著者
橋本 律夫 上地 桃子 湯村 和子 小森 規代 阿部 晶子
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.837-845, 2016 (Released:2016-12-28)
参考文献数
26
被引用文献数
3 7

Card placing test(CPT)は我々が開発した新しい視空間・方向感覚検査である.被験者は3 × 3格子の中央に立ち,周囲の格子に置かれた3種類の図形カードの位置を記憶し,自己身体回転なし(CPT-A)または回転後(CPT-B)にカードを再配置する.自己中心的地誌的見当識障害患者ではCPT-AとCPT-Bのいずれも低得点,道順障害患者ではCPT-A得点は正常範囲でCPT-Bが低得点であった.自己中心的地誌的見当識障害患者では自己中心的空間表象そのものに障害があり,道順障害患者では自己中心的空間表象と自己身体方向変化の情報統合に障害があると考えられた.
著者
原田 孝 松崎 晋一 野口 俊治 仁平 聡 吉見 誠至 富岡 眞一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.93, no.6, pp.1183-1185, 2004-06-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
7
被引用文献数
2 2

症例は41歳,男性.労作時息切れを主訴に受診.胸部X線写真上心拡大,両下肺の網状影,索状影,胸部CT上同部の肺血管影増強と胸膜直下に多発する斑状影を認めた.肺生検組織ではNonspecific interstitial pneumonia (NSIP)および筋性肺動脈レベルでの微小肺血栓塞栓症を認めた. Predonisolone (PSL)とWarfarinを開始し軽快した.両者の合併は稀であり,貴重な症例と考え報告した.
著者
磯部 征尊 山崎 貞登
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.86-93, 2015 (Released:2015-06-30)
参考文献数
24

This is a study concerning the current state of the educational subjects of “Science, Technology, Engineering and Mathematics” from the view of Design and Technology by conducting a field survey. The results are summarized as follows:(1) Design and Technology in the National Curriculum 2014 is stressed to enhance coordination with the educational subjects of “Science, Technology, Engineering and Mathematics (STEM)” after a hearing investigation by Professor Stables, who works in the Design and Technology Department of Goldsmiths College in London University.(2) The National STEM Centre places great emphasis on developing subject matters through cooperation between STEM-related subjects and Design and Technology, and expanding the range of specialists as teachers by familiarizing them with such subjects to advance their continuing professional development.(3) The strategic groups of STEM, such as the Royal Academy of Engineering, worked to make Design and Technology part of the National Curriculum 2014 after a hearing investigation by Mr. Green, who is the chief executive of the Design and Technology Association (DATA).
著者
麓 杏奈 堀内 成子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.12-22, 2017-06-30 (Released:2017-06-30)
参考文献数
29
被引用文献数
1

目 的喜ばしい体験と同時に不測の急変に直面することのある助産師の心的外傷体験の実態を明らかにし,その心的外傷体験後の心的外傷後ストレス障害(Posttraumatic Stress Disorder:PTSD)発症リスクやレジリエンス,外傷後成長(Posttraumatic Growth:PTG)との関連を探索することである。対象と方法全国の周産期関連施設と教育機関から,層別化無作為割り付け法で抽出した308施設1,198名の就業助産師に質問紙を郵送した。有効回答者681名(56.8%)のデータから混合研究法を用いて,量的データは統計学的分析を,質的データは自由記載の内容分析を行い,得られたカテゴリと各変数との関連を検討した。結 果心的外傷体験を記述した者は575名(84.4%)で,その内容は【分娩に関連した母子の不測な状態】【助産師の辛労を引き起こした状況】【対象者の悲しみとその光景】【自分に向けられた不本意な発言や苛酷な環境】の4つに分類された。【自分に向けられた不本意な発言や苛酷な環境】という直接外傷体験をした助産師の,日本語版改訂出来事インパクト尺度(Impact of Event Scale-Revised:IES-R)平均値が最も高く,またPTG平均値が最も低かった。さらに86名(15.0%)がその心的外傷体験を機に退職を検討していた。また,PTSDと就業継続意思(r=−.229),サポートと就業継続意思(r=−.181),PTSDとサポート得点(r=−.143),PTGとサポート(r=.148),PTGとレジリエンス(r=.314)は有意な関連を認めた(p<.001)。結 論直接外傷体験をした就業助産師はPTSD発症リスクが高かった。心的外傷体験をした助産師が職場内のサポートを得ることは,PTSD発症のリスクの低減,離職予防,さらにその助産師を成長させるポジティブな要素として働くことが示唆された。

5 0 0 0 OA 操船と視界

著者
原 潔
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.247-252, 1980-10-15 (Released:2010-03-11)
参考文献数
13
著者
津城 寛文 TSUSHIRO Hirofumi
雑誌
鎮魂行法論 : 近代神道世界の霊魂論と身体論
巻号頁・発行日
1990-04-10

はしがき序章 本書の目的と後世第一章 鎮魂行法家の群像――近代以降の神道界とその周辺における行方家の一系譜 第Ⅰ部 大本系の鎮魂行法家 第Ⅱ部 その他の鎮魂行法家第二章 鎮魂行法研究の立場と方法――シャーマニズム研究を手がかりに身体論へ第三章 大本系の鎮魂帰神行法説――シャーマニズム基礎論の観点から第四章 川面凡児の鎮魂行法説――脱魂型シャーマニズムの身体論第五章 田中治吾平の鎮魂行法説――神秘的合一への階梯第六章 その他の鎮魂行法説第七章 鎮魂行法の身体論と類型化――宗教的身体境界の観点から 註 初出一覧 あとがき 書誌データ 筑波大学附属図書館リポジトリ版へのあとがき
著者
遠藤 佳代子
出版者
中央大学
巻号頁・発行日
2015

元資料の権利情報 : この資料の著作権は、資料の著作者または学校法人中央大学に帰属します。著作権法が定める私的利用・引用を超える使用を希望される場合には、公開者へお問い合わせください。
著者
髙橋 由紀子
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.3-18, 2020-05-01 (Released:2020-06-10)
参考文献数
78

陸地面積の3割を占める森林は,生物多様性保全機能や土壌保全・水源涵養機能等の多面的機能を有する.これらの生態系サービスを享受するには多様で持続可能な森林管理が必要であり,病害虫による森林劣化は解決すべき重要な課題の一つである.特に植物病害の病原微生物は菌類がその3/4以上を占めることから,病原菌の防除が健全で持続的な森林管理上必要とされる.病害虫による被害を抑えるための手段として,従来は薬剤散布による化学的防除が用いられてきたが,環境汚染や生態系攪乱への配慮から,近年はあらゆる防除手法を組み合わせ,被害を低減させる総合的病害管理の手法へと移りつつある.森林の主たる構成要素である樹木においては,農作物とは異なり永年生で個体サイズも大きく,また自然条件下にあるため管理が複雑で難しい.環境負荷の少ない生態的病害管理による防除方法を確立するためには,病原菌の生態的特性の理解が不可欠である.本稿では,樹木病原菌の生態的特性の総合的な理解のために行われた,分類・系統学,解剖病理学,分子生態学に関する研究を紹介した.
著者
大谷 崇正 内野 幸重
出版者
日本武道学会
雑誌
武道学研究 (ISSN:02879700)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.77-78, 1985-11-30 (Released:2012-11-27)
参考文献数
3
著者
斎藤 利通
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.155-161, 2011-10-01 (Released:2011-10-01)
参考文献数
41
被引用文献数
6 12

柔軟な最適解探索アルゴリズムとして注目を集めている粒子群最適化の基礎と課題と発展形ついて解説する.まず,基本的なアルゴリズムを紹介し,それを発展させ応用させていくための課題を概観し検討する.非線形システムとの対応付けが一つのポイントになると思われる.数ある応用の中で,回路のパラメータ最適化問題に着目する.具体例として,DC/AC インバータの動作を実現するスイッチ信号の合成問題を紹介する.多目的最適化への有効な対処方法や,解探索に有効なパラメータの次元の自動調節法にも言及する.
著者
李 昌一
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.144, no.6, pp.281-286, 2014 (Released:2014-12-10)
参考文献数
43
被引用文献数
1 1

生体分子の酸化,とくに生体膜の脂質過酸化反応による損傷,タンパク質および核酸の変性の原因となる活性酸素種(reactive oxygen species:ROS)・フリーラジカルによる酸化ストレス(oxidative stress)は糖尿病,動脈硬化,高血圧症などの生活習慣病だけではなく,脳梗塞,認知症に代表される神経変性疾患メカニズムの原因として知られている.ROS による酸化ストレスが原因とされている疾患は抗酸化システムの能力が減弱し,消去できないROSの産生量増加による酸化作用が強くなるバランスが崩れた状態である.この酸化ストレスは様々な疾患の原因となり,とくに血管病であり,生活習慣病である動脈硬化,高血圧症,糖尿病を惹き起こす.同様に,生活習慣病の一つでもある歯周病の発症メカニズムに酸化ストレスが関与していると言われている.全身疾患と歯周病との新しい相関概念としてペリオドンタルメディスン(periodontal medicine)という考えが米国から提示された.ペリオドンタルメディスンは全身疾患が歯周病に影響を及ぼすという従来の概念のみならず,歯周病が全身の健康状態に強い影響を与えるという二方向性の有用な情報を蓄積する新しい歯周病の疾患概念である.歯周病に対するヒトやラットモデルの抗炎症作用を中心とした様々な抗酸化物質による治療的効果が報告されており,歯周病の主要な要因として酸化ストレスが関与していることが考えられる.しかしながら,臨床の現場あるいは,感染症であるとともに血管病あるいは酸化ストレスが惹き起こす炎症による疾患としての歯周病が認知されているとは言いがたい.今後,様々な実験モデル,抗酸化物質を用いた臨床応用や新しい歯周病検査開発の試みなどの研究が続けられ,歯周病の酸化ストレス病因論としてのメカニズム解明を続ける必要がある.
著者
清河 幸子 伊澤 太郎 植田 一博
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.255-265, 2007-06-30
被引用文献数
7

本研究では,他者との協同の中で頻繁に生じると考えられる,自分自身での課題への取り組み(試行)と他者の取り組みの観察(他者観察)の交替が,洞察問題解決に及ぼす影響を実験的に検討した。具体的には,Tパズルを使用し,(1)1人で課題に取り組む条件(個人条件),(2)20秒ごとに試行と他者観察の交替を行いながら2人で課題に取り組む条件(試行・他者観察ペア条件),(3)1人で課題に取り組むが,20秒ごとに試行と自らの直前の試行の観察を交互に行う条件(試行・自己観察条件)の3条件を設定し,遂行成績を比較した。また,制約の動的緩和理論(開・鈴木,1998)に基づいて,解決プロセスへの影響も検討した。その結果,試行と他者の取り組みの観察を交互に行うことによって,言語的なやりとりがなくても,解決を阻害する不適切な制約の緩和が促進され,結果として,洞察問題解決が促進されることが示された。その一方で,試行と観察の交替という手続きは同一であっても,観察対象が自分の直前の試行である場合には,制約の緩和を促進せず,ひいては洞察問題解決を促進することにはならないことが明らかとなった。
著者
千 恵蘭
出版者
佛教大学大学院
雑誌
佛教大学大学院紀要. 社会福祉学研究科篇 (ISSN:18834019)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.53-68, 2017-03-01

障害者は社会生活上の様々な場面で差別の対象となっており,雇用は,その差別が最も発生しやすい場面である。国際社会は,障害を理由とする差別の排除に向けての取り組みを積極的に行っており,特に,ILOは1955年に「ILO99号勧告」を示し,保護雇用制度など障害者の労働を支援するための方策を明らかにしている。障害のある人の基本的人権を明らかにし,積極的に保障していくことへの必要性がより強くなり,2006年の国連総会では,「障害者の権利に関する条約」が採択された。本研究論文は,誰もが社会に参加できる「排除しない社会」「包摂する社会」の実現と障害者権利条約の「合理的配慮」の精神に基づく障害者の就労に関する社会的支援のあり方について取り組むことを課題としている。福祉的な支援と一般的な就労が同時に実現できる制度の確立に向けて,つまり,福祉と労働の融合をめざすことができる障害者雇用全般に関する具体的な場のあり方を示していく必要がある。障害者権利条約合理的配慮福祉と労働の融合社会的支援
著者
蓑原 美奈恵 伊藤 宜則 大谷 元彦 佐々木 隆一郎 青木 國雄
出版者
The Japanese Society for Hygiene
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.607-615, 1988-06-05 (Released:2009-02-17)
参考文献数
21
被引用文献数
7 2

一地域住民38歳∼84歳の924名のうち,味質脱失者19名を除いた905名を対象とし,滴下法を用いて味覚検査を行った。味質は甘味:精製白糖,塩味:塩化ナトリウム,酸味:酒石酸,苦味:塩酸キニーネの4種に限定し,以下の結果をえた。味覚識別能は4基本味質のいずれも,女性が男性より敏感に識別していた。また,男女とも味覚識別能検査値は,70歳代で最も鈍化し,80歳代ではやや敏感になる傾向など,加齢による変化を認めた。また,総入歯群と義歯なし群や部分入歯群とを比較したが,義歯の状態による味覚識別能に対する影響は認めなかった。喫煙による味覚識別能の影響は,喫煙量(本/日)の増加にともない,男女とも味覚識別能が鈍くなる傾向にあり,味覚識別能における性差は無くなった。塩味,酸味の識別能は喫煙量の増加にともない,男性が女性より敏感に識別し,性差が逆転したが,喫煙量の増加に従い鈍化する傾向は一致した。さらに,味覚識別能に影響を認めた性,年齢を考慮した多変量解析を行った結果,喫煙量の増加にともない味覚識別能は鈍くなる量-反応関係が明らかとなった。その影響の強さは,苦味,酸味,塩味,甘味の順であった。