦・漢では犯罪の予防をより強く地方へ浸透させる体制になっていたといえる。
著者
木島 明博
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

母系遺伝をし、交又しないとされている核外遺伝子のミトコンドリアDNAは、核内遺伝子(アイソザイム)と遺伝様式が異なることから、集団の世代を越えた繁殖構造を母系の観点から捉えることができる遺伝標識として近年脚光を浴びてきている。しかし、集団構造の解析に効果的に応用するためには、多くの個体の分析を簡単に行える手法の開発と、魚類のmtDNAの基本となる制限酵素切断地図の作成を行い、切断型の変異が塩置換によることを確認しなければならない。本研究はヤマトゴイおよびサクラマス類を対象として以下のことを明らかにした。(1)ヤマトゴイとサクラマス類のmtDNA精製度の高い簡易単離法として、木島ら(1990)のアルカリ処理法にグラスビ-ズによる精製法を加えた一連の手法を開発した。(2)ヤマトゴイのmtDNAを15種類の制限酵素で切断し、5種類のハプロタイプの存在を明らかにした。(3)これらの制限酵素切断型変異から5種類のハプロタイプの制限酵素切断地図を二重消化法によって作成した。(4)作成した制限酵素切断地図の比較によってヤマトゴイの制限酵素切断型の変異が単純な塩基の置換によって起こっていることを示唆した。(3)(2)によって、制限酵素切断片の長さの比較(RFLP)によってヤマトゴイのmtDNA分析による比較ができることを確認できた。また、魚類においても同様にRFLP法によってmtDNAの制限酵素切断型変異の比較ができることを示唆した。(4)そこで6塩基認識の6種類の制限酵素を用いてサクラマス2系統、ヤマメ1系統、アマゴ1系統の養殖集団のmtDNAの切断型変異を明らかにし、特別な選択を行っていないサクラマスとヤマメは天然からいくつかの母系が起源となって繁殖されているが、パ-に選択を重ねたアマゴは単一母系から生産されているという繁殖構造が推定された。
著者
保谷 徹 箱石 大 山田 史子 横山 伊徳 小野 将
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究の成果は、第1に、下関戦争を主導した英国をはじめ、仏・米・蘭各国の動向を当時の国際関係の中で立体的に解明するさまざまな一次史料の発掘にある。本研究は「19世紀列強の陸・海軍省文書を中心とした在外日本関係史料の調査報告」(平成11-12年度科学研究費補助金基盤研究(B)-(2)、課題番号:11691006、研究代表者:保谷 徹)と連携させて遂行した。これまで十分に利用されてこなかった海軍省文書をはじめ、欧米各国の日本関係史料に幅広く目配りし、とくに英国の出先機関(駐日公使)と本国外務省、あるいは軍部(出先と本国)や政府首脳の動向に関して、多くの新たな史料と論点の解明をおこなった。第2に、戦争記録の発掘によって、列強側の軍事行動の具体的有様と、当時の日本および長州藩の軍事力に関するデータと列強側の評価を具体的に明らかにすることができた。第3に、かかる軍事記録に含まれた数々の画像史料の発掘も大きな成果である。本研究遂行の過程で収集した英仏海軍省文書などの欧文史料群あるいは長州藩毛利家の国内史料、作成した目録類は、東京大学史料編纂所に寄贈され、マイクロフィルムやデジタル画像のかたちで、同所において広く公開され研究に供される。