著者
福田 正己 高橋 修平 曽根 敏雄 石崎 武志 成田 英器 高橋 伸幸
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1989

1.地下氷の存在が確認されている置戸町鹿の子ダムサイト斜面で、凍土の水平的な分布を確認するために、電気比抵抗探査を実施した。その結果、表層部で高い比抵抗値を示しており、同時に行った1m深さの地中温度の水平分布で示された低温地域と一致した。 2.かつて地下氷の存在が確認されていた地点に10m深さの検層孔を設け、3年間にわたって50cm毎の垂直地中温度分布の経時変化をモニタ-した。その結果、1988ー1989年までは表層から1m〜5mまでは、年間を通じて凍結状態にあり永久凍土の存在が確認できた。しかし、1989年の冬季が暖冬であり、引き続く1990年夏が暑かったため、1990年夏季に一旦凍土層が消滅した。 その後、冬季の寒気によって再び凍土層が再生しつつある。 3.低山地に形成分布している置戸町の永久凍土と比較するため、大雪山の永久凍土の分布と構造を明らかにするための現地調査を実施した。まず電気抵抗探査により、大雪山平ガ岳村付近のパルサ分布地域で、永久凍土の水平及び垂直探査を行った。同一地点で、凍土のボ-リング探査を行い、凍土の垂直分布が電気探査結果と一致するのを確認した。さらに、得られた凍土コア-サンプルを用いて、花粉分析とAMS^<14>C年代測定を行い、古環境の復元を行った。 4.花粉分析の結果、3mー5m深さでは、コナラ層とハンノキ層の花粉の出現頻度が高く、かつての温暖期に対応するものと推定される。1mー3mでは貧〜無花粉層となり、寒冷期に対応する。1m以浅では、エゾマツとアカエゾマツが多くなり、次第に温暖化してきたことを示唆してる。80cm深さから得られた腐食物の^<14>C年代は7060±200BPYとなった。これは後氷期の温暖期に一致しており、花粉結果に対応付けることができた。
著者
中田 節子 中田 一志
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

この研究は、因果関係を表す構文について、日本語と英語のような西欧語との意味論的統語論的類似性と相違性を明らかにすることを目指している。特に、条件文に焦点をおいて研究を行った。なぜなら、条件文は、どの言語においても、その言語の構造的特徴を反映した特異な現象を示すからである。多くの条件文に関する意味論的研究は、西欧語の統語的特性に根ざした研究である。そこでは、realisとirrealisの問の対立が文法の中に表されている。それゆえ、反事実的条件文の扱いが長く議論されてきた。それに対し、日本語には、条件節あるいは帰結節の命題が偽であること、すなわち、反事実性の明示的なマーカーはない。この研究をとおして、われわれは、日本語の条件文のきわめて重要な特性を明らかにした。そのうち、二点をとりあげる。一つめは、日本語では、条件節命題の真偽が定まっている(settled)であることを文法的にマークする。西欧語のように、命題の偽あるいは命題成立に関する高い仮定性を文法的にマークすることはない。二つめは、日本語では、話し手が、条件節命題の真偽を知らないことを文法的にマークする。西欧語のように、条件節命題の偽を話し手が知っていることを文法的にマークするのではない。われわれは、このような日本語条件文の意味論的特性をKratzer流の様相意味論の枠組みで説明することを提案した。残された問題もあるが、目指したことの多くを達成できたと考えている。以下に研究成果の公表のための活動を要約する。1 平成17年に、成果の一部を国際学会等で発表した。特に、有田は、京都大学で開催された国際ウークショップ「Language under Uncertainty : Modals, Evidentials, and Conditionals」で口頭発表を行った。また、平成18年に、ロンドン大学SOASで開催された、国際ワークショップ「Revisiting Japanese Modality」で口頭発表を行った。2 平成18年には、成果の一部が出版された。特に、有田は、様相意味論の枠組みを援用した英語と日本語の条件文の対照的研究が、『条件表現の対照』(益岡隆志編、くろしお出版)の一つの章して公表した。また、有田は、日本語条件文の時制とモダリティに関する研究を単著『日本語条件文と時制節性』として出版した。
著者
草塲 英子
出版者
岩手県立大学盛岡短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

台湾先住民のなかでも(1)アミ族、(2)近年タイヤル族から分離独立することが認められたタロコ族、タロコ族と民族的には同系統だが民族名称問題で、タロコ族と称することを拒んでいるセデック族に焦点をあてた調査・研究は以下のようにすすめられた。(1)アミ族は、台湾の東海岸の平野部に居住している民族であるため、早くから漢民族との交流も行われたり、日本植民地時代、山地の先住民よりは開化した民族とした位置づけが与えられたりしていた。なかでも都市部に近い平野部に居住するアミ族村落では、漢民族や他の先住民たちが入り込んで人口が爆発的に増加した地域もある。文化的にも漢民族からの流入も多い。そのような状況において、異民族の流入がかえってアミ族的アイデンティティを生み出す契機がつくられてきた。こうしたことを、アミ族村落への人口流入問題を扱いながらとりあげた。また、キリスト教や仏教、道教といった宗教を取り込む一方で、アミ族的な神世界とのかかわり方が存続することをとりあげた。その他、異民族流入以前からアミ族がもっていた時間の観念や、数詞に注目した。(2)2003年、タイヤル族から分離独立したいという希望をもっていたセデック族の一部、タロコ族は、タロコ族という名称を民族名称として名乗ることが承認された。タイヤル、セデック、タロコの関係について、従来、日本であまり知られることがなかったが、こうした3種類の名称が使用される背景には、日本植民地時代の民族分類の結果が影響を与えている。タイヤル・セデック・タロコをめぐる帰属と名称に関する運動の展開について、調査し、整理した。その他、(3)台湾で「原住民」と呼ばれる先住民の法的な扱いの変遷を歴史的におったもの、(4)戦前、台湾で調査研究し、今日の台湾での民族境界や民族概念の在り方に大きな影響を与えた馬淵東一等の研究について整理、考察した。
著者
佐藤 智紀 深江 唯正 宮本 龍介 岡田 実
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SIS, スマートインフォメディアシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.74, pp.1-6, 2010-06-03
参考文献数
4

近年,不審者侵入などに対するセキュリティ技術の向上が急務となっており,その一つとして通信用に用いられる漏洩同軸ケーブル(LCX:Leaky CoaXial cable)を利用した物体検出技術の研究が行われている.しかし,LCXを用いた物体検出においては,LCXが揺れた場合などの外乱の影響を受け受信レベルが変動した場合に侵入者として誤検出を起こしやすいという点が挙げられる.外乱除去法について検討するにあたり,あらゆる外乱に対して定量的な評価を可能とするようなモデルが必要であり,本研究では,レイトレーシング法を用いたLCX侵入者検出システムのシミュレータモデルを作成し,FDTD(Finite Difference TimeDomain)法を用いた電磁界解析結果との比較を行うことで,シミュレータにおいて構築したモデルの精度の評価を行った.その結果,レイトレーシング法が通常用いられる電磁界解析法であるFDTD法と同等の結果を得られることを確認した.
著者
藤木 哲也 早瀬 康裕 井上 克郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SS, ソフトウェアサイエンス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.169, pp.65-69, 2010-07-29

ソフトウェア開発者はプログラム理解の際に,ソフトウェア中の識別子から関数や変数の役割や振舞いを類推する.識別子名中の単語の意味や用法は自然言語とは異なる場合があるために,作業者は類推を行うためにソフトウェア開発の経験からソフトウェア独特の意味や用法を学ばなければならなかった.本稿では,類推を支援するために,識別子名に出現する名詞の説明文を自動的に生成する手法を提案する.名詞の説明文の生成には,ソースコード中に記述されたコメントを利用する.コメントに対して自然言語処理を行い,名詞の説明を行っている箇所を抽出することで説明文生成を行う.また,実際に提案手法を適用した結果についても示す.
著者
小口 理一 菱 拓雄 谷 友和 齋藤 隆実 鍋嶋 絵里
出版者
日本生態学会暫定事務局
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.71-82, 2009

本特集の基となった第55回日本生態学会福岡大会における生理生態学企画集会は、主に地上部を見て植物の生態を研究している研究者が地下部のどのような性質に注意をして研究をすすめていく必要があるのか、勉強する機会を設けるというコンセプトで開かれた。地下部の水透過性は環境に合わせて、アクアポリンを代表とするタンパク質の性質に依存し数十分のオーダーですばやく変化するとともに植物全体の水透過性に大きく影響する事、地上部の活動(蒸散)が地下部の活動(呼吸)と相関を持ち、地上部を見ているだけでは気づく事ができないコストが地下で発生している事、共生を介した栄養塩獲得能力が地上部と地下部を結ぶシグナルによって制御されている事、地下部にも地上部以上に機能分化したモジュールがありその機能ごとに場合分けが必要である事、これらの企画集会で紹介された研究結果は、地上部の研究者達にとって地下部は無視できないものである事を改めて認識させるに充分なインパクトがあったと思われる。本総括論文では、前半でまずこれらの研究成果について生態学的視点から振り返る。そして、後半では本特集によって見えて来た「地上部と地下部のつながりの理解のために必要な研究とはなにか」について、細根系の機能的ユニット、栄養塩吸収と水吸収のコスト、根の水分生理というトピックに分け、現状と展望を紹介していきたい。
著者
永井 秀利
出版者
九州工業大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

本年度は,前年度の研究成果を引き継いで,それを発展させるべく研究を進めた.前年度の研究では,他研究に見られる大頬骨筋よりも笑筋を用いる方が有効であることを示したが,本年度の更なる検討により,日常的な軽いあるいは微弱な口唇動作におしいては口角下制筋の方がさらに有効であることを確認した.これにより下顎部のみの比較的狭い領域への電極装着のみで十分である可能性が高まり,実用上の装着負荷をより小さくすることへの見込みも得られた.本年度に提案した口裂周辺の計測位置から得られた波形に基づいて,母音の認識実験も行った.筋電信号は微弱であるため,筋電波形には非常に多くのノイズが含まれる.これをどのように低減するかが大きな問題となるが,本研究ではウェーブレット解析に基づく縮退と大域制限とを併用する手法を提案した.また,特徴パラメータ抽出の際に計測毎の差異を吸収するための正規化の方法についても提案した.認識にはフィードフォワード型のニューラルネットワークを利用し,およそ64%の認識率を得ることができた.さらに,子音認識を目的とした筋の選定とそこから得られる筋電波形の特徴分析を行った.本年度の研究では,顎舌骨筋,胸骨舌骨筋,輪状甲状筋を対象筋として選定した.得られた波形を調査した結果,実際の発声に先行した筋活動の有無による特徴差が観測された他,[k],[s]などの口腔の前方で調音する子音については顎舌骨筋の活動が,[h],[m]などの口腔奥に共鳴空間を作る子音については胸骨舌骨筋の活動が特徴的に表れることが確認された.また,胸骨舌骨筋と輪状甲状筋の活動に関しては,母音発声に際しての特徴差も見られた.現時点ではまだすべての子音を識別できるとは言えないが,いくつかのグループへの識別を行うことは十分に可能と考えられる.こうした成果は,今後,もう少し整理を進めた上で研究発表を行う予定である.

1 0 0 0 OA 体液,内分泌

出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.853-859, 2009-12-01 (Released:2010-01-18)
著者
松本 雅行 北村 知
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. FTS, フォールトトレラントシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.143, pp.37-44, 2000-06-16
被引用文献数
3

JR東日本では、山手・京浜東北線の保安装置であるATC装置の老朽取替に伴い、現行のATCとは抜本的に異なる車上主体形の新しいATC(デジタルATC ; D-ATC)の開発を行った。D-ATCの開発に当たっては、安全性の確保を前提としつつ、その中でより稼働率を高めるために、いくつかのアシュアランス技術を用いた。ここでは、D-ATCの開発の方向と、そこで用いられているアシュアランス技術について述べる。
著者
松本 雅行
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 : 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.336-344, 2004-07-01

首都圏の高密度線区である山手・京浜東北線に,従来のATCと抜本的に異なる技術を用いた新しい列車制御システムを2003年12月に使用開始した.この新しい列車制御システムにおけるアシュアランス技術を以前本誌で紹介したが,本稿では,従来システムを運転しながら新システムのテストを行うことのできるオンラインテストとアシュアランスとの関係に焦点を当てて説明する.D-ATCに取り替える場合,新旧の異種のニーズを持った2つの列車制御システムを共存させ,段階的にシステムを拡張していくときの課題を明らかにし,アシュアランス技術によるこれらの課題の解決技術を提案した.D-ATCの車上システムとして車上統合型システムと車上分離型システムを提案し,現行システムからそれぞれへの取り替えにおける,テストのアシュアランス度を比較検討し,テストのアシュアランス度を高めるためのシステム構築技術を紹介する.
著者
橋本 新助
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
機械學會誌
巻号頁・発行日
vol.36, no.193, pp.299-303, 1933-05

鐵道の電気運轉の概要を述べ鐵道電化の得失を説明し更に世界に於ける鐵道電化の現状を畧述して最後に一例として東海道線電化に就て電気運轉と蒸気運轉との経済比較の大畧を示したものである。
著者
ナラキョウイクダイガクフゾクトショカン 奈良教育大学附属図書館
出版者
奈良教育大学附属図書館
雑誌
書想 : 図書館報附録
巻号頁・発行日
vol.24, 1976-10

東海道線のこと 太田静樹/みちのくにて 須田紘太/十勝日誌 藤村亮一郎/金魚 櫛部政久
著者
藤巻 遼平 中田 貴之 塚原 英徳 佐藤 彰典 山西 健司
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.70, pp.45-46, 2008-03-13

本稿は故障事象の検出問題に関し,A)各属性(時系列データ)の性質が異種多様,B)故障事象の学習事例が少数,C)故障事象とは無関係な属性が多く含まれる,という実応用でしばしば直面する状況で,高精度な診断を可能とするアルゴリズムを提案する.提案アルゴリズムの特徴は,1)各属性の時系列を異常スコアの列へ変換し各属性の異常スコアベクトルによって各故障を特徴付ける,2)故障時および正常時の異常スコアベクトルを利用して適切な属性を選択する,という2点からなる.実験では自動車の実データに対して提案アルゴリズムを適用し,その有効性を確認した.
著者
平手 小太郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

1.「防災意識」に関する既往研究、代表的事業の事例の分析本研究の基礎資料として、地方自治体等が実施した既往研究の代表例を収集・分析し、行政が市民の「防災意識」をどのように捉えているかを整理した。また、全国主要自治体における防災担当課を対象としたアンケート調査を行い、最近の防災啓発事業の事例を収集した。これらのうち住民参加型事業の代表例を調べた結果、その対象者は、行政からの呼びかけで参加した市民(町内会役員等)が非常に多く、その属性に一定の偏りがあることがわかった。2.「防災意識」に関するアンケート調査の実施1.の結果を考慮して「防災意識」に関するアンケート調査を2回実施した。対象者は、最初の調査では公立の小学校へ通う児童のいる世帯、次の調査では協力の得られた地域の居住者および対象自治体の全町内会長とした。主な対象地域は東京都北区である。3.調査結果の分析1-個人属性の影響アンケート調査結果より個人属性と「防災意識」との関連を検討した。個人属性の指標は、年齢、性別、「家族に町内会役員がいるか否か」の3種とした。この結果、性別以外では一定の傾向がみられることがわかった。4.調査結果の分析2-グラフィカルモデリングを用いた意識構造の検討次に、「防災意識」の一般的な構造を把握するために、グラフィカルモデリング等、統計的因果分析の手法を用いて調査項目間の直接的な関連を抽出し「防災意識」の因果モデルを作成した。この結果、地縁的組織に属するか(町内会役員であるか等)ではなく、「近所づきあいの程度」や「地域に愛着を感じるか」等が「防災意識」と直接関連することがわかった。5.結論以上の結果を統合して、多様な市民層を効果的に取り込むことのできる防災啓発事業のアプローチのあり方をまとめた。
著者
三隅 良平
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
気象集誌 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.107-121, 1994-02-25
被引用文献数
1

降水量、地上気温、海面気圧のデータを用いて、1990年以降の梅雨期の降水量の数十年スケールの変動の特徴を記述し、大規模場の変動との関係を調べた。日本全国を平均した梅雨期の降水量は、1924年から1944年(期間I)には少雨傾向を示していたが、1950年頃に増加し、1952年から1972年まで(期間II)多雨傾向を示した。この数十年スケールの変動は、日本の南西部で大きな振幅を持っていた。期間Iと期間IIの間で、つぎの気象要素に有意な変動が見られた;1)日本の西部での南北温度傾度(増加)、2)日本の、30゜Nと40゜Nの間の緯度帯での海面気圧(減少)、3)マニラの降水量(減少)。東日本の南北気圧傾度、及び日本の地上気温のEOF第1主成分は、梅雨降水の年々変動と相関するにもかかわらず、期間Iと期間IIの間で有意な変動は見られなかった。解析結果は、期間Iから期間IIにかけての梅雨降水の増加が、亜熱帯の循環の長期変動と関係していた可能性を示唆する。1950年頃の梅雨降水の増加に関して、仮説的なプロセスを提案する。