著者
加藤 昇平
出版者
名古屋工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究課題では、高齢者の音声に対する独自の解析手法を提案することで,ごく早期の認知症発見・予防を目的とした極めて簡易な,在宅でも利用可能な音声認知症スクリーニングの基礎アルゴリズムを開発した。データ解析ならびにデータマイニング技術の手法であるROC解析ならびに多重ロジスティック回帰分析の技術を応用することで、高齢者の質問応答発話音声から抽出した音響ならびに韻律特徴を用いて認知機能の危険度指標SPCIRを計算するアルゴリズムを提案した。これにより、誰でも、定期的に、安心して認知症スクリーニング検査を受けることができ、認知症の疑いを早期に発見することで専門医への受診誘導を促す仕組みが実現される。
著者
廣野 俊輔
出版者
大分大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は,自立生活センターのアドヴォカシー機能を実証的に明らかにすることを目的としたものである。とりわけ,各自立生活センターがそれ以前の障害者運動のアドヴォカシーに関する活動をどのように継承させていったかに注目しつつ研究を行った。その成果は3つに分類できる。第1にアメリカの自立生活運動を日本の障害者がどのように受容し、具現化していったのかという点に関する研究成果である。第2に、自立生活センターを発足する前の活動が自立生活センターとどのようなつながりをもっているかに関する研究成果である。第3に自立生活センターの周辺の障害者運動に関する研究成果である。
著者
平尾 一之 田中 勝久
出版者
京都大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1990

セラミックスの破壊強度は雰囲気の影響を大きく受ける。特にアパタイト-ウォラストナイトガラスーセラミックス組成の人工骨では、ガラス相を粒界相に存在するので、その影響は顕著である。本研究では、この人工骨を用いて、凝似体液を始めとする種々の環境下で、破壊特性がどのように変化するかについて調べるとともに、破壊じん性が大きく、応力腐食や疲労を受けにくくするには、組成をどのように改善すれば良いかなどについて検討を行った。得られた結果は以下の通りである。(1)アパタイトーウォラストナイト人工骨セラミックス(以下AW)の安定破壊試験を行ない、破壊じん性値が1.12MPa・m^<1/2>であることがわかった。また、その有効破壊エネルギ-は、ケロシン中で3.88Jm^<ー2>となったが、水中では1.99、凝似体液中では1.84と大きく減少し、応力腐食反応を人工骨が受けやすいことがわかった。また、破断面のSEM観察の結果、破壊は粒界ガラス相で生じていることがわかった。以上より、水や凝似体液は、粒界のガラス相と腐食反応をおこし、破壊エネルギ-、つまり破壊じん性値を下げることがわかった。実際に、使用条件下では、応力を受けているので、この反応を抑えることが肝要である。そこで、ガラス組成をケイ酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩ガラスを変化させ、ガラス自体の安定破壊をおこさせ、その挙動を観察したところ、ケイ酸塩ガラスでは胞性破壊しやすいのに対し、リン酸塩やホウ酸塩ガラスでは塑性変形をおこしやすいことがわかった。そこで、出発原料として、リン酸塩組成を多く含ませることにより、人工骨セラミックスの破壊特性を改良できることがわかった。(2)分子動力学コンピュ-タシミュレ-ションにより、原子レベルでの破壊実験を行なったところ、ホウ酸塩ガラスではその構造にボロキソルリングなど中距離表面構造があるので塑性変形しやすい事がわかった。
著者
大川 周治 守谷 直史 野崎 晋一
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992

プロスポーツ選手を用いて、スポーツ時における咀嚼筋の活動様相を解明するとともに,各種スポーツ行動時における咀嚼筋の役割を明確にすることを目的として,以下の実験を行った。プロサッカー選手(サンフレッチェ広島)6名に対してシュート(強蹴)5回,シュート(軽蹴)5回,遠蹴5回を,プロ野球選手(広島東洋カープ)のうち,投手4名に対してスローボール5回,剛速球5回を,打者7名に対してトスバッティング(軽振)5回,トスバッティング(強振)5回を行わせた。被検筋は左右咬筋,左右側頭筋前部,およびサッカーでは左右大腿四頭筋外側広筋,蹴足の腓腹筋内側頭,野球では利き腕の上腕二頭筋,上腕三頭筋,尺側手根屈筋とした。各被験運動時の筋活動に関する記録分析,及び各被験運動のビデオ録画による動作分析を行った。なお,コントロールとして最大咬みしめを5秒間行わせた。その結果,サッカーではシュート(強蹴)時,咀嚼筋に筋活動が認められた被験者と,ほとんど認められない被験者に分類される傾向があった。野球ではトスバッティング(強振)時,及び剛速球投球時,大半の被験者において咀嚼筋に筋活動が認められた。以上より,全身的に最大筋力の発揮が要求されるようなスポーツ行動時には咀嚼筋が同調して活動している可能性が示唆されたが,スポーツの種類ないし動作の内容により影響を受ける可能性も示唆された。現在,これらの咀嚼筋活動に関して,筋活動持続時間,積分値,最大咬みしめ時筋活動量に対する比率,動作との関連性について分析中である。ハンドボール(湧永製薬),バレーボール(JT)に関しても,同様に記録分析し,各種スポーツ行動時における咀嚼筋の役割をより明確にしていく予定である。なお,本研究に対してNHKが興味を示し,サッカーに関しては中国地方及び近畿地方に,野球に関しては日本全国に向けて,本研究の内容がテレビ放映されたことを付記しておく。
著者
中野 聡 吉田 裕 宮地 尚子 林 博史 永井 均 笠原 十九司 ハーバート ビックス リカルド ホセ リディア ホセ ヤン ダーチン フロレンティーノ ロダオ マイケル サルマン アウグスト エスピリトゥ 戸谷 由麻 ロリ ワット 寺見 元恵 荒沢 千賀子
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

第2次世界大戦末期の「マニラ戦(1945年2月3日. 3月3日)」の実像と記憶を学際的・総合的に検討し、さらにその研究成果を国際研究集会などにより公開・社会還元することにより、日・比・米など関係諸国間で戦争の過去をめぐり「より質の高い対話と和解」を可能にする学術基盤の整備を推進した。
著者
金井 昌信
出版者
群馬大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究課題では,住民の主体的な防災活動が促進されない理由として,住民の防災対応に関する行政依存意識に着目した.そして,その行政依存意識の形成には,マスメディアによる災害報道が影響しているという仮定のもと,2つの視点で分析を行った.一つは,災害報道の内容と住民の行政依存意識の関係を明らかにし,もう一つは,どのような災害報道が住民の行政依存意識の低減に寄与するのかを検証した.
著者
中野 幹夫 本杉 日野
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

わが国では一般に,同じ果物でもより大きな果実が好まれるため,生産者は果実肥大に努める.しかし,果実の肥大を促すと,モモでは核割れを誘発し,生理落果や品質低下を招く.これまでに,1.核割れは果肉組織の発育に伴って生じた引張力が核を引き裂くことによって起こり,2.未熟な種皮は外気に晒されると大量のエチレンを急速に生成することから,3.果柄基部にまで及ぶ激しい核割れを生じた場合は,大気の流入によりエチレン生成が起こり,落果が誘導される恐れがあるが,4.通常の核割れではエチレン生成、はみられないが,成熟は促され,収穫期直前落果がやや多くなること,等を明らかにした.本研究では,果実発育に伴う果肉と核の物理的強度の変化を調査し.肥大促進した果実の特性を明らかにした.核の硬度は果実発育第1期から第3期に掛けて増し続けたが,核割れの起こる第2期には,弾性が小さく脆いため,外圧が加わると核は破壊され易く,果実肥大を促すとその特性が助長されることを明らかにした.果実基部から核内腔へ色素溶液を加圧注入して核割れ症状を人為的に起こしたところ,核の耐圧力は果実発育に伴って一増加し続けたが,肥大促進区の第2期の耐圧力は対照区のそれに比べ低く,また,果実径と耐圧力との間には負の相関が認められた.摘蕾を主体とした管理によって果実肥大の促進を図ったところ,商品として十分な大きさの果実が得られた.若干の核割れは発生したものの従来の摘果主体の管理に比べて,核割れの発生を大幅に減らすことが出来た.以上から,第2期初めに摘果するよりも,摘蕾や摘花によって細胞数の増加に努め,核の硬化が完了した第2期後期に摘果して肥大を促す方が得策であると判断した.なお,摘蕾を行うと奇形化した種子が増え,胚のうの核DNA量に異常が認められた.その原因究明と生理落果との関係を精査する必要がある.
著者
原 佑介
出版者
総合研究大学院大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本研究はアフリカツメガエルの原腸胚における隣接した2種類の組織(先行中胚葉(LEM)、中軸中胚葉(AM))の関係をモデル系とし、胚発生における力の発生と、それが隣接する組織と後の発生現象に及ぼす影響を統合的に理解しようとしている。これまでの研究でLEMがAMより早く移動する事から、原腸陥入時にはLEMがAMを牽引している可能性が示されていた。また、AMにおいて見られる脊索形成はLEMの移動能が無いと失敗することが報告されていた。本研究はLEMの移動とAMの形態形成を結ぶ因子が「力」であると予想し、その二者の関係を研究していた。本年度は(1)(2)(3)の解析を行い、LEMの移動が生み出す伸展刺激がAMの形態形成を制御していることを実験的に示し、さらに既に報告されている分子メカニズムと本研究の間に密接な関係にある可能性を示した。(1)先行中胚葉が生み出す伸展刺激の存在を明らかにするマイクロガラスニードルによる力の計測系に加え、レーザーアブレーション法を用いてLEMおよびAM領域における力分布のマッピングを行った。その結果、LEMが移動できる条件のAMの方がLEMの移動がないAMに比べて切断の反動が大きい傾向にあることがわかった。さらに、中期原腸胚から側領域を切り出して、直後に見られる胚内の張力依存的な組織収縮の速度を定量的に解析した。その結果、胚がLEMが進めない状況に置かれている場合はAM領域の収縮が緩やかになることが分かった。この結果は、外植体・生体内両方においてAMがLEMの移動によって実際に伸展力を加えられていることを示している。(2)正常な原腸陥入における先行中胚葉の必要性の検証前年度に引き続きLEMの外科的除去やLEMの移動に必要な基質のノックダウンを通してLEMの移動阻害を行ったときの影響を全胚レベルで観察した。その結果、移動能をもつLEMがAMに対して伸展刺激を生み、その刺激を利用して正常な脊索形成に必要な細胞の整列や相互入り込みの制御をしている可能性が示された。(3)中軸中胚葉におけるWnt/PCPシグナル経路の働きとの関連を明らかにする過去の知見より、AMの形態形成にはWnt/PCPシグナル経路による細胞骨格やその関連因子の制御が重要であることが知られている。このシグナル経路による制御と本研究によって明らかになったLEMによる制御の関連を二重ノックダウン実験によって調べたところ、それぞれ単独でノックダウンしたときよりも、二重ノックダウンの影響が重篤であることが分かった。これより先行中胚葉の移動による脊索形成の制御機構はWnt/PCPシグナル経路と協調して働いていることが分かった。以上の結果は、生物の発生における力の発生と伝達およびその役割を示めす重要な結果である。現在、国際誌に論文を投稿中である。
著者
佐々木 新介
出版者
関西福祉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では,静脈穿刺時の上肢温罨法の効果について検討した.静脈穿刺時の静脈怒張を評価する場合,駆血の影響を考慮する必要がある.そこで,適切な駆血条件を設定し温熱刺激による血管怒張を評価した.まず,実験室内で健常人を対象に5分間の簡便な上肢温罨法を考案し,有意な血管拡張が得られることを確認した.次に,血液透析患者23名に対してクロスオーバーデザインの臨床介入試験を実施した.その結果,シャント穿刺時に温罨法を実施した場合,1回での穿刺成功率は100%であったが,非温罨法時の穿刺成功率は91%であった.以上より,上肢温罨法による血管拡張効果を認め,看護援助としても有用である可能性が示唆された.
著者
坂上 文彦
出版者
名古屋工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では,ライトフィールドディスプレイの作成方法について検討し,その作成方法および校正方法について確立した.この方法では,観測者を模したカメラによりライトフィールドディスプレイを撮影することで,幾何的な情報を取得することなくどのようなライトフィールドが提示されるかをモデル化することに成功した.また,このようなモデルを用いることで,低視力者が裸眼でディスプレイを観測した場合に,任意の鮮明な画像を観測させることに成功した.さらに,画像を観測させるだけで視力を計測可能となる方法を提案した.また,通常のディスプレイを用いて視力仮想矯正を実現する方法についても提案した.
著者
澤田 英三 一丸 藤太郎
出版者
安田女子短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究は、わが国の伝統的地域社会に存在していた青年期発達を支援する社会システムや民俗慣行の特徴と機能を、心理学的に吟味することを目的とした研究である。本年度は、次の観点からの研究を行った。研究1 「豊島と姫島における青年宿と青年期慣行の特徴と発達支援機能の比較研究」では、特に大分県姫島にかつて存在していた倶楽部や夜這いについての回想的な聞き取り調査を行うと同時に、現在も多くの住民が参加する盆踊りの観察を行った。その結果、(1)倶楽部での男女交際は、盆踊りや祭などの準備として集まった際の地区ごとの集団的な交際であるのに対して、夜這いでの交際は、地区の枠を越えて気の合う仲間と行う能動的な男女交際であった。(2)女性は、夜這いが自分の気に入った男性との交際の場となるだけでなく、気に入らない男性に対する接し方が自分に対する世間の評価につながることを心得て接していた。(3)自分らしさを表現する盆踊りでは、男型・女型の踊りをマスターした上で、いかに個性的に踊るかが目標になっていた。研究2 「答志島における青年宿と青年期慣行の特徴と発達支援機能の実際」では、三重県答志島に現存する青年宿(寝屋)やかつて存在していた娘遊びについての聞き取り調査と、御木曳祭における青年と他世代との交流の観察を行った。その結果、(1)相互浸透的な青年宿の部屋の物理的構造は、家族と青年の相互作用を高めるのに一役かっているが、青年は守るべきプライバシーの意識をもっている。(2)娘遊びは、男子青年がまず女性の親と会話をした後に女性の部屋に通される点で姫島の夜這いとは異なり、それを通して地域での年長者とかかわる術を身につけていく機能をもっていた。(3)約100日間の厳しい練習を経て行われた20年ぶりの御木曳祭では、主役となった威勢のよい青年が、地域住民に対して期待のもてる将来を提示する機能があった。
著者
松岡 良樹
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究の目的は、銀河系外からやって来て可視光波長帯で観測される全ての光の総和である「可視光銀河系外背景放射」(Cosmic Optical Background; COB) の世界初検出である。当該年度にはまず、本研究期間中の平成23年度に達成した「惑星探査機パイオニア10/11号のデータによるCOB検出」についてさらに検討と議論を進め、国際学会、欧米学術誌などにおいて精力的に成果の発表を行った。また、銀河間空間に浮かぶ暗黒星雲の巨大版とも言うべき「暗黒銀河」HI 1225+01を対象とし、ニュージーランドのMOA-II 1.8m望遠鏡を用いて観測したデータの解析を行った。その結果、残念ながらこの暗黒銀河によるCOB遮蔽効果の検出には至らなかった。その原因と改善の方策を探るため、HI 1225+01の性質を詳細に探るフォローアップ研究を行った。MOA-IIで観測した可視光Rバンド画像の他に、Sloan Digital Sky Surveyの可視光5バンド、UKIRT Infrared Deep Sky Survey の近赤外線4バンド、Spitzer IRACおよびMIPSの赤外線7バンドの測光データをアーカイブから取得し、銀河モデルが予測するスペクトルモデルとの比較を行ったところ、HI 1225+01は非常に若くかつ熱いダスト成分を持つ銀河であり、blue compact dwarf galaxyと呼ばれる種族に良く似た性質を持つことが解明された。COB遮蔽が検出されなかったのは、おそらく可視光で十分な減光を起こすだけのダストがこの銀河に不足していたためと考えられる。この結果について欧米学術誌上で発表を行った。さらにCOBに寄与する個々の天体構成について調査を進めるべく、岡山観測所188cm望遠鏡の近赤外線撮像分光装置ISLEを用いて観測キャンペーンを行い、多数の活動銀河核のスペクトルを取得した。解析作業には予想外の時間がかかり、このデータについては現在も鋭意解析を行っているところである。
著者
佐々木 茂 渡辺 博芳
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

著者らは,質の高い Web 教材開発のため,インストラクショナルデザインのモデルに沿って授業全体の構成や流れを記述した「授業アウトライン」を作成するとともに,教材そのものの設計に特化した「コンテンツアウトライン」を作成する手法を提案している.本研究では,この手法をシステム的なプロセスと考え,この手順に沿った授業・教材設計を支援するツールを開発した.また本ツールを用いた教材コンテンツの設計・開発を実践した.
著者
石井 規衛 横手 慎二 富田 武 和田 春樹 劉 孝鐘 水野 直樹 ADIBEKOU Gra
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究の目的は、モスクワのロシア国立社会政治史文書館(旧ソ連共童党文書館)に所蔵されており、あらたに閲覧が可能となったソ連共産党攻治局の日本関係文書とコミンテルンの日本共産党文書を網羅的に調査し、あわせて朝鮮共産党文書についての予備的調査をおこなうことである。現地の研究分担者に第一次目録を作成してもらい、2年間に4回、のぺ8人、私費で2回、のべ3人が現地調査をおこなった。コミンテルン文書については、日本共産党文書(617ファイル)、日本委員会文書(9ファイル)、クーシネン書記局文書(100ファイル)、片山潜文書(96ファイル)の閲覧を終え、コミンテルン書記局文書、東洋委員会文書などを必要に応じて点検した。以上の検討結果、コミンテルンの日本関係文書については検討を完成し、必要な資料のコピーを入手した。朝鮮共産党にかんしては、朝鮮共産党文書(247ファイル)を閲覧したが、資料の入手は一部にとどまった。攻治局の日本関係文書については、金期間の検討を終了し、必要な資料のコピーを入手した。これらの獲得した資料から最重要の資料を選択し、「資科目録 コミンテルンと日本共産党 1917-1941」を作成し、それに研究論文「コミンテルンと日本共産党」を作成し、合わせて資料註を用意して、『資料集 コミンテルンと日本』を準備した。資料を翻訳の上、出版する予定である。政治局の日本関係文書については、ロシア語で『解説目録ソ連共産党攻治局議事録における日本 1921-1941』を完成した。12月にはロシア側の研究分担者G.アジベーコフ氏を日本に招き、作業の調整をおなうとともに、わが国の専門家を招いた、成果の発表をおこなった。
著者
小屋 菜穂子
出版者
青山学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

テニスにおける調整力トレーニングのあり方を論じていくために、一昨年度から引き続き、今年度も国内外の選手が見につけている動き(技術)を発育発達段階に沿って、実際の試合をもとに分析してきた。分析ソフトの作成は、今後の使用目的を考慮すると、ベース自体からの練り直しが必要になり、引き続き継続している。日本選手は、ジュニア時代は上位にランキングされていても、シニアになるとその順位を維持できない。特に、男子の場合、トップ100位に入ることが非常に難しい。女子の場合は、トップ50位前後には入っており、今年は再び、国別団体戦であるフェド杯で、ワールドグループ1に入った。これは、世界ベスト8に相当する。しかし、個人のランキングを見ると、トップの杉山選手でも20位代である。体格差や筋力など、原因はいろいろと叫ばれているが、実際に見て情報を得る必要があった。そのために今年度は、世界のジュニア選手のレベルを把握するために、海外大会を視察した。世界のトップシニア選手の試合は、テレビ放送があるが、ジュニア選手の試合はあまりない。大会として選んだのは、世界4大大会のひとつであるUSオープンである。ここでは、日本選手vs外国選手、シード選手vsノーシード選手など、技術やプレースタイルをレベル別に把握できる試合が集中している。また、ジュニアとトップが同一会場で試合を行うことから、発育発達に沿った技術レベルの向上も見ることができた。有効な情報は数多くあったが、特に、ボールスピードのコントロールは、ジュニアとシニアの差が歴然であった。これを状況によって使い分けることが、トップになるための一必要条件である示唆を得た。昨年度からの、gradingの調査は上記の裏づけにもなると考えられる。今年度はさらにデータを増やすため、12歳から大学生まで、測定を行った。昨年度の結果に追加して、有用な示唆が得られると考えている。
著者
苧阪 満里子
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

ユーモア理解は,ポジティブな情動を高め,人間の高次な認知処理を促進すると考えられる。本研究では主に機能的磁気共鳴画像法を用い,4 コマ漫画の文脈を理解する認知過程において,ユーモアがどの時点でどのように生起するのかを検討した。また行動実験による検討も加え,ユーモアが記憶に及ぼす影響を,ワーキングメモリの側面から検討した。その結果,面白さが認知過程に及ぼす効果が検証され,ユーモア理解には側頭葉と側頭・頭頂結合部,内側前頭部の活動がかかわる知見を得た。また,面白さの強度は,左右両側の小脳に反映されることも分かった。
著者
森 貴教
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、北部九州弥生時代および韓半島青銅器・初期鉄器時代における石器の生産・消費様態を地域間で比較しつつ社会システムの一端として明らかにすることである。平成24年度は2012年9月から2013年3月まで大韓民国・釜山大学校博物館を拠点として長期間現地で滞在調査したことにより、韓半島南部の青銅器時代・初期鉄器時代における石器生産や消費形態に関する情報を悉皆的に収集することができた。以下、本年度の研究活動の内容を具体的に記述する。(1)韓半島南部の青銅器時代・初期鉄器時代における石器生産遺跡を中心に発掘調査報告書を閲覧し、これまで研究を行ってきた弥生時代北部九州地域の石器生産・流通と比較するための基礎的な情報を得た。また石器生産遺跡出土石器類の資料調査を行い、使用石材、製作技法について確認した。(2)青銅器時代・初期鉄器時代における石斧に関し、慶尚南道地域(南江流域)を中心に代表的な遺跡出土品について各所蔵機関に直接赴き資料調査を行った(晋州・大坪里遺跡、草田遺跡、平居遺跡、沙月里遺跡など)。特に研究史上注目されてきた片刃石斧に関して、形態・使用石材・製作技法などに着目して詳細に観察しデータを収集したことにより、石器生産や消費形態を分析する上での基礎となる編年や地域性に関する貴重な情報を得ることが出来た。(3)弥生時代後半期および青銅器時代から初期鉄器(原三国)時代における利器の材質変化(鉄器化)と石器生産との関連性について、研磨具である砥石の分析からアプローチした。北部九州においては弥生時代中期後半以降、鍛錬鍛冶技術が導入されるが韓半島南部ではその前段階に鍛冶技術が認められることや、砥石目の細粒化が達成されていることなどが明らかになった。以上のように、当該年度は北部九州の弥生時代との比較対象地域である韓半島南部の青銅器時代・初期鉄器時代における石器生産や鉄器化に関して、非常に多くの情報を収集できた。
著者
岩下 綾
出版者
慶應義塾大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

本研究は、フランソワ・ラブレー作品における描写技巧と描かれたものの形象の分析を通して、描写の同時代的な役割を探るものである。『ガルガンチュア・パンタグリュエル物語』全五作の描写表現を抽出し、各作品が書かれた時代背景を検討しながら、描写技巧と著者の意識の変遷を明らかにした。他方で、ラブレーの描写と当時の造形芸術作品(主に建築)との照応を行い、また日本におけるそれらの先行研究の調査を行った。
著者
梅田 素博
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

芸術教科である美術科を表現教育としてとらえ、これを基盤とした総合的な教育内容と教育方法を研究した。表現教育として、芸術教育の一つである「音楽」の要素を取り入れ融合する研究を行った。また、情報化社会に対応するための映像メディアに関する研究を行った。そして総合的な学習における表現教育として、美術を基盤として音楽と映像メディアを統合した具体的な教材の制作を行い、そのカリキュラムの研究を行った。
著者
前川 宣子 川口 淳 野島 敬祐 穴吹 浩子 岩山 朋裕 上山 晃太朗 江間 祐恵
出版者
京都橘大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

自然災害の多いわが国では防災・減災に向けた取り組みが必須である.また,高齢少子化が進行する中,災害時要援護者対策が重要な課題となっている.各地域においては,災害時要援護者対策で取り組むべき課題を明確にし,非常時への対応強化が求められている.本研究では特に高齢・過疎化の進行する地域における災害時要援護者対策について検討した.災害時要援護者とその家族への防災・減災対策を実施する上で,どのような理論的基盤が必要かを検討した.その結果,災害の備えにおける家族レジリエンスへの働きかけの有効性が示唆された.さらに,訪問看護ステーションを拠点とした災害対策マニュアルの改訂版を作成したので報告する.