著者
〓 良燮 坂巻 祥孝
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.263-268, 1995
参考文献数
11

北海道産のハマキガ科9種とシンクイガ科1種について,その寄主植物に新たな知見が得られたので報告する.特にフタオビホソハマキ,コナミスジキビメハマキについては,これまで寄主植物がまつたく知られていなかつたものである.また,ゴトウヅルヒメハマキ,クワヒメハマキ,ネギホソバヒメハマキはいままで単食性(monophagous)と考えられていたが,2科以上を寄主とする漸食性(pleophagous)または多食性(polyphagous)の可能性があることがわかつた. T0rtricidaeハマキガ科 Eupoecilia citrinana Razowskiフタオビホソハマキ いままでに食草についてはまつたく知られていなかつたが,今回初めてナガボノシロワレモコウの花床(バラ科)に潜入し加害することが明らかになった.本種の所属するホソハマキガ族は独立の科ホソハマキガ科として扱われていたが,最近ではTortricinae亜科の1族として扱われている(Kuznetsov and Stekolnikov(1973), Razowski(1976)。ホソハマキガ族は,ブドウホソハマキのようにヨーロッパでブドウの大害虫となっているものも含んでおり,日本では現在のところ42種が知られている.しかし,日本では幼虫の寄主植物に関する知見は少なく今後,幼生期を用いた分類学的,生態学的研究が要望されるグループである.本族の幼虫はほとんどが狭食性で,根,茎,花床などに潜入するが,まれには草木の葉を巻くものもある. Eudemis profundana([Denis & Schiffermuller])ツママルモンヒメハマキ これまでにエゾノウワミズザクラ,ズミ,コナラ(ブナ科)などが寄主植物として知られていたが,シウリザクラ(バラ科)も食することがわかった. Olethreutes siderana(Treitschke)ギンボシモトキヒメマハマキ チダケサシ,トリアシショウマ,ウツギ(ユキノシタ科)やシモツケソウ(バラ科)が食草として知られていたが,今回,エゾノシロバナシモツケ(バラ科)も食することがわかった. Olethreutes hydrangeana Kuznetsovゴトウヅルヒメハマキ 模式産地の南千島ではツルアジサイ(ゴトウツル)(ユキノシタ科)の花芽を食するが,今回初めてシナノキ(シナノキ科)も食草とすることが明らかになった. Olethreutes mori Matsumuraクワヒメハマキ クワ(クワ科)の大害虫として知られ,これまで単食性と考えられていたが,今回バラ科のアズキナシの葉も食害することがわかった. Lobesia (Lobesia) yasudai Bae et Komaiハマナスホソバヒメハマキ(新称)ノリウツギ(ユキノシタ科),ハマナス,シウリザクラ(バラ科)が食草として知られていたが,今回,キク科のハンゴンソウの花床,ヨブスマソウの花床やゴボウの実も食害することがわかった. Lobesia(Lobesia)bicinctana(Duponche1)ネギホソバヒメハマキ ヨーロッパで100年前に単子葉植物の数種のネギ属(ユリ科)の加害記録があるのみだったが,今回双子葉植物のナガボノシロワレモコウ(バラ科)の花床を加害することが明らかになった. Enarmonia flammeata Kuznetsovコナミスジキヒメハマキ 成虫はササ群落で多数の個体が観察されるが,食草は不明であったが(川辺,1982),今回初めて幼虫がチマキザサ(クマイザサ)の幼鞘に潜って加害することが明らかになった. Rhopobota neavana(Hubner)クロネハイイロヒメハマキ これまでにリンゴ,ズミ,ナナカマドなどバラ科植物を加害することが知られていたが,今回モクセイ科のヤチダモも食することがわかった. Carposinidaeシンクイガ科 インド・オーストラリアを中心に世界に広く分布するが,世界に約200種,日本で13種が記録されている小さな分類群である. Copromorphidae(インド・オーストラリアを中心に約60種記載)と本科の2科でシンクイガ上科(Corpomorphoidea)を構成し,幼虫は樹皮,花,果実などに穴をあけ食入するものが多い(Scoble,1992). Carposina sasakii Matsumuraモモノヒメシンクイ これまでリンゴ,モモ,ナシなどの果実を加害する著名な害虫として知られていたが,今回ハマナス(バラ科)の果実も食することがわかった.
著者
山口 智久 峯村 治実 大野次彦 久山 和宏 下間 芳樹
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.30, pp.67-72, 2000-03-21

インターネットの普及に伴い、Webブラウザをインタフェースとするアプリケーションシステムが増えてきている。また、システム全体のコストダウンが図れるという利点から、組み込み機器をWebブラウザで監視・制御を行いたいというニーズが高まってきている。これを実現するために、われわれはWebによる遠隔監視・制御機能とJavaによるアプリケーション構築の容易性を提供する組み込み用のコンパクトなWebサーバ(開発コード名TSUBASA)の開発を行ってきた。TSUBASAでは、サーブレットによる動的なコンテンツの送信、動的なモジュール交換、遠隔からのさまざまな管理を行うことができ、またこれらの機能をコンパクトなサイズで実現できた。Increase of application systems using Web browser interface brought by the spread of the Internet has roused the needs for control and monitoring of network-connected devices with Web browsers. Reduction in costs of whole the systems enabled by Web-based control and monitoring is the most important readn for the needs. To meet the needs, we have developed a compact embedded Web server program, named "TSUBASA" . TSUBASA realize functions of contents sending and dynamic module exchanging and remote administration with very compact size.
著者
松村 ちづか
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医療短期大学紀要 (ISSN:09156933)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.31-40, 2002-03-29

在宅痴呆性老人家族介護者Hさんが,痴呆の義母の辛い介護体験を乗り越え,自己を強化し,介護体験を肯定的に人生に意味づけていく過程を「自己強化のプロセス」と規定し,そのプロセスと,そのプロセスに関わる他者の関わりが,介護者の内面にどのような意味をもたらしているかを半ライフヒストリー的手法を用いて探求した。その結果,Hさんは,混乱・引き受け・ネットワーキング・選択・変化・自己実現というプロセスを経て,痴呆性老人の介護体験を自己の人生に肯定的に意味づけていた。また,その過程に重要な関わりを持つ他者として,家族や血縁の身内・介護する痴呆性老人自身・他介護者・ペットなどの動物や星などの自然があり,様々にHさんの内面に影響していた。Hさんは,痴呆の介護という困難な状況を自己の人生に肯定的に意味づけていったが,その核になるものとして,Hさんの生育過程の中での自己を大切にするあり方があり,そのあり方が他者との関わりの中でさらにエンパワーされ,介護体験と共に,そのあり方,生き方を変化させていったと考えられた。
著者
野村 朋
出版者
大阪健康福祉短期大学
雑誌
創発 : 大阪健康福祉短期大学紀要 (ISSN:13481576)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.103-110, 2007-03-05

筆者はある保育園の「気になる子ども」の保育実践検討会に定期的に参加し、衝動性が高く、言語による自己調整に課題を持つD児の3歳11か月から6歳4か月の成長の過程を、3・4・5歳児クラスでの2年半の保育実践を通して振り返り、Dを含めた集団保育のあり方を検討した。本稿は検討会での議論をもとに筆者が分析を加えたものである。Dは、友だちとのかかわりを求めているものの、自分の思い通りにならないことがあるとカッとなって暴れてしまう、外界の変化に過敏で不安定になってしまう、といった課題を持っていた。3・4歳児クラスの保育実践において、環境の整理をし、視覚的手がかりを活用するなどの個別的配慮を行った。加えて保育者との安定した人間関係を築いた上で、少人数グループでの取り組みや, Dの得意なことを集団保育に取り入れ、仲間の中での肯定的な自己認識を育てていく中で、5歳児クラスの半ばには、衝動的な傾向は残しつつも自己コントロールしようとする姿が見られるようになった。さらに重要な視点は、保育者がていねいに他者認識を広げ、集団内におけるお互いの思いをつなげる働きかけを重視したクラスづくりをすすめたことである。Dの暴力的な行動の背後にある思いを汲み取れる仲間関係を育てていったことがDの発達的変化と集団内での自己肯定感を保障した。
著者
吉山 尚裕
出版者
大分県立芸術文化短期大学
雑誌
大分県立芸術文化短期大学研究紀要 (ISSN:13466437)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.69-79, 1992-12-31

本研究では、孤独感尺度(LSO)によって類型化されるA〜Dの各タイプの青年が、周囲の他者や社会との関わり方に関して、どのような傾性を持っているのかを検討した。主な結果は次の通りである。(1)相関分析によると、LSOの対他的次元(U)において、人間同士理解・共感しあえると感じている者ほど肯定的な人生態度を持ち、連帯感や独立意識も高い。これに対し、対自的次元(E)において、自己(人間)の個別性を強く意識している者ほど、否定的な人生態度を持ち連帯感が弱く、不安感が高い傾向にあった。(2)孤独感の類型別(A〜D型)に各尺度の平均値を比較すると、A型とD型が生活・人生・社会に対して肯定的な態度を持ち、連帯感や独立意識も高く不安感は低い。これに対し、B型とC型は生活・人生・社会に否定的で不信感を持ち、連帯感や独立意識も低く不安感が高かった。(3)「パターン分類の数量化」によれば、A型を中心にしたグループ(人生・生活・社会に肯定的で連帯感が強い)、B型を中心としたグループ(独立意識が低く不安感が高い)、C型を中心にしたグループ(人生・生活・社会に否定的で連帯感が弱い)、D型を中心としたグループ(独立意識が高く不安感は低い)の4つのグループに分類できた。総じて、A型とD型はB型やC型に比べ、生活・人生・社会に肯定的であり、友人や仲間など身近な人間関係に積極的で、独立意識も高かった。しかしながら、「パターン分類の数量化」の結果が示すように、A型とD型は必ずしも類似したタイプではない。A型は、人生・生活・社会に対して肯定的で連帯感も高く、"他者との情緒的融合状態"にあるタイプと考えられるのに対し、D型は独立意識が強く"一人でいることに充実感"を感じているがゆえに不安感も低いタイプであると言えよう。B型とC型については、B型が独立意識の低さや不安感の高さによって特徴づけられるのに対し、C型は人生・生活・社会への否定的態度と連帯感の低さによって特徴づけられた。LSOの対他的次元(人間同士の理解・共感の可能性)と対自的次元(自己の個別性の自覚)の組合せによって孤独感の特徴はかなり異なっている。この点は、UCLA尺度を用いた研究からは明らかにされていない結果であり、今後、この二つの次元の組合せによって孤独感の様態にどのような違いが生み出されるのか、より詳細に検討していく必要がある。また従来、孤独感は不安感など適応不全とも関連することが明らかになっているが、本研究では、孤独感が独立意識という青年期の発達課題とも関連していることが示唆された。今後は、孤独感が日常生活の中で、対人行動や社会的ネットワークなどとどのように関わっているかも明らかにしていく必要があろう。
著者
大宮 美智枝 落合 優
出版者
横浜国立大学
雑誌
横浜国立大学教育人間科学部紀要. I, 教育科学 (ISSN:13444611)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-14, 2005-02-28

本研究は、学校教育における「いのちの教育」の有効性とその実践方法を検討するものである。筆者が提唱する「いのちの教育」とは、人とのかかわりの中から、かかわりを肯定的に捉えライフスキルを養う健康教育をさす。第一報では、高校生の対人認知の実情を捉えるため「高校生のかかわり尺度」を開発した。Rosenberg の自尊感情尺度から「高校生のかかわり尺度」が自尊感情の説明変数となることが検証でき、人とのかかわりから学習を進め自尊感情の高揚を目的とする「いのちを考える」授業は、その尺度を活用し有効性を明らかにすることができた。具体的には、自尊感情に関連しては家族との関係性が有意に高く、授業は家族のいのち・他者のいのちに焦点を置いて考えさせることの有効性が示された点である。しかし、実際の教育現場では、友人の評価を重要視する生徒の動向を目の当たりしている。高校生の友人の認知と家族とのかかわりの関係性、及び授業の方向性をさらに検討するため、追加調査を行い検討を行った。分析の結果、「高校生かかわりの尺度3」では、前回の調査を概ね支持する結果となり、内的整合性がみられる16因子 (74項目) が抽出できた。また、肯定的な自尊感情とは、家族のかかわりが決定要因となる点については前回の結果を支持した。今回の調査では、自分の存在観について否定的な者は、学内友人が否定的なかかわりとの関係性があることが示唆された。今後に展開する「いのちの学習」では、友人とのかかわりに注目しがちなかかわりを、広い視野で捉えられるような支援と、家族や周囲のいのちに焦点をあてたカリキュラムを充実させると共に、ライフスキルを獲得できるようなかかわり合いの場としての機能が重要であると考えられた。
著者
坂本 洋子 藤野 ユリ子 大塚 邦子 石橋 通江 森本 淳子
出版者
日本赤十字九州国際看護大学
雑誌
日本赤十字九州国際看護大学intramural research report (ISSN:13478877)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-9, 2006-12-22

人間関係論演習の一環として看護大学2 年生の希望者を対象に、構成的グループ・エンカウンターを4年間実施した。その結果、参加前後の気持ちや自己イメージの変化は、いずれも肯定的に変化していた。またオープナー・スケールも肯定的に有意に変化していたため、相手をリラックスさせ自己開示を促す能力が向上していることが示唆された。また、実施後3 ヶ月、1 年後にフォローアップ・アンケートを実施した結果、自己理解や他者理解の深まり、新しい人間関係の形成、自己課題の発見など実施直後と同様の結果が得られ効果の持続が示唆された。また、グループ体験が臨地実習やグループワークに活かされているという結果も得られた。今後の課題として、対象が多くなった場合、抵抗を感じる学生やエクササイズを消化すればよいと感じる学生が出てくることが考えられるため、エクササイズの工夫や適正なファシリテーターの指導方法の検討が必要である。
著者
Keiichic Ohshima Sachiyo Takeda Mariko Hirose Yasuto Akiyama Kazuaki Iguchi Minoru Hoshino Ken Yamaguchi Tohru Mochizuki
出版者
バイオメディカルリサーチプレス
雑誌
Biomedical Research (ISSN:03886107)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.191-199, 2012 (Released:2012-07-05)
参考文献数
29
被引用文献数
1 6

Parathyroid hormone-related protein (PTHrP) contains a nuclear localization signal (NLS) sequence within 87-107. NLS sequences are generally capable of penetrating cellular membranes due to a richness of basic amino acid residues, and thus have been used as cell-penetrating peptides (CPPs) to translocate biologically active peptides/proteins into cells. The NLS sequence of PTHrP is not exception to this finding; however, PTHrP(87-107) contains 2 acidic glutamate residues at 99 and 101 within the basic amino acid stretch, which is not commonly observed in other CPPs such as HIV-1 Tat(48-60). In this study, we indicated structure-function relationship of the PTHrP NLS to understand the effect of acidic glutamate residues on cell permeability and intracellular localization. We chemically synthesized PTHrP(87-107) and its N-terminally truncated analogues. Their intracellular localization pattern was analyzed by microscopy, radioimmunoassay, and fluorescence-activated cell sorting. Although all analogues were translocated into cells, internalization by the cytoplasm and/or nucleus was length-dependent; specifically, PTHrP(97-107), PTHrP(95-107), and PTHrP(93-107) were more frequently localized in the cytoplasm. We assume that reduction in the net positive charge within PTHrP NLS analogues resulted in increased cytoplasm- translocation activity. We propose that PTHrP(97-107) is a useful carrier peptide for delivery and expression of cargo molecules in the cytoplasm.
著者
枝川 明敬 山本 眞一 小林 信一 加藤 毅 吉川 裕美子 柿沼 澄男
出版者
学術情報センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

学術研究の総合的推進のための重要な柱の1つである若手研究者の養成に関しては平成8年7月の科学技術基本計画における「ポストドクター等一万人支援計画」の閣議決定以降、着実に各省庁で施策の充実が図られており、平成11年度には1万人に達した。このため、この計画による若手研究者の養成の実績やその後の活動状況を検証し、大学院の拡充計画をも視野に入れた今後の長期的展望に立った量的・質的側面の両面を考慮した新たな若手研究者の育成・確保の在り方について研究を行った。本年度においては、昨年度に引き続き、以下の項目について調査・分析を行った。1)日本学術振興会特別研究員制度等の実態と効果に関する調査・分析2)将来の研究者需要に関する調査・分析3)全国の大学研究者に対するポスドクの研究評価及びポスドクの研究環境に関する調査・分析より具体的には、1)については対象者数5,500余社の特別研究員に対し、現在の研究環境を始め、当該人の処遇や勤務先・職場・キャリアパスについてはアンケート調査を行った結果をもとに、その更なる分析を行った結果現在の研究者としてのキャリアパスに少なからず特別研究員の経歴が役立っていることが知れた。一方、2)については、博士課程修了者等を雇用することが予想される企業に2,500余社に対しアンケート調査を行った結果を元にその更なる分析を行った。その結果、以前行った調査(「大学院の量的整備に関する調査研究」1,998)において予想された研究者需給見込みを大幅に変更する必要はなく、その後の経済状況を勘案しても一部に需給バランスが崩れることがあるもののおおよそ釣り合っていることが知れた。また、3)については、今年度初めて調査を行い、大学研究者から5,000名を抽出し、ポスドクへの評価やポスドクを巡る研究環境を聞いた結果、研究環境はかなり恵まれているものの、本人が評価している程には、指導研究者のポスドクへの評価は高くなかったが、概ね、助手クラスの研究活動の同等との評価が大勢であった。