著者
山田 毅
出版者
筑波大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

1.研究目的本研究の目的は、視覚障害教育に携わっていない教員や保護者が視機能評価を行い、適切な教材を開発して、視覚障害が学習を進めにくい要因にならないようにすることにある。2.研究方法(1)視機能評価検査器具を用い通常学習している教室で、児童の視機能及び教室環境に関するアセスメントを実施した。また、担任教師からも教材の見え方や視覚活用に関する配慮などについて意見を聞いた。(2)測定した結果に基づいて、教材の適切な大きさを割り出し教科書や地図帳などをインストールした。視覚に障害のない児童と同じように、教科書や地図帳などが活用できるような仕組みを構築した。(3)筑波大学心理・発達教育相談室東京グループと連携し、心理検査の内容などを支援に役立てた。3.研究成果(1)視機能評価は、視力表とマルチタッチスクリーンを用いた方法で実施して結果を比較した。マルチタッチスクリーンを用いるとカードを持ち変える必要がないことや、任意の位置からでも視力を測定できるため簡便に評価することができた。今後、通常学級担任等が活用できる可能性が広がった。(但し、この場合の視力は、医学的な視力とは区別し、教育上の参考視力として扱う。)(2)視力の測定結果から、教材を作成しマルチタッチスクリーンにインストールし活用した。視力は、照度の低い環境では低い値になるが、マルチタッチスクリーンは、画面輝度が一定であるため教室照度の違いに左右されない安定した表示ができた。拡大読書器を使用する場合よりも検索時間を短縮でき、一斉指導についていけるようになった。また、難しい漢字や細かい地図などが出現したときの心理的要因による視力低下が起きた場合も、画面を任意に拡大することができるため意欲の低下を抑制することができた。(3)筑波大学心理・発達教育相談室東京地区グループと連携をとり、心理検査の結果やパソコンなどの機器を活用する可能性について示唆をいただき支援を続けている。
著者
瀬川 至朗 中村 理 山田 耕 桶田 敦 千葉 涼 于 海春
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

東日本大震災に伴う福島第一原発事故の初期段階について「事故の実態」「日本政府記者会見(東京電力を含む)」「全国紙の報道」という三者の関係性を分析した。「炉心溶融」に絞り、量的かつ質的に分析したところ、全体として、炉心溶融の実態を政府記者会見が過小に評価し、その記者会見を踏襲した形で報道される傾向がみられた。また、隣国である中国の新聞は当時、記事の情報源として日本のメディア報道を採用していた。本研究では日本政府記者会見をテキスト化しFUKUSHIMA STUDYのサイトで公開した。この会見テキストを用い、記者会見における記者の積極性や記者会見と新聞報道の連動性について、より詳細な分析を実施した。
著者
岡出 美則
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本課題では、小中学校のゴール型、ネット型、ベースボール型の授業で期待できるゲームパフォーマンスのスタンダードの開発に取り組んだ。その際、個人に期待する達成率を70%に設定した。総じて、ゲーム中の試行数や成功数を増やすことを意図した修正されたゲームを活用することや単元時数確保の必要性が示唆された。また、個々のゲームパフォーマンスに応じて期待するパフォーマンススタンダードを設定する必要性も示唆された。
著者
吉野 直行 深尾 光洋 池尾 和人 中島 隆信 津谷 典子 木村 福成 古田 和子 竹森 俊平 和気 洋子 嘉治 佐保子 友部 謙一
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特別推進研究(COE)
巻号頁・発行日
1999

1997年に発生したアジア通貨危機は、資本自由化・為替制度・コーポレートガバナンスなど、さまざまな問題に起因している。本研究では、最終年度において、通貨危機に対する各国の対応(資本流出規制)の効果について、理論的・実証的な分析を行い、輸出入依存度の高い経済においては、資本規制も短期的には有効であることが導出された。為替制度のあり方についても、日本の経験、通貨危機の影響を踏まえ、中国の(実質的な)固定相場制をどのように変更することが望ましいか、アジアの共通通貨のベネフィットに関する議論もまとめることが出来た。また、バブルを発生させた各国の銀行行動の分析では、(i)金融機関の数(オーバーバンキング)、(ii)担保価値への影響を与える地価の変動、(iii)経営能力とガバナンス、(iv)地域経済の疲弊などの要因を、クラスター分析で導出した。アジア各国への日系企業の進出では、工業団地の役割について、現地調査を含めた分析をまとめた。日系企業の進出の立地として、労働の質、市場としての魅力を背景とした立地が多いことも、調査により明らかとなった。日本からの企業進出は多いが、海外から日本国内への直接投資は非常に少ない。地価・賃料の高さ、労働賃金の高さ、通信コストの高さなど、アジアにおける日本の劣位も明らかにされた。歴史パートでは、人口成長率の違いが経済発展に与える効果を、タイ・日本について比較分析を行った。COE研究における5年間の研究成果は、海外との研究協力や、海外のジャーナルへの論文発表、国内・海外の学会での発表、国内外での書籍の出版などを通じて、発信することができた。こうした研究成果を基礎に、アジアとの結びつきが重視されている現状も踏まえ、さらに研究を発展させる所存である。
著者
高木 佳奈
出版者
東京外国語大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

アルゼンチン、メキシコ、米国で活躍した日系二世アーティストの酒井和也について、博士論文の執筆を進めた。酒井は画家、翻訳家として知られている他、オクタビオ・パスの雑誌『プルラル』(Plural)の編集長を務めたり、ラジオで音楽番組を担当したりと、様々な分野で業績を残した人物である。今年度はブエノスアイレス、メキシコシティ、ダラスにて、インタビューや資料収集を行った。また、酒井と親交のあったドナルド・キーン氏にインタビューを行い、日本文学研究者としての酒井の業績について、話を聞くことが出来た。これまでの研究成果については、ブエノスアイレスのホルヘ・ルイス・ボルヘス国際財団にて口頭発表を行った他、日本ラテンアメリカ学会の『ラテンアメリカ研究年報』に論文を投稿し、掲載が決定した。論文ではアルゼンチン時代の酒井の翻訳業を分析し、日本文学がほとんど知られていなかった1950年代のアルゼンチンにおいて、酒井がどのような意図を持って作品を選択、紹介したかを考察した。日本では酒井についてほとんど知られていないが、ラテンアメリカにおける日本文学研究に大きく貢献し、画家としても現地の芸術運動の中心で活躍した人物である。特に翻訳に関しては、古典文学から芥川龍之介、三島由紀夫、安部公房まで幅広く翻訳しており、日本文学がスペイン語でも広く読まれるに至った土台を築いたといえる。酒井の業績を再評価することは、ラテンアメリカと日本の文化交流史を再考する上で意義のある研究となるだろう。
著者
野間 晴雄 朝治 啓三 北川 勝彦 小椋 純一 川島 昭夫 橘 セツ グルン ロシャン
出版者
関西大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

イギリスのプラントハンター(プラントコレクター)といわれる人々は,植物学,園芸学の知識と実践を背景に,世界各地に拡大した植民地で稀少な植物・有用植物を収集し,それをイギリス本国や別の植民地に普及するのに重要な貢献をした。その中核となったのがキュー植物園で,J.バンクス卿やW.フッカーの努力によって収集・研究がすすめられるとともに,風景式庭園に対して栽植植物の多様化からの寄与も大きかった。南アフリカ,インド,中国,オセアニア等での植物採集に関わったプラントハンターたちは18世紀以降の大英帝国拡大の一翼を担い,本国・植民地の経済植物や温帯植物の普及によって大きな経済的利益をもたらした。
著者
内藤 周子
出版者
弘前大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目的は、六次産業化における事業の評価指標を開発し、財務面での自立を促進する評価指標の応用可能性を探ることである。生産物の高付加価値化をはかる第一次産業従事者(主に農業従事者)に関する資料調査と聞取調査を行うことで、つぎの二点を明らかにした。第一に、会計情報をさらに活用する余地が残されていることである。第二に、自然栽培は結果として高付加価値化をはかる栽培方法となりうることである。さらに、事業化に関する発展的な研究を行うための調査対象を合理的に選出する予備的な調査も行った。
著者
西垣 泰幸 伊藤 敏和 寺田 宏洲 西本 秀樹 新井 潤 佐竹 光彦
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

複素ロジスティック方程式の解の大域的構造の研究と、その成果を応用し経済データに潜む複雑な動態を解明するとともに、複雑系経済モデルや、複雑系の時系列分析を改善した。具体的には、複素ロジスティック方程式の応用により、(1)「新S-カーブ理論」の構築、(2)新しい複雑系経済モデルの構築と政策的含意の研究、(3)n次元リミットサイクルの複雑系経済モデルへの応用と政策的含意の研究、(4)複素ロジスティック微分方程式を基礎とする計量研究を行った。
著者
澤田 知香子 戸田 由紀子 原田 寛子 原田 寛子
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

現代の英語圏文学における女性のイメージを「変身」というテーマに着目して考察した。多岐にわたる文学テクストの中の女性のイメージを詳細且つ広範に見直し、現代における新たな女性の表象を生みだす試みや可能性を探った。研究期間内の成果として四編の論文を発表し、学会で二度の口頭発表を行った。加えて、もう一編の論文が現在審査中である。また、本課題研究の内容を学生向けに編集し、専門教育の場で活用できる資料を整えた。
著者
池田 啓子 川上 潔 佐竹 伸一郎
出版者
兵庫医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

Naポンプα2サブユニットは脳(アストロサイトと海馬の錐体細胞)に高発現し,家族性片麻痺性偏頭痛2型(FHM2)の原因遺伝子である。常染色体優性遺伝形式のFMH2は痙攣や小脳症状を合併する。研究代表者はその病態解明と新しい治療法・治療薬の開発を目指し,α2サブユニット遺伝子ノックアウトマウスを用いて解剖・組織学的解析,電気生理学的解析を行った。ノックアウトマウスでは皮質拡延性抑制 (CSD)の誘発閾値が低い傾向が観察された。また,ヒトで見つかる遺伝子変異をマウス相同部位に導入したトランスジェニックマウス3種類の作成と,疾患モデルマウスとしてのスクリーニングを行い,今後の研究の基盤作りを試みた。
著者
山崎 浩 倉持 利明
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

南米チリは世界有数の養殖サケ・マスの生産国であり、わが国はそのサケ・マスの主要な消費国である。チリに分布するサケ・マスにはヒトに寄生する裂頭条虫の感染が知られており、これらのサケ・マスを感染源とする裂頭条虫症の発生が懸念されている。本研究では、チリ南部のプエルト・モンのジャンキウエ湖、ならびにパンギプジ湖に生息するサケ属や在来魚における裂頭条虫幼虫の寄生状況等を調査した。その結果、ギンザケやニジマスに多数の裂頭条虫幼虫の感染が確認され、筋肉内からも幼虫が検出されたことから、チリでは広節裂頭条虫による感染源がサケ類と推定された。
著者
宅間 真紀 (山内 真紀)
出版者
九州大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

本年度は主に以下の点に関して研究を行った。1.日本語書記意識史を研究する際、時代、書記者、ジャンル、社会背景など様々な要因を考え併せ、各資料ごとに見られる書記意識を掴む必要があるが、書記意識が強く反映される仮名遺書や文字研究書を調査対象にするのが先決であると考えた。調査対象を拡げながら、作業を積み重ねることで、時代、書記者の流派(学派)など諸要素内での書記意識史を大まかに捉え、それら個別の書記意識史を統合させることで、日本語全体の書記意識史を捉えることができよう。今年度は、その初歩的な作業として、九州大学音無文庫、松濤文庫に所蔵されている書物の調査・目録の作成に努めた。2.今年度は、「仮名字体の規範意識」に注目した。従来、変体仮名は、明治33年の小学校令施行規則により定まった、現行平仮名字体以外を指す名称とされてきた。しかし、本研究では、空海真筆のいろは歌が要因となって、既に近世期から、仮名の正体である基本字体(空海真筆いろは歌の書写字体)とそれ以外の字体(変体)を区別する意識が存在していたことを明らかにした。具体的には、岡島隆紀『仮字考』(享保11年)に(基本字体:仮字正字/それ以外の字体:四十七字之外平仮字並イ呂ハ異體)、伴信友『仮字本末』(嘉永3年)に(空海の書定めたるいろは假字/いろは假字ならぬ草假字)、中根淑『日本文典』(明治9年)に(平假名/中假名)といった二分類が見られる。本研究により、新たに「変体仮名」の定義として、以下の説明を加えた。仮名の正体に対して変体(別体)とされる仮名。古くはいろは歌所用の仮名字体が正体とされたので、それ以外の字体の仮名を指した。小学校令施行規則により現行の平仮名字体が正体とされた明治33年以降は、現行の平仮名字体以外のものを指す。(以上の内容は、第197回筑紫国語学談話会、第91回訓点語学会研究発表会にて口頭発表を行った)
著者
濱谷 清裕 江口 英孝 伊藤 玲子 本田 浩章 小山 和章
出版者
公益財団法人放射線影響研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

放射線甲状腺発がんにおけるEML4-ALK融合遺伝子の役割を検証するために、不死化ヒト甲状腺上皮細胞の生体外X線照射実験とこの融合遺伝子を持つコンディショナルトランスジェニックマウスを用いた発がん実験を行った。X線照射では、線量に比例してEML4-ALK融合が形成されることより、原爆被爆者甲状腺乳頭がんでのEML4-ALK融合遺伝子は放射線により生じたものと示唆される。他方、得られたトランスジェニックマウスのEML4-ALK融合遺伝子発現レベルは高くなく、そのようなマウスでは甲状腺がんは形成されなかった。甲状腺発がんには、少なくともこの融合遺伝子の高レベル発現が必要であると考えられる。
著者
河野 健一
出版者
長崎県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012

論文2点を発表。第1 論文『ボスニアで結実した「人間の安全保障」の復興支援-- 現地密着の手法が難民と住民の心を開いた』は長崎県立大学発行の国際情報学部研究紀要第13 号(2013 年 1 月発行)に掲載。第2 論文『ボスニアの戦後復興支援で民族協同を実現--JICA プロジェクトの成功要因を検証する』 では、ボスニアの経験を同じく民族紛争で荒廃したスリランカの戦後復興と民族和解支援に応用する新事業に力点を置き、アジア調査会発行の学術雑誌『アジア時報』(2013 年 1・2 月合併号)に発表した。英文概要は、第1 論文に付した英文要約を簡略化したものを付す。
著者
稲森 公嘉
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

フランスの社会保障制度は、国民連帯の理念に基づき、社会保険を基軸に据え、社会扶助及び社会事業により補完する体制をとっている。社会保険と社会扶助はかつて明確に区別されていたが、今日では区別の相対化が見られる。医療・介護サービス保障におけるCMUとAPAは、それぞれ固有の課題はいろいろあるが、社会扶助と社会保険の組み合わせ、あるいは扶助的な要素と非扶助的な要素が混在したハイブリッドな性格の給付として、今後の展開も含め注目に値する。
著者
綿貫 茂喜
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は暑い・寒いという印象による視覚刺激が、実際の体温調節反応に影響を与えるかを明らかにすることを目的とした。その結果、常温環境下では暑い映像、寒い映像を呈示した時に、心拍変動や総末梢血管抵抗が有意に変化した。すなわち暑い映像条件では実際の暑熱曝露時の血管が拡張する傾向があり、寒い映像条件では血管が収縮、心拍数が低下する等の反応が見られた。さらに環境条件を寒くし、かつ暑い映像を呈示した場合、深部体温が寒い映像を提示した場合よりも有意に低下した。一方で、映像の効果が体温に見られない被験者もおり、印象の寄与には個人差があると考えられた。
著者
森 隆男
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1研究の概要大正から昭和初期にかけて関東や関西など日本各地で展開した田園都市構想について、吹田市千里山住宅地を中心に検証し、近代における都市の住まいを考察した。ちなみに千里山住宅地は関西初の本格的田園都市である。当時の開発に関する図面や資料を分析し、さらにフィールドワークを実施して間取りとくらしの情報を収集する民俗建築学の手法を用いた。2成果(1)新発見のものも含め、当時の千里山住宅地の開発に関する図面6点を収集し、第二次世界大戦直後の航空写真と重ねることで、住宅地の変容の過程を明らかにすることができた。(2)千里山住宅地が田園調布のように田園都市としての発展をしなかった主な理由は3点あり、とくに新住民が伝統的な生活様式を選択したことが大きい。(3)建前は洒落た駅舎やロータリーをもった中央広場、そこから延びる放射状の道路などが創り出す景観を西洋風の町として受容する一方、本音の部分すなわち日常生活を送る住まいでは日本風の様式が尊重されたといえる。3意義住まいの理想を求めて街づくりが行なわれた田園都市構想は、社会の成熟期に入った現在、あらためてその意味を考えるべきである。田園都市の景観や住まいには、わが国の住文化を研究する上で重要な鍵が存在する。
著者
山口 晃志
出版者
埼玉県警察科学捜査研究所
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

催眠薬の尿中代謝物をスクリーニングする簡便な方法としてイムノアッセイを利用した「トライエージ」がある。しかし、「トライエージ」で検出されない催眠薬もある。特に、ゾルピデム及びゾピクロンは広く普及している催眠薬であるにもかかわらず、これらの代謝物は「トライエージ」では検出できない。そこで本研究では、ゾルピデム及びゾピクロンの尿中代謝物の分析を目指した。ゾピクロン代謝物(デスメチルゾピクロン)は文献に従い本研究で合成し、ゾルピデム代謝物はサノフィアベンティス社からの譲渡品を用いた。代謝物を添加した尿を固相抽出カートリッジ(OASIS MCX)で固相抽出し、LC/MS/MS(SRMモード)分析したところ、濃度1ng/mlでも検出可能であることが分かった。本研究で確立した分析方法を用いて実際に起こった強姦事件の被害者の尿を分析し、ゾルピデム代謝物を検出した。催眠薬の多くは、体内で水酸化されグルクロン酸抱合体の形で尿中に排泄される。そのため、尿中催眠薬代謝物を微量分析するにはこれらグルクロン酸抱合体の性質を明らかにすることが重要である。そこで、代表的な催眠薬であるトリアゾラムの尿中主代謝物であるヒドロキシトリアゾラムのグルクロン酸抱合体の合成を目指した。文献に従いヒドロキシトリアゾラムを合成した後、水酸基をアセチル基で保護したグルクロン酸との反応を試みた。反応生成物のマススペクトル(ESI)を分析したところ、ヒドロキシトリアゾラムにグルクロン酸部分が導入された化合物と思われるm/z値を与えた。しかし、NMR分析をしたところ、複数の生成物の混合物であることを示唆する結果を得た。今後、合成条件を変え、収率の向上を目指す予定である。
著者
松村 良之 村山 眞雄 白取 祐司 長谷川 晃 太田 勝造 城下 裕二 木下 麻奈子 林 美春
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

この研究では「コミュニティ」の存在が修復的司法の必須の要素であるという認識のもとに、仮想的な小話を利用した要因計画法に基づく一般人に対する調査を行った。一般的に言えば、内集団におけるスティグマ的恥づけが人々の評価が高い。しかし、この結果は再統合的恥づけの重視と矛盾するものと考えるべきではない。修復的司法の制度設計としては、課題解決型裁判所をモデルにシステムが構築されるべきであろう。
著者
桑本 暢子 菱沼 典子 中山 和弘 鈴木 和代 青池 慎一 佐々木 杏子 佐竹 澄子 品地 智子 中村 佳代 古川 優子
出版者
聖路加国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

脳卒中患者に対する背面開放座位ケアプログラムの定着を目指した看護師支援ツール開発のために、普及理論をもとに質的研究を行った。結果、促進因子は,認定/専門看護師がオピニオンリーダーとなり,コアナースの育成,多職種/家族の協力,病棟文化,電子チャートにケア項目として入れる,プログラムをアレンジする,相対優位性/試行可能性,/両立可能性が高いことであった.阻害因子は,看護師の異動,採用拒否者の存在,教材不足,複雑性/観察可能性の低さであった.促進/阻害因子の多さ,強さによって,導入/実施継続,中断が起こっていた.定着には,プログラムの重要要素は保持した上で内容を変化させることが重要であった.