著者
小野 純平 土井 翔平
出版者
北海道大学公共政策大学院
雑誌
年報 公共政策学 (ISSN:18819818)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.79-100, 2023-03-31

In 2000, the Security Council of the United Nations adopted resolution 1325, “Women, Peace, and Security,” which explicitly puts women in the context of peace and security for the first time. Reflecting this trend in international society, the research on women and conflict are growing. In this article, we review the recent development in this field, focusing on empirical analysis of women and intrastate conflict. In particular, we found most of the research shed light on two topics: the participation of women and the protection of women.
著者
山田 英徳
出版者
日本笑い学会
雑誌
笑い学研究 (ISSN:21894132)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.86-95, 2012-07-21 (Released:2017-07-21)

欧米では80年代ごろから笑いが治療法の一つとして認識されるようになった。また、笑いは病院や老人ホーム、小児病棟や福祉施設などで、心や身体の病気に対し癒しの効果を上げている。しかし、笑いの生理学的な分野からの解明や実践的試みがされてきているが、脳機能からアプローチした研究はほとんど皆無である。そこで、我々はこの笑いに注目し、特に微笑みというものが相手に対してどのように影響を与えているのかについて、脳血流量の測定を行った。その結果、検者が被検者に微笑みかけるだけで被検者の前頭前野の脳血流量が上昇することが分かった。そこで、初対面の人、顔見知りの人、親しい人など被検者と検者の関わる度合いによって、微笑みが相手に与える影響についてどうなるかを研究した。我々医療従事者は、患者さんと関わるときに微笑みかけることがある。医療従事者と患者さんとの関係において、この微笑みがどのようなものなのか考えてみる。
著者
渡邉 英之
出版者
「野生生物と社会」学会
雑誌
野生生物と社会 (ISSN:24240877)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.73-78, 2023 (Released:2023-10-28)
参考文献数
35

Raccoons (Procyon lotor) are known to affect natural ecosystems through their predation on amphibians. To protect these amphibians and the natural ecosystem, there is a need to understand the population density and habitat distribution of raccoons. Sayama Hills is an important habitat for rare amphibians. However, there is limited information on the raccoon population at this location. In this study, I investigated the distribution and relative abundance of raccoons through surveys based on raccoon claw marks on temple pillars and hunting and culling statistics in Sayama Hills. Raccoon claw marks of were found in 30 of 73 temples investigated across Sayama Hills. The catch per unit effort (CPUE) values of the studied cities were 0.79-3.43, except for Higashimurayama, which had no capture records and few raccoon markings. On the Tokyo side of Sayama Hills, the CPUE values were higher in the western cities. Based on these results, the raccoon populations appear to have established their distribution in Sayama Hills, showing an east-west cline in abundance on the Tokyo side. Such a spatial inclination needs to be considered in future management plans of raccoons.
著者
和田 一範 有田 茂 後藤 知子
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究論文集 (ISSN:13495712)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.151-160, 2005-05-15 (Released:2010-06-04)
参考文献数
10

It is said that the Fuji River is the origin of Seigyu (crib spur) which is known as one of the typical traditional river works in Japan. This paper is to investigate the origin of Seigyu in this country by pursuing the kind of historical documents which include the description about the origin of Seigyu. Under the historical document “Jikatahanreiroku” published in 1794, there was a description about Seigyu as “Seigyu is a river method which originate from the period of Shingen, it was used as a measure of large rivers in Kosyu region”. This description is the origin and the tradition of “Seigyu originated at 'the large rivers in Kosyu' which is Fuji River” started to be known.Also, inclusive of the investigation about the origin of Seigyu, the regional differences of river works which could be read from the historical documents was observed.
著者
Takashi Ohira
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
IEICE Electronics Express (ISSN:13492543)
巻号頁・発行日
vol.10, no.11, pp.20130230, 2013-06-10 (Released:2013-06-10)
参考文献数
2
被引用文献数
25 46

This paper considers three pairs of circuit schemes for RF rectification. Given finite available power from RF source and load resistance, we formulate DC output power and efficiency of each scheme. Resultant formulas find that load-to-source resistance ratio R/r dominates the circuit performance. Maximum efficiency reaches 81.1% at R/r=1 for single-diode half wave rectifiers. It also reaches 92.3% for multiple-diode full wave ones at R/r=1.347 in bridge with capacitor, 0.742 in bridge with inductor, 5.389 in double-voltage, and 0.1854 in double-current topologies.
著者
高屋 康彦 廣瀬 孝
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.82, no.5, pp.389-401, 2009-09-01 (Released:2011-08-25)
参考文献数
39
被引用文献数
2 1

花崗岩を用いた二つの溶解実験の結果から,溶解特性に及ぼす要因について考察した.実験Aでは,固/液比を0.25,0.5および1に設定し,破砕した岩石試料を3種類の粒径(粗粒:32~45 mm;中粒:8~16 mm;細粒:1~2 mm)で振るい分けたもの200 gを用いた.実験Bでは,粉末試料1.0 gまたは直方体のブロック試料3.54×3.54×20.0 mm3を蒸留水50.0 mlと反応させた.その結果,溶解特性は表面積および固/液比の影響を大きく受け,その度合いは花崗岩では表面積の方が,花崗閃緑岩では固/液比の方が大きいことがわかった.花崗岩類が他の岩石に比べて溶けにくいことは,間隙率が小さいことと岩石中のアルカリ成分量が少ないことに起因すると考えられる.実験開始直後から初期の溶解特性は,有色鉱物の溶解特性の影響を受けやすい.花崗岩は破砕(粉砕)することにより,Fe,KおよびMgが溶出しやすくなるが,それは黒雲母の縁部からの顕著な溶解によると思われる.このことは,花崗岩の溶解特性が表面積の影響を大きく受けることの一因となっている.
著者
新田 理人 松本 優 浦部 美佐子
出版者
日本動物分類学会
雑誌
タクサ:日本動物分類学会誌 (ISSN:13422367)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.9-14, 2023-08-31 (Released:2023-09-08)
参考文献数
39

Larval cestodes of Anthobothrium sp. (Cestoda: “Tetraphyllidea”) were collected from the gills of the bigfin reef squid, “shiroika” Sepioteuthis lessoniana Férussac in Lesson, 1832 (Cephalopoda: Loliginidae) collected off Shirahama in Wakayama Prefecture, Japan. These specimens were morphologically described with DNA information (28S rDNA and cox1) and reported as a new host record. In addition, records of Anthobothrium species in Japan were compiled, and a list of parasites and symbionts of S. lessoniana was provided.
著者
木越 邦彦
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.151-157, 1967-12-30 (Released:2009-08-21)
参考文献数
14

The errors in radiocarbon age determination on the wood samples are estimated from the possible variations in the concentration of radiocarbon in the atmosphere. Recent results of measurements on the secular variation of the atmospheric 14C are presented and compared in order to find a general variation. Based on this general variation a correction curve for conventional radiocarbon ages to calender years is computed.
著者
石川 ひろの
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.447-458, 2021-03-12 (Released:2021-03-23)
参考文献数
66

この数十年間,「患者中心」という概念は,医療コミュニケーション研究において多くの研究者の注目を集めてきた。にもかかわらず,その概念は定義や測定方法が統一されていないことがしばしば批判されてきた。本論文では,機能主義,コンフリクト理論,功利主義,社会構築主義の4つの社会学の理論的視点に基づいて,患者-医師間コミュニケーションに関する研究が,患者中心的コミュニケーションをどのように概念化し,測定してきたかをレビューした。それぞれの理論的視点によって,患者-医師関係の前提,期待される役割,コミュニケーションの目標は異なる捉え方をされていた。これが,先行研究においてたびたび指摘されてきた患者中心的コミュニケーションに関する概念的および操作的な定義の混乱の一因であると考えられる。本研究は,患者中心的コミュニケーションのさまざまなモデルと,各モデルで期待される役割と目標についての概観を示した。患者中心的コミュニケーションの重要な特徴は,患者の希望や状況に合わせて患者-医師間のコミュニケーションモデルを調整することであるとされる。本研究で示した枠組みは,その患者や文脈に即したコミュニケーションモデルを特定し,既存の患者中心的コミュニケーションの尺度を理論的に再構築することにつながる可能性がある。また,患者中心的コミュニケーションは,これまで主に患者中心のケアを実現するための医師側の行動として定義されてきたが,その実現に向けては患者との協働が重要であり,今後の研究,臨床において着目していく必要がある。
著者
寺尾 惠治
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第35回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.18, 2008 (Released:2008-06-25)
被引用文献数
3

免疫系はそれぞれ機能の異なる複数の細胞集団により構成され、それぞれの細胞集団の密接な相互作用により複雑な免疫反応が発現する。これらの免疫担当細胞はいずれも骨髄の造血幹細胞から分化し末梢で成熟するが、末梢での分化成熟の程度は免疫系の発達と暴露される抗原の質および量に左右される。新生児は免疫学的には未熟な状態で生を受け、誕生直後から膨大な抗原に暴露されることになる。免疫系の初期発達の過程は、暴露された抗原に対する免疫応答の結果を反映したものであり、それぞれの抗原に対応する細胞クローンの活性化、増殖、消滅、記憶細胞の蓄積というダイナミックなサイクルが増幅される過程ととらえることができる。下記に要約するマカク属サルでの免疫系の初期発達に関わる調査結果は、いずれも成長に伴う免疫系の活性化を示唆している。 1)B細胞、ヘルパーT細胞、細胞障害性T細胞、ナチュラルキラー細胞の末梢主要リンパ球サブセットは、いずれも出生直後には未熟(naive)な表現型を示す細胞が大半を占めるが、発達過程で表現型はダイナミックに変化し、活性化マーカーを発現している細胞(activate)が急激に増加してゆく。 2)T細胞レセプターからみたT細胞クローンのレパトリー(T細胞クローン数)は成長に伴い増加する。 3)リンパ球の分裂回数を反映するテロメア長は成長に伴って短縮してゆく。 4)免疫グロブリン(IgG, IgA, IgM)量および自然抗体価はいずれも成長に伴い増加し、性成熟前後で成体レベルに達する。 以上の結果を総合すると、マカクザルで免疫系の発達が完了する時期はサブセットおよび機能により若干異なるが、3歳から5歳前後、すなわち、ヒトと同様に性成熟に達する前後でその成熟が完了すると判断され、小さな大人ザルにはみられないダイナミックな変化がそれを支える。
著者
黒田 武
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.84-88, 1975-02-15 (Released:2011-11-04)

清酒の表示問題は, すでに1月1日より製造年月日の表示が実施されており, 生産者各位には十分な通知, 情報が入っていることであろう。しかし問題はさらに公正競争規約へと移行するのであって, ここでもう一度表示問題を根本的に考えてみたいものである。直接指導に当られた公取側からの解説をお願いした次第である。
著者
谷口 清
出版者
心理科学研究会
雑誌
心理科学 (ISSN:03883299)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.38-47, 2016 (Released:2017-05-01)
参考文献数
47
著者
三輪 宗弘
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

戦時中の移入朝鮮人労働者(炭鉱)の賃金並びに労働環境の調査を一次資料に基づいて行った。石炭産業の賃金に関しては、日本人と朝鮮人の間に差別するような規定はなく、同一基準であり、年齢、学歴、職種、経験などが加味されたが、基本的に出来高制であった。2年契約が多く、契約を更新には、6か月とか1年間、2年間など様々な形態があった。労働時間は10時間で、残業手当は1時間単位で10パーセントほど割増で支払われた。休養日は月二回が多かった。1000人当たりの死亡率は、日本人と朝鮮人労働者の場合、炭鉱で1年間5人であった。貯金に関しては任意貯金が多く、生活の安定のため、一定金額まで貯金を奨めた場合もあった。
著者
石田 祐
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
MEDCHEM NEWS (ISSN:24328618)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.165-169, 2023-11-01 (Released:2023-11-01)
参考文献数
1

英国スコットランドのダンディー大学に2019年から3年ほど滞在した経験とそこから感じたことを、米国に以前駐在した経験との比較を踏まえ紹介したい。また滞在中にはCOVID-19パンデミックや英国のEU離脱、ウクライナ危機などの大きな変動を経験したので、現地がどのような状況であったかも併せて紹介したい。本稿が海外での研究に挑戦しようか悩んでいる方の背中を押す一助になれば幸いである。
著者
溝邊 泰雄
出版者
Japan Association for African Studies
雑誌
アフリカ研究 (ISSN:00654140)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.62, pp.31-42, 2003-03-31 (Released:2010-04-30)
参考文献数
41

本稿は, 19世紀末のゴールド・コーストにおけるアフリカ人植民地政府官吏の実態を概観し, 世紀転換期におけるいかなる状況の変化が, 彼らの植民地政府に対する認識の変化を生じさせたのかを考察する。19世紀末までの西アフリカ海岸地域は, 病気, 資金, 現地についての知識不足などの厳しい制約のために, ヨーロッパ人が本格的にアフリカヘ侵入できる状況になかった。その為, 植民地政府は西洋教育を受けた一部のアフリカ人を官吏として採用し, 彼らの重要性を認識していた。そして, その「植民地」の運営にアフリカンエリートも進んで参加しようとした。しかしながら, 世紀転換期を迎える頃になると, 植民地政府官吏を輩出してきたアフリカンエリートの中から, 植民地政府がアフリカ人に向けて突き付けた様々な植民地政策に対して, 活発に改善要求を行う者が現われるようになった。そして, そうした一連の「アフリカ人」の権利回復運動が, 結果として, 20世紀アフリカ史の重要テーマであるパン・アフリカニズムや反植民地思想の形成の根幹となる,「部族」を超えた連帯意識を生み出す原動力となっていく。こうしたアフリカンエリートの植民地政府及びその背後に位置する大英帝国に対する認識の変化こそが, アフリカン・ナショナリズムのみならず, その後の「アフリカ人国家」建設にも少なからぬ影響を与えていったと考えられる。