著者
三枝 英人
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.189-195, 2014 (Released:2015-03-13)
参考文献数
5

近年,成人において胃食道逆流症の発症率増加が問題となっている一方,過去に既往の無い,今迄健康と思われていた小児への胃食道逆流症の発症が指摘されている。小児における胃食道逆流症は,喉頭痙攣や喉頭狭窄などの重篤なものから,執拗な咳払いや姿勢異常など心理的反応と誤診され得るものまであり,注意が必要である。一方,その対策は,単純に胃酸分泌を抑制すれば良いというものではなく,小児の成長,その後に続く人生への影響まで視野に入れて行う必要性がある。生活指導,食事指導が極めて重要となる一方,成長期,思春期を迎える小児に対し如何に指導を徹底し,遂行させるかは極めて難しい問題でもある。「子供は社会の鏡」であり,何らかの現代社会の問題点が,その発症の根底にあると考えられ,今後社会全体で取り組むべき問題となり得るものと危惧する。
著者
浜口 斉周 道家 守 林 正樹 八木 伸行
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.89, no.10, pp.2194-2205, 2006-10-01
参考文献数
14
被引用文献数
7

我々は,ブログを書くような感覚で,だれでも簡単にテレビ番組を制作し,公開できる,インターネットテレビシステムを開発した.これを実現するためにテレビ番組型コンテンツを台本と演出,素材という三つの部品に分割し,別々に制作・流通させる手法を考案した.制作ユーザはワープロ型ツールで台本を書き,用意されている演出を選び,素材をリンクするだけで,簡単にテレビ番組を作り,サーバにアップロードして公開することができる.視聴ユーザが公開されている番組を選択すると,その番組を構成する台本,演出,素材がダウンロードされ,視聴クライアント側で台本・演出・素材が組み合わされ,コンピュータグラフィックスや音声合成により番組として合成・再生され,番組を視聴することができる.システムの試作及び評価実験により,一般ユーザでもテレビ番組を容易に制作し,公開できることが確認された.
著者
磯 達雄
出版者
日経BP社
雑誌
日経アーキテクチュア (ISSN:03850870)
巻号頁・発行日
no.866, pp.88-91, 2008-01-28

山形新幹線を山形駅で降り、左沢線に乗り換える。その時点では、確かに空は晴れ渡っていた。しかし列車が進むにつれ天候は徐々に怪しくなっていき、寒河江駅に到着したときには雨が降り出していた。建築取材の一番の難敵が雨。これまで不思議なことに「昭和モダン建築巡礼」の取材で、雨にたたられることは一度もなかったのだが、今回は運に恵まれなかったようだ。
著者
小原 久治
出版者
富山大学
雑誌
富山大学紀要. 富大経済論集 (ISSN:02863642)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.26-52, 1976-07

この小論は,巨視的分配理論がいかなる基本的な理論構造によって構成されているか,について考察することを目的としている。この考察は,まだ完全に発展した決定的な巨視的分配理論が存在していない現状では,巨視的分配理論の立論の基礎・接近方法・分析方法,さらには,その理論構造・合意および批判,そして,新しい分配理論に対して第1次的接近を行なうための新しい展開,などにあたって役に立つことであると考える。小論においては,その全体を通じて次のような仮定を設ける。まず最初に,国家(ここでは一般政府の意味である。)の経済活動と外国貿易の存在を捨象する。投資支出と国民所得はともに純概念であるものとする。減価償却費と補填投資は同じものとみなしている。貨幣的側面を無視し利子率は一定であり,貨幣の供給は十分に弾力的であるとする。さらに,所得の機能的分配の決定要因に関する分析は定常経済に限定するため,ケインズ派分配理論の動学的分析を説明することは除外しなければならない。
著者
安部 清哉
出版者
学習院大学
雑誌
東洋文化研究 (ISSN:13449850)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.540-491, 2013-03

日本語の方言分布に見出した「南北方言境界線」は,日本列島における南北での気候の相違を主要な要因として形成されたものであった(安部1999)。同様に,気候の南北差と一致する方言境界線は,中国語にも,朝鮮語にも存在していた。これら3つの言語の南北方言境界線をっなぐと,ほぼ同じ緯度的位置において東西に横にっながっているひと続きの境界線となり,相互に関連性があることがわかる。アジアの3言語には,南北を2分する,連続する一つの方言(言語)境界線が存在していると解釈される(「モンスーン・アジア南北方言境界線」)。 気候の相違(最寒月期1月の平均気温0度等温線に代表させられる)が,言語(方言)の相違に影響するなら,同様の理由により,ヨーロッパ大陸のインド・ヨーロッパ語族(IE語族)の方言(語派)の境界線と気候の境界線も,同じ位置に存在するであろうことが推定された。 本稿では,東アジアの南北方言境界線気候境界線,および,文化人類学的諸特徴の境界線が,日本語,朝鮮語,中国語で一致していることを,それらの基礎的データである個々の分布地図も含めて改めて提示する。新たに,同じ現象が,ヨーロッパ大陸のインド・ヨーロッパ語族の2大分派Centum-Satemにも見られることを,世界で初めて指摘する。さらに,それら東洋と西洋の2つの地域における南北(東西)の方言において,同じ音韻対応[k-p(kw)]の現象があることを指摘する。 これらの一致を示すことによって,東アジアの言語・文化と,ヨーロッパ大陸のインド・ヨーロッパ語族およびヨーロッパ文化の比較言語・比較文化論的研究の必要性を主張するものである。 In this paper, the common linguistics feature between the east Asian language and Centum-Satem is ponited out. "Boderline of dialect in the south and the north" in Japanses was formed partly due to the difference of the climate. In the Chinses dialect, a similar remarkable borderline of dialect between south and north exists at the same latitude position. Also in the dialect of Korean language, between the south and north this kind of remarkable borderline also exists in the same geographic position. These three south and north boaderlines have the same one consecutive dialect borderline of the bout. The difference in the north and the south of the climate divides the language in the region into two. In European language, the similar borderline of the climate can be confirmed in the boundary of Centum-Satem. And in the south and north area of each boderline in Asia and Europe, the same phonetic correspondence [k-kw (p)] exists. The difference in the south and the north of the culture that the climate had produced influenced inventing two types of the languages in Asia and Europe similarly. In this thesis, this common feature seen in an each borderline of east Asia and Europe language is pointed out for the first time in the world. I stress on the necessity of the comparison research on east Asia and a European language by showing these common features.
著者
唐木 智明 張 帆 安達 正利
出版者
富山県立大学
雑誌
富山県立大学紀要 (ISSN:09167633)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.87-90, 2004-03-31

自発分極を有する酸化物強誘電体材料、(Ba,Sr)TiO_3と(Pb,Sr)TiO_3を化学共沈殿法で作成し、ナノサイズの結晶が得られた。硝酸塩とモノマーチタン(IV)テトラブトキシドとシュウ酸をスタート原料とした。中間化合物に対する分析により、全体の化学反応過程が明らかにされ、単一ペロブスカイト構造の結晶が合成できた。得られた(Ba,Sr)TiO_3と(Pb,Sr)TiO_3の直径はそれぞれ70nmと100nmであった。この結果により異なるナノスケールの結晶作成への道が開かれた。
著者
藤本 理唯宇 坂本 登
出版者
公益社団法人 計測自動制御学会
雑誌
計測自動制御学会論文集 (ISSN:04534654)
巻号頁・発行日
vol.48, no.7, pp.423-430, 2012 (Released:2012-08-16)
参考文献数
11
被引用文献数
1 2

In this paper, the problem of swing up and stabilization of an inverted pendulum by a single feedback control law is considered. The problem is formulated as an optimal control problem including input saturation and is solved via the stable manifold approach which is recently proposed for solving the Hamilton-Jacobi equation. In this approach, the problem is turned into the enhancement problem of the domain of validity to include the pending position. After a finite number of iterations, an optimal feedback control law is obtained and its effectiveness is verified by experiments. It is shown that the stable manifold approach can be applied for systems including practical nonlinearities such as saturation by directly deriving a controller satisfying the input limitation of the experimental setup. It is also reported that this system is an example in which non-unique solutions for the Hamilton-Jacobi equation exist.
著者
中村 修身
出版者
別府大学史学研究会
雑誌
史学論叢 (ISSN:03868923)
巻号頁・発行日
no.46, pp.1-22, 2016-03

これまでに北九州市内の金石文の紹介を五回(若松区、八幡西区、八幡東区、小倉北区、小倉南区の一部)行ってきた。その続きとして、小倉南区所在の金石文の紹介である。小倉南区は諸般の事情で前回と今回に分けたので、番号は前回を引き継いだ。 物件ごとに、銘の書かれている物件、その現所在地、銘の書かれている部分そして銘の順に記し、各物件の紹介の後にそれぞれに対する雑記を加えた。 多くの資料で判読に難渋したが、今後の歴史研究の一助となればと思い史学論叢に発表する場の提供をお願し、ここに発表するものである。発表の場を与えていただいた別府大学の諸先生、いろいろと情報を提供いただいたみなさん、貴重な御物や文化財を快く触れさせていただいた関係者の方々に深く感謝の意を表したい。
著者
木村 翔伍 鬼沢 武久
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第27回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.38, 2011 (Released:2012-02-15)

本論文では物語の脚色を支援するシステムを提案する。脚色は物語の登場人物の持つ基本的な役柄、アーキタイプを強調するような行動を新たに物語テキスト中に加えるという方法で行う。脚色案の提示には事例ベース推論を用いる。システムはテキスト処理部、クエリ作成部、脚色案提示部の3つの部分により構成される。テキスト処理部では入力された物語テキストの構文解析、格構造解析を行う。クエリ作成部ではユーザがアーキタイプを設定した登場人物とその行動、行動の物語テキスト中での位置から事例ベース推論に用いるクエリを作成する。脚色案提示部ではクエリ作成部で作成されたクエリから事例ベース推論を行い、ユーザへ脚色案を提示する。ユーザは提示された複数の脚色案の中から採用するものを選択し、文章を整え、台詞を加えるなどして物語を完成させることができる。本論文ではシステムの有効性を検証した被験者実験についても述べる。
著者
川瀬 隆千
出版者
宮崎公立大学
雑誌
宮崎公立大学人文学部紀要 (ISSN:13403613)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.29-40, 2010-03-05

大学生(N=163)を対象に、「親性準備性尺度」(佐々木, 2000)を用いて、ボランティア活動などによる子育ての体験と親準備性との関連について検討した。その結果、子育て体験を持つ学生(N=35)は、そのような体験を持たない学生(N=128)より、高い親準備性をもっていることが認められた。特に、子育て体験は「乳幼児への好意感情」と関係していた。また、子育て体験のある学生は、そのような体験のない学生より、「親になるイメージ」を明確に持っている傾向があった。しかし、子育て体験と「育児への積極性」との関係は認められなかった。さらに、親準備性の性差について検討した結果、女性(N=128)は男性(N=27)より「乳幼児への好意感情」が高く、また「育児への積極性」が高い傾向になった。しかし、「親になるイメージ」については性差が認められなかった。このような結果は、子育てを学習する場が日常生活の中から失われつつある今日、ボランティア活動などを通して子育てを経験することが、これから親になる若い世代にとって極めて重要であることを示唆している。学生など、若い世代に対する意識啓発と共に、地域の中で子育てを体験できる機会や場を増やしていく必要がある。