著者
亀野 淳
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.137, pp.259-270, 2020-12-23

本稿においては,インターンシップやアルバイトを就職希望者(学生)の能力把握(企業側の視点)や企業・業種の実情把握(学生側の視点)などに利用するという直接的効果に着目し,企業に対するアンケート調査を実施した。その結果,①新規学卒者の採用にあたっては,能力把握の方法として「面接」が最も重要視されており,インターンシップやアルバイトは少ないが,これらの方法の評価としては,面接よりもインターンシップ経験の方がその有効性を企業が認識していること,②こうした有効性の認識もあり,多くの企業が採用目的でインターンシップを実施しているが,当初の目的を十分に達成しているとは必ずしもいえないこと,③平均すると,企業は新卒採用の2.4倍程度の学生をインターンシップ学生として受け入れ,そのうち,6.4%程度を実際に採用している。新卒採用者全体でみると,約7人に1人をインターンシップ経由で採用していることなどが明らかになった。
著者
中村 真紀 坂田 裕介 小林 秀行 加藤 憲 山上 潤一 米本 倉基
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.106-115, 2021-01-25 (Released:2021-01-26)
参考文献数
7

臨床検査部門のトップマネージャーが,どのような管理職行動をすれば,部下の職務満足度を向上させるかについての科学的な研究はこれまでなされておらず,その手段は他職種のプログラムに依存しているところが大きい。そこで本研究は現場の臨床検査技師長など部門のトップマネージャーの行動が部下の職場満足度に与える影響や,部下が求める優れた管理職行動の特性を科学的に明らかにすることでこれからのマネジメント教育の指標を得ることを目的とした。方法は難波らの先行研究を引用し,管理職行動24項目,職務満足度26項目,性別等の属性を含む計69項目を150名の臨床検査技師を対象にWEBで調査を行い,得られた回答から管理職行動と職務満足度のデータを得点化し分析を行った。その結果,トップマネージャーの管理職行動が部下の職務満足度に与える影響は極めて大きく,臨床検査技師におけるトップマネージャーへのマネジメント教育の必要性が確認できた。また,管理職行動には「キャリア重視」と「働きやすさ重視」の2つの重要な役割行動があり,そのどちらかが欠けると部下の職務不満足は改善されないことが示唆された。とりわけ,トップマネージャーにおいては,性差を問わず若年層が働きやすい職場環境の充実と,役職者に対して職場の良好な人間関係構築のための配慮を同時に遂行することが重要であり,この両者からの期待役割に対してバランスよく応えられるマネジメント教育が必要と考えられる。
著者
吉田 浩通 松浦 哲也
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C3P2397, 2009 (Released:2009-04-25)

【はじめに】徳島県下における少年野球検診事業の歴史は古く、約30年の実績がある.開始当初は医師の参加によるもので行われていた.平成13年度より検診事業に理学療法士も参加するようになり、現在に至っている.今回、検診システムを紹介するとともに平成19年度における結果を報告する.また検診事業を通し、成長期障害予防における今後の理学療法士の課題について検討した.【対象と方法】検診は、徳島県下全ての小学生野球チームが出場した大会時に行った.検診システムは、大会前のアンケート調査、現場での一次検診、病院での二次検診の3段階で行った.アンケートでは、野球経験年数、練習頻度、ポジション、疼痛既往の有無、野球継続の意志等について解答してもらった.疼痛既往のあった選手、投手、捕手を一次検診者とし、一次検診では各関節可動域、圧痛、ストレス痛についてチェックした.一次検診結果をチーム単位で集計し、有所見者および投手、捕手には協力医療機関での二次検診(X線検査を中心とした画像診断)にて診断を確定し、必要であれば医師、理学療法士による評価、治療を開始した.【結果】平成19年度の大会参加チームは154チームで現場の一次検診を受診したのは139チームであり、受診率は90.3%であった.一次検診を受診した1812名のうち、二次検診が必要と判断されたのは1126名で、このうち二次検診に応じたのは291名であり、二次検診受診率は25.8%であった.二次検診の結果、X線異常を認めたのは77.7%(226名)で、異常部位は計265部位であった.内訳は肘75.9%、肩9.1%、踵7.5%、膝4.5%、その他3.0%であった.【考察】一次検診受診率は90.3%と高いが、二次検診受診率は25.8%と低い.二次検診の結果、画像診断等で77.7%の異常を認めたことからも、現場での一次検診の有用性が認められる.異常の内訳は、肘関節が圧倒的に多く、肩、踵、膝の順であった.野球の競技特性による結果と考えられるが、同時に全身に障害が発生するということも示唆される.また、長年の検診データの結果から、障害発生率は減少傾向にない.我々理学療法士に今後求められることは、検診技術を向上させ定期的なチェックを継続して行い、成長期障害を早期発見すること、障害予防の観点にたち、指導者や保護者、選手に対し日常練習時のプログラムの提案や、スポーツ動作の分析と動作指導等を行い、フィードバックを行う機会を設けることが重要になってくると考える.

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著者
大澤 直
出版者
The Japan Institute of Electronics Packaging
雑誌
SHM会誌 (ISSN:09194398)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.2-8, 1995-05-01 (Released:2010-03-18)
被引用文献数
1
著者
阿部 靖彦 野村 栄樹 佐藤 剛司 上野 義之
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.3378-3393, 2014 (Released:2014-09-27)
参考文献数
26

好酸球性食道炎は食道上皮への多数の好酸球浸潤を特徴とする慢性炎症によって食道運動障害や器質的狭窄を来たす疾患である.病因として食事中の抗原や空気中に浮遊している花粉などの抗原に対する過剰な免疫反応が想定されているが不明な点が多い.本症は近年欧米で増加しており,食物のつかえ感やfood impaction(食物の食道嵌頓)の一因として非常に注目されている.本症の診断の基本は症状と病理組織所見であるが,2次的な食道好酸球浸潤の除外,とくにGERDとの区別のため,PPIに対する反応性の評価が必要とされている.本症は特徴的な内視鏡像を呈する場合があり,これらを認識しておくことが診断において重要となる.本稿では,現在,国内外で用いられている診断基準を示しながら,診断のポイントについて,とくに内視鏡像,病理組織像の点から解説する.
著者
中村 富予 家辺 愛子 今井 晶子 藤村 佳美 溝上 欣子 中山 紀子 長谷部 汐莉 小湊 英範
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.97-104, 2021 (Released:2021-02-01)
参考文献数
24

通所介護事業所では、定期的に利用者の体重測定を実施している事業所が少なく、栄養指標として最も重要な項目の1つである体重減少率を算出できない場合が多い。そこで本研究では、通所介護事業所における栄養スクリーニング項目としての体重減少率の有無が低栄養状態のリスク判定に与える影響を調べることを目的とした。通所介護事業所利用者92人を対象とし、体重減少率を含めて低栄養状態のリスク判定を行った場合と、体重減少率を除外した場合との差を比較検討した。本研究対象者の約4割が低栄養状態の中・高リスクに判定された。体重減少率を除外した場合、低リスクと判定された利用者のうち25.6%は体重減少率を含めると中・高リスクに該当した。栄養スクリーニング時に体重減少率が算出できない場合の低栄養状態のリスクは本来より軽く見積もられ、低リスクに判定された利用者の中に低栄養状態の利用者が含まれる可能性が示唆された。
著者
小島 佐紀子 奥 裕乃 松月 弘恵
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.89-96, 2021 (Released:2021-02-01)
参考文献数
28

本研究は調理学実習と給食経営管理実習で衛生教育を科目間連携し、手指の洗い残し部位の可視化と質問紙の調査から、手洗い教育の課題を明らかにすることを目的とした。対象は2017年度に本学の管理栄養士専攻2年に在籍し、2018年1月(調理学実習後)および7月(給食経営管理実習後)の調査に回答した44人で、両手および手のひら・甲における洗い残し22部位の観察と、手洗いに関する8項目の重要度と実践度を質問し、調理学実習後と給食経営管理実習後で比較した。手指の洗い残し調査からは、結果を可視化し洗い残しを認識することで、給食経営管理実習後の両手の洗い残しが減った(p <0.001)。22部位のうち特に改善が認められたのは、手首と小指の付け根(各p <0.001)であった。手洗いの実践度では、調理学実習ですでに身に付いている項目と、給食経営管理実習を通して実践度が高まる項目、および改善しない項目に大別できた。実践度が低い項目には衛生教育だけでなく、環境整備により改善される可能性が示唆された。
著者
竹越 国夫 山之内 博 東儀 英夫 村上 元孝 亀山 正邦
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.13, no.6, pp.371-377, 1976-11-30 (Released:2009-11-24)
参考文献数
15

老年者の新鮮脳血管障害66例 (脳硬塞38例, 脳出血28例) 中, 41例にステロイドを使用し, 25例は対照群として, ステロイドの有効性を, 意識レベルの改善と生存を指標として検討した. 対象の年齢は, 平均76.2歳であった. 47剖検例については, 病巣部位, 病巣の大きさを確認した. ステロイドの使用方法について, 薬剤はプレドニゾロンが22例, デキサメサゾンが14例, その他5例であった. 薬剤の使用総量は, デキサメサゾン換算量で平均40.4mgであり, 一日最大使用量は, 平均10.0mgであった. ステロイドは, 発症後平均1.7日以内に使用開始し, 平均7.2日間使用した.結果は, 1) 脳硬塞において, 意識レベルの改善は, ステロイド使用群では23例中9例 (39%) にみられたのに対し, 対照群では15例中5例 (33%) にみられ, 両群間に有意の差は認められなかった. 4週生存率は, ステロイド使用群では70%であったのに対し, 対照群では80%であり, 両群間に有意の差は認められなかった. 入院時意識レベル別に検討した場合, 意識レベルの改善率と生存率において, ステロイド使用群と対照群の両群間に有意差は認められなかった.2) 脳出血において, 意識レベルの改善は, ステロイド使用群で18例中5例(27%)にみられたのに対し, 対照群では10例中1例 (10%) にみられ, 両群間に有意差は認められなかった. 4週生存率は, ステロイド使用群で56%であったのに対し, 対照群では10%であった. しかし, ステロイド使用群と対照群の間に, 意識レベルの条件が一致せず, 厳密に比較検討することはできなかった.3) ステロイドの副作用について, 消化管出血が, ステロイド使用群に3例, 対照群に1例みられ, 非ケトン性糖尿病性昏睡が, ステロイド使用群に1例みられた.
著者
土坂 享成 木村 哲哉 今井 邦雄 妹尾 啓史 田中 晶善 小畑 仁
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 = Environmental science (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.393-398, 1999-11-30
参考文献数
14
被引用文献数
1

前報において,カドミウム解毒に重要な役割を果たすと考えられている(γ-EC)<SUB>n</SUB>G合成酵素の性質について,水稲根を用いて検討したことを報告し,水稲根中で(γ-EC)<SUB>n</SUB>Gを合成している酵素の少なくとも一部がカルボキシペプチダーゼである可能性を示唆した。これを踏まえ,本研究では各種のカルボキシペプチダーゼに(γ-EC)<SUB>n</SUB>Gの合成能力があるかを検討した。更に,イネ由来のカルボキシペプチダーゼ遺伝子を発現ベクターに組み込み,これを大腸菌に導入してカルボキシペプチダーゼ遺伝子を発現させ,それにより(γ-EC)<SUB>n</SUB>G合成能力が増大するかを検討した。 その結果,全てのカルボキシペプチダーゼ標品において(γ-EC)<SUB>n</SUB>Gの合成が認められ,その至適pHはカルボキシペプチダーゼの分解活性のそれとほぼ同じであった。また,その合成活性はカルボキシペプチダーゼの特異的阻害剤により抑制されることが認められた。比較のために行ったアミノペプチダーゼ標品では(γ-EC)<SUB>n</SUB>Gの合成は認められなかった。一方,カルボキシペプチダーゼ遺伝子を導入した大腸菌の抽出液における(γ-EC)<SUB>n</SUB>G合成活性が,導入していない方よりも増大したことが認められた。これらのことから,カルボキシペプチダーゼが(γ-EC)nGを合成している酵素の一つである可能性が更に強く示唆された。
著者
松井 醇一
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
熱硬化性樹脂 (ISSN:03884384)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.145-152, 1990-09-10 (Released:2012-08-20)
参考文献数
8

繊維強化熱硬化性樹脂複合材料は, 工業用材料として重要な地位を占めている。複合材料の性質は, 素材, 積層設計及び成形加工によって決まるが, 本稿では素材, なかでも強化繊維の寄与について述べた。炭素繊維強化複合材料の場合, 繊維の高弾性率・高強度を反映して, 繊維配列方向の引張性質は抜群に優れているが, 直角方向, 層間及び圧縮性質は樹脂と界面に依存するため, 必ずしも優れているとは言えない。また, 航空機材料としてのCFRPに対する要求のひとつに, 耐衝撃性の改善があり, 熱硬化性樹脂の靭性改良の研究が進んでいる。コストについては, 複合材料の成形加工性の良否が重要であり, 使い易い樹脂及び製品の品質バラツキの生じにくい樹脂の開発に対する期待が大きい。
著者
山田 浩子 原田 利宣
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集
巻号頁・発行日
vol.4, pp.47, 2004

アニメのキャラクター(アニメキャラ)の3次元モデル化における定式化は未だ行われていない.よって,この種の非言語メディアにおいては,まずその記述(定式化)が必要不可欠となる.そこで本研究では人の顔を表した造形物に着目し、フィギア、日本人形、およびリカちゃん人形を事例とした。まず、それら人形間、人と人形間を比較し、それらの相違点を、次に浮世絵と日本人形、2次元アニメキャラとフィギアの曲線を比較し、それらの相違点を明確にした。これにより、各人形や浮世絵,2次元アニメキャラの造形様式の定式化が行え、ある被験者の顔形状データから、事例に基づく3次元モデルを創成するシステムの知識ベース構築が可能となる。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ベンチャ- (ISSN:02896516)
巻号頁・発行日
no.193, pp.46-50, 2000-10

今年七月に開催された主要国首脳会議(G8沖縄サミット)に、国内外から集まった四〇〇〇人の報道陣の間で、ある人形が話題を集めた。沖縄の民族衣装をまとったリカちゃん人形だ。この人形は、外務省がサミットの記念品として各国の政府関係者や報道関係者向けに用意したもので、沖縄に持ち込んだ六〇〇〇体があっという間になくなった。
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1553, pp.88-90, 2010-08-09

今年3月21日。山形県米沢市にある山形大学工学部で行われた学位記授与式。学生たちの中に、親子以上に年の離れた男性の姿があった。 佐藤安太、86歳。