著者
谷村 和八郎 鴨居 郁三 小原 哲二郎
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.245-251, 1980-05-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
8
被引用文献数
1 2

枝豆のTIを調べる目的で大豆を播種後栽培111日より165日まで毎週経時的にTI活性を測定した。(1) 枝豆中のTIは栽培日数116日までは認められず, 123日の豆粒よりTIがみられた。枝豆として利用出来る粒長1.2~1.4cmの成熟豆は130日より収穫できた。 TI量は127日のものが最高で生豆粒1g中に17.92mgであった。この時の比活性は168である。枝豆の粒長により含まれるTI量は異なり,生豆粒1g中のTIは粒長0.8-1.0cmでは6.91mgが最高であった。粒長1.0-1.2cmは14.7mgで成熟豆に近い値である。(2) Sephadex G-75によるTIのゲル濾過では粒長1.2-1.4cmの豆粒では4~6種のTIピークがみられ,主要ピークはNo.3, No.4であった。栽培日数の増加と共にNo.3, No.4のピークが占める割合が大きくなる。粒長の短かいものは6種のTIピークがみられた。その主要ピークはNo.3, No.4であった。(3) Sephadex G-75でゲル濾過したNo.3, No.4のTIピークについてDEAEセルロースによるクロマトグラフィーを行った。粒長1.2~1.4cmでは123日が7種, 159日が5種, 165日が4種と栽培日数が長くなるに従いピーク数が減少する。また粒長が大きくなるに従いTIピーク数が減少した。(4) 枝豆の加熱によるTIの変化は市販枝豆の生豆1g中のTI量は19.7mgであった。100℃, 5分間煮沸の枝豆は1g中に13mgであった。この時のTIをSephadex G-75でゲル濾過を行ったところ,生豆のピークは2種であったが,加熱により9種のピークがみられた。
著者
山本 宗立 松島 憲一 田中 義行 小枝 壮太
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

アジア・オセアニアにおけるトウガラシ属植物の利用および酒文化(麹のつくり方、醸造・蒸留方法、それらに伴う儀礼)についての文献調査を行うとともに、インドネシアおよびミクロネシアにおいてトウガラシ属植物の遺伝資源・文化資源に関する現地調査を行った。また、種分類が未定のネパール産トウガラシ、ダレクルサニ系統群についてSSR、AFLP、GBSSの配列解析を用いて種分類を試みた結果、トウガラシとハバネロ類の種間雑種由来で、他栽培種と遺伝的に距離があることが明らかになった。そして、SSRおよびAFLPを用いて、国内の在来トウガラシ品種等の多型解析を行った結果、大きく7つのグループに分けられ、大まかに地域や果実形質によって分類できたが、異なる果実型でも近縁と思われる集団の存在が明らかとなった。さらに、トウガラシ属植物の遺伝資源の大規模分子系統解析に向けた準備を行った。具体的には、アジア・オセアニアのキダチトウガラシ404系統およびハバネロ類246系統を栽培し、合計650系統のDNAを抽出した。カプサイシン類の定量分析については、アジアのトウガラシ属植物を栽培し、HPLC分析により各系統の辛味成分組成を明らかにした。ネパール系統の中から、高いカプサイシノイド含量を示すキダチトウガラシの系統を見出した。葉緑体配列に基づくプライマーセットにより、トウガラシ属植物の細胞質の種分類を検討した。今年度に得られたデータについては、国内外における学会発表や国際誌の論文として来年度以降に公表する予定である。
著者
唐沢 かおり
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.119-126, 2003

This study examined the determinants of privileged persons' attribution of responsibility to under-privileged persons for a solution to a predicament. The data was collected from the participants of SIMINSOC (Hirose, 1997). Two hundreds and seventy-three participants randomly assigned to either rich regions (privileged) or poor regions (under-privileged) engaged in various activities in the game and completed a questionnaire. The results indicated that the higher the perception of unfairness by the privileged participants the higher their attribution of their own responsibility to solve the predicament. Furthermore, privileged participants who attributed their efforts to an achievement believed that under-privileged participants should exert more effort to solve the predicament. The discussion considered the implications for promoting privileged persons' supportive attitudes toward the under-privileged.
著者
石村 久美子
出版者
岡山県立大学
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.41-51, 2007

健康増進法第2条によって自らの健康増進が国民の責務となった今、人々の生命・健康を守るとは、どのようなことだろうか。健康に価値を置く一方、不健康には不利益を容認することは健康を強いることであって、主体的な健康を涵養することにはつながらない。ところが、医療費抑制を主眼とする昨今の医療制度改革によって、所得による生活格差が生命・健康の領域にまで格差を及ぼしている。無保険者の増加やいのちの経済化は、根源的な平等感の喪失と将来の懸念を増すばかりである。今、多くの国民が望んでいることは、だれもが必要なときによりよい医療を受けられる安心である。そのためには、貧富の差による「健康の不平等」を容認せず、健康阻害を招くような医療費抑制ではなく、平等・公正・質の高い医療を提供するために、公的責任に値する財源の投入をしなければ解決できない問題であると考える。
著者
金丸 裕志
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
no.60, pp.23-33, 2019-03-31

本稿は、これまでの政治体制の比較研究における民主化論や政治体制論を検討し、21世紀に入って盛 んに論じられている権威主義体制の研究に着目して、政治体制の実証的分類および体制移行の検証を可能 にする分析枠組みの構築を目的とする。冷戦後の民主化の時代には、政治学では盛んに民主化研究が行わ れ、1990年代に民主化の限界が見えると、今度は権威主義体制とのグレーゾーンに位置する政治体制が 注目された。21世紀には民主化の「後退」や「バックラッシュ」がいわれ、現在は権威主義体制の研究 が盛んに行われている。本稿では、こうした流れに沿って、民主化論、グレーゾーン体制、選挙権威主義・ 競争的権威主義体制論を順に検討し、これらをふまえて自由民主主義・選挙民主主義・競争的権威主義・ 覇権政党・一党独裁・君主政/軍政/個人独裁の類型からなる政治体制の分類枠組みを提示する。この分 類枠組みは、要素累積的に構成されており、そのため、政治体制の比較研究および体制変動の検証に有効 であると考えられる。
著者
大槻 荘一 足立 公洋
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.41, no.12, pp.639-642, 1992-12-05 (Released:2010-02-16)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

光学的湿度検出法を目的として,ローダミン色素を含むヒドロキシプロピルセルロース・フィルムの感湿膜としての特性を調べた.ローダミン6G(R6G)又はローダミンB(RB)を含むフィルムは0%から90%までの相対湿度の増加に対して,それぞれ50%又は88%の蛍光強度の減少を示した.0%と90%の間で相対湿度変化を繰り返すと,R6Gフィルムの蛍光強度は可逆的な変化を示した.RBフィルムの蛍光強度は湿度変化のサイクルで最初は減少し,その後一定の値となった.エージング後のRBフィルムの蛍光強度は可逆的な変化を示した.蛍光強度の減少は色素の励起状態の水分子による失活が原因と考えられる.段階的な湿度変化に対するRBフィルムの90%応答時間は6~15分であり,湿度の高い領域で早い応答を示した.
著者
バウアー トビアス
出版者
熊本大学
雑誌
文学部論叢 (ISSN:03887073)
巻号頁・発行日
no.103, pp.117-132, 2012-03

Im Jahr 2009 empfahl die Mehrheit des Deutschen Ethikrates in einer Stellungnahme zum Problem der anonymen Kindesabgabe, die seit 1999 durch freie und kirchliche Träger in Deutschland eingerichteten Babyklappen und Angebote anonymer Geburt aufzugeben. Durch die Stellungnahme wurde die kontrovers geführte Debatte um die ethische und juristische Problematik der verschiedenen Formen anonymer Kindesabgabe neu entfacht. Mit ihrer umfassenden Erörterung insbesondere der rechtlichen Implikationen der gegenwärtigen Praxis anonymer Kindesabgabe sowie der Diskussion differierender ethischer Argumentationsmuster ist die Ethikrats-Stellungnahme als ein zentrales Bezugsdokument der aktuellen Debatte anzusehen. Der vorliegende Text stellt die Übersetzung des Kapitels VIII "Ethische Bewertung", des Mehrheitsvotums " Empfehlungen", des "Ergänzende(n) Votum(s) zu den Empfehlungen des Ethikrates" sowie des für die Beibehaltung der Duldung anonymer Kindesabgabe plädierenden "sondervotum(s)" ins Japanische dar.
著者
鈴木 博人
出版者
法学新報編集委員会
雑誌
法学新報 (ISSN:00096296)
巻号頁・発行日
vol.121, no.7, pp.163-212, 2014-12

日本法でもドイツ法でも法的な母子関係は、分娩によって発生する。父子関係と異なり、母子関係は分娩時に確定する。しかし、望まない妊娠等の事情により、母子関係の存在あるいは妊娠の事実が知られると困る場合、子が出生直後に遺棄されたり、時には殺害されることがある。この事情は、ドイツでも日本でも同じである。このような事態に対応するとして、ドイツでは一九九一年にベビークラッペが設置され、また匿名出産が事実上行われている。少数であるが、子の匿名での引受けを行う事例も存在する。ドイツでは二〇〇九年に倫理評議会が、ベビークラッペは廃止すべきであり、それに代わり一定の要件の下で限定的に母の匿名性を認めるべきという提言がなされた。それを受けた実態調査を踏まえて、妊娠葛藤法のなかに秘密出産制度が導入されて、二〇一四年五月一日から施行されるに至った。本稿では、第一に、秘密出産制度が制定されるに至った背景と新しい制度の内容を紹介、分析する。第二に、秘密出産制度で母の利益と子の利益が比較考量されて、望まない妊娠に典型的にあらわれる母と子それぞれの利益対立が、どのように調整されたのかを検証する。第三に、社会問題としては類似の問題を抱える日本で、仮に母の匿名性を例外的にであれ認めることによって、母子双方の福祉・権利の調整を図るとしたら、どのような問題を乗り越えなければならないかを指摘する。
著者
酒井 雅子
雑誌
玉川大学文学部紀要 (ISSN:02868903)
巻号頁・発行日
no.61, pp.47-77, 2021-03-31

2011 年の福島第一原子力発電所の事故被害を,福島県各地の歌人たちが写実的な短歌で証言している。 本研究の目的は,トランス・サイエンスをリスク・アセスメントする市民教育において,トランス・サイエンスの一つである原子力エネルギーのリスク評価を倫理的観点から行う際,フクシマの短歌がエビデンスとして果たす役割を明らかにすることである。そして,それを踏まえ,リスク・アセスメントの授業デザインを提案することである。そのために,リスク理論の定義から,評価の基準を「事故の結果リスク」5 基準,「事故の原因リスク」2 基準に整理し,また,リスク・アセスメント理論における倫理的リスク評価の位置づけを明らかにした。その上で,2004~2019 年に発表された短歌から1220首(180人)の原子力詠データベースを作成し,さらに,先のリスク基準や複数の歌人が詠んだテーマを基に17 カテゴリーに分類して441首の短歌教材集「フクシマの短歌にみる原子力エネルギーのリスク―歌人122名の証言」に精選した。 短歌教材集により,フクシマの短歌は,放射線の広がりを除き,放射線の影響が出る速さ・時間的広がり・復旧する程度・個人や社会への二次被害という「事故の結果リスク」基準で評価する有効なエビデンスになり得ることを明らかにした。また,フクシマの短歌は,事故以前から原子力エネルギーに内在するリスクを暴いており,これらが信頼できる事実であると確定できれば,「事故の原因リスク」基準で評価するエビデンスになることを明らかにした。以上を踏まえ,短歌の有効性をさらに高める補足エビデンスを示して,リスク同定・リスク判定・倫理的リスク評価を行うリスク・アセスメントの授業デザインを提案した。 なお,原子力エネルギーのリスク評価は,倫理的観点だけで完結しない。持続可能な日本のエネルギーについて,ベネフィットも視野に入れた多観点意思決定による評価が続くだろう。
著者
狩野 浩二
雑誌
十文字学園女子大学紀要 = 十文字学園女子大学紀要 (ISSN:24240591)
巻号頁・発行日
no.51, pp.189-194, 2021-03-28

斎藤喜博は、1981年に急逝した。そのため、大量に残された資料群の行方は、全く宙に浮いたままである。近年、教授学研究の会の尽力により、短歌関係の資料群は、群馬県立土屋文明記念文学館に所蔵されることとなった。しかしながら、教育実践関係の資料群は、相変わらず、そのままである。教授学研究の会では、斎藤喜博の遺族との交渉により、その資料群の保全、整理を目指してきた。しかしながら、さまざまな事情が複雑に絡み合い、その取り組みは困難を極めている。今回、その交渉の過程において、斎藤喜博の遺族から、資料群の一覧がもたらされた。筆者は、その一覧の写しを入手した。そこで、今回は、その一覧の全貌を明らかにするべく、一覧のデータ化を行ったところである。その概要を紹介する。
著者
長島 弘三
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.4, no.6, pp.395-400, 1955-08-05 (Released:2009-06-30)
参考文献数
4

化学分析では,重量分析にはもちろん,熔融,灼熱,濾過等にるつぼを用いることが多く,種類も通常の灼熱秤量,熔融用の他に,種々の濾過るつぼや酸素や窒素気流中で加熱するための特殊な形のものもある.しかしそれらの特殊のるつぼは分析法も進歩せず,分析化学者の主要な目標が原子量の測定にあって,特殊な沈殿形,秤量形を選ばざるを得なかった先人の苦闘の跡と称すべきものが多く,沈殿形,秤量形も楽なものが選べるようになった現在では特殊なるつぼは殆んど用いられなくなった.殊に有機試薬等の進歩により沈澱は焼灼せずに秤量可能のものが多いので,多くはガラス製濾過るつぼで事足り他の濾過るつぼの必要性も少くなった.使用の稀なものも含めて代表的なるつぼを挙げる.1.濾過るつぼ:グーチるつぼマンローるつぼ(以上は濾層を自分で作る)ガラス製,石英製,磁製の濾過るつぼ(濾層ができている)2.灼熱および熔融用のるつぼ:白金(純Pt,Pt-Cu,Pt-Ir,Pt-Rh合金製等)金(純Au,Au-Cu,Au-Pd合金等がありアルカリ熔融用)銀(アルカリ熔融用)ニッケル,鉄,石英,磁製,タンタル(Taは殆んど白金と同様に使える,王水に耐える)ジルコニウム(アルカリ熔融に最適といわれる)アルミナ,トリヤ,ジルコニヤ,ベリリヤ(以上4種は冶金或いはその研究用に)黒鉛(分析用ではないが炭酸ナトリウムの熔融に耐える.多量の試料の分解に用いて便.高温の実験のさやるつぼ.熔融塩電解に際して電極兼用のるつぼにも使われる).3.酸素,窒素等の気流中で灼熱するために作られたものとしては,磁製,白金製のるつぼの蓋に側管が接属して,外から気体を送るように考案されたものがある.1および2の各種のるつぼのうち,現在定量分析に多く用いられているものにつきその性質,使用法を述べる.
著者
栗林 均
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、清朝の公用語であったモンゴル文語について、官製の満洲語辞典(清文鑑)、官製史書、および档案(政府公文書)等の「官用」モンゴル文語文献資料の言語的特徴を明らかにした。これに基づき、17世紀以降のモンゴル文語を、木版刷の仏教経典に用いられた「古典式」モンゴル文語と、規範からはずれる「世俗的」文献に分ける従来の捉え方に対して、「官用」のジャンルを加えて「近世モンゴル文語」という枠組みで捉え直した。研究の基礎資料として作成した各種「清文鑑」と官製史書を含むモンゴル文語のデータベースに基づき、テキストデータと原本の画像データをリンクさせた資料検索システムを構築してインターネットで公開した。
著者
駒井 信勝
出版者
智山勧学会
雑誌
智山学報 (ISSN:02865661)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.219-234, 2020

<p> 本稿では,<i>Vajrapāṇyabhiṣekatantra</i>(以下VPA)に見られる金剛灌頂曼荼羅,並びに画像法の中央に画かれる世尊大転輪がいかなる尊格であるのかを,『大日経』との比較や,経典の内容から検討してきた.</p><p> 尊容に関しては,『大日経』「転字輪曼荼羅行品」の世尊毘盧遮那と酷似しており,この視点からみるならば,世尊大転輪は毘盧遮那と言える.</p><p> VPAにおける世尊大転輪の位置付けに注目すると,あらゆる尊格の中でも最高位の存在であることが読み取れた.このような位置付けから見ても,世尊大転輪を毘盧遮那とすることは可能であろう.</p><p> 最後に,VPAでの転輪者がいかなる存在であるのかを検討した.VPAでは,秘密の教説と金剛杵が,釈迦—普賢—文殊というふうに相承されていく.そして,これは毘盧遮那—金剛手—妙施金剛と置き換えることができた.金剛灌頂曼荼羅では,世尊大転輪の上下に普賢と文殊が,画像法では世尊大転輪の左右に金剛手と妙施金剛が配置された.このように,教説と金剛杵の相承と,曼荼羅の配置を比較すると,世尊大転輪は毘盧遮那ということができよう.</p>
著者
葛西 厚史 原田 竹雄 山崎 宗郎 田部井 豊 赤田 辰治
出版者
一般社団法人 植物化学調節学会
雑誌
植物の生長調節 (ISSN:13465406)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.71-76, 2019

<p>The plant phloem system transports both essential nutrients and long-distance signaling agents. Recent transcriptomics studies and grafting experiments have demonstrated that several thousand mRNAs and various small noncoding RNAs are moved over long-distances via the phloem. Therefore, by using grafting, it is possible to deliver artificial RNAs which are derived from a designed DNA construct in the transgenic plant into the graft partner plant, and to induce heritable TGS (transcriptional gene silencing) via RdDM (RNA directed DNA Methylation). We developed an epigenome editing system of an endogenous gene of potato (<i>Solanum tuberosum</i>). We address potential function of siRNA(small interfering RNA) in grafting system with respect to epigenetic breeding.</p>
著者
小池 俊雄
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

1.鬼怒川水害<br><br>2015年9月のの関東・東北豪雨で発生した鬼怒川水害では、24時間最大雨量記録が311mmから410mmへと大きく塗り替えられた。<br><br>河川管理者から自治体責任者へは、氾濫危険情報や水位の上昇に関する情報や、避難情報の発令や浸水想定区域図の活用についての示唆も提供されていたが、広い地域にわたって破堤前に避難指示は出されなかった。また鬼怒川が洪水流で満杯となった映像が実況中継されてはいたが、避難することなく屋内に留まった住民は多く、結果として、氾濫流に取り残された住民1300人余りがヘリコプターで、また3000人ほどが地上部隊によって救出される事態となった。<br><br>&nbsp;<br><br>2.リスクの変化<br><br>2014年にまとめられたIPCCの第5次評価報告では、大雨の頻度、強度、降水量の変化の将来推定に関して「中緯度の大陸のほとんどと湿潤な熱帯域で可能性が非常に高い」と記述されており、2007年の第4次評価報告に用いられた「可能性が非常に高い」をより詳しく表現している。これらは気候の変化に伴い豪雨の増加に関する科学的知見が確かなものになってきている証左と言える。<br><br>明治期、鉄道網の普及により舟運の必要性が低下し、我が国の川づくりは洪水対策のための連続堤防の築堤が主流となり、国が一義的責任を有する河川管理体制が構築され、地先を守るという市民の当事者意識が低下して、社会サービスの受け手になり易い状況が作り出されている。その結果、危機感や責任感が低下し、施設整備による人的被害の減少とも相俟って、知識や経験だけでなく関心や動機も薄れて行動意図が低下するという事態の進行が心配されてきた。これは洪水に対する社会の脆弱性の悪化を意味している。<br><br>&nbsp;<br><br>3.リスクコミュニケーションの強化<br><br>このように鬼怒川水害は、災害外力と脆弱性の変化を明確に認識し、施設では防ぎきれない大洪水に対して、洪水リスク軽減のための社会的取り組みが必要であることを学ぶ機会となった。<br><br>これらの変化に対して、まずは災害外力の変化の理解を深め、災害に対する社会の脆弱性の特徴を理解し、健やかな生活を阻害する災害リスクを特定して、評価・モニタリング・予測する能力を高め、得られる情報が市民や行政に分かり易く伝えられ、地域の洪水リスクに関する知識、経験、危機感を共有が肝要である。<br><br>また、意思決定・合意形成の体制とマネジメント技術を積極的に導入して、立場や分野を超えて幅広い主体が参画して相互に情報を交換できる場を構築し、市民や行政の関心や動機を高める必要がある。その上で、地域全体を襲う災害による危機に対して、地域ぐるみで災害リスクの軽減と災害からの速やかに回復できる計画作りを進め、発災後も健やかな生活と健全な社会活動を行える地域全体としての事業継続能力の向上を目指して、スムーズな情報交換のためのガイドラインや指針、標準的な情報伝達手順を準備しなければならない。さらに地域の実情に合った訓練を重ねることも不可欠である。<br><br><br>参考資料:社会資本整備審議会大規模氾濫に対する減災のための治水対策検討小委員会資料, 2015.10.30
著者
高嶺 久枝 Takamine Hisaye
出版者
琉球大学国際沖縄研究所
雑誌
国際琉球沖縄論集 = International Review of Ryukyuan and Okinawan Studies (ISSN:21867933)
巻号頁・発行日
no.2, pp.49-51, 2013-03-29

琉球王国時代、朝貢関係にある中国皇帝の使いである冊封使を歓待するために創られた御冠船踊り(宮廷舞踊・古典舞踊)。私を踊り手として解放してくれるきっかけを与えてくれたのが、普天満宮先代宮司で、舞踊家の故新垣義志氏の創作、神楽舞「初穂」でした。この踊りは湛水流(古典音楽の古型)の音曲にのせ、祭式作法を取り入れ、かつて沖縄の村々の祭りを司った神女の姿で踊ります。そして稲穂を持ち、豊作は神の恩恵によるものとして'初穂'を神に捧げます。祈りの舞を踊る時、私の想いのベクトルは神聖な対象に向かい、精神の浄化を求め、かつ求められ、透明化していきます。舞の透明化をめざすべく、身体は観客に向かっている時でも、私自身の想いのベクトルは私自身の魂へ向き、または崇高なものへ向かいます。そして自分自身を内視します。その繰り返す行為が純化された精神的な世界へと導いてくれます。文字のない社会における島の女達は、時として神人になり、白い衣裳をまとって幾日も龍もり、心の内から発する歌と祈りの所作で男達を、子供達を、すべての人々を愛で包み、島の繁栄を祈りました。そして現世と来世をつなぎ、生を豊かに謳歌してきたと思います。文献にみる「舞踊」に関する言葉には、三つの系列があります。(1)「遊び」(神女の歌舞や船遊び、祭事における神事的な歌舞、行事をさす)・(2)「なより」(身振りのつく踊りで手の舞いはこねり)・(3)「舞い」の三つです。古代から「舞う」は鳥や蝶が飛翔するさまを表わすときに使います。それらは兄弟の航海を守護する「おなり(姉妹)神」の化身でもあると信じられています。神女達は果報を寄せる霊力を持つとみられ、「舞い合い」「群れ合い」によって波風を和めんとし、鷲の羽でつくった「風直り」を髪に挿し、薄衣装をはためかしてその飛翔するさまを舞います。神女達が御嶽の庭に降臨し、「なよる」のは、島を「直」す、すなわち和め、繁栄をもたらすためでした。「遊び」「なより」「舞い」は、言葉は違っても、「祈り」という点では、共通の意味合いをもっています。私は現代に生きる者として、女性(姉妹オナリ)のもつ霊力を表現した作品『風なおり』を1991年に発表し、先達の思いを、祈りの心を舞いに映し出してみました。現代に生きる古典舞踊は、時と場所を超え人々の生への共通のテーマを表現していると思います。舞う側の無駄を削ぎ落とし、昇華され、透明化された表現は、人々のもつ精神世界に触れ、蘇らせ、心の綾を象徴すると思います。私は生命あるものすべてに神の心が宿り、その神に生命養われたことへ感謝し、歌と踊りを神々に献じた先人達の智慧と愛に満ちた心を学びたいと思います。さらに、芸能に宿る今もむかしも変わらない愛と祈りの精神性を受け継ぎ、これまで培ってきた身体に宿る技と心のリズムで難な表現を可能に出来るようにし、創造・継承の使命を持ちつつ、日々の精進を怠らないように心がけたいと思います。
出版者
日経BP社
雑誌
日経エレクトロニクス (ISSN:03851680)
巻号頁・発行日
no.758, pp.43-50, 1999-11-29

2000年〜2001年にかけて,光ディスク装置に向けた「2波長レーザ」と呼ぶ製品が登場する。CD—Rディスクなどを読み出すための780nm帯半導体レーザと,DVD—ROMディスクなどを読み出すための650nm帯半導体レーザを一つにまとめたものである。 これまでも2波長レーザを研究し,学会などで報告する例はあった1)。しかし,その多くは研究レベルで止まっていた注1)。