著者
本田 由紀
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.70, pp.105-123, 2002-05-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
33
被引用文献数
1 1

This paper aims to review the trends in the school curriculum and educational attainment in 1990s Japan. The first section outlines the curriculum policy. The 1987 Curriculum Council Report placed emphasis on a “Renewed View on Academic Achievement, ” while the amount of teaching time for each subject and the level of educational content was maintained. In contrast, the Curriculum Council Report in 1998 determined to drastically reduce teaching time and the content of subjects in anticipation of the start of the “five-day” school week system in 2002. At the same time it introduced a new “Time for Comprehensive Learning” into the school curriculum, the purpose of which is to cope simultaneously with the emerging social need for a variety of new knowledge and for renovated teaching methods. The reality of its actual implementation and its effects, however, remain uncertain and unforeseeable.The second section examines the debate on the “decline of educational attainment” which began at the end of the decade, and the actual situation of educational attainment. The proponents of this argument, which was triggered by data on the strikingly low level of mathematical ability among university students, shared their opposition to the recent curriculum policy of the Ministry of Education. As the result of this debate, not only did the Ministry shift its emphasis from the “Full Scope Education” to the improvement of educational attainment, but the social tendency of “bright -flight” to private schools has been accelerated. With regard to the actual situation of educational attainment, the available data imply that “in some cases it seems to be declining slightly.” A far more distinctive tendency is that the willingness of students to study is deteriorating, to differing extents according to their families' socio-economic status.The third section presents a theoretical hypothesis based on an examination of the two sections above. The decline of willingness to study among students reflects the end of the inter-system relation which was characterized by close links between the family system and the economic system via the educational system. On the other hand the educational system itself, as reflected in policies and discourses, maintains its conventional closed-ness and stiffness, the symptoms of which are the “institutionalization” of educational content and the abstracted interpretation of educational attainment. We conclude that it is crucial for the betterment of the educational system to break out of this closed-ness and to improve the relevance of educational content.
著者
Kumi YOSHIDA Kin-ichi OYAMA Tadao KONDO
出版者
The Japan Academy
雑誌
Proceedings of the Japan Academy, Series B (ISSN:03862208)
巻号頁・発行日
vol.97, no.2, pp.51-68, 2021-02-10 (Released:2021-02-10)
参考文献数
63
被引用文献数
5

Hydrangea (Hydrangea macrophylla) is a unique flower because it is composed of sepals rather than true petals that have the ability to change color. In the early 20th century, it was known that soil acidity and Al3+ content could intensify the blue hue of the sepals. In the mid-20th century, the anthocyanin component 3-O-glucosyldelphinidin (1) and the copigment components 5-O-caffeoylquinic, 5-O-p-coumaroylquinic, and 3-O-caffeoylquinic acids (2–4) were reported. Interestingly, all hydrangea colors from red to purple to blue are produced by the same organic components. We were interested in this phenomenon and the chemical mechanisms underlying hydrangea color variation. In this review, we summarize our recent studies on the chemical mechanisms underlying hydrangea sepal color development, including the structure of the blue complex, transporters involved in accumulation of aluminum ion (Al3+), and distribution of the blue complex and aluminum ions in living sepal tissue.
著者
横田 敏勝
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.14-18, 1993-01-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
4
被引用文献数
1 2

痛みを感じる脳頭蓋部の諸構造,それが刺激されたときに痛みを感じる部位,頭蓋内の発痛要因などの基礎的事項を記述した.また,片頭痛と高血圧症による頭痛の病態生理学を解説した.拡延性抑圧を強調した片頭痛の神経説が,血管説に取って代わる勢いであった.ところが最近では,新薬の治療効果を無視できないことも重なって,血管説が復活の気配を見せている.高血圧症による頭痛は,脳血管の自己調節機構と表裏一体である.
著者
渡辺 かよ子
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.278-286,367, 1999-09-30 (Released:2007-12-27)

1990年代の高等教育改革は多くの教養に関する議論を生み出した。教養とはPaideiaやBildungに相当する日本語である。それは1910年代から今日まで知識人の理想的資質を表現する言葉であり、今日の教養に関する議論は近代日本の歴史上、第4度目の興隆と位置付けられる。今日のポスト大衆化段階の高等教育における教養に関する議論の特徴としてはその主なる関心が、学問研究よりもカリキュラムや教育にあることである。このことは戦後の教育学が最大の課題の一つとしてきた一般高等教育(国民的教養)の創出に向けての妥当な回答といえるのであろうか。この問いへの思想史的前提を探求するため、本稿は人格形成の二つの様式である修養と教養の分離と連関を、両者の分離から教養という現代的意味が確定された1930年代の議論に遡って分析する。修養とは前近代的な人格形成思想であり、それは過度な瑣末な知識を持つことを戒め、勤勉と誠を説いた。 1930年代には年配の世代は、教養と修養とほとんど同じ意味でしようしていたが、両者の違いは明白であった。教養は全体的人間性を意味し、修養は知性や知識に優先して道徳の重要性を説いていた。教養は近代化過程における西洋文化の影響下で生み出され、一方修養は中世以来の自国文化に根源をもつものである。 教養と修養はまたその科学との関係においても区別され、教養は保守性と革新性との均衡を強調する点で、修養と科学の中間に位置づけられていた。教養と修養の決定的な違いはその主知主義にあった。そのため教養論者は当時の教育が知育偏重と見なされている状況を批判した。教養論者にとって知識に過多はなく、知識なしに適切な判断をなすことは不可能なことであった。1930年代には教養はその学問研究との連関において、人格形成の二つの局面から議論を展開していた。一つは学問の専門分化に対応するための学びの幅に関することであり、総合的で一貫した知識と関心を持つことが推奨された。もう一つは、専門分化した学問研究の過程において獲得される教養の深さに関することであり、専門的研究における無私の努力が人物を鍛錬し、尊敬に値する人格を形成すると考えられた。学問的鍛錬による人格形成という点では、教養は修養たる種の関連性をもっていた。 修養と教養の分離と連関の歴史的分析から、知識の幅のみならず、「真の」教養ないしは人格形成としてとらえらえてきた深さと学問的鍛錬のためにも高等教育機関における意味ある学びを考える必要があるといえよう。
著者
丹羽 昭博 玉本 隆司 遠藤 能史 廉澤 剛
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3+4, pp.46-51, 2020 (Released:2021-02-16)
参考文献数
14

広範囲に狭窄し、穿孔した食道を有する6歳例の猫に対して、部分切除や吻合術が困難であったため、径の大きいネラトンカテーテル(NC)を食道へ挿入し、唾液の通過を確保すると同時に、NCを型にして食道となる管腔を再建した。NCを3ヶ月留置した後に抜去し、その後3年以上は軟らかい食餌ではあるが、吐出や嘔吐なしに自力採食可能であった。このことより食道の変性が広範囲におよぶ致死的な症例に対してNCを用いて管腔を再建する方法は有用であると考えられた。
著者
玉野 和志
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.549-558, 2005-09-30 (Released:2009-10-19)
参考文献数
11
被引用文献数
1
著者
安部 智久
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.I_19-I_24, 2018 (Released:2018-09-12)
参考文献数
9

北極海航路(NSR: Northern Sea Route)の利用により欧州アジア間の輸送距離が短縮されることから,物流分野において効率化が期待されている.コンテナ輸送については,従来のスエズ運河経由による海上輸送と航空輸送との中間的なサービスとなり得る.本研究では,現状の北極海航路の航行実態や輸送サービス(時間,コスト)について実績データ等から評価を行ったうえで,その利点である輸送時間短縮による効果を踏まえた北極海航路の利用形態や既存の輸送経路に対する優位性などについて,荷主の視点から考察を行った.
著者
松本 幸久
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.11-20, 2008 (Released:2008-04-10)
参考文献数
53
被引用文献数
1 1

学習や記憶は,動物が環境に適応するために必要な脳の基本機能といえる。学習・記憶の神経機構の解明は神経行動・生理学分野における重要課題の1つであり,これまでに様々な動物種を用いた研究が進められている。筆者は,行動学や感覚生理学の材料として馴染みのあるフタホシコオロギが,高度な匂い学習・記憶能力を持つことを行動実験的に明らかにした。本稿では筆者の研究によって得られた知見を中心に,コオロギの匂い学習と記憶について紹介する。まずは,古典的条件付けにより匂い学習が容易に成立することを示す。次にコオロギの匂い学習・記憶能力のうち,1)記憶保持能力,2)記憶容量,3)状況依存的学習能力について紹介する。そして,炭酸ガス麻酔処理や薬物の投与によって,コオロギの記憶が性質の異なる4つの記憶の相に分けられることについて述べる。
著者
加藤 卓朗
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.119, no.2, pp.157-161, 2009-02-20 (Released:2014-11-28)

室内環境で感染する足白癬は皮膚真菌症の中で最も多く,趾間型,小水疱型,角質増殖型に病型分類される.爪白癬は遠位部の爪甲下が肥厚する病型が多い.診断は直接鏡検で行い,原因菌はTrichophyton rubrumとT. mentagrophytesが多い.イミダゾール系をはじめ複数の外用抗真菌薬があり,内服薬ではテルビナフィン塩酸塩とイトラコナゾールの有効性が高い.感染予防では患者の治療が最も重要である.
著者
光畑 裕正
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.479-487, 2012 (Released:2012-10-11)
参考文献数
25
被引用文献数
4 5

全身麻酔中に発症するアナフィラキシーは最も重篤な合併症の一つである.麻酔中は常に発症の危険性を念頭に置き,もし発症したら可及的速やかに治療しなければ死に至ることもある.迅速にアナフィラキシーと診断し治療を開始することが救命率を上げる最適な手段である.原因薬物として筋弛緩薬の頻度が最も高い.循環虚脱や重度な気管支痙攣の場合には心肺蘇生に準じた治療が必要である.気道の確保,呼吸の管理,循環の管理(救急蘇生のCAB)を行う.第1選択薬はアドレナリン,酸素,補液であり,ステロイドや抗ヒスタミン薬はあくまで第2選択薬である.アナフィラキシーの機序確認のため最低限度βトリプターゼの測定を行う.
著者
千田 有紀
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.91-104, 1999-06-30 (Released:2009-10-19)
参考文献数
32
被引用文献数
6 2

本論文では, 日本の家族社会学の問題構制をあきらかにする。家族社会学そのものをふり返ることは, アメリカにおいては, ロナルド・ハワードのような歴史家の試みが存在しないわけでもない。しかし日本の家族社会学自体が, どのような視座にもとづいて, 何が語られてきたのかという視点から, その知のあり方自体がかえりみられたことは, あまりなかったのではないかと思われる。日本の社会科学において, 家族社会学は特異な位置をしめている。なぜなら, 家族研究は, 戦前・戦後を通じて, 特に戦前において, 日本社会を知るためのてがかりを提供すると考えられ, 生産的に日本独自の理論形成が行われてきた領域だからである。したがって, 日本の家族社会学の知識社会学的検討は, 家族社会学自体をふり返るといった意味を持つだけではなく, ひろく学問知のありかた, 日本の社会科学を再検討することになる。さらに, 家族社会学は, その業績の蓄積にもかかわらず, 通史的な学説史が描かれることが, ほとんど皆無にちかかった領域である。そのことの持つ意味を考えながら, ある視角からではあるが, 家族社会学の理論・学説の布置連関を検討する。
著者
佐藤 健司 小原 秀一 塚口 功 安井 浩一 中田 健 玉井 正彦 小林 芳夫 小塚 隆弘
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.239-244, 1977-03-01 (Released:2013-05-24)
参考文献数
16

正常な房室大血管関係をもつ両房室弁交叉症(criss-cross heart)の1例を報告する.心室中隔欠損,左肺動脈低形成,動脈管開存を合併していた.特徴ある心血管造影所見を呈し,右下側に形態学的左室,左上側に形態学的右室があり,心室中隔は上下の心室間にほぼ水平方向の陰影欠損として認められ,大動脈は右前方に,肺動脈は左後方に位置し,見かけ上は{S,L,D}であるが心房心室関係および心室大血管関係はいずれも正常で,両房室弁を流れる血流が交叉する両房室弁交叉症となっていた.形態発生学的にbulboventricular loopが心臓長軸を中心にして心基部に向って時計方向に,さらに心臓前後軸の回りに後方からみて時計方向に異常回転した結果と考えられ,Andersonの命名法によれぽ,Solitusconcordant(l-rotated)-normalと表現できる.

2 0 0 0 OA 可塑剤

著者
井上 徹裕
出版者
一般社団法人 日本ゴム協会
雑誌
日本ゴム協会誌 (ISSN:0029022X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.10, pp.672-680, 1977 (Released:2008-04-16)
参考文献数
37
著者
遠藤 幸吉
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン (ISSN:18849644)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.106-111, 1955-04-01 (Released:2011-03-14)

テレビジョン放送局を設立するに当り,いかなる規模において開始すべきかはその企業体の資金により色々と相異もあるのは当然であるが,ある程度の将来性も考慮して充分に運用できる程度のものが望ましい。先進国としての米国の例を見ると現在ではネットワークが完備し,小都市の放送局では簡単な施設のものでもキー・ステーションからの番組を貰って聴視者を満足させている。一方キー・ステーションの方も,初期の頃はスタジオでもラジオに使用していたものを改造した程度であったが放送時間が増え,番組内容の充実するに伴いテレビジョン専門の大スタジオを建設するようになった。この経過を見ても判るように僅か数年間におけるテレビジョンの進歩は真に目覚しいものであると同時に現在でも新しい機械が次々と発表され,今後の発展は予想し難いものがある。そのため現在新設されるテレビジョン専門の放送局でもスタジオなどは将来増設を考慮して敷地を広くとってある。ラジオ東京テレビジョンの局舎および施設は現在の段階において放送時間を5時間位とし,ある程度番組をスタジオ内において充分こなせること,将来の増設が可能なることに基本方針を置き旧近衛三連隊跡の5000坪の敷地に現在の局舎を建設した。なお観客参加番組はラジオと共通のが多いこと,および観客動員の都合でなお一層都心に近いことが望まれるのでその目的のためには現在のラジオ東京ホールおよび築地に建設中のラジオテレビスタジオを使用し,マイクロウエーブで赤坂の局舎まで連絡することにした。
著者
大島 直行
出版者
一班社団法人 日本人類学会
雑誌
Anthropological Science (ISSN:09187960)
巻号頁・発行日
vol.104, no.5, pp.385-397, 1996 (Released:2008-02-26)
参考文献数
101
被引用文献数
2 1

北海道における縄文時代から近代に至るまでの古人骨資料を用いて, 各時代の成人集団における齲歯頻度の時代的推移を調査した。縄文時代から続縄文時代になると齲歯頻度は有意に低下し, その後, 近世アイヌに至るまで齲歯は少ないまま推移する。また, オホーツク文化の人々には齲歯が見られなかったが, これは, 海産動物を中心とする動物質食への依存が強いことと関係が深いと思われる。縄文時代においては, 北海道北東部は南西部に比べ齲歯頻度が低いが, 本州の縄文時代人と比較すると北海道南西部でもはるかにその頻度が低い。これも, 縄文時代の北海道, とくに北東部では本州に比べ, 食料を海産動物に頼る割合がもともと高かったことが原因と考えられる。ただし, 本州においても, 齲歯頻度が極端に低い縄文時代人集団があり, 齲歯の成因として植物食料の量のみならず, その加工技術, 集団全体の栄養状態なども考慮する必要があると思われる。
著者
阿部 真也 中川 慧
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第33回全国大会(2019)
巻号頁・発行日
pp.4Rin135, 2019 (Released:2019-06-01)

時系列予測の観点から株価を予測するために深層学習を用いる研究が多数行われてきた。 一方で、クロスセクション予測(マルチファクターモデル)の観点から、深層学習を用いて株価を予測する研究は少なく、特に世界の株式市場における有効性を実証する研究は存在しない。 そこで本稿では、グローバルな株式市場においてクロスセクション予測の観点から深層学習を用いたマルチファクターモデルに基づく相対的な魅力度の有効性を検証する。 分析の結果、次の結論が得られた。 1.深層学習による株価予測モデルはランダムフォレストやリッジ回帰に比べリターン/リスクの面で優れている。2.特に低リスクという観点で、深層学習モデルは優れている。3.市場の効率性が低下すると、収益機会が増える可能性がある。