著者
西久保 浩二
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

少子化が深刻化するわが国において、仕事と生活との調和を図ろうとするワーク・ライフ・バランスの必要性が社会的に注目されている。様々な制度、政策が求められているが、その有効性を検証するためのワーク・ライフ・バランスそのものの状態を測定する方法が確立されて来なかった。本研究によって開発、検証された従業員自身の主観的、自覚的評価に基づく測定尺度によって、労働時間等の客観的指標だけでは捉えられない、精神的、肉体的、経済的、時間的という総合的なアプローチによる状態測定が可能となった。
著者
和田 肇 唐津 博 矢野 昌浩 本久 洋一 根本 到 萬井 隆令 西谷 敏 脇田 滋 野田 進 藤内 和公 名古 道功 古川 陽二 中窪 裕也 米津 孝司 有田 謙司 川口 美貴 奥田 香子 中内 哲 緒方 桂子
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、1980年代以降、とりわけ1990年代以降を中心に労働市場や雇用、立法政策あるいは労働法の変化の足跡をフォローし、今後のあり方について新たな編成原理を探求することを目的として企画された。この4年間で、研究代表者、研究分担者および連携研究者による単著を4冊刊行している(和田肇『人権保障と労働法』2008年、唐津博『労働契約と就業規則の法理論』2010年、藤内和公『ドイツの従業員代表制と法』2010年、西谷敏・根本到編『労働契約と法』2011年)。その他、100本を超える雑誌論文を発表し、研究グループによる学会報告が5回、国際シンポが5回(日独が2回、日韓が3回)行われている。とりわけ最終年度には、それまでの成果のまとめを中心に研究を遂行した。(a)労働者派遣法の体系的な研究を行い、2112年秋の書物の出版に向けて研究を積み重ねた。個別テーマは、労働者派遣法の制定・改正過程の分析、労働者派遣に関する判例・裁判例の分析、労働者派遣の基本問題の検討、比較法分析である。現段階で作業は約8割が終了した。(b)不当労働行為法上の使用者概念に関する最高裁判例が相次いで出されたこともあり、その検討を行った。これは、企業の組織変動・変更に伴う労働法の課題というテーマの一環をなしている。(c)労使関係の変化と労働法の課題というテーマに関わって、現在国会で議論されている国家公務員労働関係システムの変化に関する研究を行った。その成果は、労働法律旬報や法律時報において公表されている。特に後者は、この問題を網羅的・総合的に検討した数少ない研究の1つである。以上を通じての理論的な成果としては、(1)労働法の規制緩和政策が労働市場や雇用にもたらした影響について検討し、新たなセーフティネットの構築の方向性を示し、(2)非典型雇用政策について、労働者派遣を中心としてではあるが、平等・社会的包摂という視点からの対策を検討し、(3) 2007年制定の労働契約法の解釈問題と理論課題を明らかにし、(4)雇用平等法の新たな展開の道筋を付けた。当初予定していた研究について、相当程度の成果を出すことができた。
著者
里見 潤 加納 樹里
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は、心拍変動(HRV)の解析によって得られる指標(HRV解析指標)のスポーツ活動への有効利用の可能性を探ろうとするものである。本研究は、(1)ボート競技日本代表選手の海外合宿期間中の心拍変動の推移、(2)自転車競技選手の漸増的運動負荷テストにおける心拍変動応答、(3)女子陸上競技長距離選手のフィールド漸増的運動負荷テストにおける心拍変動応答から構成されている。HRV解析指標を用いたコンディションの把握の可能性に関しては、研究(1)において、起床時の安静HRV解析指標(SD1, HF)の推移より、鍛練期から調整期に移行することにより心拍変動が増大し副交感神経活動が高まることが示され、トレーニングプロセスにおけるHRV解析指標の推移にもとづくコンディションの把握の可能性が示唆された。漸増的運動負荷テストにおけるHRV解析指標の応答に関しては、研究(2)において、SDlミニマムの現象として捉えられるHRV閾値が多くのケースで認められる可能性が示唆されたが、HRV閾値と乳酸閾値との間に明確な関係性は認められなかった。また、研究(3)において、漸増的運動負荷テストにおける周波数解析の手法によるHRV解析指標の応答に関して、個々の選手に固有の応答パターンがある可能性や、トレーニング状態がHRV解析指標(LF)の応答のありように反映する可能性が示唆された。漸増的運動負荷テストにおけるHRV解析指標の応答をアスリートのトレーニング状態の把握に利用ためには更なる研究が必要と考えられる。
著者
大津 由紀雄
出版者
慶應義塾大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1998

統語解析理論は、脳波や脳画像などの資料を解釈するうえで、重要な役割を果たす。今年度の研究では、昨年度の研究成果にもとづき、つぎの隣接結合の原則を心理実験により検証した。[隣接結合の原則]結合は隣接した構成素同士でのものが最適である。日本語の統語解析においてこの原則が重要な役割を果たしているか否かを大津研究室に設置のタキストスコープによって調査した。被験者総数は20名で、画面上に文節ごとに提示された文字列を読み、その意味を理解したごとに反応キーを押すという課題で実験を行った。刺激材料には、隣接結合の原則にしたがう文とそうでない文が混在している。もし被験者が隣接結合の原則を使って解析を行っているのであれば、後者では、隣接結合の原則が貫徹されないことを示す間題の部分が提示された直後の反応時間が田の部分での反応時問に比べ、長くなることが予想される。実験の結果はおおむね、それを支持するものであった。今後はこの結果をもとにより多くの刺激文を作成し、それらを用いてERPや機能MRIを用いた実験を行う予定である。これらの実験では、それぞれのタイプの刺激文に対し、100以上の刺激文(トークン)が必要とされるからである。なお、大津は現在、京都大学病院において、この実験の一部を予備実験の形で実施中である。
著者
両角 達男
出版者
静岡大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本年度は、次の2つのことがらについて、考察を進めた。(1)範例を形づくるよりどころとしての「何を志向し、何に価値をおき、何を培うのか」を具体的に明らかにしていくこと。(2)「問いの連鎖」を促す対話や協働的な活動には何があり、その諸活動が「問いの連鎖」を促進するために具体的にどのような機能をもつのかを明らかにすること。(1)については、授業実践者としての授業の反省的分析、単元に着目した「核となることがら」(本質的なことがら)の抽出、代数領域に焦点をあてた「何を志向し、何を培うのか」の可能性の検討の3つの側面からの分析を行った。第一に、両角自身が筑波大学附属中学校にて行っていた10年間の授業実践記録より、範例的教授・学習の視点から浮かび上がる「範例」や「範例的なもの」の抽出と分析を行った。1組の三角定規を活用して15°の角をつくること、折り紙から1組の三角定規をつくること、地図との関連を意識した座標の学習、式を読むことを重視した文字式の学習などの事例である。第二に、小学校1年から高校1年までの必修過程に焦点をあてて、単元ごとに2〜3ずつ「核となることがら」(本質的なことがら)の抽出を行った。これは、範例から「範例的なもの」を抽出していくことを意識している。第三に、式を読むことを重視した文字式の学習活動に密接に関わりのあるシンボルセンスの育成に関して、フロイデンタール研究所のDrijversの学位論文(2003)やArcabiなど、最近の代数の研究動向を分析した。DrijversはCAS (Computer Algebra System)を活用した中等教育段階の代数学習の理論的枠組みを、4つの観点の融合により形成している。その一つとして「CAS-メンタルシェマ-範例」による連続的な学習過程の形成がある。学習者が範例と出逢い、範例的なものを意識化・顕在化、了解、内的同化していく過程に迫ろうとしている。CASの活用などを通して、代数領域でどのような教授・学習が可能になり、何を培うことができるのか。範例的教授・学習理論、学習カリキュラムの形成の視座から、継続的に考察を行っているところである。連続的な研究として、平成17年度からの研究テーマとする。(2)については、浜松市立村櫛小学校の教育実践に焦点をあて、単元レベルで考察を行った。子どもたちに問いが育まれるために、単元の前半ではどのような範例が形成され、範例を起点とした学習活動が変容していくか。村櫛小の先生方との継続的な研究協議、継続的な授業参観、単元の前半部と後半部に記述する「子どもたちのはてな」の変容の分析などを通して、(2)の考察を具体例に基づき実証的に行った。
著者
稲川 和香
出版者
浜松医科大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

【研究目的】口腔内崩壊錠に関する患者意識、治療効果および副作用発現の調査を行い、患者の期待する剤形および近隣の保険調剤薬局における口腔内崩壊錠の選択要因に関する情報を入手することで、口腔内崩壊錠の開発における患者満足度の向上を図るための情報を得ることを目的とした。【研究方法】(1)官能試験および溶出試験による製品選択の有用性に関する調査を行った。(2)インタビューフォームに記載されている成分の溶出挙動の比較方法に関する調査を行った。本調査では、先発医薬品と後発医薬品の製品が上市されているアムロジピンベシル酸塩の口腔内崩壊錠をモデル薬剤として用いた。【研究成果】(1)官能試験による味(清涼感、甘さ、苦味)と服用感(ザラツキ、粉っぽさ)については、服用する際に問題となる製剤的要因とはならなかった。嗜好性とともに総合的に評価すると、調査対象とした現行製品の味と服用感については、いずれも良好であると考えられた。(2)アムロジピンベシル酸塩の口腔内崩壊錠については、2010年7月時点で26製品(後発医薬品24製品)が上市されていた。インタビューフォームに溶出試験の情報として、溶出率-時間曲線の記載されている製品は、22製品であった。インタビューフォームを用いることで、ほぼ全ての製品の溶出挙動を評価できることが明らかになった。一方、後発医薬品の各製品において、比較対照となる標準製剤が統一されていない問題点も明らかになった。その原因として、先発医薬品における製剤変更が挙げられた。今後、溶出挙動の違いと薬効との関連性について、評価する必要がある。
著者
古田 元夫 山影 進 佐藤 安信 田中 明彦 末廣 昭 池本 幸生 白石 昌也 栗原 浩英 レ ボ・リン グエン ズイ・ズン グエン タイン・ヴァン 伊藤 未帆
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、ベトナムをはじめとするASEAN新規加盟国の地域統合の動態を、東西回廊など、これら諸国を結ぶ自動車道路を実際に走行して観察しつつ、ベトナムのダナン、バンメトート、ラオスのビエンチャンおよび東京でワークショップを開催して、現地の行政担当者や研究者と意見を交換した。こうした取り組みを通じて、ベトナムの東南アジア研究所と研究者と、この地域統合の中でベトナムが果たしている役割、それと日本との関係について意見を交換し、その成果をベトナムと日本で報告書にまとめて刊行した。
著者
坂内 栄夫
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

従来のコンピューター全文検索は、ある文献に対して何らかの研究を行ったとしても、その研究成果に対しては検索・利用することはできない。本研究は、中国古典文献を分析・読解した結果である研究成果を、有効に再利用するためのデータベース構築を試みた。その結果、異なる版本を指定しての語彙検索や様々なテキストの異同表示、底本に対して加えた注釈等の研究成果を表示可能にするデータベースの雛形を構築する事ができた。
著者
黒田 彰 後藤 昭雄 三木 雅博 山崎 誠 後藤 昭雄 三木 雅博 山崎 誠
出版者
佛教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、古代幼学の実態解明に向けて、孝子伝(図)、列女伝(図)、体腔か陽など、未解明の題材を取り上げ、発展的研究を目差したものである。中で、後述日中共同研究による和林格爾後漢壁画墓の未公開の孝子伝図、列女伝図を含む、全壁画の公開報告書の公刊や、太公家教の現存全本の校本と校訂本文の作成、注解などの公刊(『太公家教注解』、汲古書院)を中心とする、学際的特色をもった成果を齎すことが出来た。
著者
伊藤 弘子
出版者
愛知学院大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

四月三日から四月二三日まで前年度に引き続きロンドン大学SOAS(オリエント・アフリカ学院)において南アジア家族法および在イギリス南アジア系住民に関する在外研究を行った。同学院のメンスキー教授指導のもとでインドおよびパキスタン現代家族法につき研究したほか、スリランカおよびネパールの家族法文献収集も行った。平成一九年度後期から二〇年度前期の一年間はインドおよびイギリスにおいて在外研究を行う予定であったが家族の体調悪化に伴い在外研究は短期滞在を複数回行う事とした。南アジア家族法研究の成果として雑誌「戸籍時報」九月号に論文「インドにおける代理出産の現状と出生子の法的取扱い」が掲載された。同論文は、前年度に「戸籍時報」に掲載された「バングラデシュ家族法概説」翻訳(A.イスラーム著)とともに雑誌「法律時報」の平成二〇年度学会回顧の国際私法、民法(家族法)およびアジア法の分野において四ヵ所で引用された。この他に「戸籍時報」では「パキスタン家族法概説」翻訳(F.コーカー著)が平成二〇年十二月号から掲載され現在も連載中である。七月一七日にはSOASにおける研究成果を「国際私法を語る会」で「南アジア家族法比較一人的不統一法国における多元的家族法構造」として研究発表し、論文を執筆中である。十一月二一日から二三日まで台湾の世新大学において開催された「アジア三国会議」に出席した。養子縁組に関する各国家族法に関する紹介がなされ、日本の国際私法上の養子縁組について質疑応答に参加した。アジアの家族法研究会メンバーとして今後シンガポール、インドネシア、ブルネイおよびフィジー法翻訳も担当する予定であるのでこれらの諸国の人際法、国際私法を含めた身分関係法研究準備もはじめた。いずれもイスラーム法、ヒンドゥー教法の影響が強く人際法研究を継続、拡大する上でも重要な位置づけにあると考えられる。
著者
清水 一浩
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本研究は、ドイツの思想家ヴァルター・ベンヤミンの思想におけるカント哲学の意義を明らかにしようとするものである。本年度は、三年間の採択期間の最終年度にあたる。本年度に行なわれた具体的な研究活動は、以下の二点に要約される。(一)アリストテレスの術語法・問題構制からカントを再読すること、(二)ベンヤミンの術語法・問題構制の系譜を探究すること。(一)の作業は、昨年度から継続して取り組んできたものである。結果、以下のような点が確認された。第一に、『判断力批判』の思惟の場が、アリストテレスの『弁論術』のそれと類比的に画定されていること。アリストテレスにおける弁論術も、カントにおける判断力の批判も、固有の対象領域をもたないということを存立構造としている。重要なのは、この脱領域性が、両者で共通して「感情」という言葉で表示されていることである。第二に、カントの歴史哲学が『判断力批判』と類比的な位置づけにあること。「歴史」は、判断力と同様に、自然と自由との間に位置づけられる。自然にも自由にも還元されない「普遍史」の構想は「小説」と呼ばれる。この呼び名にふさわしく、『普遍史の理念』のテクストは、極めてレトリカルに構築されている。この第二の点の素描を、カント研究会にて口頭発表した(二〇一〇年二月二八日、於・法政大学)。(二)に関しては、ベンヤミンの神学的な言葉遣いやモティーフを辿ることも目的として、ヤーコプ・タウベス『パウロの政治神学』の研究会を行なってきた(その副産物として、拙訳になる『パウロの政治神学』が近刊の予定である)。これによって、旧約聖書からベンヤミンにいたる神学・哲学・政治・文学の伝統について、幾つかの鍵言葉が再確認された(メシア、自然、イメージ、儚さ、など)。言葉遣いのレベルでこの伝統を引き受け、再考し、再構築するところに、ベンヤミンの超越論的文献学と呼ぶべきテクスト実践があったのだと考えられる。
著者
川瀬 慈
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

平成21年度は、エチオピア無形文化遺産を対象にした多数の民族誌映画制作で知られるエチオピア・ゴンダール出身のサムソン・ギオルギス氏(パリ在住)や、ユネスコ無形文化局局長のデュベル氏をはじめとするスタッフ等へ、保護・振興すべき「無形文化遺産」の認識、映像作品の管理・活用に関する聞き取り調査を行った。同時に、以上の点について、自らの経験を踏まえて、積極的な提言を行った。さらに、エチオピア音楽・芸能に関する民族誌映画を国際学会や各種のセミナー、大学講義の場で公表し、音楽・芸能を支える技や知識の、将来にむけた望ましい伝承法、そしてその記録方法論をテーマにした討論を積み重ね、映像記録した。以上で得られた見解や問題点を、論文にまとめ公表した(研究発表を参照)。また、第11回英国王立人類学協会国際民族誌映画祭(英国リーズメトロポリタン大学)において開催された無形文化映像コンペティションにおいて審査委員を務め、世界各地の無形文化を対象にした民族誌映画を批評し、制作者、参加者と広く意見交換を行った。国際映像人類学理事会(IUAES, Commission on Visual Anthropology)理事として、理事会ウェブサイト構築に着手した(http://www.cva-iuaes.com。本ウェブサイトは今後、無形文化遺産を対象にした民族誌映画投稿の場となるのみならす、記録、表象の方法論をめぐるインタラクティブな議論のプラットフォームとして発展していく予定である。無形文化を対象にした映像記録を一方向的に実践するのではなく、映像の送り手、受け手、管理者等との重層的かつ、インタラクティブな意見交換を行うことは、国際的な動向の中で、映像実践をとらえ、映像人類学研究をひろく社会に開かれた応用的学問として昇華させうる可能性を持つ。
著者
二井 仁美 山崎由 可里 石原 剛志 石原 剛志
出版者
大阪教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、「不良行為をなし、またはなすおそれのある児童及び家庭環境その他の環境上の理由により生活指導等を要する児童」を対象とする児童自立支援施設の歴史に関する基礎的研究である。とくに1933年の第64回帝国議会に提出され審議された少年教護法案に焦点をあてている。同法案は、感化院関係者がみずからの手で準備し、議員によって提出されたものであり、本研究では、同法案がいかにして成立したかについて、児童自立支援施設所蔵史料によって解明した。
著者
弦間 正彦
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

中東欧諸国の農業部門においては、個別の取組みをCAPに従ったものへと集約して行く一方で、競争力を持つ農業と活動力に富む農村を築くための特色を持った独自の政策や制度の確立も同時に求められている。本研究では、中東欧諸国の農業分野に焦点を絞り、生産・流通組織の構造変化、生産性、効率性の変化を比較分析・理解し、その結果をもとに政策分析を行い、この地域の農業・農村部門が持続可能な経済成長をとげるための政策や制度に関する包括的な政策的含意の導入を図った。
著者
坂上 康博
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究によって、(1)武徳会役員のパージは、その方法や結果等から、従来イメージされているよりも合理性をもつものであった考えられること、(2)その戦後への影響も、組織面では大きくはなく、戦中との人的な連続性が強いこと、他方、(3)学校武道については、戦中との断絶が人的にも理念面でも強く、理念的な影響は武道組織にも及んだことが明らかになった。
著者
山本 裕二 工藤 和俊 山田 憲政 北原 俊一 平田 智秋 宮崎 真 平川 武仁 木島 章文 奥村 基生 郷原 一寿 門田 浩二 山際 伸一
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,様々なスポーツ技能の生成機序を力学系の観点から統合的に理解することを目的とした.その結果,ブランコ漕ぎの協応パタンは振り子の等時性にほぼかなっていること,音に合わせたダンスでは,運動周波数が高い場合でも熟練者は逆相同期を維持できること,卓球では技能水準を切替ダイナミクスのフラクタル次元で評価できること,剣道では二者間距離によって詰め引き速度の相対位相が切り替わること,タグ鬼ごっこでは,学習に伴い両者の詰め引き速度の相対位相が逆相同期になること,サッカーの3対1ボール保持課題における三者の連携パタンは,技能レベルによって環状連結振動子における対称性のホップ分岐理論で予測されるパタンを示すこと,サッカーゲームのパス行動にはベキ則が見られることなどを明らかにした.
著者
藤井 浩基
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

1945 年 8 月以降から現在までの韓国の音楽教育史を整理しつつ,音楽教育をめぐる日韓両国のおもな関わりを,両国の音楽教育の基礎研究や研究・教育交流事例を通して明らかにし,日韓音楽教育関係史の構築を試みた。特に,めまぐるしく変化する韓国の動向を中心に,現代の日韓両国における音楽教育事情や諸課題について分析・検討し,日韓の音楽教科書をめぐる事例や多文化教育としての音楽科教育の日韓比較等を成果として発表した。
著者
狩野 充徳 岸田 裕之 勝部 眞人 妹尾 好信 高永 茂 伊藤 奈保子 本多 博之 西別府 元日 中山 富廣 有元 伸子 竹広 文明 古瀬 清秀 フンク カロリン 三浦 正幸 久保田 啓一 野島 永 瀬崎 圭二
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

多くの伝承・伝説に包まれた世界遺産・厳島は、人間社会の傍らで、人びとの暮らしとともにあった。無文字時代には、原始的宗教の雰囲気を漂わせながら、サヌカイト・安山岩交易の舞台として。有史以後には、佐伯景弘らの創造した伝説を原点に、中世では信仰と瀬戸内海交通・交易の拠点として、近世では信仰と遊興の町として、近代では軍事施設をもつ信仰と観光の町としてあった。そして、それぞれの時代に、多くの伝承・伝説が再生産されていったのである。
著者
辻 明日香
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、マイノリティーの視点から、中世イスラム社会を捉え直すことにある。14世紀半ばエジプトでは、コプトに対する大規模な弾圧により、コプト人口は激減した。また、コプト教会の文芸活動が途絶えた。その中で黙示録は14世紀以降も著されている。申請者は、この黙示録に、コプトが改宗を選択しなかった者の覚悟が現れているのではないかと考えた。2008年5月18日に早稲田大学にて開催された、2008年度歴史学研究会大会の合同部会では、本研究の予備的発表を行った。タイトルは「黙示録から見たイスラム支配下のコプト」で、黙示録に見られる記述から、エジプト社会のアラブ化がコプト教会に与えた影響について考えた。夏休み中は、黙示録資料、の情報整理をした。また、International Coptic Congressの第9回大会(エジプト・カイロ、9月14-20日)に参加し、海外のコプト史研究の専門家らと本研究に関する情報収集・情報交換を行った。10月には歴史学研究会大会の報告文が『歴史学研究増刊号』第846号に掲載された。1月末から2月にかけてロンドン・オックスフォードにて写本調査を行った。新しい黙示録を発見するには至らなかったが、マムルーク朝期の教会史や聖人伝の写本を見ることにより、黙示録を補完するような情報を得ることができた。2009年2月21日にはイスラーム地域研究の研究会にて、「コプト黙示録におけるイスラーム政権像の変遷」と題し、イスラム征服期からマムルーク朝に至るまでの様々な時代に著された黙示録に、その時代の為政者がどのように描写されているかということを発表した。これにより、マムルーク朝期の黙示録記述の意図をより明らかにすることができた。この報告に関しては、2009年度中に研究ノートとしてまとめる予定である。
著者
増田 千利 吉田 誠
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

特性の優れたカーボンナノチューブ(CNT)などカーボン(CF)系短繊維強化アルミ基複合材料を放電焼結法で製造し、強度特性、熱伝導特性、界面組織を検討した。CNTとAl液滴との接触角は174°でほとんど、濡れることがなかった。CNT表面にAl, Mg金属をコーティングすることに成功した。またAL, Mg金属粉末にCNTを成長させることに成功した。これにより凝集したCNTを金属粉と均一に分散させる困難さを克服できる可能性を見出すことができたといえる。